ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった   作:黒兎可

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今回ちょっとキリが悪そうなので短め


第50話「名人よ? あなた、名人だから」

 

 

 

 

 

「江口君……、いえいえ、江口名人だったら、ちょうど今はイベントでアキンドシティ(※大体大阪あたり)に行ってますね? 子供向けの大型イベントに乗じて開催されるネットバトル大会。何でも、お友達のソウルバトラーさんと一緒に大会で解説したり遊んだりしてるんだとか」

「あー、……。お忙しいようで、ご愁傷様です」

「ガンサイくん、けーごはしなくて大丈夫ですよ~?」

「エイリアさんだって敬語じゃないですか」

「ちがいますー、これは丁寧語ですー、大人の武器なんですー」

「武器……?」

 

『どういうこと?』

『察してやって……、いや察さないでやってくれると有難いかねぇ? あの子も色々あるってなもんさ』

 

 どういうことやねん。

 思わず関西(アキンド)弁が出てしまいそうになるけど、まあそんなテンションのエイリアさんは終始落ち着かない。というか全然お酒臭くなくて、事前に呑んでるという話を聞いて無ければ「気が狂ったか!?」とちょっと焦っていたところだ。

 

 いや今も十分焦ってるんだけどね?

 だっこされて、お膝の上で背後から抱きしめられてほっぺすりすりされててですねぇ……。

 小学生にしてはそんなに身長が低い訳じゃないので、こうされるとちょうどエイリアさんの頭と同じくらいのところに頭が来る感じなのだ(さすがにこっちが少し低いけど)。で、まあお肌がすべすべしてたり、こう、色々とそういうのを始めとして言葉にするとそれだけでメンタル的に大変なことになっちゃいそうなので、さっきから考えないようにするのが大変といいますか……。

 あとエックスはPET越しにこっちを見てる、そのまるでこっちを見下すような鼻で笑う様な顔は何なのかな。何か言いたいことでもあるのかな。いや、もしかしたら僕というより右隣で「にゅ~」とか謎の唸り声をあげてるエイリアさんに向けてのかもしれないけど、だったら止めてあげて……。

 

 名人さんも言ってたけど、社会人って辛いんだよきっと。

 少しくらい僕の社会性を犠牲にして心洗われると言うのなら、多少はしかたないのかもしれない。

 

 ……喫茶店の店員さんたちの猛烈に生暖かい目線が気になるけど。何? あの、触れると面倒になりそうだし今の所沈静化してるからヨシ! みたいな地雷処理を見守るみたいな視線はさぁ。皆髪型とか服装とかファンキーな感じなのに、何をそんなにビビってるのさ。

  

「でもそっか、夏休みだもんなぁ…………」

 

 それはそうと、エイリアさんに教えてもらった現在の名人の状況について密かに納得してる僕。

 そうかー、名人はワ〇ルドホビ〇フェアか…………。この世界ではなく僕の前世的な、いわゆる「原作」としてのロックマンエグゼのゲームは、その販売期においては現実世界にリアルに存在するワ〇ルドホビ〇フェアのイベントとかで、大規模なゲーム大会が開かれていた、らしい。らしいというのは僕自身、例の友達と一回こっきりしか行ったことがなく、名人のモデルになっているだろう「本物の」名人さんもちょっとした見たことがなかったり……といったことが原因だ。

 ただ、そんな名人をモデルにしているせいなのか、この世界でもどうやら名人さんはイベントごとにひっぱりだこらしい。そういえば以前、みゆきお姉さんとDNNのイベントに行った時とかにいたような話を聞いたような聞かなかったような……? 後、本人も広報の仕事もやってるとか言ってたっけ。

 というか、やっぱり気になるそのソウルバトラーさんイズ誰? 現実世界にもいたんだろうか……。

 

 そんな風に不思議に思っていると「良ければ見ますか? 中継」とか言って、エイリアさんは僕のパソコンに「ちょっと失礼……」といってプラグイン。

 

「私のPETでVPNを中継して……、と。後は、マーティのパーソナルコードとセキュリティレベルなら、科学省の広報部向けの映像を外部でも受信できますので。大会の映像は江口君の仕事ぶりを中心に、腕の良いネットバトラーやナビのカスタマイズや何やらのデータを確認する兼ね合いもあって、実は中継映像はこっちの方に記録されてるので……、と」

「や、やって良いんですか? そういう私的利用みたいなの。職権乱用……?」

「一応、収集データの解析はうちの研究室の管轄なので、ギリギリセーフということで」

 

 本当にセーフなのかどうかは置いておいて、こんなところでリモートワーク(?)しようとするのも無いだろうしやっぱり完全に()()()()()()()よこの人。普段絶対こういうことしないだろうし……。

 どうするべきかと色々悩んでいると、エイリアさんがワイヤレスイヤホンを出して僕に片方だけ貸してくる。自分も片方つけて、パソコンにリンクさせて映像を流す算段らしい。

 まあ、エイリアさんに抱っこされた辺りで事故防止も兼ねてモデリング用のアプリケーションとかは落としたから、パソコンのメモリ的に問題ないといえば問題はないんだろうけど────────。

 

『──うおおおっ! ここでインビジブル状態!? 荒駒選手操るキングマン、渾身のチェックメイトならず! しかしプレス選手操るダストマンもぉHPは100を切っている! お互い満身創痍の中、さあ、ここからどう展開する!?』

『おいちょっと抑えなさいよ、君汗っかきなんだから……。マイクに落ちるだろちょっと』

 

「うわっ声大きいっ!?」

「お、音量落とすねエイリアさん……」

 

 リアクションがあら可愛い……。というかリアクションすると同時に抱きしめる力が強くなってるので、色々な意味で(おれ)も危ない。

 とりあえず腰のエイリアさんの手をタップしながら、PCのオーディオ設定を調整。実況と解説と、場内の映像がある程度過不足なくバランスよく聞こえる様になるまで調整してから、再度画面を見た。

 

 映像は、ネットバトル用の筐体とそこにプラグインする二人の子供……、子供? えっと、片方は中学生くらいに見えるけど、もう片方は大学生かな? というか、あれ? キングマン? 荒駒って、あー、なるほどね……?

 

「早速使ってくれてるみたいだね、改良型ポーンとナイト」

()()()()()はアニメーションとモデリングはしたけど、まだ実戦では使わないのかな?』

 

「? えっと、知り合いですか? この画面の、こっち側の子」

 

 エイリアさんが右手で指さした側、帽子を被って青系のジャケットを着てるっぽいのがなんとなく確認できるくらいの大きさの中学生くらいの子だけど、それに僕は頷いた。

 荒駒選手こと、荒駒虎吉。前世的な知識で言えば「エグゼ3」に出てきたキャラクターで、いわゆる漫画とかアニメとかゲームとかに出てきそうな「最初は主人公を見下していたけど破れて実力を認め良き友人枠に収まるライバル」みたいな、そんなポジションのキャラクターだったはずだ。ネットナビのキングマンは、チェスのキングをモチーフにしたネットナビ。

 

 ……んでもって、僕ら的にはつい最近まで頭を悩ませていた仕事の依頼人だったりする。

 既存の専用バトルチップについて「動きとかモデルとか適当に付けたから、何やえらいラグ発生したみたいに斬りかかるの遅なってんや。なんとかしてくれへんか?」と、まあそんな感じで。ついでに新しい専用バトルチップも作ろうとしているらしく、そのデザインやら何やらの選定とモデリングも依頼に出されていた。

 しかも、超短納期で。

 いやあ……、小学生だから一日の自由時間もそこそこ取れるだろうし大丈夫だろうとタカをくくるものじゃないね。光博士(主人公こと熱斗くんのパパさん)が「人月の計算は一つ誤るだけで全体的に大変なことになるからね。クリティカルパスってやつだ」とかよくわからないこと言ってたけど、まあそんな感じで。ニュアンスだけはなんとなくわかった結果、かなりギリギリでの納品になってしまった。

 一応みゆきお姉さんが折衝してくれていたお陰で文句とかは回避できたんだけど、いやあれは焦った焦った……。それでいてすぐに使ってくれてちゃんと評価つけてくれているあたりは、お客さんとして本当に感謝だ。

 

 そんな話を色々濁しながら(主にみゆきお姉さんとバイト云々)エイリアさんに言えば「ガンサイくん、ネット上での空間認識能力が高いみたい、ですねぇ」と感心して言ってくれる。

 空間把握能力……、うん、まあ、バトルオペレーションの時にエックスと視界が共有される影響が強いと言うか(たまに普段から混線することもあるけど)、お陰で電脳世界での視覚的距離感というか、そういうのもなんとなくわかってしまうようになったので、こればっかりはちょっとしたズルっこな気がする。

 

 そんな僕らの話を余所にバトルは盛り上がっていく。

 

『うおおお、ここで駒が大量に配置されたァ! これでは吸い込んでも吸い込んでもきりがないぞォ!』

『相手の動きを見て、チップフォルダを一気に解放しましたね。うむ……、だが処理のラグ的にオブジェクトの頂点数とかが気になるな。後で研究室に報告を上げないと……』

『いやそこ、素に戻るなって。名人よ? あなた、名人だから』

『ネットバトルは大事だけど、バトルオペレーション.exe(バトオペ) のシステムって基本はウィルスバスティングだから。規格内の自作チップでトラブル起こすのって出てきたら嫌な気分になるだろ?

 それはそうと、流石に準々決勝まで勝ち上がってきた二人ですね。特に技が光るのが荒駒選手。チェスか将棋を打つように最初からPETを見ず、筐体の全体ディスプレイを見下ろす様にして俯瞰しながら一手一手、相手のエリアを詰めています』

『オブジェクト制限に引っ掛かってないんですかね? いや、実際チェスモチーフでこうしてこうしてカッコ良い! 感じで戦ってるのは燃えるけど』

『おそらくシステム上はナビのアーマーパーツ扱いにしてるんでしょう。ただ仮にその方法でオブジェクトの問題をクリアしても、これだけ同時並行で操作をしているとなると練度も当然高い。流石はスワッポリス大会ベスト8入り』

『しかし相手のダストマンも決して負けていない……! 駒を吸い寄せてから威力の高い攻撃で延々と耐久を削って破壊し、キングマンの位置まで追いすがっていっているゥ! 見た目的にはパンチ一発で破壊できそうだが、そうは上手くいかないか!?

 っとここでキングマンもインビジブル! さっきの意趣返し、これは痛いッ!』

『あー、オブジェクトのブレイクか……。現状はまだ実装予定はアナウンスされてないですが、将来的には確実につくでしょう。それはそうと、しっかり壊せるあたり流石に特化型。

 キングマンも「チェス再現」特化型と言えるでしょうし、特化型同士のバトルは見ごたえあるなあ』

『両者一歩も譲らず! お互いリカバリーをかけていよいよラストスパートかァ!!?

 ……特化型というと、名人のバンチョーマンも特化型だったよな? ゲートマンは汎用型だけど』

『実はバンチョーマンも汎用型だぞ? というか、バンチョーマンが私の作った中で一番汎用型を極めたタイプだな』

『えっマジで!?』

『特化型の特殊性を兼ね備えた上で汎用性を保っている、というのがバンチョーのデザインテーマだったからなぁ。特化した動きもオールマイティな動きもできる、というのがある意味真の汎用性ということで。……ちなみにゲートマンは若干特化型寄りだ』

『マジかー、俺の「名人キラー」三体もまだまだ調整足りないか……』

『おいおい物騒な名前だなあ……。というか三体ってアレだろ? エンカーにバラードにパン────って、笹食ってる場合じゃねェ!』

『おっと事態が大きく動いたァ! ダストマン、ここで勝負に出るかァ!?』

 

「ずっとしゃべりっぱなしだね二人とも、すごい……」

「江口くん、そこまで得意でもなかったはずなんですけどねぇ……。場慣れしたんですかねぇ」

 

 僕の率直な感想に、エイリアさんが続けて遠い目をした。これ多分、名人の科学省入省直後とかの話を考えてるのかな? うん。それはそうとソウルバトラーさんてこの人かな? すごい叫びながら実況してるゴーグルのお兄さん。よくこう言葉がポンポン出てくるな……。

 ただそれはそうと、バンチョーマン……。比較的最近まで名人のナビだった、僕らにとって縁深い顎の割れた不良番長風のナビ。諸般の事情で現在は名人のもとを離れてウラインターネットにいる「らしい」というのは知ってるんだけど、そうか。バンチョーって汎用型、つまりロックマンとかエックスとかみたいなタイプだったってことか……。

 ……考えてみたらフレイムソードとか、思いっきり通常のバトルチップも使ってたな。うん。確かに汎用型と言われれば汎用型か。

 

 それはそうと名人がずっと口元にマスクしてるのが気になるなあ……。その話をエイリアさんの方を向かず話しかけると(※ほっぺすりすりされてるので、エイリアさんの顔を見ようとするとちゅーする形になっちゃうから)、エイリアさんは「触れない方が良いですかね~」とのほほんとしながら、やっぱり遠い目をして笑っていた。

 

 まあ、会話が長々と続いていたけど。バトルエリアとしてはキングマンが多数の駒を配置して、それをダストマンというらしいお腹に大型の吸い込み口みたいなのがあるナビが、接近して寝首を掻こうとしてる感じだ。キングマンの能力? で召喚された大型のチェスの駒風オブジェクトを壊して接近し、その間にキングマンは移動したり駒の配置を変えたりして攻撃したり。

 ただ既にフィールドはキングマンの領域といってもいいだろう。僕が再設定したからわかるんだけど、駒の攻撃範囲の位置関係とかからみて、ダストマンの吸い込みでキングマンを寄せることは多数の駒が邪魔をして出来ない。エリアスチールで接近を狙っても、そもそも駒が邪魔になって動けない。その上で無理やり接近をしようにも、キングマンの側からはいくらでも手を打てる。

 ある意味でチェスの駒風オブジェクトによる迷路が出来上がっているような状態だ。エグゼ3で遊んでいた時とは違う、明確に「もう一つの異世界」のような形になっている電脳世界だからこそのバトルの違いというか、多分そんな感じだろう。実際、今の僕とエックスだと全く対策が思いつかない。

 

 フィールド変化形のチップとかで奪い合い合戦になったとしてもフィールドのアドバンテージをとるために、フィールド操作よりもオブジェクト操作に重きを置いたとすると、着眼点は()()良いんだろうなあ。

 

 …………まあ、何で()()なのかと言えば、多分それでも熱斗君とロックマン相手だとジリ貧になるんだろうってことで、ね? 本当、あの二人ってよくわかんない内にいつの間にか謎のアドを取ってきて、気が付くとこっちが劣勢に追い込まれるし。流石主人公と言うか何と言うか……。

 

 

 

 

 


【作者メモ】

・お酒臭くないエイリア:

 実は、エイリアの出自に関わる体質的な話に由来する裏設定があったりする。多分ゲイト登場するころに振れる……かもしれない? それはそうと若干幼児退行気味。

 

・名人大忙し:

 夏休みのイベントで開かれる大会で各地を行脚すれど本職のお仕事を落とせるわけもないので、結構ハードスケジュールな名人(「現実世界」でないのでイベントは落としていないイメージ)。なおこの後、熱斗君とバトルするまでにまた飛んで帰って来る。

 

・荒駒虎吉&キングマンおよびミスター・プレス&ダストマン:

 先行で顔見せ、だけどあくまでナビ側メイン。大会のあくまで中継映像なので、二人のやりとりまではマイクが拾えていない。

 虎吉の方は番外編でガンサイに依頼をしていた繋がり。他にも原作に出てない駒を作ってたりするので、そのあたりは正式登場してから。

 

・ソウルバトラー:

 インパクトある恰好な、ある意味イベント限定な例のあの人(?)。本格登場ではないので細かくは置いておいて、どうして本作でもソウルバトラーが出てるかについてだけ言うと、エグゼ6改造カードの依頼で「ソウルバトラーへのみち!」が収録されてるので、コーエツお兄さん同様エグゼ世界にもモデルとした誰かが存在しているだろう、というところからのイメージになっております。

 本作的には名人とは大学時代、主にネットバトル大会からの知り合い。名人が解説役として科学省からの出張なのに対して、ソウルバトラーはイベント側から実況役として雇われてるイメージ。

 

・汎用型なバンチョーマン:

 もともと「フレイムソード」を使ってるのがちょっと伏線? だった微妙な設定。何故汎用型かといえば、タイチョウはある意味で最も完成された汎用型レプリロイドだったので(Σ)。

 ちなみに、サイコマンな現在は完全に特化型。

 

 

 

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