ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
「何かよくわかんないけど……? そっちの保護者みたいな人、色々大丈夫なの? とても正気には思えないケド?」
「?」
「エイリアさん不思議そうな顔しながら僕にあーんしない……」
件の喫茶店を一時間完全貸し切りにした状態で、我らが主人公こと光熱斗君の友達の綾小路やいとちゃんが、名状しがたいしかめっ面のような表情で、明らかに僕らにドン引きしていた。いやちょっと待て、僕は被害者なんだって、落ち着いて話を聞いてくださいお願いします……。
いやまあ、おしゃぶり(直球)をエイリアさんに見られないため右手もPET握りっぱなしだし、左手で押しのけようとしても勝ち目がないから仕方ないと言えば仕方ないんだけどね。
「はい、あ~ん♪ ぷりんですよ~」
「あーんじゃなくってさぁ────むぐっ」
「ま、まあ、ちょっと色々どうかしてようが納期までに納品してくれるなら、何も言うことはないわね。うん。構わないわ、よくってよ! ってやつね」
懐が深いのか、直視した現実を無かったことにしたのか。ともかく、やいとちゃんは額をきらりとさせて苦笑いを浮かべていた。綾小路やいとちゃんは、ゲーム通りに左右におさげした金髪をゆらした小さい女の子。なんでも原作いわく「飛び級」してるらしく、年齢も熱斗くんたちクラスメイトよりも年下。つまり僕よりも年下だ。
さて、そんな彼女がなんで現在この喫茶店を貸し切ってるのかと言えば……。まあ、うん、酔っぱらったエイリアさんがホールドしたまま僕を離してくれなかったからですねぇ…………。いや本当、どうしてこうなった。名人のお仕事(?)を観戦して少し雑談をして、そのまま待ち合わせ場所まで行こうとしたのだけど、エイリアさんは「ぎゅー」って僕を抱きしめたまま放そうとしなかった。
『トイレですか? だったら連れて行ってあげますよ~♪ ちゃんと
そんな野良猫か何かを拾って、トイレの場所を教え込むような物言いをしなくてもさぁ……。そんなノリのまま、何か用事があれば僕を抱っこしたまま移動し(流石にトイレは入り口まで)、それでいて決して店から出そうとしない。
そして、お酒臭くはなかったけど千鳥足踏んでるエイリアさんなので、多分このまま僕を解放した後だと追跡とかが難しいと考えてるとか、そんなところかな?
事情を説明しても「そうなんですか~?」って聞いてるんだか聞いていないんだか。いやでも先方だってねぇ、場所とってると思うんですよ……。そんなことを思いながら、一応クライアントたるやいとちゃんにチャットで連絡。「保護者が酔いつぶれて離してくれない」的に詳細を濁しながら言って、時間を遅らせてもらえないかと打診した。
そして驚くべきやいとちゃんの返事は「だったらこっちから行くわよ」というもの。一応借りていた場所はレンタルスペース的なものだったらしく、キャンセルしたところでたかが知れてるとのこと。いやでも、レンタルスペースって言ったって事前に調べた感じだとそこそこ小学生手金にはお値段が張るレンタル料だったし、何と言うか恐縮するしかなかった。
なおこちらの感謝と謝罪のメッセージには「遠方から来てもらってるみたいだし? これくらいは別に大したことないもの。えっへん!」という太っ腹っぷりだ。
お客さんとしての度量が大きすぎる……。同時に言葉に裏に「ただし納期は絶対厳守しなさいよ」という圧も感じて、ちょっとだけ胃が痛いけど、これは仕方ない。
そして、到着早々にお店を貸し切って話し合いってことになったんだけど、そこはまあ冒頭の通りってことで。
とりあえず自己紹介しあう僕とやいとちゃん……と、ついでにエイリアさん。やいとちゃん自身が飛び級小学生だったからか、それとも熱斗君のクラスメイトだからか、小学生がナビパーツとかのモデリングをやってると言っても「ふ~ん。まあ世の中そういうのあっても変じゃないわよね」くらいの軽い反応だったんだけど。
「エイリア・C・防人……、エイリア・キャスケット・防人!? うそでしょ、それってアレじゃない、エイリア・キャスケット・防人!
「あ~、懐かしいですね~。アルカディアの方で仕事するちょっと前に作りましたか~」
本当に本物!? と顎をあんぐり開くやいとちゃんだけど、まあ仕方ないよね。現在のエイリアさんと来たら、謎ののほほ~んモードで僕を愛玩動物扱いしながら、普段より明らかに空気を読まない言動が多いし。もしかしてこっちが素なのかな? この人。
ちなみにIPCっていうのは伊集院PETカンパニー、ご存知我らが熱斗君のライバルこと伊集院炎山君の御実家がやっている、国内国外最大手のPET販売会社だ。科学省と提携していて、僕のPETもIPC製だったりする(※無線変換端子は競合のビッグカンパニー製らしい)。
「というか、ナビフレームワーク?」
「メインフレーム、メインフレームワークのフレームワークと同じですがニュアンスが違いますかね? 誤解を恐れず言えば、あっちは属性を示していて、フレームワークという単語自体は概念を指してますか~」
「いやエイリアさん、よくわかんないんだけど……」
「かいつまんで言ってしまうと、ナビ開発のひな型ですね~。ベースになるものと言うか、プリセットと言って伝わります? モデリングのサンプルとかにある」
「あ~~~~、………なんとなくわかったような?」
よくわからないけど、つまりはナビの改造元というか、そんな感じかな? で、IPCが出しているそのダイナモ? っていうやつを開発したのが昔のエイリアさんと。やいとちゃんが知っている辺り、結構名前が通ってるのかな?
ちらっと聞いてみると「検討したのよ」と腕を組んでおでこをきらりとさせるやいとちゃん。
「私のナビってゴリゴリお金かけて作ってもらったんだけど、何をベースに作るかってのでちょっとね。流石に科学省のオープンソースにある『
結局、私のグライドはどっちも使わなかったけど。ウチでも新しいフレームワーク出すっていうから、そっちの検証ってことで。ねぇ? グライド」
『────はい、やいと様』
「
PETをこっちに向けてきて、自分のナビを見せて来るやいとちゃんと傅く執事っぽいナビのグライドはともかく、耳元で聞いてもいないことを嬉々としてしてくるエイリアさんはやっぱりテンションがどこかおかしかった。いや、エイリアさんは本当どうしたもんか……。
とりあえず全力で考えないことにしよう。僕の精神衛生上、それが良い。
で、それはそうとやいとちゃんの御実家……、ガブゴン社だったっけ? 思いっきりリアル製作元なカプコ〇をパロディした名前の会社だけど、別にゲーム会社ってわけでもなさそう。……何かでゲームも出してたような覚えもあるから、たぶん総合的に色々やってるタイプなんだろう。古くからある会社というか、その辺はIPCみたいに現代になって一気にトップに躍り出たのとは、コネとかも多くてちょっと違いそうだ。
「でも、こうしてその道のプロがいたって進んでないんでしょ? どういうデザインにするかとか」
「正直どうしたものかなっていうのは、そうですねハイ」
「普通に聞いてくれればよかったのに。別に取って食ったりしないわよ?」
ゲーム通りに微妙に悪い目つきでニヤリと笑う曲者っぽいやいとちゃん。にしし、という声が聞こえてきそうなやいとちゃんだが、そう言われるとこちらも返す言葉がないと言うか、何と言うか…………。
『────普通にぼっちこじらせただけだよね、ガンくん。ネット越しのコミュニケーションでも、直接一人でやりとりってなると心細くて右往左往すると言うか』
『そ、それは……話して良い情報だったのですか? エックスマン様』
『何でそんなイライラしてるんだいエックス、あんた』
「へぇー ……」
「…………大丈夫、世界は怖くないですよ?」
「エックスぅうううううううう──────ッ!!?」
それ今言う必要あった!? 本気で言う必要あった? その情報絶対いらなかったんじゃないかなァ! いや別に僕そこまでぼっちこじらせてるつもりはないけどお金かかるやりとりとなると前世的にもワンオペとか責任者になったことないから緊張するっていうのは否定しないけどいくらなんでもそれはさァ!!!!
子供をあやす様に頭を撫でて来るエイリアさんに、哀れなものを見る目を向けてくるやいとちゃん。とりあえずわめきながら思わずPETに壊れない程度の全力チョップを叩き込んでしまった僕は、絶対悪くない。
ちょっと勢い余って右手から落ちて、テーブルの上で2バウンド。
ケーブルはやいとちゃんが打ち合わせ用に持って来たノート(ちょっとア〇プルっぽい?)に繋がったままなので、特に問題はないはずだ。
ぜえはあと肩で息をしてる僕を前に「仲良いのね~」とやいとちゃんが何とも言えない微妙な顔をしてきた。
「(ロックマンとは違う感じだし、本当何なのかしらね? 多分使ってるフレームワークが一緒みたいだし、科学省関係っぽい気はするけど……)」
「? どうしたの?」
「何でもないわよ。与太話というか、まあアレよ。どうでも良い話ってこと。
で、そうよねぇ? サプライズしよう的な話なんだけど、ナビアイテムって言ったけど別にアーマーとかに絡めなくて良いわよ? どっちかというと、ナビでも使えてオペレーターに益があるタイプのが良いし。単なるカレンダーとかレターセットのテクスチャ変更とかだと味気ないけど、まあそう言う感じね。
ちょっと最近、その子が何にハマってるか情報収集してきたから、注文したパフェ食べ終わってからヤシブ巡って丁度良さそうなの探しましょう!」
「な、なな、何かめっちゃ仕事できそうこの子……!?」
「凄いですね現代の社長令嬢は……!」
何かこちらから話を振るより先に、大体の行動方針が固まってしまった。こう、何だろう? やいとちゃんが上司になったら無駄な会議とか絶対生まれなさそうなこの行動力というか。実際この場であーでもないこーでもないってやっても僕からアイデアが出てくるかはわからず、エイリアさんは本調子じゃないのでカウントできないので、やいとちゃんが仕切るのが最速と言えば最速なんだけど。
謎の衝撃で驚いてる僕とおののいてるエイリアさんを前に「はんっ!」とやいとちゃんは鼻で笑った。
「こちとら従業員約四千人とその家族の生活支える会社の社長令嬢よ? 仕事モードとなったらざっとこんなもんじゃないわよ!」
腕を組んで笑うやいとちゃんは非常に頼もしく……、後やっぱり何故かアニメと違って微妙に目つきが悪いままだった。
……全然関係ない話なんだけど、やいとちゃんが頼んだパフェを持って来たピンク色のメイド服の人が「ひでぶッ!?」とか言って足ぐきってして、パフェをその場にぶちまけて「くぉらあああ、だから足元気を付けなさいって言ってるでしょ鬼龍院桜子ォ!」とか怒鳴られてたけど、えーっと、何の話だっけこれ?
※ ※ ※
お店を出てからの事は、あんまり語れることがない。……いや、それだけで終わらしちゃうと色々アレなのだけど、まあ、こう、うん、会話が持たなかったというか、ね?
別に初対面の子相手にどうこうって苦手とするほどじゃないんだけど、こればっかりは生きる
「流石に103は貸し切らなかったんですか~」
「貸し切れないことも無いけど、普通のお客さんが可哀想じゃない? それにヤシブってのはこうして人一杯いないとヤシブって感じしないっていうか、ねぇ?」
「あ、わかりますよ~? デンサンの官庁街もサロマちゃんのお弁当目当てにお昼どき賑わっていないと、ちょっと物足りないですよね~。マサさんが悪いって訳じゃありませんけど」
「マサさんの所もお弁当持ってきてる時は、しっかり骨抜きしてくれてるから食べてて安心できるのに何で人気ないのかしら……。っていうか、科学省勤めでしたっけ? えっと、エイリア
「博士! 博士ですよ博士、もう博士! えっへん!」
「何でそこドヤッ! て感じで胸を張ってるの……? 何か知らない、あんた」
……物凄く姦しいと言うか、うん。女の子と大人の女性の二人だって言うのに、同年代みたいに盛り上がってて何だろうねこの空気感。見た感じ、エイリアさんの方が年下みたいな扱い受けてるようにも見えるし。みゆきお姉さん相手にはこうはならないし、キャラの違いのせいだろうか? うん。というかエイリアさんやっぱり千鳥足なので、僕とかやいとちゃんとかが手を引いて誘導したりしてるようになってるし、うーんこの絵面は色々キツそうだなあ…………。
ともかく、結局やいとちゃんが「あれいいんじゃない?」とか言って、エイリアさんもついていってというのをのほほーんと後ろから見守っているような感じだ。時々普通に買い物したりして、やいとちゃんの家のメイドさんたちが色々手荷物持ったりしてる。このあたりはアニメの時みたいな誇張じゃないけど、ああいう感じじゃなくて普通の使用人さんたちって感じに言見える。
……ちなみに、あのピンク色のメイドさんは荷物持ちの一人に入ってるけど、大丈夫かな。また転びそうとか言うとフラグになるか? うん。
ま、まあそんな風に、ほぼ遊びに繰り出しているような状態で大人数のまま移動してると、色々な人から注目されていても仕方ない。そこで「通行人の邪魔になるわね」とあっさりメイド隊を忍者みたいに分散させて、人数を1人以外減らすあたりは流石にお嬢様すぎる。
残ったメイドが誰かって? ……あのピンクの、ええと、はい。忍者みたいに退散する他のメイドさんたちと違って、一人だけ転んでその場にい残っちゃって「仕方ないわねぇ」ってことで、現在ぼくらは四人パーティだ。
四人でクレープを食べながら落とさないように中古ショップを巡ったりしつつ(ピンクのメイドさんは口元生クリームまみれにしてて何とも言えな感じだ)、やいとちゃんが家電量販店の玩具売り場で「DX太陽銃」のパーツをいくつか見繕って買ったり(本当に「ボクらの太陽」が流行ってるなあ……)、かと思えば百貨店で変な薬買ったりブランド物の衣装買ったり、割とやりたい放題というか、うん。女の子は強いなあ……。
エイリアさんも、チロルちゃんまでは行かないけど今の状態だと結構ギリギリだ。戦況は極めて危うい(?)。
で、そんな話をしている時に短めの行列を発見したやいとちゃん。「星占い、あの子最近はまってるみたいでね~」という話題から、ちょっと寄ってみようか的な話になったんだけど、やいとちゃんならみゆきお姉さんとも面識ありそうだし、そっちは行ったりしないのかな?
ちらっとその話を振ってみると……。
「いや、だってみゆきさんの占いって…………、当たるとか外れるとかじゃなくてヤバいじゃない? 知らない? カリスマネット占い師みゆみゆ」
「知らない」
「掲示板にありましたかね~?」
酔っぱらったエイリアさんに詳細聞いても「?」という反応なので、詳細はわからない。……いやだから、何でそんな無垢な幼児みたいな感じで「?」ってくてんって首傾げちゃうのさ。お年、お年。チロルちゃんより年上なのに、今日は本当色々アレな状態なエイリアさんだった。
でもまあ、やいとちゃん曰くとにかくその筋じゃ有名らしい。難点としては、占いの精度は対面の方がはるかに高くなるのに本人が会おうとしないこととか、ネット占いでも失せ物探しくらいだったらかなり高い的中率だとか。
後、僕にはストレートに色々言って来てたけど、一般の占いに関してはポエムみたいな感じで占い結果を伝えてくるとか。何か理由があるのかな? みゆきお姉さんも。あるいは単に趣味か……。
ポエム書いていても不思議じゃないタイプのお姉さんかどうかで言えば、書いていても不思議じゃないタイプの方に寄ってるとは思う、みゆきお姉さん。
そしてひたすら右手もちしてるPET上でにっこり微笑んだまま何も言ってこないエックスは何を考えているのやら……。
「だから止めなって叔母さん……」
「大丈夫、今日こそは! 今日こそはここの星占いと占いバトルで勝てるって今朝占い結果が出てたから! いけるいける、静夢はそこで見てなさいっ! 今日こそぎゃふんと言わせてやるんだからッ! この安藤ロメダ、乗りかかった船には全力で乗らせてもらうわ!」
「懲りないと言うか自分から勝負しかけてるというか、目と目が合ったら接敵不可避なんじゃないかなあ叔母さん……」
と、そんなタイミングで。前方2人分前のお客さんがわーわーと騒いでいるのが聞こえて来る。緑色のブラウス来たお姉……、おばさ、いや、えっと、まあ、妙齢の女性って言ったらいいのかな。おかっぱ風な髪型の人と、そんな彼女の隣で頭にバンダナを巻いた、後ろ髪が妙に跳ね上がった感じの子がいて────。
「あーもう、話こうなるとテコでも聞かないからな。どうしようか、
『
「例えがテキトーだなあ……。そうそうに燃え尽きそうな…………」
「『スターマン?』」
その子から聞こえてきた名前に、思わず自分のPETのエックスと顔を見合わせてしまう
【おまけ】
・ちょっとモチベが落ちそうだったので、ガンサイとエイリアのイメージイラスト描きました(キャライメージ固めて作りやすくする作戦)。なんとなく「こういうイメージ」くらいのノリで見て頂ければ幸いです。
ガンサイ・・・
エイリア・・・
【作者メモ】
・綾小路家メイド部隊:
原作ゲームで描写されていない……のは良いとしてやいとちゃんの御屋敷には使用人が働いている事をふまえ、アニメよりパワーダウンしてるけどおおむねあんな感じのスーパーメイドなノリのイメージ。
アニメ一期に出てきた鬼龍院桜子ォ! についても、やらかし度合いがちょっと抑えられたトラブルメーカー系メイドです。
・ネットナビフレームワーク:
フレームワークという言葉の使い方としてはこちらの方がリアルIT的な意味では近い感じです。その上で、以下、種別についてちょろちょろと。
IPCの
科学省オープンソースの
アルカディア(※本作オリ)の
・DX太陽銃:
ボクタイが完全メディアミックスされてる世界のイメージなので、そりゃデラックスおもちゃも販売される。ちゃんとゲーム中に出てくるパーツは一通り販売される予定のイメージ。
・安藤ロメダと静夢と……?
安藤ロメダはアニメ版(Stream)から、アステロイド持ちだったりしない以外は大体同じようなキャラのノリと、静夢の持ちナビ繋がりで。静夢君については、果たして……!