ロックマンエグゼ世界でエックス的なナビを持ってしまった 作:黒兎可
「んも~~~~~~! あなた達には大感謝よ大感謝♪ お陰でワタシのビデオマンもほら、んんんんんんこの通り!」
『そうだね! ヒデノ、いや、ナルシー! この通り作ってもらった両手のテープも高速モーションでモーメント回転さ! 今なら新技のチップも作れてしまいそうだね!』
「あー、まあはい。シェイプのアニメーションは複数箇所連動するようにしてるから、スムーズにはなってますけど……」
「それに一番気に入っているのは、収録ビデオ3時間分のフィルムをすべてビデオマンのテープに投影できるところよ! これワタシだけじゃなくてビデオマンも画像解析できるようになってるから、撮影ミスとかの点検もだいぶ楽になってるのよもう感謝感謝! しかもこんな少年少女がアレくらい凄いの作っちゃうなんて、もう感激ーッ! どんだけッ!
まだワタシも再現ドラマの映像だけとはいえちゃんと映像作家させてもらってるから、そのクオリティはしっかり拘らないといけないわよね!」
『でもナルシー、どっちかというとナルシーは現場とかでの独善的な性格を直した方がボクは良いと思――――』
「お黙りなさいビデオマン! さぁこの後お仕事よ!
あなた達も、よかったらあっちのネットバトルクイズに参加していらっしゃい♪ 今日は上機嫌だから、無理に出なさいとは言わないでおいてあげる!」
ルンルンスキップでテレビ局の廊下をスキップしていく、紫色の髪をした局の関係者さん。……ナルシー・ヒデと名乗っていたけど胸のネームプレートには「山下日出の助」とか書かれていて、なるほど本人のオカマさんキャラには合わないというのは納得させられた。だからそこをツッコミいれずに(エックスマンのチャットでの「凄い名前だね!」っていう煽りはスルーしつつ)いたのが功を奏したのか、ナルシーさんは最後まですこぶる機嫌が良かった。
僕とみゆきお姉さんは例の約束の日、ビーチストリートに遊びに来ていた。
ビーチストリートというとエグゼ3でのN-1グランプリ(ネットバトルグランプリ)に縁深く、僕もなんとなくは覚えている。テレビ局の先にある船着き場からジゴク島とかに行けたり……。いや、それは多分今回は関係ないはずだ。
お昼を食べる前に朝早々に来たので、まずテレビ局のイベントに顔を出して見ようと特別入場券を受付に見せたところ、すぐさまナルシーさんが飛んできたんだ。
予想通りだったというか、やっぱりあの依頼者はビデオマンとそのオペレーターさんだ。ビデオマンは、よく覚えてないけどアニメに出て来ていて、テレビ局関係でどうのこうのと話があったくらいは覚えている。
ただオペレーターさんについては完全に忘れていたので、今時コテッコテすぎるオカマキャラにすごいびっくりしちゃった。
でも何だろう、特にうざ絡みされることもなく、すぐに解放してもらったのはなんだか意外だ。
アニメだとナルシーさんのことは忘れてたけど「ピンク! 時代はピンク!」とか言って面倒くさいキャラで事件を起こしていたのだけは覚えていたので。
「ガンサイ君が彼の希望に最大限応えたから。彼とビデオマンの魂は、今子供の魂のように喜んで浮かれているの」
「まあそんな感じはしましたけど……、運が良かったってことですかね」
「ええ」
そんなことを話しながら、僕とみゆきお姉さんは観客スペースで「バトルチップクイズ!」の視聴者体験コーナー(全問正解の景品で「テンジョウウラ」がもらえるとか)の様子を見ていた。
人がそこそこ多くて、僕が迷子にならないように手を握ってくれるのはありがたい。ありがたいけど、時々そのまま手を引っ張って腕を組んだりされて恥ずかしかった。
なんだろう、ちょっと反抗期気味な弟がお姉ちゃんに世話を焼かれた時みたいな気恥ずかしさって言うか。間違っても「男」として扱われている気はしないのだけど、それはそうとして別な恥ずかしさがあった。
「男として扱って欲しいの?」
「僕、何も言ってないですよ!?」
「ふふ…………、冗談よ。そういうナマイキはせめて中学生になってから」
握ってるのと反対側、右手でこちらにVサインをしながら少しだけ微笑むみゆきお姉さん。あきらかに揶揄われてるし、ついでとばかりに手のつなぎ方が指を絡めたものにされたりして、色々と心臓に悪い。なんなら印象もミステリアスさより美少女さといったらいいのかな? が出てて、気恥ずかしさが倍増していた。
今日のみゆきお姉さんの恰好は、普段と大分印象が異なっていた。
帽子はそのままだけど服はワンピースタイプで、背中とか肩とか結構出てるところに白いアームカバー。丈は少しだけ短く、タイツとかも履いていない。髪型はおさげをやめていて、なんだか普段より明るく見える。
こう言ったら失礼かもしれないけど、女子高生がちょっと気合を入れた格好、みたいな感じだ。
なんでそんな恰好なんですか? と聞いたら、彼女は右手を下ろして少しだけ上を見る。何か考えてるのかな?
「一つはキャラ被り回避。二つ目はマイナーチェンジしても良いかと思って。三つ目は……、一応デートだから」
「いや違いますよね!? ナルシーさんからお礼の招待券があったから遊びに来たってことですよね!」
「一般的に、男女が日時を決めて外に出歩くことをデートというらしいもの。そこにお互いの魂がどうというのは関係ないわ」
そして明らかにくすくすと僕を見て笑っているので、今日のみゆきお姉さんは全力で僕をオモチャにするつもりらしい。
小学生の身体でそういう、彼女いわく生意気な話をするつもりはないけど、否が応でも意識してしまうのは精神側の問題か。……いや、元々大学生だから女子高生相手に意識するのもおかしいといえばおかしいので、これは身体に心が引っ張られてるってことにしておこう。
流石に周囲も僕たちを「そういう関係」だという目で見ているはずはないだろうし…………、生温かい、微笑ましいものを見るような目では見られてるっぽい。
居心地が悪いので「他の所行きましょうよ」と言ったのだけど、みゆきお姉さんは「もう少し待って」と言って微笑んだ。
「そろそろ面白いことが起こるようだから。……目立つのは苦手だから参加はしないけど、観ておいて損はないと思うわ?」
「面白い事って――――」
『さぁさぁそれでは本日は特別ゲスト! このクイズにご協力いただきましたオフィシャルネットバトラーから、若手でもベテランのお方!
エイリア・C・
えっ!? エイリアさん!!? 僕のびっくりした顔が面白いのか、隣でみゆきお姉さんはクスクスと楽しそうに笑っていた。
可愛い感じのアナウンサーさん(カエルっぽい被り物してるのに見覚え有るけど思い出せない……)に手を引かれて、ちょっとぎこちない笑みを浮かべながら登壇したエイリアさん。服装は普段とあんまり変わらないけど、今日はなんか半透明のサングラスみたいなのをかけていた。
『えー、ご、ご紹介にあずかりました、エイリアと申します。ネットバトルに限らず、えー、ウィルスバスティングにおいて、当然ですがバトルチップの知識というのは重要になってきます。皆さんも、えー、ふるって知識を――――――――』
彼女はステージで、お客さんが座ってる回答者席とか周囲のギャラリーを見渡して挨拶。
その途中で、僕と目が合って硬直したエイリアさん。
司会のお姉さん(ケロさんというらしい)が声をかけて、あらためて挨拶をした。
「フフ…………、どうだったかしら」
僕の横で「ドッキリ大成功!」みたいな空気を出してるみゆきお姉さん。なんでエイリアさんが出るって知ってたのか、そもそもエイリアさんのこと知ってるのかとか、色々小声で聞いてみたけれど。
「水晶を使わなくても……、それくらいは視えるもの」
そんなオカルト極まりないことしか返答されないのでお手上げだった。
というか本格的にこのお姉さん怖い…………。そんな僕の内心まで見透かしたように、くすくす笑って耳に息を吹きかけてきて変な声が出そうになった。
『さて、今回から登場したこの「
『どの種類のコードのチップともあわせられる!』
『正解、お見事!』
ぱちぱちと拍手する人たちに併せて僕も拍手を……、あのみゆきお姉さん、ちょっと手を離して……、えっそのまま叩けと? いやみゆきお姉さんは太もも叩いてるし……。
というかそうか、どうも「1」の時点ではバトルチップのコード(種類の違うバトルチップを読み込む際の共通規格みたいなもの)に、ワイルドカードが追加されるのか。その情報はありがたい、アスタランドでの購入にも幅ができるな。
『物理チップと電子チップにおいて、フォルダに投入できる同一チップの上限は! 一番さん!』
『10枚!』
『残念! あ、2番さんどうぞ!』
『5枚!』
『正解! お見事!』
『ええ、引っ掛け問題ですね。先日の科学省からの公的アップデートにより、PETの通知にもあったかと思いますが、バトルチップのフォルダで読み込める枚数の規約が変更になりました。今後のウィルスバスティングのデータ収集という観点でも、ご理解ください』
「あー、そうなんだ。ちょっとフォルダいじらないとな」
「…………よければ、使うかしら。私の電子フォルダ」
「えっ?」
どうやらゲームシステムが徐々に変わってきていて、段々とエグゼ1から2に話が進んでいるっぽい気配が感じられるクイズの内容とかだったけど、それを見てた僕にみゆきお姉さんがしれっと提案してきた。
「…………スカルマンはまだ使えないし、通常のフォルダを最新版にアップデートするまで暇になってしまったから、せっかくだし電子版のバトルチップの予備フォルダをいくつか買ってみたの。……最新版よ」
「あ、はい……」
すっとバトルチップらしきものを1枚取り出したみゆきお姉さん。絵柄には「フォルダ2」と恰好良いフォントで踊っている。なるほど、電子版のバトルチップデータってそうやって管理するんだ…………。あの1枚で、おそらくチップフォルダ1つ分ということになるんだろう。
ただ僕のPETの容量的に、新しい電子版チップを入れてもデスクトップで保存するしかないだろうから、そのうち父さんに言って新品のPETを買ってもらうかメモリを増設してもらうべきかな。
「……中身はスタンダードなものになっているから、今までのガンサイ君のフォルダに近いと思うわ。そこまで違和感もないと思う」
「あー、ありがとうございます? だけど、その、そんなにホイホイ簡単に渡しちゃって大丈夫なんですか?」
「……………、一応は必要経費、かしら。あるいは先行投資」
「先行投資……」
オカルトパワー的な何かで未来予知的な何かを散々披露してきたみゆきお姉さんの発言なので、もうなんというか色々恐ろしすぎる。
わざわざ渡して来るってことは今後必要になるってことかもしれないし、ここはありがたくいただいておこうかな。
ただそれはそうとして、やっぱり手渡した時に「フフ……」と怪しい笑みを浮かべるあたりは、いつものみゆきお姉さんで漠然とした不安が残った。
※ ※ ※
お昼よりちょっと前、テレビ局を一旦出てビーチ沿いの喫茶店でランチ(僕はスパゲッティ、みゆきお姉さんはフレンチトースト)したりデザートもらったり(僕はプリン、みゆきお姉さんはチーズケーキ。一切れ上げると言われてあーんされそうになって断ったりした)、まあそんなことをしていた。
ちなみにビーチストリートは千葉から横浜の範囲のいずれかっていう大雑把な立地になっているので、お店はだいぶおしゃれで小学生の僕は浮いていたように思う。
エックスマンからは相変わらずチャットで「やっぱりデートだね!」とか「ぼっちのくせにお姉さんとデートとか凄いよガンくん!」とか絶好調に煽り散らしていたので通知をミュートしようか迷ったりしたけど、あくまで平和な範疇だ。
とにかくお店を出て、またテレビ局に。今度はドラマ撮影とかのイベントにでも行こうかと話していたら、サングラスにマスクをつけた、なんとなーく見覚えのあるお姉さんがベンチに座って背中を預けて、肩で息をしていた。
「はぁ……、はぁ……、な、慣れません。まったく炎山君もこんな面倒押し付けるくらいなら、もっとまじめな仕事を――――」
「エイリアさん?」
「わっ! が、がが、ガンサイ君っ!?」
がばっ! とびっくりしたように起き上がると、エイリアさんは周囲を確認して「ちょ、ちょっと来てください!」と僕の手を掴んで引っ張った。
って、あの、僕、反対側はみゆきお姉さんににぎにぎされているんで、これ綱引きにならないかな……? 慌てすぎててエイリアさん、みゆきお姉さんのことが視界に入ってなかったみたいだし。
「…………」
そう思っていたけど、みゆきお姉さんは無表情のまま僕の後に続いていた。やっぱりこう、ビリヤードというかドミノ倒しというか、ピタゴラ装置みたいな感じで着々と何かが進行している状況は、何だろう。やっぱりみゆきお姉さん仕組んでないかな? オカルトパワーで色々と未来予知したりとかして。
ステージのバックヤードまで連れていかれた僕たち。サングラスとマスクを外すと、エイリアさんは「はぁ~~~~~」と深く息を吐いた。
「えっと、えー、対面ではお久しぶりですガンサイ君。まさかこんな所で会うとは……」
「お久しぶりです。まー、色々ありまして」
「色々とは? ……あっ! ひょ、ひょっとしてデートですか!?」
何ですかねその、女子高生がきゃっきゃしてるみたいな反応は……。
一応エイリアさん23歳だよね、そんな目をきらっきらさせて、ぴょんぴょんその場で飛び跳ねるみたいな感じと言うか。
でもまあ、僕とみゆきお姉さんとを見比べてテンション上げてるところ悪いんですけど。
「「違います」」
「あれ?」
僕とみゆきお姉さん同時の否定に、笑顔のままきょとんとするエイリアさん。
やっぱりちょっとポンコツ臭が漂ってる…………。研究とかお仕事は出来るのかもしれないけど、接客とか電話対応とかは苦手なタイプなのかな? って偏見だけど思ってしまった。
だとすると、そんなエイリアさんが、あんな風にテレビ番組みたいなのに登壇するって変というか……。
「…………ガンサイ君。一応紹介してもらえるかしら」
「あっ、はい。こちら、みゆきお姉さん。市民ネットバトラーで、ちょっとした事件で知り合いました」
「誤魔化さなくて大丈夫ですよ。貴女も、お久しぶりですね」
「……ええ。スカルマンがゼロウィルスに感染した事件で、色々と聞きにいらっしゃられましたもの」
「では、私の方は自分から改めて。エイリア・C・防守です。オフィシャルネットバトラーで、現在はゼロウィルス関係の事件を追っています」
それで、むしろなぜエイリアさんがテレビ局に? と。質問をすると、彼女は「これは罠なのです……」と頭を抱えた。
「もともとは炎山君が今日の講演に出演する予定だったんですけど……、『そんなものトレーニングの邪魔ですから、失態が重なってる先輩が出てくださいよ。役目でしょ』とか凄い怖い顔で脅してる勢いで文句を言ってくるんですよ!? あれ完全にパワハラですよパワハラ! 小学生なのになんであんな怖いんですかッ!」
「そ、そんなこと言われましても……」
「大体私、全然そういうの得意じゃないのに、あえてそういう仕事を私にもってきたんですから炎山君も……、少しは先輩を労わって欲しいところです……」
仕方ないから予備ナビも持ってきちゃいましたし、と。そんな話題の流れで、一般のナビですか? と確認した僕だったけれど。
「いいぇ、自作のナビです。マーティにとっては妹にあたる娘ですが……、本来ならゼロウィルス解析関係のプログラム君たちの指揮をしている
そう言って取り出したPETの画面に映ったネットナビに、エックスマンやみゆきお姉さんを置いてきぼりにしてやっぱり僕は一人で勝手にびっくりしていた。
『――――
シエルちゃん!? と。名前からしてロックマンゼロシリーズのシエルちゃんだし、ビジュアルもゼクスシリーズのガーディアン初代司令官な恰好のシエルちゃんをエグゼナイズしたようなデザインをしていて、なんというか本当、変な意味で心臓に悪かった。
なんだろう、ゼロウィルスにアイリスとシエル…………。何かの因縁が集まりつつあるような気がする。
「………………フフ」
そんな僕の背後で、みゆきお姉さんが怪しく笑った声が聞こえた。
※ビーチストリートは地理情報がちょっとわからなかったので本作ではこう対応します
※ビデオマンはアンケート関係なく出ているので、そこはあしからずです
トランスミッション時点で登場するボスナビを何作目から出しましょうか(2体予定)
-
1
-
2
-
3
-
4
-
5
-
6