今回発動したスキルの種類がわかるように文字色を分けてみました。
(以下 2023/05/25修正&追記)
ウマ娘における速度スキルがオレンジ、緑スキルが緑、回復スキルが青
となっています。
ダークモードでも似たように見えるよう若干くすんだ色にしてあります。
カラーコードは以下の通りです
オレンジ:#dd8000
緑:#00aa00
青:#2121ff
(以上 2023/05/25修正&追記)
ウイニングポスト10での特性はほぼすべてが「○○のレースの時力を発揮する」という表記であり、スタート直後に発動した表記が出るため、それらはウマ娘における緑スキルに分類しております。
ウイニングポストの特性でもスタート系、○○ターボ、固有特性系は表記が違うため、その表記にあった色に変えています。(多分ほとんど速度スキルになると思います)
※2023/06/16 修正
ウイニングポスト10の特性〈○○ギア〉の説明が
「○○mのレースの序盤から道中で、速度を上げることがある」
という表記であったため、該当の特性を緑スキル枠から黄色スキル枠に変更
私がトレセン学園生になってから3年が過ぎ、私は高等部となった。
トレセン学園の高等部は専門学校に近い制度を設けており、普通科・レース科・トレーナー科などコースを選んで進学する事になる。
当然ウマ娘の殆どはレース科なので実質レース科学校みたいな物だが、デビューして勝ち数の少ない者や、そもそもデビューできそうにないと半分諦めた者など、少数であるがトゥインクルシリーズへの出走を望みつつもレースで大成できなさそうだ、と諦めたものなどは普通科に進んだりもする。
入学時は500人近くいた同学年だったが、高等部に入る頃にはデビューして心折れたものや、そもそもデビューを諦めたものなど、転校や退学を選んだものも少なくない。
結局高等部に進学した同学年生はだいたい300人ほどになるか。
私の周りでも、私含め本格化が安定してきたものも増えてきており、今後年が経てば経つほど加速度的に、少なくなっていくのかもしれない。
しかし消えるものあらば、新しく現れる者もある。
実家の都合か中等部3年の夏という半端な時期に、中央へ転校してきたウマ娘もいる*1。
タイキシャトルとシーキングザパールが、去年日本へやってきた。
留学生と言うべきであるが、本人も日本でのデビューとなるのを認識してのことのようだ。
タイキシャトル。ザ・アメリカウマ娘と言わんばかりの恵体と、スキンシップ過剰な陽気なアメリカン娘である。
シーキングザパール。こちらはハデな化粧と赤緑のサングラスを好み、やたらと世界の広さや可能性を全面に押し出すお姉さんだ。外国生まれ故か、日本ウマ娘の私たちからするとかなり顔立ちが妙齢の女性に見える。
そんな2人が鳴り物入りで日本にやってきた、マル外のウマ娘となる。
タイキシャトルは留学早々リギルにスカウトされ、シーキングザパールは紆余曲折あったものの、自分と目標をともにするパートナーを見つけたようだ。
私と特に仲の良いマチカネフクキタル、メジロドーベル、メジロブライトもそれぞれ担当を見つけており、私の同学年かつ、私がボクの頃に走った記憶のあるウマ娘はこれで粗方揃ったと言える。
ボクの頃と同じように、共に走り競い合う日が楽しみである。
⏰
肝心の私の本格化に伴う成長はどんな調子かと言うと。
「身長約164cm*2、1桁単位での差では前月比±0。体重はここ3ヵ月変わりなし。完全に身体の成長は安定したわね」
ハルカトレーナー*3と共に今月の身体測定を行ったところ、だいたいの成長は終わったらしい。
流石にここまで伸びると、入学時に持ち込んだ服などはキツキツになってしまったため、実家に帰った際両親に泣きついて一式買い換えた*4。
「これなら、あと半年くらいで走法の修正とかもできそうだし、今年デビューも視野にはいるけど、どうする?」
ハルカトレーナーの質問に私は一も二もなく答える。
「今年デビューします。友達も今年デビュー予定ですし、それにもう今から走りたくてウズウズしますから」
私の答えと、自然に浮かんだ笑みにハルカトレーナーは強く頷く。
「高等部にもなるし、キリも良いものね。わかったわ、今年の6月最初のメイクデビュー目指して頑張りましょう!」
「はい!!」
そんなやり取りをしたのが今年の1月の話。
──そして6月。
私は遂に、トゥインクルシリーズの舞台へ、私が求めて止まなかったレースの世界へ、足を踏み入れる。
⏰
『さぁ! 今年もやってきましたこの季節が! 数多の優駿も初めはここからだった! メイクデビューの季節です!
この東京レース場にて、数々のウマ娘の中から、今年初のメイクデビューに選ばれた未来のスターたちを紹介しましょう!』
パドックに響く実況の通り、土曜の昼、東京レース場に私は居た。
今までのように観戦席にいる観客としてではなく、出走者としてパドックにいる。
『まずはこの娘! 本日の1枠1番にして注目の的! チームスピカが送り出す新進気鋭のウマ娘、サイレンススズカ!!』
そう、私の枠番は1枠1番。絶好の枠番だ。
『素晴らしい仕上がりと言って過言ではないでしょう。今日のメイクデビューは、彼女を中心に進むかもしれませんね』
『1枠1番サイレンススズカ、文句なしの一番人気です!』
解説の人が当たり障りのないコメントをする。メイクデビュー時のウマ娘なんて、事前情報が無いのだから仕方ないだろう。
1番人気になるほど応援してくれている数少ないウマ娘ファン*5に、恥ずかしくならないようなレースをしよう。
恙なく無難にパドックでのアピールを終え、私はパドックを去り地下バ道へと移動する。
その途中には、ハルカトレーナーが待っていた。
「トレーナー」
私はハルカトレーナーの下へと駆け足で近寄る。
「さっきも控え室で言ったけど、スパートはかけないように」
「はい、わかってます」
控え室でも言われ、2人で決めたハルカトレーナーと私の共通方針。
勝てる相手に全力は出さない。
対戦相手を嘗めているようだが、長く怪我をせずに現役時代を過ごすには、無闇に全力を出すことは悪手といえる。
そして、対戦相手の娘達には申し訳ないが、ハルカトレーナーと沖野トレーナー、そして私の見立てでは、全力を出すほど私に追いすがれるような娘は居ない。
勿論最初のメイクデビューに合わせて来た娘達だ。早熟な娘も居るだろうが、皆メイクデビューに相応しい仕上がりと鍛え方である。
ただ、まだ私には届かない。
私には、明確に他の娘より3年以上長く、基礎トレーニングを行った地力がある。そして、その3年分の差を埋めるには、まだ時間が足りていないように見える。
だから
「それから」
バ道を進もうとした私を、ハルカトレーナーが呼び止める。まだ伝え忘れた作戦があっただろうかと、疑問に思いながら振り返る私に、ハルカトレーナーは優しい笑顔を浮かべながら告げる。
「やっときたメイクデビュー、全力を出さなければ好きに走って良いから。楽しんできてね」
「はい!!」
ハルカトレーナーの言葉に、私は大きな声で返事をし、意気揚々とコースへと躍り出た。
⏰
『ついに開始されますメイクデビュー。ここ、東京レース場の本日の天気は晴れ、バ場状態は良と発表されています。続々と未来のスターウマ娘達が入場してきました』
私はコースへと立ち入る。晴れ渡る空、仄かに香る芝の香りが私を迎える。
靴越しに芝を踏む感触は、トレセン学園と同じはずなのにどこか違った感触を覚える。
(あぁ、ここだ。この感触だ)
晴れ渡る空、香る芝の香り、共に先頭を競う同朋達。そして、少数だが私たちを応援する人間の声。
ここだ。
ボクの時は離れてから20年。
私になってから待ち焦がれた15年。
『さぁ! ゲートインが始まります。まずは1枠1番サイレンススズカ』
ゲートインの合図があったためゲートの前に立つ。
トレセン学園にあるものと同じはずなのに、何故だろうかどこか違った雰囲気を感じる。
『おっと、サイレンススズカゲート前で立ち止まりました』
『緊張ですかね、メイクデビューですしよくある事ですよ』
逸る心を落ち着かせるため、深呼吸をしゲートに入る。
『深呼吸を1回行うとスルリとゲートに入りました!』
『やはり緊張していたのでしょうね。その緊張の中どれだけパフォーマンスを発揮できるかが、勝敗を分けるかもしれませんよ』
どこか窮屈さと、孤独感を覚えるゲートの中。
『次々とウマ娘達がゲートインしていきます!』
『今年最初のメイクデビューにしてはスムーズですね。この世代は期待できるかもしれません』
早くこの場から抜け出したいと思う本能と、早く駆け出したい闘争心を抑えるために、深呼吸と手の開閉を繰り返す。
(さぁ、来い)
G1じゃないからファンファーレなどない。
それでも、ウマ娘がゲートインする毎に出走への期待が高まっていく。
観客の期待と、そしてゲートに入っているウマ娘達の気合いが高まるのを肌で感じる。
その期待と共に高揚感を高めていく。
高まる高揚感と共に
『全てのウマ娘が収まりました! 東京レース場芝1600m、メイクデビュー』
集中力を高め、神経を研ぎ澄まし──。
『今、スタートしました!』
──解き放つ。
〈ロケットスタート〉
〈高速逃げ〉
〈坂越え〉
〈マイルギア〉
『左回り○』
『地固め』
1歩目から爆発的加速を得る。
今日は特に調子がいい。
『出遅れは無かったはずだがサイレンススズカだけがポンと抜け出した!! なんというスタートのキレだ!!』
1番の利点を生かし、ロス無く経済コースを取る。
3歩目にして、番手のウマ娘を4バ身は放したか。しかし
『サイレンススズカ! まだ加速する! まだ放す!』
『これは掛かってしまっているのでしょうか、息を入れられると良いのですが』
掛かってなどいない。巡航速度*6に乗っただけだ。
ここからは加速はしない。トレーナーの作戦だから。
でも──。
『サイレンススズカ! 10バ身は引き離した状態でコーナーに入ります! この速度は曲がりきれるのか!?』
──速度は落とさない。
『コーナー巧者』
『コーナー回復○』
まだ流石にサンデーさんほどのコーナリング技術はない。あれはもはや一種の固有能力に近い。
でもサンデーさんから教わった2年は、トレーナーが付きっきりで仕上げてくれたこの半年は、私に嘘を吐かない。
2人とのこの2年は、私の速度を十分に生かすコーナリング技術を授けてくれた。
だから私はコーナーでは速度が落ちない。
巡航速度なら、ロス無く曲がりきれる程度にはコーナリング技術を磨いたから。
『サイレンススズカそのままコーナーを綺麗に曲がる!!』
『なんて美しいコーナリングでしょう、ジュニア級とは思えません』
4角に入る。
気は抜かずに
4角を抜ければそこは最終直線。東京レース場の最終直線は525mであり、その間に上り坂があるタフネスを要求される形状になっている。
だが巡航速度を維持できたし、無理なコーナリングもしていない今の私はスタミナは十分。
4角を抜けるときに後続を目で確認。
(大丈夫。まだ10バ身以上あいている)
ハルカトレーナーから指示された、スパートをかけて良い彼我の距離は5バ身。番手の娘ですら、それ以上は離れているのを確認した。
このまま巡航速度で押し切る。
『先頭のサイレンススズカ最終直線に入ってもその脚色は衰えない!! これは決まったか!?』
最終直線の上り坂に差し掛かるが、私は坂は生まれつき得意だし、この半年、スタミナとパワーをつけるためにみっちり坂路を熟した。
さすがに坂路の鬼と謳われたミホノブルボンさんほどではないけど、デビュー直後のウマ娘にしては坂路を熟した自負がある。
『東京レース場の長い坂もなんのその! スルスルと上っていく!!』
『これは完全に決まりましたね。なんというウマ娘がデビューしてしまったのでしょう』
坂を上り切れば、ゴール板はあと1ハロンとちょっと。もう後ろは見ない。
見なくてもわかる。私の耳で聞こえる範囲には、誰の足音も無い。
『後ろからはなんにも来ない! 完全に千切った!!』
ただ一人、私だけの世界。誰も居ない、すべての人の視線と熱狂を独り占めするこの感覚。先頭で風を切るこの感触。
私のゴールを、熱狂的な歓声とともに迎え入れてくれるこの光景。
(気持ちいい――)
これが、
私は、その気持ち良さに包まれたまま、ゴール板を横切った。
『これは圧勝! まさに大差! 1番サイレンススズカ! 最初から最後まで、完全な一人旅でした!!』
『終わってみれば圧倒的な強さによる圧勝でした。これは物凄いウマ娘がデビューしてしまいましたよ』
『タイムが出ました! 1着サイレンススズカ勝ち時計は1分33秒6! 着差は文句なしの大差です!』
『目測ですが、このバ身差はマルゼンスキーの朝日杯にも匹敵するかもしれませんよ』
『これは将来が楽しみなウマ娘です!』
私のメイクデビューは、華々しいスタートを切った。
参考タイム
サイレンススズカ新馬戦(1:35.2(1.1))
ウイニングポスト10での箱庭内のローテなどを参考にしていますが、実際に走っている描写や走った時の時計などは、現実の時計などを参考に書いてます(いちいちPS5を起動するのが面倒なため)。
今後整合性とるのが難しくなったら、勝ち時計とかは書かなくなるかもしれません。
雰囲気で読んでください。
(2023/05/25追記)
色の見え方は個人差、閲覧端末による環境差が多いため、これ以上の修正はしません。ご容赦ください