「私はサイレンススズカだから」   作:花水姫

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 大変遅くなり申し訳ございません。
 今回短いですが生存報告も兼ねて更新いたします。書き溜めはないです……


第26話「ウマ娘で7月、それは──」

 

 ダービーに無事勝利し、KG6&QESへ向けてトレーニングを再開してしばらくした頃、ニューマーケットのトレセンは全体的にどこか浮ついた空気になっていた。

 この現象は日本でも味わったが、所謂夏休み前の浮ついたアレである。

 

 ニューマーケットトレセンでも、日本のトレセンと同じように夏休みは7月から9月の約2か月となっている。

 欧州と言う枠組みで見れば6月はまだまだG1が開催されているものの、イギリス内でだけで見るとダービーを終えると有名で注目度の高いレースはプリンスオブウェールズSくらいとなる*1だろうか。そうなるとあまり関係のない学生達は夏休みへの期待が上回ってしまうのは仕方がないことだろう。

 

 また、イギリスでは学期が9月から開始されることもあり6月で最終学期が終わるため、日本とは違い夏休みの宿題という物が無い。そうである以上、日本よりも体感長く気楽な休暇となるであろうことは疑いようもない。

 そのためイギリスでの夏休みというものは、普通の学生は気ままに休暇を謳歌し、トレセン生は学校の瑣事に追われずトレーニングのみに全力集中できる期間となっている。

 

 

 そんな中で私たち―—サイレンススズカ陣営も、夏休み中のトレーニングプランへと意識が強く向いており、本日は夏休みの過ごし方に関するミーティングとなっていた。

 

「さて、それでは夏休み中の我々、サイレンススズカ陣営の予定だけれど、少なくともKG6&QESまでは日本へ帰らず、トレーニングに専念する。ということで問題はないかしら」

 

 ハルカさんが言葉の最後、私を見ながらに確認するように言うが、私個人としてもハルカさんとしてもこの話の相談はすでに済んでいる。

 

「はい。初のシニア混合、万全を期したいと思ってます」

「ええ、トレセンが夏休みに入る7月……その最終週にはKG6&QESが開催されるわ。残念だけど、日本に帰ってる暇は無いわ」

 

 ハルカさんの言葉通り、イギリスは日本より気温が低いせいか日本ではレース休業期間に入る夏でも盛んにG1が行われている。その中でも目玉は、やはり芝中距離路線の頂点を決めるレースの一つと言われるKG6&QESとなるだろう。そのレースを目指す以上、レースに携わる全員に言える事だが、夏休みは休みではなくより長時間、より強度なトレーニングを行うことになる。学業が休みなだけで、身体自体を休めている暇は無いだろう。

 

「そんな事で今回私たちは日本に帰らないのだけど──その代わりに沖野トレーナーがこっちに来てくれることになりました」

 

 ハルカさんが勿体ぶるように一拍ためた後の言葉に、私は驚き目を丸く見開いてしまう。

 

「えっ、でも沖野トレーナーは忙しいんじゃ……?」

 

 沖野トレーナーはチームスピカのメイントレーナーであり、その業務内容は多忙である。本来であればイマココで会議に参加しているサンデーサイレンスさんや、ダンスパートナー先輩のドリームシリーズに向けてのトレーニングもあるはずだが、それを抜いてもダンスインザダーク先輩のドリームシリーズへ向けてのトレーニングに、何人か入部したと聞いた新人のトレーニングもこなさなければならない。また、トレーニングの監修以外にも、細々とした事務作業があるはずだ。リギルではサブトレーナーを何人も雇うことで、事務作業やトレーニング監修を分割しているらしいが、少数精鋭のスピカはトレーナーすらも少数精鋭であり、ハルカさんと沖野トレーナーしか所属トレーナーが居ない。

 

「えぇ、ただ今年はダンスパートナーとサンデーがこちらに居る上に、ダンスインザダークもサマー*2への参加を見送ると言っているようで、新入生とスズカの顔合わせも兼ねて、こっちで合宿をしようと思ったそうよ」

「なるほど」

「あー、そうだね。スズカちゃんは新人ちゃん達と会ってないし、ちょうどいいかもね」

 

 話を聞いていたダンスパートナー先輩が腕を組んだままウンウンと頷く。

 

「先輩は新入生に会ったことあるんですよね?」

 

 私が先輩に訊ねると、先輩は「まぁねー」と一言置いて新入生について話してくれた。

 

「新入生はまぁ、例年通り何人か居たんだけど、残ったのは2人だね。2人とも同じ学年で、しかも同室みたいでねー。すごく仲が良いんだよ~」

「へぇ。私仲良くできるでしょうか……」

「全然問題ないと思うよ? 2人とも良い娘だし、結構グイグイ来ると思いきや距離感は分かってるって言うか。そんな感じの子達だから」

 

 あまり他人と仲良くなることが得意ではない*3私は、新入生と不仲にならないか不安になるが、ダンスパートナー先輩曰く問題ないらしい。

 

「それなら良かったです。私も遂に先輩ですか……」

「スズカちゃんが入ってから3年弱新人来なかったからね~、初めての後輩だね」

「はい。……ちょっと楽しみです」

 

 

 

 わざわざ沖野トレーナーが連れて来てくれるという、チームスピカの新入生。二人いると言う彼女らとの邂逅が、私は少し楽しみになっていた。

 

 

 夏休みまであと半月、KG6&QESまであと1月半。イギリスでの夏が、合宿が本格的に始まる―—。

 

 

*1
ウイニングポスト10での高額賞金レースを抜き出した。プリンスオブウェールズSは賞金額8000、他に6月中で言うと同額以上なのはプラチナジュビリーSくらい

*2
ドリームシリーズサマートロフィーのこと

*3
そもそもあまり他人に興味がない





 どうかモチベーションに関わりますので、感想・ここすき・評価など、よろしくお願いします……。
 最新話じゃなくてもいいので……。
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