「私はサイレンススズカだから」   作:花水姫

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選抜レースの終わりまで書きたくて詰め込んだらとても長くなってしまいました。
それと今回特殊タグを用いてます


第4話「待ちに待った選抜レース開催」

 

 選抜レースの申し込みを終えてから、選抜レースが楽しみになって、上がりすぎた気合い乗りを必死に下げるように、走ったり筋トレしたりの日々をこなしていれば、そろそろ6月も終盤、7月に入ろうかという時期になった。

 

 6月末といえば、世間的にはグランプリである宝塚記念の話題が一番だろう。直前まで完全に出走表が確定とは言わずとも、人気投票の結果はすでに公開されており誰が勝つかどうかの議論は毎年尽きることは無い。

 特に今年は距離適性から天皇賞を回避したものの、大阪杯を難なく勝利した現役最強と名高いダンスパートナー先輩と、少々落ち目と言われつつも、シンボリルドルフ以来の無敗でのクラシック3冠を達成したナリタブライアンがついに激突するのである。*1

 無敗の3冠同士の対決とあって、世間の盛り上がりもひとしおだろう。

 

 そんな宝塚記念は、トレセン学園生もキャイキャイ盛り上がっているわけだが、未デビューのウマ娘にとってはより大事な行事が迫っている。

 

 今年の選抜レース一回目である。

 だいたい7月上旬に開催されるため、それに向けて気合いが入っているウマ娘も多い。

 更に今回は、宝塚記念の翌日に確定した詳細な日程と出走表が公開されるらしく、トレセン学園全体が宝塚記念に選抜レースにと盛り上がっている。

 

 同室の先輩が出走バの中でも注目株ともなれば、私にとっても宝塚記念は気になる行事になるわけだが、そのダンスパートナー先輩から直接気にしないで自分のことに集中するように言われているため、宝塚記念に関しては当日テレビで見る程度になるだろう。*2

 

 ということで、今日も今日とて選抜レースに向け、トレーニングの仕上げをやっていこう。

 

 

 ⏰

 

 

 ⏰

 

 

 というわけで7月に入ってから数日が経ち、選抜レースの開催日となった。

 すでに短距離や長距離といった参加者が少なめ*3の選抜レースは終わっている。

 短距離と言えば、ボクの頃に何度か一緒に走った馬のウマ娘が見当たらないのだが、彼──彼女? はどうしたのだろうか。あれだけの強さなのだから、入学当初から話題になっていると思っていたのだが。*4

 

 閑話休題。

 

 さて、待ちに待った私の選抜レースである。ダンスパートナー先輩の言う通り、マイルは参加者が多いらしく、私はマイルの14レース目となっている。

 ガンガン走るとはいえ20を超えるレースがマイルだけで予定されており、さすがにマイルは日程が2日に分けられて実施されることとなった。

 私が出走する14レース目は1日目の最終レースである。そのため私は今、グラウンドにて現在走っているウマ娘たちを見ながら、紐のように長いグミを食べつつ*5出走の時を待っていた。

 

『続きまして、第12レースが開始されます。第13レースに出走予定の生徒は、至急速やかに所定の場所まで集合してください』

 

 現在の11レースが終わるとそのようなアナウンスがかかる。私は14レースなので、次のレースが終わったら所定の場所へ行かなくてはいけない。

 

 

「あ、いたいた~。スズカちゃ~ん!」

 

 若干の緊張をほぐすために軽く深呼吸をしていると、後ろから声がかけられる。

 

「あ、ダンスパートナー先輩!」

 

 声に従い振り向くと、ダンスパートナー先輩が男の人の手を引きながら、走り寄って来ていた。

 

「いや~、発走までに間に合ってよかったよかった。トレーナーの悪い癖がでちゃってさぁ、危うくスズカちゃんのレースに間に合わない所だったよ」

「痛ってぇ!!!」

 

 ダンスパートナー先輩は、そう言って笑いながら引きずって走ってきた男性の尻を蹴り上げる。

 かなり力が強そうな感じで蹴っていたが、男性のほうは大丈夫だろうか。骨盤とか砕けてないかな……。

 

「ほらほら、トレーナーしっかりして! 私のお気に入りの後輩なんだからちゃんと挨拶する!」

「いや、お前な……ウマ娘の速度で走らされた上に、ケツ蹴り上げられてしっかりしろはないだろ……」

 

 ダンスパートナー先輩に蹴り上げられた尻をさすりながら、小声で自分の相棒に文句を言う男性は、側頭部に剃り込みが入った、ボブ程度の長さの髪を後ろで纏めており、その服装は明るい黄色のシャツに黒いべストとスラックスという、年頃の乙女にとってはかなり近づきがたい風貌の男性であった。

 

「と、変なところ見せて悪かったな。俺は沖野。ダンスパートナーのトレーナーで、チームスピカを率いているチームトレーナーだ」

 

 沖野と名乗ったトレーナーはよろしく頼むと言いながら、手を差し出してきたため、その手を快く握り握手を交わすと少しばかり話し込む。

 

「サイレンススズカです。ダンスパートナー先輩にはお世話になってます」

「おう、ダンスパートナーから話はちょこちょこ聞いてるぜ、新入生代表」

「あ、やっぱり新入生代表って特別なんですか?」

「お前そりゃな。かのシンボリルドルフも、ナリタブライアンも新入生代表をつとめたくらいだ。トレセン学園の新入生代表といえば、世間様からは次の三冠候補まで言われてるくらいだぜ」

「なるほど」

「まぁそんな事より、俺はダンスパートナーがどうしても直接見ろってしつこかったから、見に来たところはあるがな」

 

 沖野トレーナーのその言葉に、どういう事かと尋ねると沖野トレーナーはチームトレーナーの事情について簡潔に話してくれた。

 

 話を纏めると、チームスピカやチームリギルのような大きなチームになると各種手続きに始まる書類業務やトレーニングの指示が忙しく、よほど目をかけているウマ娘が出走するとかではない限り選抜レースには来ないらしい。

 現に選抜レースが終わってしばらくすると、スピカやリギルなど複数の大チームが纏まって入団テストなるものを開催するらしく、そちらで見る事がほとんどらしい。

 一応サブトレーナーには選抜レースを見せて、ウマ娘に対する観察力を鍛えさせたり、有力そうなウマ娘をピックアップさせるといった事はするらしいが、基本的には自身のチーム主催の入団テストが主な勧誘場所になるそうだ。

 ただ今回は、ダンスパートナー先輩がわざわざ激推ししてくれたらしく、サブトレーナーに仕事をまかせてわざわざ私の選抜レースだけ見に来てくれたらしい。

 

「お忙しそうなのに申し訳ありません」

「いやいや、良いってことよ。今のスピカを代表するウマ娘直接の推薦だからな。無下にはできないって」

 

『続きまして、第13レースが開始されます。第14レースに出走予定の生徒は、速やかに所定の場所まで集合してください』

 

 沖野トレーナーと話していたら、いつの間にか12レースが終わっていたらしく、アナウンスが次のレースの開始を告げていた。

 

「っと、たしか14レースだったよな」

「はい」

「良い走りを見せてくれることを期待してるぜ」

「スズカちゃん! がんばってね!」

 

 アナウンスに従い待機場所に向かわなければならないため、沖野トレーナーも話をきり、ダンスパートナー先輩と共に私を応援してくれる。

 

「はい。ダンスパートナー先輩の分まで、頑張ります」

 

 私が胸の前で拳を握り、強い意志を込めてそういうと、ダンスパートナー先輩は驚いた表情を一瞬みせるが、すぐさま優しい、どこか嬉しそうな表情で笑いかける。

 

 

 

「うん、ありがとうスズカちゃん」

 

 そんなダンスパートナー先輩の笑顔と言葉を背に、私は選抜レースへと赴く。

 

 

 *

 

 

「優しい娘じゃないか」

 

 隣に立つトレーナーが私にそう語りかけてくる。そういうトレーナーの口調も、少しいつもより優しさを感じられる気がした。

 

「うん、すごい良い娘だよ」

 

 去っていくスズカちゃんの背を見つめながら、私は胸がキュッとするような、でも温かいようなそんな気持ちを逃したくなくて、ジャージの胸の部分を強く握りしめる。

 

 ウマ娘一倍トレーニングに詳しくて、ウマ娘一倍負けず嫌いで、ウマ娘一倍優しい娘。

 

 あれでまだ小学生を卒業したばかりの新入生とは思えないくらい、彼女は、サイレンススズカは大人びていた。

 走り去って小さくなる背中は、その年齢相応の幼い体躯とは裏腹にとても大きく見えた。

 

 まるで、沢山の思いを背負う意味を知っている、レジェンドウマ娘達みたいに、とても、大きく。

 

「がんばれ、スズカちゃん」

 

 私は、なんとも言えない万感の思いを込めて、集合場所で他のウマ娘に紛れて見えなくなってしまった、小さくて大きいウマ娘にエールを送った。

 

 

 *

 

 ⏰

 

 私は集合場所で身体を温めながら、精神を研ぎ澄ましていた。

 私が集合してしばらくしたら前のレースが始まった。その後点呼が終了し、今は若干の自由時間だ。

 

 自由時間と言っても、ウマ娘のマイル戦の平均タイムは1分35秒ほど。デビュー前のウマ娘達のレースだということを加味しても2分はかからないだろう。

 軽く周りのウマ娘に意識を向けると、ほとんどのウマ娘が私と同じように、身体が冷めないように軽くストレッチを行ったり、精神集中するためのルーティンだろう動作を行っていたりする。

 

 今回のレースは案の定、私以外は全員年上のウマ娘で構成されている。*6

 今回は私がどれだけ年上に追いつけるのか、というのが見物客の間での共通認識だろう。

 

 だが私が見たところ、今回の出走するウマ娘には恐怖を感じない。恐怖と言うか、強大な物を見た時のゾクゾク感を感じない。()()()()()()()()

 

 

 その一人、ジャージのワンポイントから判断するに多分中等部であろう彼女は、スラリとした長身に程よい筋肉がついた素晴らしいバ体をしている。

 点呼の時に聞いた名は、アイズポイント。

 

 うろ覚えだが覚えている。

 

 

 アイズの名がついた馬は、()()()()()()()()()だ。

 

 

 名前自体は覚えていない。聞き覚えは無い。でも今は何となくわかる。

 ボクが現役当時、アイズの名を冠した馬と競わなかったのは、きっとボクが負けないようにおじさんが配慮したからだ。

 

 だからボクはアイズの名のついた馬と走った記憶が無いんだ。万が一にもボクが負けないように。

 

 アイズポイントがボクの頃と同じ時代の馬なのかは、残念ながら私にはわからない。

 でも、あの人からは恐怖を感じる。背筋がゾクゾクとする寒気を感じる。

 

 

(私は、多分負ける──)

 

 

 なんとなくそんな気がする。

 でも不思議と今は悔しくはない。

 

 自然と、意図せず、私の口角が吊り上がっていく。

 私より年上で、もしかしたら本格化も始まっているのかもしれない。スタイルも良く足が長い。

 本格化が始まっておらず、低身長気味な私とは違う。きっと気持ちよく長いストライドで走るのだろう。

 

 でも、ワクワクする。

 

 背筋を駆けのぼる悪寒にも似た楽しさが、ゾクゾクとする楽しさが私の胸中を満たす。

 

 ウマ娘としての生を受けてから、初めて明確に実力が上であろう相手と同じゲートを潜るのだ。これが、楽しくないわけがない。

 

 

『ゲートの準備が整いました。それでは第14レースが開始します』

 

 アナウンスに従い、ゲート前へ行く。

 

 私の枠番は2枠3番。最内ではないが、かなりの内枠で悪くはない。

 そして、隣の2枠4番が()()()()()()()。運命のいたずらか、三女神の導きか。それとも、これがウマソウルの縁だろうか。

 

 

『それでは本日の選抜レース最終レースです。皆さんもお疲れかもしれませんが、ウマ娘の雄姿を目に焼き付けましょう! ゲートインが始まります』

 

 実況役のウマ娘*7が、疲れを隠せないものの元気にゲートインを告げる。

 

 

 ゲートインには順番がある。1枠1番から奇数番が順番に入り、16人立ての場合は8枠17番が入ったら次は1枠2番から偶数番が順番に入っていく。

 私は3番なので2番目にゲートに入って待たなければならない。

 

『2枠3番、今年の新入生代表サイレンススズカ。何事もなくゲートに入ります!』

 

 ボクの頃の記憶もあるおかげか、私自身は得意とは言わないが、ゲートインの時間程度ならゲートに押し込められても我慢できる。

 一応普段の授業で受けるゲート試験を突破したウマ娘だけが選抜レースに登録できるとはいえ、未デビューのウマ娘だからか選抜レースのゲートインは少々手こずる傾向があるらしい。

 

 その時間を利用して、目を閉じ深く深呼吸をする。

 ゲートが開いてからゴールするまでの約1分50秒ほど。その間は一息つけるとは思わず全力で行く。今の私なら、それぐらいは全力で駆けることができるはずだ。

 

 

 深呼吸をしていたら、横に気配を感じた。偶数番のゲートインが始まったようだ。

 

 チラリと、何事もなくゲートインを終わらせたアイズポイントを見る。

 

 

 泰然自若、という言葉が相応しい立ち姿をしている。

 

「よろしくお願いします。アイズポイントさん」

 

 ふと、挨拶をしてしまった。ゲート内での私語は集中を乱すため、あまりほめられた物ではない。でも、挨拶をしておきたかった。

 

 それはきっと、強敵にライバルだと認識されたいという、闘争心の発露だったのかもしれない。

 

「ん? あぁ、よろしく頼むよ、()()()()()()()()

 

 アイズポイントさんは、不躾にもゲート内でいきなり声をかけた私にも応対してくれた。

 自然な貴公子然とした笑顔を添えて。

 

 そんな笑顔を見せられては、普通なら相手にされてないのだと思ってしまうかもしれない。しかしそれはない。

 相手は私の名を呼びながら笑った。

 

 私が()()()()()()()()だと知って、それでもなお己が優位であることを示すために、自然に笑いかけたのだ。

 

 

 彼女は知らないかもしれない。でも、彼女の中のウマソウルは、()()()()()()()()

 

 なんとなく、そう確信できた。

 

 

『さあ、今すべてのウマ娘がゲートに入りました』

 

 

 選抜レースが──

 

 

『選抜レース、マイル第14レース』

 

 

 (ボク)レース(競馬)が──

 

 

『──スタートしました!!』

 

 

 

 はじまった。

 

 

 

 ⏰

 

 

 

『スタートしました! 各ウマ娘悪くないスタート、出遅れはありません! 

 スッとハナを奪いに前にでるのはサイレンススズカ! 

 今レース唯一の新入生にして新入生代表、期待のウマ娘がハナを奪いました。

 

 その次に位置するのは少し離れて1番、そのすぐ後ろ4番アイズポイント。前目のレースを選びました。

 その後ろには──』

 

 研ぎ澄ました『集中力』で、〈スタート〉を切る。

 先行バを突き放すハイペース(〈高速逃げ〉)を序盤に作り出す。

 加速する(〈マイルギア〉)、と思った時にはすでに最高速まで乗れる。自己流とは言え今までのトレーニングで培ってきた『地固め』は間違ってなかった。

 

 少し走ればもう中盤といえるコーナー前、番手との差は3、4バ身ほどか。念のため『急ぎ足』でリードを広げておこう。

 

『サイレンススズカまだ離す! これはどうだ!? 息は持つのか!?』

 

 コーナーに入る。

 まだまだコーナリングは甘い。速度に振られ、だいぶ膨らんでしまった。今後の課題だ。

 

 コーナーの頂点を超えたらそこはもう最終コーナーだ。『押し切る準備』を始める。

 

 稼いだリードを消費して、コーナーを曲がるためにちょっとだけ速度を落としつつ息を入れる(『コーナー回復○』)

 

 

『さぁ、先頭はもうコーナーを抜けたぞ!』

 

 

 ここからは全てを振り絞る。

 

 コーナーの練習不足故に膨らんで経済コースを通れなかったが、それが逆に功を奏した。

 第14レース、内側は度重なるウマ娘の疾走でガタガタだ。

 あれはもはやダートである。

 外側の方がまだ芝が残ってる。

 

 

 でも、膨らんでしまい余計にリードを消費してしまったから、()()()()()

 

 

『ここで4番! 追いすがる! すごい脚だ!』

 

 

 集中しなくても聞こえる、彼女の足音。先頭を奪いに来る恐怖の音。

 

 芝をめくり、土を蹴り上げ、私を追いかける。

 

 

 ダメだ。地力が違うのが分かる。相手が速すぎる。

 もうゴールは目の前に見えるのに、そのゴールがとてつもなく遠く感じる。それほどまでに彼女が、アイズポイントが速い! 

 

 

『すごい脚! 差がドンドン縮まる!』

 

『2バ身!』

 差が2バ身に縮まる。

 

『1バ身!』

 差が1バ身に縮まる。

 

 

『ついに先頭を──』

 

 

 ダメだ。

 

 許さない。

 

 

 

 

 ボクが一番だ。

 

 私が先頭なんだ。

 

 

 

『抜かせ──ない! 3番粘る! まだ粘る!』

 

 

 あの人に褒めてもらうのはボクだ。

 

 おじさんによくやったって言ってもらうのは私だ。

 

 

 

 

 苦しい。

 

 隣に居る。

 

 

 ボクを負かす馬が隣にいる。

 

 私を追い抜くウマ娘が隣にいる。

 

 

 

 縮まる。

 

 気合と根性で耐えてるけど、ドンドン差がなくなる。

 

 

 相手が、前に──。

 

 

 

 ダメだ。

 

 ダメだ。

 

 

 許さない。

 許さない。

 

 

 (ボク)の前を走るのは許さない!!! 

 

 

SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka

SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka SilenceSuzuka

『先頭の■■は────』

          Lv.◇

『その身体で良く走った』

 

『しかし、()()はまだ早い』

 

 

AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint

AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint

〈流星の貴公子〉

          Lv.1

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AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint AisPoint

 

 

 なにかが変わろうとしていた、何かが起きようとしていた(ボク)の目の前に、雄大な星空とその中を横切る一条の流星が映し出される。

 

 

『抜いた! 抜いた! 4番アイズポイントが抜いて!! そのままゴール!!』

 

 

 流星は私を抜き去って、ボクより前で輝きを放つ。

 

 

『サイレンススズカは惜しくも2番です! その差は半バ身と言ったところ!!』

 

 

 その輝きは光度が落ち、輝きが収まっていくとウマ娘の形をとる。

 

 ボクより長身で、私より10cmは高く、足も長い。

 艶々と輝く長い栗毛をポニーテールにし、額の部分に綺麗な直線を描く一筋の流星を持ったウマ娘。

 

 

 

「いい勝負だった」

 

 

 

 そんなウマ娘が私に話しかけてくる。

 

 

「流石に新入生では疲労困憊か? 無理をしないで、深呼吸をするんだ」

 

 私を、追い越したウマ娘が。

 

 私の()()を奪った、ウマ娘が。

 

 

 

「大丈夫か? 意識はあるか? サイレンススズカ」

 

 

 耽美な顔を近づけて、アイズポイントが私を見つめていた。

 

「っはぁ!!」

 

 そして急に思い出す。自分が半分呼吸が止まっていたことを。

 レースの最後、ゴール前の抜かれる直前は無呼吸での全力疾走をしてしまったことを。

 

ハァッ! ハァッ! ハァッ!

 

 足りない酸素を補うように荒い呼吸が続く。

 飢えた獣が久々の獲物にありつけたかのように、空気を求める。

 

ハァッ! ハァッ!

「落ち着け、あまりいっぺんに吸おうとしすぎると過呼吸になる。今は逆に吐き出すことを意識しろ」

 

 私を支えるように、胸と背中に手を添えてくれているアイズポイントさんが、落ち着いたハスキーな声で私に話しかける。

 

ハァーッ スゥ ハァーッ

「そうだ、ゆっくりと息を吐くことだけを意識しろ。そうすれば自然と空気は吸える」

 

ハァーッ スゥゥゥ ハァーーーッ スゥゥゥーーー

 

 アイズポイントさんのアドバイスと声のおかげで、だいぶ呼吸が落ち着いてきた。

 それと同時に思考がクリアになっていくのを感じる。

 

 最終直線では入れ込みすぎて無我夢中になっていたようだ。

 

 

「あの、アイズポイントさん」

「どうした」

 

 ゆっくりと呼吸を整えながら、アイズポイントさんに話しかける。

 

 

「私、負けちゃいました、よね」

「あぁ、半バ身ほどの差で、私の勝ちだ」

 

 私の質問にアイズポイントさんは淡々と答える。

 

──あぁ、そうか……。

 

 

「そう、ですか」

 

 負けたのか、私は。

 

 

「あぁ、だが──」

 

 でも──。

 

「良い走りだった。機会があればまた一緒に走ろう、サイレンススズカ」

 

 

 

 

不思議と、悪くない気分だ──

 

 

 

 

*1
去年の有馬記念ではナリタブライアンは出走しなかったため、直接対決はならずだった

*2
流石に今からチケットは取れなかった

*3
マイルや中距離に比べて

*4
スズカが言う彼女はタイキシャトルの事である。スズカはタイキシャトルがマル外であることを知らない

*5
フクキタル占いのラッキーアイテム。コンビニで買ってきた

*6
そもそもトレセンにスズカより年下のウマ娘が居ないので当たり前な話である

*7
イベントなどで良く実況をやっているウマ娘





というわけで非公式といえど、初戦は敗退でした。
そもそもよほどの名家の出でもない限り、新入生が出場できてさらに2着だなんて、大々々々健闘なのではないかと思ってます。

個人的に中学時代(成長期)の1年というのはとても差が大きくなると思ってます。

今回は本格化が始まってないスズカと、本格化が始まって直ぐくらいの上級生という違いも大きいですね。



レースシーンでの〈〉で囲まれた部分はウイニングポスト10での特性で『』で囲まれているのはウマ娘のスキルになります。
今作では双方同じものとして扱います。

またウイニングポストの特性は一部を除き全てスタート直後に発生します。
ウマ娘の緑スキルのような感じです。

そのため、『集中力』〈スタート〉〈高速逃げ〉の3つが発動したため、『地固め』の発動条件を満たした。
という形になります。



最終直線の固有演出はスタークさんのウマ娘架空馬小説『また君と、今度はずっと』( https://syosetu.org/novel/278806/ )の特殊タグをお借りしています。
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