選抜レースの予定が先日すべて終了した。
選抜レースの結果というのは、そこそこ噂になるようで、私が2着だというのも噂されているらしい。
なんせ、フクキタルがわざわざ私の部屋に訪ねてきて祝いの言葉を言っていったくらいだ。
そのときはお礼と共に、占いの判断が良かったかも、と伝えておいた。
さて、なぜ選抜レースの結果が噂になっているのか話したかと言うと、選抜レースが終わって数日後。私の悔しさもどうにか消化し、世間は来る夏休みに期待し始めるようになる時期、それはやってきた。
「あの~、サイレンススズカさん、ですかぁ?」
フクキタルと食堂でご飯を食べていると、私を訪ねるほんわりとした印象を受ける声が聞こえてきた。
「はい。そうですが」
声の主に応えながら振り返ると、そこにはウェーブのかかった鹿毛の長髪を携えた上品そうなオーラを纏ったウマ娘が居た。
「はわ~、良かったです~。あの、少しお話ししたいのでぇ、私たちもご一緒してもよろしいですか~?」
その提案の確認を取るため、対面に座っているフクキタルにアイコンタクトを送る。
フクキタルはちょうど物を口に含んでいたため、良い笑顔で頷いてくれたので、話しかけてきたウマ娘に了承の意を告げる。
「はわ~、ありがとうございます~」
そう言って鹿毛のウマ娘と、その後ろに隠れてたのか、声をかけてきたウマ娘より黒に近い鹿毛が綺麗な、長髪のウマ娘が私たちの側に座る。
「改めて同席させてもらってありがとうございます~。申し遅れましたが、私メジロブライトと申しますぅ。一緒に来たこの娘は~」
「……メジロドーベル」
やたらゆったりとした印象で喋る、ウェーブがかかった鹿毛の方がメジロブライトで、もう一人の黒に近いストレートロングの鹿毛を持つウマ娘がメジロドーベルと言うらしい。
「なんと! メジロ家の方でしたか!!! あ! 私はマチカネフクキタルです!!」
「知ってるみたいだけど、私はサイレンススズカ。よろしくね」
メジロ家。メジロと名の付くウマ娘が沢山産まれ、代々多くのアスリートウマ娘を輩出してきた名家である。
ボクの時代に、メジロブライトやメジロドーベルという名前の馬と戦った記憶がふと湧いてきたので、もしかしたら同年代かもしれないと思い聞いてみることにした。
「ええと、メジロブライトさんとメジロドーベルさんは、新入生……で良いのかしら?」
「はい~、その通りですぅ。新入生代表挨拶の時に見かけたので、私たちは一方的に知っていたのですが~。クラスが違うので会うのは初めまして、になりますね~」
メジロブライトの言葉にメジロドーベルもコクコクと頷く。さっきからメジロブライトだけが話しているが、メジロブライトの付き添い……的な奴なのだろうか?
「えっと、それで……、話ってなにかしら? ご飯食べながらでも良い話なのかしら?」
「あ~、それは大丈夫です~。ひとまず私たちの用件をお話ししますのでぇ、その間は食べていてください~」
「わかったわ、ありがとう」
快諾してくれたので遠慮なくご飯の続きを食べさせてもらう。いつもはしっかり噛んで食べる事を意識しているのだが、なにか話をしたいのだろうし心持早めに残りを平らげることにする。
「それでぇ、用件なんですけど。実はこっちのドーベルの方がサイレンススズカさんにご用がありましてぇ」
「ンク、あ、スズカでいいわ。サイレンススズカって言いづらいでしょう?」
「本当ですか~、ありがとうございます~。そしたら私たちの事もブライトやドーベルとお呼びください~」
愛称で呼んでいいことを提案すると、相手からも愛称で良いと言われたが、ブライトに勝手に決められたメジロドーベルは良いのだろうかと思い、メジロドーベルの方へチラリと視線を向けると、メジロドーベルも気づいたのか慌てた様子で首を何度も縦にふったので、多分問題ないと言う事だろう。
「それでぇ、そのぉ大変失礼な話なのですが、少しドーベルは人見知りでして~。それで私が付き添いで来てるんですけどぉ」
ブライトは付き添いというが、今までずっとブライトしか話していないため、どう見てもドーベルが付き添いにしか見えない。
とりあえずあと少しの汁物を口に含みながら、ちゃんと話を聞いている旨を、首を振って示す。
それを見てブライトも安心したのか、続きを話し出す。
「それでぇ、少々確認したいのですがぁ、スズカさんは先日の選抜レースに出場してぇ、その上2着になったと噂で聞きまして~。それって本当の事でしょうか~?」
ブライトが不意に質問してきたので、少々待って欲しいことを身振り手振りで伝え、口の中に入ってたものを飲み干す。
「ぅん。えっと、そうね、あってるわ。そういうのって噂になるのね」
「それはも~。新入生ですぐ選抜レースに出場できることは稀らしいので~。それだけで噂になるのかと~」
「なるほど。それで、えーっと、ドーベル、さんはそのことを確認しに来たのかしら?」
「……ドーベルで、いい」
なんとも本人から直接了承を貰った気がせず、ドーベルをさん付けで呼ぶと、小さな声で呼び捨てで良いと本人が喋る。ウマ娘じゃなかったら聞こえていなかったかもしれない。
「えっと、ドーベルは、そのことを確認しに?」
再度問いかけるが、人見知りらしく恥ずかしがっているのか、中々口を開いてくれないので、困った顔でブライトの方を見るが、ブライトはまるで自分の役目は終わったとでも言わんばかりに、ほわわんとした雰囲気を纏って水を飲んでいた。
(ど、どうしよう)
自称付き添いのブライトが我関せずの態度を取り始めたため、再度ドーベルの方へ顔を向ける。
……
…………
若干気まずい沈黙が流れる。フクキタルなんて自分はどうすれば良いのかわからず、オロオロと私とドーベルの顔を交互に見ているくらいだ。
そんな気まずい空気がしばし流れた後、覚悟を決めたのかドーベルは自分で大きく一つ頷くと口を開く。
「あ、あの!!」
「はい!」
クソデカい声を掛けられた。私は少々耳が敏感らしく、雑音や急な大きな音が苦手なので、イヤーカバーをしているくらいだ。
なので、ドーベルの大声に驚いてしまって耳を後ろに倒してしまう。
ただ、ウマ娘が耳を後ろに倒す*1のは、自分が不愉快である時の表現でもあるため、ドーベルは私が不愉快になったと思ったのか、急に意気消沈して謝りだす。
「ご、ごめんなさい」
「あ、いや怒ったわけじゃないの。ただちょっとビックリしちゃっただけで」
慌てて私も弁明するが、今度はビックリさせた事を謝りだしたので、気にしてないことを必死に伝えた。
私の必死さが伝わったのか、どうにかドーベルも落ち着いてきて、やっと本題を話してくれる体勢に入った。
「実は、私も選抜レースに出走できたのだけど……」
「あぁ、もう一人の新入生ってドーベルだったのね。すごいじゃない、ゲート得意なのね」
「え、うん。ありがとう……。でも、その……」
言い淀むドーベルの話を辛抱強く聞き出すと、ドーベルは私と同じく1600mにエントリーし、私とは別日に走ったらしい。しかし結果は最下位は免れたものの着外に沈んでしまったらしく、そんな中同じマイルに出走し、2着になった私の噂を聞いて話を聞きたくなったらしい。
「なるほど、それで?」
「それで! あの、私と一回走ってほしいの!!」
話の続きを促すと、ドーベルは意を決して私の目を強い目力で見つめ、そう宣言した。
「あなたが、新入生代表で、私なんかとは全然実力が違うのもわかってる! でも、それでも、私はっ……」
後半は言葉になっていなかったが、つまり新入生代表*2の私と自分がどれほどの実力差があるのか、一緒に走って確かめたいらしい。
同じクラスだったら体育の授業で一緒に走ることはあるのだが、私とドーベルは違うクラスなので、お互いの走りを見るにはそういう機会を持たなくてはいけない。
「わかったわ。そういう事なら、今日の放課後でいい?」
一も二もなく快諾した私に驚いたのか、ドーベルは目を大きく見開きながら、パチクリと瞬きをする。
あ、ドーベルって睫毛めっちゃ長いし多いのね。お嬢さまって感じがする。
「えっと、良いの? トレーナーとかに聞かなくて……」
「トレーナー? 誰の?」
「えっと、スズカ……の」
一瞬何を言っているのかわからなかったが、数秒考えて得心がいった私は、つい両手を打ち付けてしまう。
「あぁ、そういうこと。大丈夫よ。私まだトレーナーとか決まってないから」
そう、私はまだトレーナーが決まっていないのだ。それどころか……。
「そ、そうなの? 誰にするか決めかねてる、とか?」
「ううん、そうじゃないの。私、まだ誰にもスカウトされてないのよ」
そう、私はまだスカウトされていないのだ。
誰にも! スカウト! されてないのだ!!!
その言葉にドーベルは殊更驚いたのか、問い詰めてくる。
「え!? あなたほどのウマ娘でもスカウトされないの!? そんな……それじゃぁ私なんて……」
「えっとね、スカウトされてないのは本当なのだけど、なにか事情? があるらしくて……」
問い詰めてきたと思ったらいきなり意気消沈するドーベルに、なんとか事情を説明する。
正直私もなぜスカウトされないかの事情はよく理解しているとは言い難いのだが、私もスカウトが来なかったため、やっぱり1着じゃないとダメなのかとダンスパートナー先輩に聞いてみたことがある。
ただその時にダンスパートナー先輩に聞いたのだが、私の成績がなかなか無い物であったため、どのトレーナーが担当するのか、どういうトレーナーなら私の才能を正しく生かせるのかなどなど、ダンスパートナー先輩のトレーナーが中心となって色々話してくれているらしい。
というのを、なんとかドーベルに伝えると、ドーベルも一応納得してくれた。
「なら、いきなりだけど今日の放課後に走ってくれるのね?」
「えぇ、大丈夫よ。それどころか楽しみだわ。授業以外でウマ娘とあまり走らないから」
ドーベルが再度確認してくれるので、問題ないどころか楽しみであることを伝える。
「……わかったわ。それじゃぁ、放課後……。えっと、私からあなたのクラスに迎えに行くから」
「わかったわ。それじゃぁ迎えに来てくれるのを待ってるわね」
生徒数2000人を誇るトレセン学園内で迂闊に待ち合わせでもしようものなら、その日は会えないかもしれないから気をつけろ、という旨を新入生は先輩から笑い話程度に聞いているため、なるべくわかりやすい場所で待ち合わせることになった。*3
⏰
さて、そんなこんなでお昼が終わり、放課後である。
私はフクキタルと一緒にドーベルがくるのを待っていた。
なぜフクキタルが一緒に待っているかというと、メジロのお嬢さまがどういう走りをするのか気になるらしい。
昼休みの時は個人的な事情に首を突っ込むのも良くないのではないか、と悩んでいたらしいが、占いで攻めるが吉と出たらしいので、迎えに来たドーベルに見学しても良いか聞いてみるつもりらしい。
なのでフクキタルと駄弁りながら、メジロドーベルを待っている次第であった。フクキタルとお話する時は、基本的にフクキタルが話題を提供してくれる。私は女子中学生なのに、トレーニングにしか興味が無いと思われているらしく*4、スイーツの話とか最近のトレンドドラマの話とかいろいろしてくれる。
そしていつもより長く話をしていると、まだ教室内に残っていたウマ娘が声を掛けてきた。どうやらドーベルが迎えに来たようだ。
荷物を纏めて教室の入り口へ向かうと、そこにはドーベルとブライトが待っていた。
「ごめんなさい、お待たせしたかしら」
「ううん、大丈夫よ。フクキタルとお話してたから」
「あ、改めましてマチカネフクキタルです! フクキタルで大丈夫です!!」
ドーベルとあいさつを交わし合うと、フクキタルが再度自己紹介する。
「あ、えっと、それならドーベルで、いいわ」
「私もブライトとお呼びください~」
お互いがお互いを愛称で呼び合う事になったところで、フクキタルが見学したい旨をドーベルに告げる。
「それなら全然大丈夫。私もブライトに見ててもらおうと思ってたから」
と言うことで4人でグラウンドにでも行くことになった。
「そういえば、グラウンドのどこに行く?」
「第3コースに行くわよ。この後……、あと30分くらいは私たちで使えるように予約しといたから」
私がそう聞くと、ドーベルが歩きながら教えてくれる。
はて、予約とは?
と疑問に思って訊ねてみると、なにやらトレセン学園は生徒同士で模擬レースなどをしたい時ように、一応コースの予約ができるらしい。
「そうだったの。知らなかったわ」
「基本的にはトレーナーがトレーニングのために押さえてあることがほとんどらしいから、あまり取れないらしいのだけど、今合宿の時期でしょう? 早い人はもう合宿場に行ってるのか、この時期はいつもより空いてることが多いみたい」
「あー、確かに同室の先輩も合宿に行くって言ってたわ。先輩は夏休みが始まってかららしいけど」
「えぇ、だから夏休みになれば伸び伸びとコースを使えるかもしれないわね」
(なるほど、それは良い情報を聞いた。夏休みはコースで走り込むのも良いかも)
などと思いながら、ドーベル達とお喋りしつつ第3コースへ向かう。
到着した第3コースでは、大勢のウマ娘とトレーナー達がトレーニングしているのが見えた。
これでもいつもより少ないのだというのだから、トレセン学園はやっぱり規模が小学校の頃とは全然違うのだなと実感する。
各コースには側に更衣室も設置されており、私たちはそこで着替える*5と、ドーベルが予約していた芝コースへと足を踏み入れる。
「おぉ、最近選抜レースがあったのに、結構芝は綺麗なのね」
「トレセン学園では週に1回専門の業者の方が来て、コースの整備をしてくれるらしいですよ!!」
そこまで捲れておらず、綺麗な芝を見て感想を漏らすとフクキタルが教えてくれる。流石URA直営の学園であるといえよう、設備の維持にもとても気を使っているようだ。
「それじゃぁ、10分くらいアップしてから、で良いかしら?」
「えぇ、それでいいわ」
ドーベルに訊ねると快諾してくれたので、ウマホで10分後をタイマーにセットしておき、内ラチの内側*6に置いて、ウォームアップを始める。
ウォームアップを始めると、ドーベルとブライトは軽くストレッチするだけで、すぐにジョギングを始めるが、私とフクキタルはお互いを補助し合いながら念入りにストレッチを行う。
コースをかるく一周してきたドーベルとブライトが、周ってきたのに未だストレッチをしている私たちに驚いたのか、脚を緩めて側で止まる。
「まだストレッチしていたの?」
「えぇ、私、は、運動する前のストレッチ、は念入りに、するようにしているの」
「私、も! スズカさんと、ご一緒する、ときは! 念入りに、してます!!」
「……なるほど」
「はわ~、熱心さんですね~」
ストレッチしながら言う私たちを見て、ドーベルはなにやら考え込むように口元に手をあて、ブライトは相変わらずほわほわとした様子で、手のひらを頬にあててほほ笑んでいる。
「っと、じゃぁフクキタル、軽く走りましょう」
「はい!」
規定のストレッチが終わったため、フクキタルとジョギング程度のスピードで走り始める。
ドーベルやブライトも再度走り出し、5分ほど4人で無言のままジョギングし続けていた。
⏰
ウォームアップの時間が終わり、遂に併走する時がきた。
「ゲートは、流石に2人じゃ借りれなかったから……ブライトにスタートの合図をお願いするわ」
「はい~、任されました~」
「では私はゴールになります! 1600で良いんですよね!」
「えぇ、お願いフクキタル」
自らゴールを買って出てくれたフクキタルに、お礼を言うとフクキタルは向こうへと走っていった。
一応コース上にはハロン棒*7があるため、1600mは簡単にわかるのだが、ゴール役が居れば一々ハロン棒を数えることに思考を割かれないのでさらに良い。
「そういえばフクキタルが来なかったら、ゴールはどうするつもりだったのかしら?」
「その時はブライトにゴールからスタートの合図を出してもらうつもりだったわ」
ふと疑問に思ったのでドーベルに訊ねると、そのような回答が返ってきた。なんでも幼いころメジロ専属トレーナーに鍛えてもらっていた時は、そのようにしていたらしい。
「ん、それじゃぁ始めましょうか。あ、どっちが内側に入る?」
「……私で、良いかしら」
「えぇ。私は文句ないわ」
馬の頃もそうだったが、トレーニングで一緒に走るときは、先輩*8が外側を走ることが多い。外側の方が若干だが、走行距離が伸びてしまうためである。
スタート予定のハロン棒の真横にドーベルが付いたのを見て、その隣に1歩ほどズレて並ぶ。
「フクキタル~! 準備は良い~?」
「はーい! 時計の準備もOKですよー!」
反対側に居るフクキタルに声をかけると、フクキタルもストップウォッチを掲げながら準備完了を伝えてくれる。
「それじゃぁブライト、フクキタルにも聞こえるように、スタートの掛け声は大きめでね」
「わかりました~」
ドーベルがブライトに声をかけ終えると、こちらへ視線を投げかけてきたので頷いて返す。
「それでは~」
私たちが位置について落ち着いたのを見ると、ブライトが手を大きく上げ、スタートの旗の代わりとする。
「位置について~」
『集中力』を研ぎ澄ます。
「よ~い」
「ド
前足*9に力を込める。
ン!!」
そのままの速度を維持し、走り出す。
これでもスタートは大得意である自負がある。即座に進路妨害にならない程度に離したことを確認すると、内側へと寄り経済コースを取る。
ドーベルは差し脚質なのか、コーナー前で約10バ身の差が付いている。
一応今回はコーナリングを意識しながら、なるべく経済コースを通るため直前に加速は行わず、若干抑え気味の速度で
さぁ、コーナーを曲がれば、そこはすでに最終コーナー。私は
コーナーを抜けて最終直線。目の前にはフクキタルの姿が見える。
油断せず、スパート体勢に入る。
コーナーを抑え気味に走ったおかげで、スタミナには余裕がある。
「──────シッ」
鋭く息を吐きながら、ストライドをより広くとり加速する。
そのまま、メジロドーベルがくる気配もなく、私はフクキタルの横を駆け抜けた。
速度を落とし、呼吸を整えながらフクキタルの方へと転身する。
フクキタルの下へたどり着くと、そこには息も絶え絶えな様子のドーベルが、膝に手をつき項垂れていた。
フクキタルが持っていてくれたタオルと水を受け取りながら、反対からポテポテと走ってくるブライトを待つ。
ブライトが付いたころには、ドーベルの息も整ったのか、上半身を起こして水を飲んでいた。
「えっとぉ、やっぱりスズカさんは速いんですねぇ~」
若干言葉にし難い空気が流れていたところを、ブライトが率先して口火を切ってくれる。
ほわほわしているようだが、流石お嬢さまと言ったところか、気配り上手なようだ。
「一応、新入生代表だからね」
ブライトの言葉に応えながらフクキタルを見る。
コーナリングを意識して走った場合の時計がちょっと気になるのだ。
「えっと、フクキタル──」
「あ! えっと、勝敗ですか!?」
「え、いやそうじゃなくてt──」
「あ! じゃぁこの後折角ですしカフェでスイーツとかどうですか!? せっかく縁も出来たことですし!!」
「いや、だ──」
「お汁粉占いとかどうです!? 私実家が神社で──!」
なんだ、フクキタルが全然私に喋らせてくれない。喋らせてくれないならまだしも、ストップウォッチすら見せてくれない。
「いやー、トレセン学園のパフェって実は結構有名なんですけど!!! 結局食べてないんですよねー!! 皆さんもどうです!?」
「スズカ」
フクキタルが大きめな声でこの後のスイーツについて提案していると、息が整ったのかドーベルがうつむいたまま口を開く。
「なにかしら? ドーベル」
「今日は、ありがとう」
「ううん、私も走れて楽しかったわ。それにコースの予約とかも教えてもらっちゃったし。もし良かったらまた走りましょう?」
私の言葉にドーベルは顔の角度がより深くなった気がした。
「……えぇ。それじゃぁ、私、先に帰るわ」
ドーベルはそういうと、足早にコースから去って行ってしまう。
「あぁ~、その~、すみません。私も今日は帰りますね~。フクキタルさんカフェはまた行きましょ~」
「あ、はい」
ブライトもドーベルの様子に疑問を持ったのか、フクキタルに謝りながらドーベルを追って走っていく。
取り残された私とフクキタルは、その二人の背中を見ながらたたずんでいた。
「えっと、フクキタル……利用時間もあるし、とりあえず……カフェ行く?」
「そう、ですね。行きましょうか……」
コースの利用時間の制限もあるので、ひとまず私とフクキタルも着替えて、その後はカフェにでも行くことにした。
また、この小説の現状と今後について活動報告を書きました。
まだ、この小説を応援しようと思っていて下さる方は、見るだけでもしてくれると嬉しいです。
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(2023/5/7 修正)
感想の方で胸糞展開では無いとのご意見を多数いただいたため、前書きとあとがきの一部を削除いたしました