「私はサイレンススズカだから」   作:花水姫

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第8話「チームリギルに体験入部です①」

 

 夏休みはドーベルとトレーニングしたり、ドーベルと一緒に寝たり、フクキタルと一緒に寝たり、結局実家に帰省して妹2人と駆けっこしたりと、かなり充実した日々を過ごせた。

 

 夏休みも終わり、新学期も始まるとダンスパートナー先輩も合宿から帰ってきており、合宿前と比べると一回り密度を高めた筋肉が、服の上からでもわかるほど鍛え込まれていた。

 

「先輩、合宿でスゴい鍛えましたね。なんか、オーラすら見えるようです」

「あはは、うん。流石に宝塚記念が悔しくてね……。下半期は、ちょっくら凱旋門とBCターフ取って芝世界最強になってくることに決めたよ。

 それから、有馬でナリタブライアンにリベンジする」

 

 その鍛えっぷりに感嘆の意を示すと、宝塚記念でナリタブライアンに負けたのが相当悔しかったらしく、かなり突拍子も無いことを言われたが、それが達成出来そうなほど鍛え込まれている。

 

「応援してます! 流石に海外は無理ですけど、有馬記念は現地で応援しますから!!」

「ありがと、スズカちゃん。あ、そういう事だから、私来週からフランスに行っちゃうし、その後アメリカ行って帰ってくるのは11月中旬とかになると思うから。その間また一人になるけどがんばってね」

「え」

 

 先輩の意気に呑まれ海外遠征を応援したら、その海外遠征のため数ヶ月海外に行くと言われてしまった。

 

 

「……ウソでしょ」

 

 またドーベルとフクキタルを部屋に呼ばなきゃ……。

 

 

 

 それでも先輩が芝世界最強の称号を手に入れることを、私は素直に応援したいと思う。

 

 

 ⏰

 

 

『サイレンススズカさん。至急生徒会室に来てください。繰り返します──』

 

 先輩との別れを惜しみながら、新学期の日々を過ごしているある日の昼休み、私はいきなり生徒会室に呼び出されてしまった。

 

「スズカさん、夏休み中にトレーニング機械壊したりしました?」

「そんなことしてないわよ。とりあえず行ってくるわ。フクキタルは気にせず先に食べちゃっててね」

 

 なんか最近容赦が無くなってきたフクキタルが、ナチュラルに私が問題を起こしたと断定して尋ねてくるが、断じてそんな覚えは無い。

 

 

 とりあえず至急とのことなので、フクキタルに別れを告げ生徒会室へと向かう。

 

 

 

 学園の規模に比例して長いトレセン学園の廊下を、速足で急ぎなんとか数分程度で生徒会室の前までこれた。

 軽く深呼吸をして生徒会室の扉をノックしすると、中から入って良い旨の言葉が聞こえたので扉を開けて中へと入る。

 

「失礼します」

 

 中に入るとだいぶ広い空間が広がっている。

 最奥には豪奢な作業机があり、その上には大量の紙が積まれている。ここには生徒会長であるシンボリルドルフの姿が見える。

 壁際の一方には簡素な折り畳み机と、そこそこ座り心地がよさそうな椅子があり、こちらで他の役員が作業をするのだろう。現在は昼休憩中のためか他の役員の姿は見えない。

 反対側の壁には、複数の表彰状やトロフィーなどが置かれた棚と、学園のモットーが達筆で書かれた軸がかけられている。

 

「やぁ、サイレンススズカ。よく来てくれた」

 

 私の姿を認めると、最奥に座っていたシンボリルドルフが立ち上がりながら出迎えてくれる。

 

「一先ずそこの椅子に座ってくれたまえ。紅茶とコーヒーはどちらが好みかな?」

「失礼します。あ、紅茶の方が好きですかね」

「わかった。少々待っててくれたまえ」

 

 応接用と思われるソファに座ることを促されたため、そちらに座ると会長は紅茶を入れてくれる。

 

「どうぞ。茶葉は良いのだが、私の腕がそこまででもないので、あまり味は期待しないでくれたまえ」

「ありがとうございます」

 

 会長が入れてくれた紅茶を口に含むと、インスタントなんかより芳醇な香りが鼻の奥に香ってくる。確かに良い茶葉を使っているのだろう。

 まぁ私も茶葉や腕の良し悪しが分かるほど紅茶は嗜んでいないため、美味しいのだろうという感想しか出てこないのだが。

 

「さて、急いできてもらって悪いのだが、実はもう一人同席する人が居てね、その人がまだ──」

 

 会長が淹れた紅茶は、確かに私と会長自身の分を除いてももう一人分多く用意されて、机の上に置かれている。

 そう言いながら会長が机を挟んで目の前のソファに座ったところで、生徒会室の扉がノックされる。

 

「どうぞ」

 

 会長が声をかけると、すぐさま扉は開き大人の人間の女性が入室してきた。

 

「ごめんなさいね。私が昼休みすぐって言ったのに、その私が遅れてしまうなんて」

「いえいえ、ちょうどお茶が淹れ終わったところですから」

 

 会長が出迎えた女性はスーツ姿で髪形はポニーテール、厳しそうな目つきを眼鏡で隠しているような女性だった。

 その女性は、自然と会長の隣に座る。

 

「サイレンススズカも、待たせてしまってごめんなさいね」

「い、いえ。私も先ほど来たばかりですから」

 

 若干入学の時に受けた面接を思い出しつつ、女性が頭を下げるため慌てて気にしていない旨を伝える。

 

「そう、まずは自己紹介かしら。私は東条ハナ。チームリギルのチームトレーナーを務めさせてもらっているわ。よろしくね」

「知っているかもしれないが、シンボリルドルフだ。このトレセン学園の生徒会長を務めさせてもらっている。もうドリームリーグに移籍してしまったが、一応所属はおハナさん──東条トレーナーのリギルになっている。よろしく頼む」

「えっと、サイレンススズカです。えー、新入生です。はい。よろしくお願いします」

「まずは、突然呼び出して悪いわね。今回は主に私からあなたに話があって、呼び出させてもらったの」

 

 一先ず自己紹介を終えると、東条トレーナーがさっそく本題に入る。

 

 

「あなた、夏休み前の選抜レースに出走したでしょう?」

「はい」

「その成績が新入生にしては前代未聞に近いものでね、その後色々トレーナーの方で相談事があったのだけど、そのことは知っているかしら?」

「はい。スカウトが全くなかったので、先輩──同室のダンスパートナー先輩に聞いたところ、同じような説明をされました」

「そう、実はそのトレーナーの相談というのが、あなたの才能を活かすにはどのトレーナーが良いのかとか、担当してみたいトレーナーは居るのか、とかの確認だったのだけれど、残念ながらそれはまだ決まってないの。

 それで、それを決める判断材料として、あなたがどういうウマ娘なのか、今までどんなトレーニングを積んできたのか等を、ひと月ほどどこかのチームで確認しよう。という話になったの」

「チームで確認、ですか……」

「まぁ、私がこうして話してる。ってことは大体察しが付くかもしれないけど、チームトレーナーの間で、最初は私のリギルで面倒を見るのが良いのではないか、ということになったわ。他に入ってみたいチームや、学んでみたいトレーナーが居るなら便宜は図れるのだけれど……」

「いえ、現状どんなチームがあるかもハッキリ把握してないので……、とくに拘りはありませんが」

「それだったら、体験入部みたいな感じで、ひと月ほど私のリギルに来てみてくれないかしら? そこで、あなたがどのようなウマ娘なのか……どんな脚質なのか、得意な距離はなどいろいろ私が見てみて、最終的にどのようなトレーナーが良いのか、トレーナー陣の方で決定するための判断材料にしたいの」

「な、なるほど?」

 

 大まかには本題は話し終えたのか、東条トレーナーは一息つくように紅茶を飲む。

 なにやら大分大きな話になって来たような気がするので、東条トレーナーの隣でニコニコと私を見ているシンボリルドルフ会長に質問してみる。

 

「あの、会長……」

「なんだい?」

「こういうのって、毎年の目玉の新入生にやってたりは……」

「まさか! そんなことはしないよ。それこそ、私ですらそんなことはされなかった。まぁ、私は実家の関係で、よほどの事が無い限り東条トレーナーのところで面倒を見てもらうことが決まっていた、というのもあったのかもしれないが。

 私が知る限り、トレーナーの方で事前にだれが受け持つかの話し合いがもたれたのは、サイレンススズカ、君が初めてだ。基本的にスカウトは早い者勝ちだからね」

「な、なるほど……」

 

 かの『絶対皇帝』シンボリルドルフですら、受けなかった特別扱いに、なんだか居たたまれない気持ちになってくる。

 

「それほどあなたの才能が素晴らしく、下手なトレーナーには任せられないと私たちが判断した、ということよ」

 

 紅茶で一息ついた東条トレーナーがそう一言喋り、その切れ長な目で私を見つめる。

 

「えっと……、例えばリギルに体験入部? した後って……」

「そうね、どうなるかはその時にならないとわからないけど、なるべく早くあなたを担当するトレーナーを探すことになると思うわ。もちろん、あなたの意見は一番に尊重するし、参考にさせてもらうわ」

 

 そこまでの条件が出されているなら、受けない手は無いように思う。

 

 それにチームリギルと言えば、現在のトゥインクルシリーズで、チームスピカと人気を二分するトップチームである。

 それだけ、沢山のウマ娘のトレーニングを見てきただろうし、それだけトップクラスのウマ娘を世間に送り出してきたという事でもある。

 ひと月とはいえ、そのトレーニングを間近で経験できるのは、一般ウマ娘からしたら喉から手が出るほどの境遇だろうというのは、簡単に想像がつく。

 

「──わかりました。チームリギルへの体験入部、させていただけるなら是非受けたいと思います」

 

 私がそう言うと東条トレーナーは一つ頷き、シンボリルドルフ会長は満面の笑みを浮かべながら、何度も頷いていた。

 

 

「それでは、今日は普通に午後の授業に出てもらって、その後またこの生徒会室に来て頂戴。ルドルフにうちのチームルームまで案内してもらう手筈になっているから」

「はい」

「一応念のため体操服には着替えて来て頂戴ね。大抵チーム加入初日は諸々の説明だったり、必要な書類を書いて貰ったりで1日を終わりにすることが多いのだけれど、あなたは今回仮加入とはいえ、一人での加入になるから時間があまるかもしれないし」

「わかりました」

「それじゃ、私はこれで」

 

 必要なことを説明し終わると、東条トレーナーは素早く生徒会室を去っていった。

 

 私ももう帰っていいのか少し判断ができず、前に座っている会長へと視線を向けると、会長は私の視線の意味に気づいたのか飲んでいた紅茶を机の上に置く。

 

「あぁ、すまないね。サイレンススズカくんももう帰ってくれて構わないよ。それより、お昼に呼んでしまって悪かったね」

「あ、いえ大丈夫です」

「ところで、流石にお昼はまだ食べていないよね?」

「はい」

「それなら、これを受け取ってくれないか」

 

 そう言って会長が取り出したのは、なにかの券が連なった物だった。

 

「これは?」

「トレセン学園のカフェを利用したとき割引になる割引券だよ。ホントはお昼をご馳走でもしようかと思ったんだが、いかんせんトレセン学園はお昼の食堂の利用はタダだからね。だからこれはその代わり、のようなモノかな」

「こんな物をわざわざ、申し訳ありません」

「いやいや、ご飯を食べる時間をこちらの事情で奪ってしまったからね。もしお昼の時間が足りなくてお腹が空くようだったら、放課後ここにもう一度くる前にそれを使ってカフェでお腹を満たしてきたら良い。医食同源──特にウマ娘にとって、食べることは何よりも大事だからね」

「ありがとうございます」

 

 ありがたくカフェの割引券を貰って生徒会室を後にする。

 お昼の時間を奪ったと言っても、トレセン学園の昼休みは一般的な学校より長めに取られているため、私が食べる程度の量ならちょっと急ぐくらいで間に合うだろう。

 

 なのでこのカフェの割引券は、今度フクキタルやドーベル達とありがたく使わせてもらうことにしよう。

 

 

 そう思いながら、私は急ぐため速足で食堂を目指して走り出した。

 

 

 ⏰

 

 

 

 ⏰

 

 

 そんなこんなで始まった私のチームリギル体験入部だが、初日は言われた通りチーム制に関する説明と、提出が必要な書類への署名。あとは簡単な身体能力テストで終わった。

 

 トレセン学園の午後の授業というのは、基本的に体育が設定されており、チームに所属していたり、トレーナーとの契約が決まっているウマ娘はその証明書類を事務に提出すれば、授業の体育への出席が免除されるらしい。

 

 まぁそれは当然のことで、授業で行うのはウマ娘の基礎を作るための普遍的なトレーニングであり、基本的に教官資格*1を所持している教官が、一律で40~50人近いウマ娘を纏めて管理している。

 

 一方トレーナーとの契約を果たしたウマ娘は、たとえチームに属していたとしても、基本的にはトレーナーが作成したそのウマ娘専用のトレーニングメニューが用意されるため、授業に出る時間でそちらをこなした方が効率的であるというのは自明の理であろう。

 

 つまるところ、私は明日から1カ月ほど、午後の授業が免除になったのであった。ぶいv*2

 

 

 ⏰

 

 

 さて、チームリギルでのトレーニング内容だが、まずは私が今までどのようなトレーニングを行っていたのかの確認として、私が行ってきたトレーニングメニューの提出を求められた。

 

「東条トレーナー、トレーニング内容のまとめ持ってきました」

 

 さすがに言われたその日中に出せなんて鬼畜なことは言われず、初日は早めに解散となり、翌日までで纏められる範囲でまとめて持ってきて欲しいと言われたので、初日はそれ以降はトレーニング内容を思い出しながら、紙にまとめる作業を自室で行っていた。

 

 

 そして体験入部二日目となる今日、午後の授業を免除された私は初めてチームリギルのミーティングに出席した後、東条トレーナーにまとめた自主トレの内容を提出しているところである。

 

 

「ありがとう。ちょっと読ませてもらうわね」

 

 東条トレーナーが私の事を見極めると言った通り、私は基本的に東条トレーナーの管轄になっているらしく、名も知らぬリギルの先輩方からうらやましがられた。

 なんでもリギルほど大きいチームでは、複数のサブトレーナーが付いており、よほどの素質がない限り東条トレーナーが直接指導することは少ないらしい。

 そして私はその東条トレーナーに直接見てもらえる立場であり、なお1カ月限定の体験入部とかいうトレセン学園では聞いたことの無い立場になってしまっているらしい。

 

「なる、ほど」

 

 あらかた私の自主トレメニューを読み終えたのか、東条トレーナーは一言呟くとトレーニングメニューの上から、順繰りに私に質問してきた。

 

 どのような意図をもってこのメニューを組んだのか、どのようなことをトレーニング中に意識しているのか、など。

 

 

 私は(最近ドーベルに似たような事話したな~)などと思いながら、東条トレーナーの質問攻めを一つ一つ解決していった。

 

 

「なるほどね。あなたがやたらと速い理由が少しはわかったわ」

「えっと……」

 

 どういう意味なのか組み取れずなんと返答していいのか困っていると、東条トレーナーは私のトレーニングメニューに対する寸評を始める。

 

「正直、アスリートウマ娘が作る自主トレとしては100点に近いわね」

 

 その言葉に私はホッとする。現役の、しかも毎年リーディングトレーナーにノミネートされるほどの、現代日本トップのトレーナーにメニューを認められたのだ。私が今までしてきたこと、幼いころより独学で学んできた事は、すべて無駄ではなかったと証明されたのである。

 

「まぁ新人のトレーナーが持ってきたら、ちょっと理論が古い箇所が何点か見受けられるから80、70点くらいにするけど。それでもデビュー前のウマ娘を鍛える。という観点に立って見れば十分合格点を上げられるわ」

 

 確かに私の理論は古いかもしれない。今でもなるべく最新の論文などは時間があれば調べるようにしているが、基本的なトレーニング理論を固める前の、ひたすらに理論を調べていたころと比べるとその時間は圧倒的に少なくなってしまっている。*3

 つまり、私のトレーニング理論は最新の物と比べると、だいたい3、4年ほど古い物となっているようだ。

 

「そのあたりの最新の理論は、私が作ったメニューを渡すときに同時に教えてあげるわ」

「はい、ありがとうございます」

「それと、自重トレーニングが多めなのも効率が悪いわね。小学生の時に考えたらしいからしょうがないのだろうけど、トレセン学園の設備に合わせた場合、自重トレーニングのどのぐらいに相当するかも、後で教えてあげる」

 

 おぉ、それは確かに。

 例えば私は体幹トレーニングの一環でスクワットをだいたい150回ほどするようにしているが、それをトレセン設備でレッグプレスなどに置き換えた場合、何kgで何回すれば良いのかといった、最新機器への知識が少々足りていない。

 今までは一日の大半の時間を自主トレに当てられたから、ただひたすらに時間がかかる自重トレーニングでも良かったモノの、今後自分の基礎だけでなく、()()()()()()()の勉強などを始めるとすれば、より効率よく短時間で鍛えることが求められる。

 

 

 何やらアスリートウマ娘へのアドバイスではなく、トレーナーへのアドバイスのようになっているが、その事には東条トレーナーも気づいたらしく、気まずそうに一つ咳をすると話を続ける。

 

「それで、基礎トレがメインなのはなにか理由があって?」

「はい。私はまだ本格化も来ていないですし、またレース理論というのも、当時の私には調べてもなかなかいい文献に出会えず、難しかったため、走るための基礎を鍛えた方が良いだろうと思って基礎トレを積むようにしていました」

「なるほどね、それで現状基礎能力がかなり仕上がっている、と。

 本格化は? 入学当初はまだ来てないと言っていたそうだけど、選抜レースに出走した後も本格化の兆候は無いかしら?」

「えっと、夏休みを過ごした限りは無い……と思います。あ、でも少々大きめに作った制服がぴったりになって来たので、身長は伸びてるかもしれません」

「そう。走ってる感覚とかは? 一週間前とか昨日に比べて、いきなり時計が0.5秒とか1秒とか良くなった、なんてことは無い?」

「えっと、最近は無いですね。それどころかここ1年くらいは伸び悩んでる感じです。多分今のトレーニング強度が足りないのかなと思うんですけど、ただ本格化前に鍛えすぎると身長が伸び悩むっていう説もあるらしいので、これ以上強度を増すか悩んでて……」

「なるほどね、ならまだ本格化は来てないわね。ウマ娘の中には、選抜レースに出てレースを経験すると一気に本格化が進む娘もいるから、一応ね。その様子なら今年中にいきなり本格化が来るなんて事は無さそうね。

 トレーニング強度はそうね……、これ以上あげるのは私も考え物かしら。本格化が始まれば一気に身長が伸びる娘もいるけど、逆に伸びない娘も居たりするから……。身長はどのくらいが目標かしら?」

「160cmくらいは欲しいですね。大きくても良いですけど、大きくなりすぎると今度は足に負担がかかりそうで……」

「そう。そのくらいだったら確かに今程度の強度でも良いかもしれないわね」

「わかりました」

 

 あらかた私のトレーニングメニューに関して質問したいことは終わったのか、東条トレーナーは私の答えをメモした走り書きを読み直している。多分、私の返答内容を再確認して頭の中で反芻しているのだろう。

 

 

「なるほど、ありがとう。トレーニングに関してはわかったわ。この自主トレは、トレーナーの指示を受けていない間であれば続けて構わないわ」

「はい。わかりました」

「なるべく明日には完成できるようにするけど、明日からレースを走るためのトレーニングも始めて行きたいから、そうしたらトレーニングメニューの強度とか回数を2/3程度に減らしてもらえる?」

「はい。オーバーワークになるから、ですよね」

「えぇ。鍛える目的以外で身体を使うことになるから、今までの強度でトレーニングしてしまうとオーバーワークになってしまうわ。それが分かっているなら、余分な自主トレについてはわざわざ注意する必要はないかしら?」

「はい。私、何よりも怪我をするのが嫌ですから。極力トレーナーの指示には従いたいと思ってます」

「それを聞けて安心したわ」

 

 なにやら安心したのか、東条トレーナーの肩から若干力が抜けたように感じる。

 

「それじゃぁ、今日は申し訳ないのだけど、まだトレーニングメニューが完成してないから、解散で良いわ。いつも通りの自主トレをこなして頂戴」

「わかりました! それじゃぁ東条トレーナー、今日はご指導ありがとうございました」

「えぇ、また明日会いましょう」

「はい、また明日」

 

 

 こうして体験入部二日目は何事もなく終わった。

 

 

 明日からあるという()()()()()()()()()トレーニングが楽しみだ。

 

 

*1
一般的にはトレーナー資格より簡単であると言われている

*2
授業で他のウマ娘とランニングする時は、あまり速く走りすぎてしまうと他のウマ娘が追い付けないため、スズカにとってはかなり抑えめで走らなければいけなかったので、結構ストレスが溜まっていた

*3
トレーニングが完成してからは、トレーニングそのものに時間がとられてしまっているため仕方ない部分ではある





体験入部さすがに1話じゃ終わらなかったよ……
次回もリギル体験入部です
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