もしもザフト水泳部の新米が連合に盗まれずミネルバに加入したら 作:ちゃーらんき
インパルスの発進シークエンスは省略します。
アニメだと、phase4『星屑の戦場』の場面からになります。
ボギーワンをとらえたミネルバは、距離をつめモビルスーツを先行させるとともに対艦戦闘を仕掛けることを決定。
ブラストシルエットを装備したシンの操縦するインパルスと、ルナマリアの操縦する赤い専用機のザクウォーリア、そしてゲイツR2機からなる4機のモビルスーツ部隊を繰り出し、ミネルバもデブリベルトに侵入するとともに加速を止めたボギーワンを追撃するべく距離を詰めた。
その際、デュランダルからの提案でカガリとアスランもブリッジに同席することになる。
オーブの代表とザフトを捨てた男が見る中で、今のプラントを守るザフトの戦いが展開されようとしていた。
先行したモビルスーツ部隊はデブリ内に侵入。
ボギーワンがモビルスーツを出している可能性を考慮し、追撃するミネルバへの奇襲を防ぐために索敵を開始する。
「あんまり成績良くないんだけどね、デブリ戦」
「向こうだって、もうこっちを捉えているはずだ。油断するな」
「わかってる。レイみたいなこと言わないでよ、調子狂うわ」
視界を遮る無数のデブリが漂う宙域にて、デブリ戦の訓練成績は芳しくなかったことを思い出し愚痴をこぼすルナマリア。
レーダーにも熱源探知にも反応がないとはいえ、視界不良のデブリベルト。放射能汚染の影響もあり、そのレーダーも反応が鈍い。
いつ敵襲があってもおかしくない戦場。油断は禁物だと気を引き締めるシンに、ルナマリアはそのくらいわかっているとシンと比べていささか緊張にかかる様子で答えた。
一方ブリッジを艦橋から下げ戦闘体勢に入ったミネルバでは、ボギーワンの進路と速度に変化がないことを確認すると対艦戦闘の準備をするようアーサーが指示を出していた。
「ランチャー1、ランチャー6、1番から4番ディスパール装填。CIWS及びトリスタン起動。今度こそ仕留めるぞ!」
ミサイル発射官には迎撃ミサイルを装填し、近接防空システムを起動。
また主砲である2連装高エネルギー収束火線砲XM47“トリスタン”を起動し、その照準をボギーワンに合わせた。
射程圏内に入り次第、トリスタンで仕留める算段である。
先行するモビルスーツ部隊からも敵モビルスーツ発見の報告はない。
「インパルス、ボギーワンまで1400」
先行するインパルスがボギーワンに接近する。
しかしモビルスーツが発艦する様子も、迎撃ミサイルを飛ばす様子もない。
(何で、何もしてこないんだ……?)
インパルスは大型戦艦も沈める高い火力を持つブラストシルエットを装備している。
ルナマリアのザクウォーリアも、長距離砲撃戦用の高火力装備であるガナーウォーリアを装備している。
詳細が分からずとも見るからに対艦戦闘を意識した重装備のモビルスーツがこれだけ接近しているのに反応がないボギーワンに、違和感を抱くシン。
「インパルスが接近しているのに……進路も変えないのか?」
ブリッジでもモビルスーツ部隊が接敵するというのに進路すら変えないボギーワンに、流石のアーサーも困惑する。
何かの策なのではないか?
そんな疑問が浮かんだ時、アスランが気付き声を上げた。
「デコイだ!」
「えっ──?」
アスランの声に反応したタリアが振り向く。
直後──
「よし、行くぜ!」
デブリに潜んでいたカオスが飛び出し、ポッドを展開。
完璧な奇襲でモビルスーツ部隊の背後を取り、最後尾にいたゲイツR1機を撃墜した。
「ショーン!?」
「背後から奇襲!? デブリに潜んでやがったのか!」
「散開して各個に応戦ッ!」
ドラグーンを駆使するカオスを相手に、砲撃戦装備の機体でまとまっていては包囲され的になるだけ。
散らばり各個で応戦するようシンがルナマリアとデイルに伝え、インパルスをカオスの本体に向かって飛ばした。
「これ以上やらせるかッ!」
「来たな合体野郎!」
ショーンが搭乗するゲイツが撃墜されるとともに、追撃していたはずのボギーワンがミネルバの熱源索敵システムからロスト。
ここに来て今まで追ってきたのがいつの間にかデコイに入れ替わっていたことに気付かされる。
「ショーン機ロスト! イエロー62ベータに熱紋3! 該当データあり──カオスです!」
「索敵急いで! ボギーワンを早く!」
さらにミネルバの方でもショーン機の撃墜と、カオスの奇襲を確認。
敵の罠に嵌ったことを察したタリアがボギーワンの索敵を命じるが、熱源探知を誤魔化すためのデコイを発射するとともに小惑星にアンカーを打ち込んで大きく回り込んでいたガーティー・ルーがミネルバの背中を捉えていた。
「ダガー隊発進、機関始動! ミサイル発射管、5番から8番発射。主砲ゴットフリート、照準敵戦艦!」
ダガー隊を繰り出すとともに、ミサイルと主砲のゴットフリートによる攻撃を開始する。
機関の始動とダガー隊の発進によりミネルバの熱紋探知にその存在を知られることとなったが、その時には背後の近距離にてその背中を捉えていた。
「ブルー18、マーク9チャーリーに熱紋──ボギーワンです! 距離500」
「ええ!?」
「さらにモビルスーツ2!」
いつの間にか背後を取られていたことに混乱するミネルバ。
その無防備な背中に、ガーティー・ルーがゴットフリートとミサイルによる攻撃を仕掛けてきた。
「アンチビーム爆雷発射、面舵30トリスタン照準!」
「ダメです、オレンジ22デルタにモビルスーツ!」
「くっ──! 機関最大、右舷の小惑星を盾に回り込んで!」
反撃のためにトリスタンの照準を合わせようとするも、その進路を妨害するようにモビルスーツ部隊が展開している。
そちらに逃げてはダガーの攻撃を無防備に受けるとみたタリアは、すぐに右の小惑星を盾にして回り込むよう指示を出す。
CIWSで接近するミサイルを撃ち落としながら一度ゴットフリートの射線から逃れるも、全ての迎撃はできず至近弾がが小惑星に着弾。
強引な操艦と衝撃波にブリッジには大きなGと衝撃が伝わる。
「メイリン、シンたちを呼び戻して! 残りの機体も出撃!」
「はい!」
「マリク、小惑星表面の隆起をうまく使って直撃を回避!」
「はい!」
「アーサー、迎撃!」
「ディスパール、撃てぇ!」
ミネルバへの被弾を防ぐため、タリアが続け様に指示を飛ばす。
操舵手のマリクが小惑星に艦体を掠める寸前まで接近し、その表面に並ぶ隆起を利用してミサイルやゴットフリートを防ぎ、アーサーは装填していた迎撃ミサイルを発射。
「よし、そのまま追い込むぞ!」
しかしこの程度はネオも想定している。
むしろ小惑星を盾にするように誘い込み、ミネルバの航行する先に張った罠にはめるよう追い込みながら攻撃を繰り返すよう指示を飛ばす。
ダガー隊からミネルバを守るためにレイがザクに乗り込み、出撃準備を整える。
一方、ミネルバへ戻るよう命令が出たシンたちの方では、手数に勝るカオス相手に重い装備とデブリ漂う宙域ということもあり苦戦を強いられていた。
「くっ──!」
「……そこ、貰い!」
「何ッ──!?」
そして、デブリに潜んでいるのはカオス1機ではない。
息を潜め奇襲の機会を狙っていたガナー装備のザクに乗るアウルが、デブリの影に退避していたデイルのゲイツを捉え、M1500オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲にてデブリごと砲撃の餌食にし撃破した。
「デイル!?」
「今の攻撃──ザクか!」
現在のルナマリア機にも装備されているビーム砲から、盗まれたザクによる仕業であることを見抜いたシンが、すぐさま発射元のデブリに向けてミサイルを発射する。
「ちょっ、合体野郎じゃねえか!? スティング、仕事しろよお前!」
「うるさい! 残りは2機だ、さっさと加勢しろ!」
せっかく1機仕留めたというのに、すぐに炙り出され、しかもそれがスティングが対応するということになっていたはずのインパルスからの攻撃だったことを受け、何してんだよとアウルが文句を飛ばしてくる。
それに対しスティングも3機まとめて相手にして、ゲイツRの撃破をお膳立てしてやったのに文句を言うなと返し、さっさと加勢するように指示を出す。
「まあ、あいつには俺も借りがあるからな。やられっぱなしは性に合わないんでね!」
それを受け、もはや隠れる理由もないとアウルもカオスに加勢するべくインパルスを狙って飛び出した。
「くっ──!」
2対1の戦況。
アーモリーワンではガイアとザクだったが、今回はカオスとガナーウォーリアを装備したザクである。
さらに整地されたコロニーではなく、上下に広がり障害物となるデブリの漂う宇宙空間。
あの時よりも不利な戦況に、シンの額に汗が浮かぶ。
さらにメイリンからミネルバが襲撃を受けている為至急戻るようにという緊急通信が入り、やはり追っていたのはデブリでボギーワンがミネルバを捉えていることを知らされることとなった。
「ミネルバが!? 私たちまんまと嵌められたってわけ!?」
「ああ、そうだね。でも、この状況じゃ戻ろうにも──!」
2機のポッドを搭載するカオスと、1撃でもモビルスーツにとっては大きなダメージになるガナーザクウォーリア。
それを相手取るのに手一杯のシンにはミネルバの救援に戻る余裕はない。
「ルナ、君だけでもミネルバに──!」
「あんた1人置いてけるわけないじゃない、バカ!」
「今そんなこと言ってる場合かよ! レイだけじゃガイアが出たら抑えきれない、頼む!」
「……分かった。落とされたら承知しないから!」
カオスとザクをインパルスで抑えるから、その間にミネルバにルナマリアだけでも戻るように言うシン。
しかし2対1の状況で防戦一方となり追い詰められているシンを1人で置いていくわけにはいかないと反論するルナマリアだが、姿を見せていないガイアがボギーワンの方にいるとすればレイだけでは対応困難だからルナマリアだけでも戻るようにと再度シンが訴える。
それを聞き、ルナマリアも足止めできるのはインパルスのみであり母艦をやられては元も子もないと納得して、やられたら承知しないと言い残してミネルバの方に向かっていった。
「仲間に見捨てられてるぜ、可哀想!」
「はっ、単機で俺たちを抑えられると思ってるのか? 思い上がるな!」
ルナマリアが離脱していくのを見て、スティングとアウルはインパルスが2対1の戦況を選んだことに嘲笑と怒りを見せた。
しかしこれはこれで好都合。
最優先目標であるインパルスが向こうから2対1を希望するというなら、ここで落とすか捕まえるかすればいい。
そう判断し、スティングはルナマリア機の相手をさせていた方のポッドもこちらに回し、モビルアーマー形態に変形しカリドゥス改を発射した。
「くたばれ!」
「そんなの──うわぁ!?」
カオスが持つ最強の武装であるカリドゥス改の威力は戦艦も沈めるほど強力である、モビルスーツのシールドでは耐えられるはずもない。
それでもモビルアーマー形態の時しか発射できず、機体そのものを砲身にして発射するため射線の予測は難しくない。
カリドゥス改を回避するシンだが、背後に大型のデブリが接近しており、それにカリドゥス改が直撃したことで発生した爆風によってバランスを崩す。
「そらよ!」
「くっ──!」
すかさずそこにビーム砲を発射するアウル。
咄嗟にシンは機体を立て直すのではなく爆風に煽られる中インパルスを預けるように前へ加速するようにバーニアを噴射。
前方に縦回転する形で機体をザクのビームより回避させた。
「ちょっとはやるじゃん。そうじゃねえと面白くないけどね!」
反撃しようと回りながらもミサイルを発射するが、アウルはザクをデブリに隠しこれを回避。
直後にロックオン警報が鳴り、シンはその警告の方向からビームサーベルでインパルスを狙うカオスを確認して、近づくなとビームライフルを発射する。
「はん、当たるかそんなもの!」
しかし不安定な姿勢で乱射したビームなど、まともに当たるものではない。
命中するビームのみ正確にシールドで捌きインパルスの攻撃を掻い潜ってきたカオスが距離を詰めてきた。
「くそっ──!」
急いで距離を取ろうとするも、カオスの飛ばしたドラグーンが立ち塞がり進路を妨害してくる。
ドラグーンからの攻撃を回避しても、今度はそこを狙うザクからの遠距離砲撃が飛んできて、紙一重でそれをかわしても次のドラグーンが……というような形で繰り広げられる連携に、シンは回避と防戦に手一杯となり反撃する余裕がなかった。
そして付け狙うカオスは隙あらば落とそうとカリドゥス改を撃ってくる。
ザクから飛んでくる長距離砲撃と共にあの高威力ビーム兵器は受けるわけには行かない。
特にこの攻撃を注意しつつ、ドラグーンの攻撃も何とかシールドを駆使して凌いで、カオスからのビームライフルにも注意を払わなければと、2対1だがドラグーンのおかげでより数の劣勢の中に追い込まれるシンは余裕がない。
そしてその隙を狙うようにカオスは距離を詰めようとしてくる。
ブラストインパルスの装備を見て近接戦に不向きと思っているのかも知れない。
実際、砲撃戦で真価を発揮するブラストインパルスの場合、ソードインパルスと比較すると近接戦闘は劣っている。
「退避どころか、反撃する余裕も……!」
「そらそらどうしたぁ!」
カオスがモビルアーマー形態からモビルスーツに変形し、ビームサーベルを抜刀して距離を一気に詰めてきた。
ミサイルを発射して牽制するが、カオスもドラグーンを駆使してそのミサイルを迎撃する。追い払おうにも引き剥がせない。
加えてザクからの砲撃もあり、むしろインパルスの方が足を止められ捕まってしまうこととなった。
「何か、この状況を打破できるのはないか……あそこなら!」
何とか振り切るための手段はないかと、焦りながら周囲を見渡すシンの目に、大型のコロニーの残骸らしきデブリが入る。
あの隙間に逃げ込めばドラグーンを展開できずザクの砲撃からも身を隠せるはずとみて、ビームライフルとレールガンを牽制にカオスに発射し隙を作り、デブリの方へと退避した。
「アウル、回り込め! 挟み撃ちで奴の首を取る!」
「了解! 首は別にいらないけどね!」
ドラグーンを展開できないデブリの狭い空間に逃げ込まれたことで、一旦ポッドを戻したスティングは、アウルに回り込むよう伝えると逃げ込んだインパルスを外に追い立てるためにカオスで追撃した。
「たわけ! そんなことで逃げられると思ったか!」
「くそっ!」
モビルアーマー形態に変形し、デブリにカリドゥス改を撃ち込む。
高威力のビームはインパルスの逃げ込んだデブリを破壊し、瓦礫に押し潰されそうになったシンはたまらずデブリの内部から追い立てられた。
「そこぉ!」
「しまっ──うあああ!?」
すかさず回り込んだアウルが、出てきたところにビーム砲を発射。
間一髪で回避したものの、背後のデブリに直撃したビームが爆発を起こし、爆風にインパルスは吹き飛ばされる。
「早く、立て直さないと……!」
「落ちろ!」
機体を立て直そうとしたところに、休む暇など与えないとカオスから飛ばされたドラグーンがビームを撃ってくる。
何発か機体をかすめ、そのうちの1発が右膝に直撃しインパルスは右足を破壊されてしまった。
「くそっ、足が──!」
宇宙空間の戦闘なので足を失っても支障はあまりないのが幸いだったが、ミネルバと離れている以上レッグフライヤーの換装もできない。
「貰った──!」
そこにカオスがビームサーベルを展開し接近、コアスプレンダーを狙う横一文字の斬撃を繰り出してくる。
「────ッ!」
咄嗟にシンはコアスプレンダーとチェストフライヤーを一瞬切り離す。
コアスプレンダーにいるパイロットを狙ったビームサーベルは切り離しでできた空間を切り裂くのみで、奇跡的にインパルスに当たることはなかった。
「チッ! ふざけた回避を──!」
「ハァッ……ハァッ……くっ!」
咄嗟の回避に、死の恐怖が間近に迫ったこともありシンの心臓が早鐘を打つ。
しかし息つく暇などない。
合体・分離機構を見ていたスティングはそのような回避も想定内だと動揺することなく機体を翻し、再び間合いを詰めてきた。
ブラストインパルスは高火力の支援砲撃や対艦戦闘向けの装備である。
ビームライフルやミサイルなどで中距離戦闘にも対応可能な装備を整えてはいるようだが、対艦戦闘を想定した武装であることは明白。
換装するタイプならむしろ各パーツは近接戦・砲撃戦・高機動に特化したタイプで構成され、母艦からの支援がなく孤立した状態なら換装もままならないだろう。
ガーティー・ルーを狙ってモビルスーツ相手の近接戦に不向きな装備を揃えてきたブラストインパルスが近接戦に向いていないと見たスティングは、むしろ近接戦闘装備が充実しているカオスで執拗に接近戦を仕掛けてきた。
「懐に入れば、貴様など!」
「なら、こいつで!」
「何ッ!?」
しかし、スティングの予想は裏切られる。
ブラストインパルスは確かに砲撃戦による遠距離戦闘や対艦戦闘を重視している装備だが、バスターやカラミティのように近接戦闘ができないわけではない。
中距離戦闘に対応できるようビームライフルやミサイルポッドを、そして近接戦闘に対応可能な装備であるビームジャベリンを搭載している。
長柄で先端のみにビームが展開しているというビームサーベルと比べると少々取り回しが難しい装備ではあるが、武装が重い為動きが鈍重になりやすいのを長いリーチで補い、ビームを展開する刃が小さい分出力が少なくて済むというその重武装と高火力ゆえに燃費が悪くバッテリーの消耗が激しいブラストインパルスに適した近接戦闘装備であった。
突然取り出した近接戦装備に驚きながらも、カオスのビームサーベルで切り結ぶスティング。
リーチは槍の分インパルスの方が上であり、回避の難しい薙ぎ払いや刺突を扱うジャベリンは牽制に向いている。
ビームの刃はVPS装甲にも有効なため、近接戦闘装備が充実しているがリーチはジャベリンに劣るカオスでは距離を詰めにくい厄介な装備だった。
「チッ……鬱陶しい装備を!」
ジャベリンの刃をシールドで防ぎつつ、ポッドからミサイルを発射するカオス。
「こんのぉ!」
しかし、考えていることが同じだったのか鏡合わせのようにインパルスもランチャーからミサイルを発射してきた。
両者とも頭部のCIWSで撃ち漏らしたミサイルを迎撃。
その際、シンはジャベリンを振り回し、たまらずカオスが距離を取ろうとしたところにビームライフルを発射してきた。
「そこだ!」
「ええい、落ちろ!」
ビームライフルの射線に間一髪で滑り込ませたシールドで防ぐカオス。
お返しだと言わんばかりにビームライフルを撃ち返すも、インパルスもカリドゥス改ならばともかくビームライフルならば十分防げるシールドでそれを受けた。
「何してんだよスティング!」
苦戦するカオスに、見かねたアウルが背後からインパルスのコアスプレンダーを狙いビーム砲を構える。
「そこ!」
しかしその瞬間、背中を狙われるタイミングを読んでいたシンがブラストインパルスの最大火力の装備であるケルベロス高エネルギー長射程ビーム砲のうちの1門を向けて、ザクの方を向かずに、しかし狙っていたかのように射線に重ねて発射してきた。
「やべっ──!?」
即座に砲撃を中止して回避するアウル。
直後、ケルベロスは先ほどまでアウルが身を隠していたデブリを破壊し、先ほどの意趣返しだと言わんばかりに爆風でアウルのザクを吹き飛ばした。
「ぐうぅぅ……!」
「アウル!」
近接戦に不向きな機体と見て仕掛けるも跳ね返され、背後を狙った奇襲攻撃にも対応された。
さっきまでの木偶の坊がどこにいったと苛立つスティング。
「ハァ……ハァ……よしっ!」
一方、シンは模擬戦で何度挑んでも勝てない姉との訓練を思い出していた。
デブリベルトを想定した模擬戦。
当たると思ったところでデブリが邪魔をする。姉のゲイツを追いかけるのに集中するといいところでデブリが進路の邪魔をする。
姉の駆使する機体はデブリに隠れるのが上手いし、奇襲を仕掛けてくるのも上手い。
集中しているのにいつの間にか見逃す、集中しすぎるとデブリに邪魔される、そして撃破判定に追い込まれるというのが定番だった。
「姉さん、強すぎるよ……!」
「はっはっはっ! 弟に負けたら姉失格だからね、僕に勝とうなんて100年早い」
模擬戦終わりに並んで座ると、彼女はいつもシンの頭を髪型が崩れるまで撫で回してから、肩に手を回し抱き寄せて少年のように笑っていた。
「シン、君はパイロットとしてすごい才能がある。機体を使いこなすのがとても上手い」
「嫌味かよ」
「拗ねるな。けど、視野が狭いんだ」
「視野が、狭い……?」
ユノはシンにそうアドバイスをした。
「こいつは経験がモノを言うから一朝一夕でどうにかなるものじゃないけど、一歩目のアドバイスならしてやれる」
そう言うとユノは先ほどボロ負けした模擬戦のログを出し、戦闘時間とお互いの機体が撃った弾数、そして被弾した数の表を見せた。
「何か気づくことはない?」
「気づくこと……?」
表を見るシンは、ふと両機の撃った弾数に目がつく。
ユノの機体の方が圧倒的に撃った数が少ないのだ。にもかかわらず、被弾はシンの方が多い。
そして、最後に撃墜判定を出された場所以外でユノが撃ってきた箇所では、シンもライフルを撃っている。
そこは両機の間のデブリが少なくなるか、突然背後を取られた場所だった。
「デブリの宙域では余計なゴミが多いし、お互い動き回るモビルスーツ同士なら、早々ビームは当てられるもんじゃない。自然とここだって思える、たまにある開けた場所が1番当てやすくなる。そういう場所はデカいデブリから距離があることが多い。だから、デカいデブリから出たところで姿が見えるからって撃ちまくっても、近場に細かいデブリがあって邪魔をするから当てにくいんだよ」
そして──と、背後を突然取られた場所を示す。
そこでのユノの機体の動きを指で示し、デブリに隠れている間に減速することで姿が見えなくなる前の速度で来ると誤認させてタイミングをずらし背後をとると言うのがカラクリなんだと説明した。
「コーディネイターって言っても、人間の脳は固定観念ってのをすぐ作っちゃうからね。デブリを抜けた出会い頭をチャンスなんて思っているようじゃまだまだだよ。せっかく姿が見えなくなる瞬間なんだ、減速して出てくるタイミングをズラすだけで背後を取るのは容易になる」
だから、とユノは教える。
「邪魔なデブリに囚われて視野を狭くしないように。瓦礫一つ一つにまで気を配れって言ってるわけじゃない、デブリの傾向を覚えるのと人間の脳は簡単に騙せるんだっていうことを覚えた上でこのマップを見れば、視野は簡単に広くなりやすい。デブリのあるところでは錯覚を駆使すること、そして大きなデブリの近くでは奇襲以外で無闇に撃たず狙いやすい場所まで我慢すること。まずはこれを覚えること。それを知ればデカいデブリは奇襲ポイントだとか、狙いやすい場所でこそ敵機に集中するとか、次のことが見えてくる」
「次のこと……?」
「まあ、やってみればわかるさ。そら、休憩終わり! もう一戦だ、まだへばってないよね?」
「もちろん!」
あの時は何回挑んで負けただろうか。
いや、今は勝敗よりも思い出すべきことがある。
ユノとの訓練を思い出し、シンは一度深呼吸をして操縦桿を握りなおした。
「……ああ、分かってるよ姉さん」
視野を広く持つ。
敵の機体だけに集中せず、フィールドの特性を見てチャンスを探す。
そして、それを知れば奇襲への警戒やデブリでの戦闘で狙いやすいチャンスのポイントも見えてくる。
インパルスの操縦桿を握る手の力を少し緩めて焦りで追い詰められていた思考を落ち着かせ、シンは視界を広く持つことを心がけた。
その時、ロックオン警報がなるよりも早く、アウルのザクに狙われているのが見えた。
それにより、ケルベロスを先に撃つことができたのである。
ミサイルの撃ち合いで距離を取っていたカオスに、ビームジャベリンをすかさず投擲。
2本装備しているため、1本を投擲武器にしても問題はない。
そしてビームの近接兵器であるとともに質量を用いた武器にもなるジャベリンは、咄嗟に構えたカオスのシールドを衝突時の衝撃で弾き機体のバランスを崩した。
「こいつ──!」
「そこだぁ!」
そこにもう一門のケルベロスを発射する。
咄嗟にカオスがバーニアを吹かせて緊急上昇を試みたことで致命傷とはならなかったものの、ビームクローを装備する脚一つをケルベロスが貫き損害を与えることに成功した。
「よし、これなら──」
「スティング!」
このままカオスを追い詰める。
追撃を仕掛けようとしたシンだが、そうはさせじと体制を建て直したザクがトマホークを投げて妨害。
カオスが離脱するわずかな時間を作った。
鬱陶しいザクを落としてやると頭に血が上りそうになるが、シンは落ち着けと自分に言い聞かせた。
ガナーウォーリアのビーム砲は射程と威力こそ強力だが、燃費が悪くチャージも時間を要する。だからザクはトマホークを投げて牽制してきた。
カオスは機動力に優れるが、モビルアーマー形態は加速が強い為細かい機動を取るのは難しい。
デブリベルト内では細かい機動をとれるモビルスーツの方が戦闘に向いており、ドラグーンの側背を狙う攻撃に注意すれば近・中距離戦でも戦える。
(稼働時間はまだある。ミネルバの方をレイとルナマリアで守り切ってくれることを信じて、自分はここでカオスを抑えることに集中すればいい……。よし、戦える!)
「こいつ、また動きが──!」
「鬱陶しいな──って、危ねっ!? ああ、俺も新型奪えてればなぁ!」
「いくぞカオス!」
ポッドを飛ばしてくるカオスに対し、シンは細かいデブリが漂う場所に入って背中を守りつつ、ミサイルとジャベリンで牽制し、ザクは姿を見せるたびにケルベロスをお見舞いしてと、防戦一方から反撃に転じむしろスティングたちを押し始めた。
インパルスの方が2対1にも関わらず互角以上に渡り合い始めていた一方、シンにカオスたちを任せてミネルバに急ぐルナマリアのザクだったが。
「──そこッ!」
「なっ!?」
ミネルバに急ぐ彼女の機体に、デブリに隠れていたガイアが奇襲する形でビームライフルを発射し、ガナーウォーリアの長距離ビーム砲を破壊し襲撃を仕掛けてきた。
「ガイア!? こんな時に……!」
「行かせない。赤いの、倒すッ!」
ビーム砲を失ったルナマリアは、背中を見せるわけにも行かずミネルバの救援を一旦諦め、トマホークを抜きガイアを迎え撃つ構えをとった。
「ごめん、シン! ガイアに捕まった!」
「何だって!?」
「すぐに倒してミネルバに向かうから、あんたも負けんじゃないわよ!」
「──ああ、任せろ!」
シンにガイアが仕掛けてきたことを伝え、お互い生還することを約束する。
そしてビームサーベルを抜刀して飛びかかってきたガイアの攻撃をシールドで防ぎつつ、トマホークを振るい、お互いの近接武器をシールドで受け合う形の鍔迫り合いに持ち込んだ。
「その機体返しなさい、この泥棒がぁ!」
「落とす……!」
パワーはガイアが上だが、地面がないため転倒することはない宇宙空間ならさほど問題ではない。
ザクにはパワーで上回っているからと力で押し込もうとしてくるガイアに対し、ルナマリアは機体を捻ってシールドをずらしビームサーベルを往なしてバランスを崩し、その隙にコクピットのある胴体部を装甲で覆われた脚で蹴り飛ばした。
「ううぅぅ……!」
「力任せなんて、品がないわね!」
「こんのぉおお!」
赤い機体のパイロットはザクを上手く扱っている。
一筋縄では行かない相手に、苦戦するスティングたちを助けたい気持ちも逸り、ステラは苛立ちをぶつけるようにビームサーベルを振るった。
ゲイツ2機を落とされ、シンはスティングとアウルに、ルナマリアはステラの駆使するガイアの奇襲を受けて足止めを喰らったことで孤立してしまったミネルバ。
ダガー隊の攻撃と後ろをとるガーティー・ルーにより、残ったモビルスーツであるレイのザクファントムを出撃させようにも発進針路も取れず、小惑星を使って何とか被弾を減らし回避に専念するしかない状態に追い込まれていた。
「かかったな──奴がへばりついている小惑星にミサイルをぶち込め! 岩の下敷きにして足を止めろ!」
そしてその状況に追い込んだネオは作戦通りだと、岩が出ている場所にミネルバがついたところで小惑星に向けてミサイルを撃つよう指示を出す。
ガーティー・ルーから発射されたミサイルによって岩が次々に破壊され、その残骸が小惑星の重力により引き寄せられミネルバを巻き込みながら落ちてきた。
「まずい──艦を小惑星から離してください!」
ネオの狙いにいち早く気づいたアスランが叫ぶが、一足遅い。
ミサイル攻撃で砕かれた岩の崩壊と落下により生じた無数の瓦礫がミネルバに襲いかかった。
「艦長、これでは!」
「艦首を上げて、減速20! 全部かわさなくていい、大きいのだけ避けなさい!」
「了解!」
タリアが指示を飛ばし操舵手が大きな岩を回避することで何とか落石に埋まるのは避けられたものの、岩塊のぶつかった衝撃でモビルスーツ発進のためのカタパルトや左舷側のミサイル発射管がやられてしまう。
しかも何とか凌いだと思ったところにすかさず第二波のミサイル攻撃が次の落石を引き起こし、これにミネルバは艦体が巻き込まれついに埋まってしまった。
「くっ……レイのザクを出して!」
この状態でダガー部隊に張り付かれれば一方的にやられてしまう。
何とか状況を打開するため、タリアは残された機体であるレイのザクファントムの出撃を命令した。
カタパルトがやられているため、直接機体を飛ばしての出撃となる。
ミネルバから出たレイは、まず近場のダガーを撃破しようとしたところで、再び不思議な感覚が脳に走った。
「これは──」
「やはり君か、白いザクのザフト君!」
「あのモビルアーマーか!」
その感覚の正体は、やはりと言うべきかアーモリーワン外苑で交戦したガンバレルを搭載したモビルアーマー。
エグザスを駆るネオだった。