もしもザフト水泳部の新米が連合に盗まれずミネルバに加入したら 作:ちゃーらんき
落石に巻き込まれたミネルバ。
シンとルナマリアはカオスやガイアと交戦しており救援は困難。
レイはエグザス及びダガー隊を抑えるのに手一杯。
そんな中、動かないミネルバの状況を見かねたアスランが、打開するための策を提案する。
果たしてミネルバの運命は如何に……
回想をつけるとしたらこんな感じでしょうか。
ダガー部隊をミネルバから引き離すべく出撃したレイの前に、アーモリーワンでも交戦したモビルアーマーのガンバレルが襲撃してくる。
エグザスのガンバレルに囲まれながらもカオスを受領する予定だった程の高い空間認識能力を駆使して四方からの攻撃に反応し、レイは冷静にエグザスの先制攻撃を躱し本体を射程圏内に収めた。
「まったく、君はいったい何なんだ! 白い坊主君」
なぜかこのザクと対峙する時だけ体を突き抜ける不思議な感覚。
自分はザフトに知り合いなどいないはずなのに、なぜそんなものを感じるのか。
訳のわからない、しかし無意識に嫌悪感を感じるその感覚に苛立ちを覚え、それを白いザクにぶつけるようにネオはレイのザクファントムに仕掛けていく。
しかしガンバレルのビームは当たらない。
4機を制御すると並のザフトならば容易く追い込み落とせるのだが、レイほどの実力者相手となると展開するガンバレルを増やすとむしろ個々の制御が疎かになり逆に回避されやすくなってしまう。
エグザスのガンバレルを掻い潜るレイのザクファントムに対し、数が足りないならばとネオを援護するためにダガー部隊が接近してきた。
エグザスとの戦闘に集中していたレイのザクを狙い、レールガンとビームライフルが飛んでくる。
ダガー隊の増援に、レイは忌々しいと言わんばかりに舌打ちすると、ネオが制御するエグザスのガンバレルに比べればカカシ同然のダガーLを狙いビーム突撃銃を発射する。
「邪魔だ!」
「大佐ぁぁあああ!」
レイの放ったビームは正確にダガーのうち1機のコクピットを貫き、宇宙の藻屑へと変える。
断末魔を残しダガーLが1機沈められたのを見たネオは、残る1機にミネルバを狙えと命令した。
「下がれミラー! こいつは手強い、お前は艦を狙え!」
「了解!」
ネオの命令を受け、ミラーはダガーLをミネルバの方に向ける。
「させるか!」
「君の相手は俺だぞ、白い坊主君!」
ミネルバには行かせないとダガーLを追おうとしたレイだが、そうはさせじとガンバレルが進路を塞ぐように展開してビームを撃ってきたため、断念せざるを得なかった。
「くそっ! 邪魔をするな!」
「──なんて言ってそうだねぇ? でも残念、邪魔させてもらうよ!」
エグザス含め、複数の方向からくるビーム。
1つでも落とせればとビーム突撃銃でガンバレルを狙うレイだが、ネオは巧みにガンバレルを操り、デブリも利用しながら的を絞らせずレイのザクを翻弄する。
「こんなこともできたりするぜ、躱せるかな?」
ならばとレイもデブリを利用してガンバレルの射線から逃れようとするが、エグザスのガンバレルにはビームカッターも搭載されており、細かいデブリ程度なら切り裂ける高出力のビームの刃でそのデブリの盾を貫いてザクの背中を斬りつけてきた。
「くっ……!」
「1機で抑えようとは、モビルアーマーだからってあまり舐めないでもらいたいもんだね!」
背面のロケットランチャーがビームカッターにより切り裂かれ、咄嗟に切り離した直後にランチャー内のロケットが誘爆を起こす。
そして体制を崩したところにすかさずガンバレルからビームを撃ち込まれる。
デブリでの戦闘にも慣れており、巧みな操縦でガンバレルを駆使するネオに、ザクに被弾を許すレイはミネルバ救援どころではなくなってしまう。
そしてレイがエグザスに捕まったことで、ミラーの駆使するダガーLがミネルバを狙い接近してきた。
「モビルスーツ接近!」
「レイは!?」
「現在モビルアーマーと交戦中!」
「シンたちはまだ戻れないの!?」
「インパルスはカオス及びザクと、ルナマリア機はガイアと交戦中です!」
「アーサー、落とせなくていい! 取りつかせないで!」
「は、はい! CIWS起動、イゾルデ照準敵モビルスーツ! 撃てぇ!」
ダガーLの対応はできないかとモビルスーツ部隊を呼び戻そうとするが、レイはエグザスと、シンはカオス及びザクと、ルナマリアはガイアと交戦中であり、ミネルバの防衛に戻れる余裕はない。
左舷のミサイル発射管も落石で潰されており、CIWSと動かせる副砲のイゾルデでダガーLを取りつかせないよう弾幕を張るくらいしかできなかった。
このままでは敵艦の的になる。
いっそのことタンホイザーで瓦礫を吹き飛ばすのはどうかとアーサーが博打の案を提示したが、そんなことをしても新たな岩が降ってきてまた埋められるだけだとタリアは却下する。
「右舷のスラスターはいくつ生きてますか!?」
ボギーワンの対艦砲撃に晒される前に何とか脱出しなければと焦るミネルバのブリッジにて、その中で突然アスランが声を上げた。
突然アスランが声を上げたことに驚きながら振り向くタリア。
彼女が目を合わせたデュランダルは、彼の言うことを聞いてくれと伝えるように静かに頷く。
デュランダルの無言の指示を受け、タリアはアスランに答えた。
「6機よ。でも、そんなのでのこのこ出ていってもまたいい的にされるだけだわ」
生きてるスラスターを全力で吹かせたとしても、推力が足りない。
むしろこの状況でボロボロの艦体を晒すことになり、ボギーワンの対艦攻撃の的にされるだけである。
そんなもので脱出できるならしていると、状況の焦りから苛立ちの混じった棘のある口調で返したタリアに、アスランはこの状況を打破するための作戦を告げた。
「同時に右舷の砲を一斉に撃つんです、小惑星に向けて」
「────!」
「ええっ!?」
アスランの考えを聞いたタリアがその意図を察して彼の方を振り向き、アーサーは驚きと困惑の声を上げた。
「爆圧で一気に艦体を押し出すんですよ、周りの岩も一緒に吹き飛ばして!」
アスランの策は、スラスターと共に右舷側のミサイルなどを小惑星に向けて発射し、これを爆破。
発生する爆風で岩を吹き飛ばすと共に、ミネルバの艦体を押し出して離脱するというものだった。
なるほどそれならば状況を打開できるかもしれない。
しかし、そんなことをすればミネルバも無事では済まない。
何しろその推力として使う爆風を至近距離で受けることになるのだから。
「バカ言うな! そ、そんなことしたらミネルバの艦体だって、無事じゃ済まないぞ!」
「今は現状回避が優先です。ここにいたって、ただ的になるだけだ!」
下手したら大きな損傷を受けて沈むかもしれない。
リスクの大きいアスランの案にアーサーが反論するが、現状でもただ的になってやられるだけであるとアスランは訴える。
そう言われればとアーサーも口を閉ざす。
そして、アスランの案よりもいい方法をブリッジは思いつかなかった。
ミネルバも無事では済まない。下手をすれば沈むかもしれない危険な賭けである。
迷うタリアを背中を押したのは、デュランダルだった。
「タリア、彼の案しか今はないのではないか?」
「……確かにね。いいわ、やってみましょう」
「艦長!?」
デュランダルの一声が背中を押す形となり、タリアはアスランの作戦を採用することを決定する。
外部の人間が出したハイリスクの案を採用したタリアに、クルーの命を預かる立場のアーサーは正気ですかと言わんばかりの驚愕する声をあげるが、タリアは文句は後で聞くからと宥めて指示を出した。
「右舷側の火砲を全て発射準備、右舷スラスター全開と同時に一斉斉射!」
「了解。右舷ミサイル発射管、ナイトハルト装填。右舷側、火砲一斉射準備!」
「合図と同時に右舷スラスター全開!」
「タイミング合わせてよ」
火砲管制担当のチェンが右舷側の火砲の斉射準備を行い、同時に操舵手のマリクが右舷側のスラスターを始動する。
「総員、衝撃に備えて! 行くわよ、右舷スラスター全開!」
「右舷全砲塔、撃てぇ!」
そしてタリアの合図と共にスラスターを全開にし、同時にアーサーの指示で右舷側の火砲を小惑星に向けて一斉斉射。
爆発によって岩塊を吹き飛ばすと共に、その爆風でミネルバの艦体を小惑星から離した。
「ミネルバ!?」
「何ッ!?」
ミネルバが小惑星から急加速で離れる光景は、レイとネオの目にも映る。
ミラーのダガーLも爆風で吹き飛ばしながら小惑星からの離脱に成功し、ミネルバは爆発によって散った岩塊漂う宙域を一気に抜けていった。
「回頭30! ボギーワンを撃つ!」
「タンホイザー、照準ボギーワン!」
さらにタリアはすかさず艦首をガーティー・ルーに向け、ミネルバの保有する最強の武装である艦首砲“タンホイザー”を起動。
「狙われてるぞ、リー!」
「回避! 取り舵いっぱい!」
艦首砲の起動を見たネオがイアンに警告し、狙われていることを察知したイアンも回避行動を取ろうと試みる。
「撃てぇ!」
しかしミネルバの砲撃を躱しきれず、タンホイザーはガーティー・ルーの右舷を掠め右のカタパルトを吹き飛ばした。
被弾したガーティー・ルーは煙を吐きながらミネルバの横を掠め、小惑星の方に向かって落ちていく。
機関は生きていたため、イアンの指揮により何とか小惑星に座礁する事態は避けたものの、ミネルバを叩くつもりがこちらの母艦に損害を受けることとなってしまった。
「ええい、あの状況からよもや生き返るとは!」
「行かせるか!」
ならば自分が叩くと、エグザスをミネルバに向けるネオ。
しかしそうはいくかとレイのザクが追いつき、気が逸れた隙にガンバレル1機を落として本体にもビーム突撃銃を発射してきた。
「ああ、もう! 君と遊んでいる場合じゃなくなったんだよ!」
母艦を叩かれ、向こうはモビルスーツも健在。
スティングたちの方もインパルスに苦戦しており、ガンバレルも1機叩かれてしまった。
そしてミネルバは危機を脱して離脱。レイの妨害もありエグザスによる追撃もできない。
「やむを得んな……帰還信号を発射! モビルスーツ収容準備! 宙域を離脱する!」
下手をすればカオスをインパルスによって返り討ちにされかねない戦況に、イアンはここらが潮時だと判断して帰還を指示する信号弾を発射する。
「またいつの日か出会えることを楽しみにしているよ。白い坊主くん、そしてザフトの諸君」
ミネルバに近づくなと言わんばかりにガーティー・ルーとの間を漂っている白いザクを見ながら、ネオはガーティー・ルーへとエグザスを飛ばしていった。
「帰還信号!? ──って、こっちの艦がやられてるじゃん! ネオのやつ何してんだよ!」
「チッ……覚えていろ、合体野郎。帰るぞお前ら」
「ネオ……? うん……ステラ、帰る」
そして帰還指示は、シンたちと交戦するエクステンデッドたちにも通信と共に信号弾によって伝えられる。
ガーティー・ルーが叩かれたことをそこで知ったアウルはこっちが新型抑えていたのにまんまと対艦戦闘で負けてるネオに文句をこぼし、スティングはインパルスへ恨み節を残して、そしてステラは戦闘終了の合図を見てネオからの命令ならと、各々戦闘を切り上げて撤退していった。
「逃げた……?」
そしてスティングたちを押し返していたとはいえ、シンは満身創痍。インパルスの残存エネルギーも危険域まで達しており、長距離ビーム砲とカリドゥス改でデブリを豪快に砕き目眩しにしてさっさと切り上げ撤退していったカオスたちを追撃する余裕はなかった。
「ミネルバは!?」
また、ガイアと戦闘を繰り広げていたルナマリアの方もかなり追い詰められていたこともあり、決着をつけることなく撤退していったガイアを警戒してながら見送ると、ミネルバの方へと急いで撤退していった。
「ちぇっ、今回は2枚抜きで終わりか」
「ステラ、ネオが帰って来いってよ」
「うん」
「……今は、ミネルバに戻らないと」
ガーティー・ルーの方へ離脱していくモビルスーツ。
今度は勝つ、と静かに誓ったシンは、ルナマリアに遅れる形でミネルバへ帰投した。
ミネルバは満身創痍だった。
「艦長、さっきの爆発でさらに第二エンジンと左舷熱センサーが……」
ボロボロの艦体は、メインの推進機や熱源センサーにも破損が多数あり、速力は大幅に低下してしまっている。
離脱するガーティー・ルーはカタパルトをやられたものの、推進装置は無事であり、モビルスーツを収容すると動けなくなったミネルバを嘲笑うように高速で離脱していった。
クルーも機体も艦も疲れ果てている。
もはや、ミネルバにガーティー・ルーを追撃する余力は残されていない。
その状況に、デュランダルはこれ以上カガリや自分が搭乗しているミネルバに無理をさせるわけには行かないと判断し、ボギーワン捜索・追撃任務には別の部隊を動員することを決めた。
「グラディス艦長、もういい。あとは別の策を講じる。私もアスハ代表をこれ以上振り回すわけには行かん」
「……申し訳ありません」
「謝らないでくれ。君たちは全力で事態収集に向けて戦ってくれた、責められるいわれなどない。……殉職した2名のパイロットの遺族には、私の方から彼らが勇敢に戦い責務を全うしたと伝えておこう」
こうしてアーモリーワン事変は、ザフトの新型モビルスーツ2機とザク1機を奪われ、アーモリーワンに多大な被害を出し、追撃したミネルバにも所属するモビルスーツパイロットが2名の殉職者を出し、奪還叶わずボギーワンを取り逃すという最悪の結果となってしまった。
以後、ミネルバはボギーワン追撃任務を外れ、事態の収束を図るデュランダルは別のザフト部隊を動員して姿をくらませたボギーワンの索敵・追撃を行うこととする。
しかし、このあとボギーワンの追撃どころではなくなる大事件が起こることとなり、ミネルバもその事態の解決のために応急修理だけを済ませて、デュランダルとカガリを乗せたまま新たな戦場に赴くこととなるのであった。
キリがいいので、短いですが今回はここまでです。
次回はコズミック・イラのコロニー落としこと、ユニウスセブン落下テロ事件になります。