もしもザフト水泳部の新米が連合に盗まれずミネルバに加入したら   作:ちゃーらんき

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お待たせしました。
今回は『phase11 選びし道』〜『phase12 血に染まる海』に当たる場面になります。


不退転

 

 仮初の平和は破られた。

 2度目の連合・プラント間の本格的な軍事衝突に発展することとなった、L5宙域における両軍宇宙艦隊による艦隊戦。

 そして、プラント本国を狙った核攻撃と、それを阻止したニュートロンスタンピーダー。

 

 一方的で強引な言いがかりから始めた戦争で、プラントを本気で滅亡させる攻撃を仕掛けた大西洋連邦。

 この強硬な姿勢はプラントをあくまでも支配下に置きたがっていた地球連合内の同盟国だけでなく、復讐を大義として掲げる絶滅戦争よりも復興の優先を願う自国民からも政権への批判が起こるなど、連合側の不和を招く。

 

 それでもブルーコスモスを中心とした強烈な反コーディネイター勢力を中心とする強行姿勢を変えない派閥や、大西洋連邦の経済を牛耳る軍産複合体ロゴスが継戦を支持したことで、これらを支持基盤とする大西洋連邦とユーラシア連邦の現政権は戦争継続を変えず、プラント側からの講和の提案を拒絶した。

 

 そして、なによりこの核攻撃に最も反発の姿勢を見せたのが、核兵器を向けられたプラントであった。

 

 戦火の拡大を望まないデュランダルはあくまで迎撃主体の戦闘のみに徹し、敵基地への反撃などは行わず粘り強く連合との講和の道を模索していたが、あわや滅ぶ寸前に追い込まれた核攻撃の恐怖からプラント内ではそれを弱腰として非難する声が高くなる。

 

 場合によっては政権の支持基盤そのものが崩壊し、逆に地球滅亡を望むような過激派が台頭することになりかねない危険性を見たデュランダルは、ついにザフト側からのプラント本国を守るための敵軍事拠点に対する無力化を目的とする攻勢作戦──積極的自衛権の行使という名の、ザフト側の連合加盟国に対する越境攻撃案を承認するに至った。

 

 それでもあくまでも積極的自衛権の行使のための攻撃であることを明確とし、対象を軍事施設のみに限定すること、攻撃時には避難勧告等を必ず行い非戦闘員の避難のための猶予を与えること、降伏の意思を示した相手には決して危害を加えないことなど、憎しみに走る絶滅戦争に発展しないよう多くの制約を課した上での地球への大規模降下作戦、月基地に対する攻撃作戦が裁可された。

 

 この発表を受け、早期に東アジア共和国がプラントとの交渉を開始する。

 プラントへの攻撃に参加しておきながら、大西洋連邦がいきなり熱核攻撃をプラントに仕掛ける暴挙に出たことや、自国本土への被害の恐れが生じることから、このザフトによる大規模降下作戦と地球侵攻の目標から外れるために、形の上での交戦状態は維持しつつも、連合には武器などの支援をするのみで軍を用いた直接のザフトとの交戦状態は全面解除し、事実上の停戦状態に移行したのである。

 

 デュランダルは東アジア共和国からの秘密裏に持ちかけられた停戦を受諾。

 降下作戦による攻勢目標から東アジア共和国を除外し、それにより生じた余剰の戦力をカーペンタリアの援軍に回すよう作戦が変更されることとなった。

 

 東アジア共和国も停戦案に基づき、宇宙に展開していた戦力を引き上げるとともに、カーペンタリアの包囲に参加していた艦隊も撤収させる。

 それはカーペンタリアの包囲が薄くなったことと、そしてザフトの大規模な増援が派遣されることになったため南太平洋における連合・ザフト間の戦力比の天秤が大きく動くことを意味していた。

 

 カーペンタリアの包囲網が薄くなった情報をなんとか隠匿したがった連合は通信妨害を強くしたことで、オーブはこの状況を正確に把握することができなくなり、その上で大西洋連邦は脅迫にこの情勢を利用してくる。

 カーペンタリアの増援に回されるザフトの部隊が、大西洋連邦主体の同盟にオーブが参加していることからミネルバと共に内外よりソロモン諸島の攻略用として派遣された部隊であると勝手に情報をすり替えた上で、この大規模降下作戦が始まればオーブも攻撃目標にされるとしたのである。

 

 これを受け、ウナトはここぞとばかりに首長たちを取り込み、カガリが反対していた安全保障を含む大西洋連邦との新たな同盟の締結を押し通した。

 

 恩あるミネルバにだけは、向こうが撃たない限りオーブの銃口をむけて欲しくない。

 せめて大規模降下作戦が発動し、南太平洋にザフトが降りてくるまではオノゴロ島に止まることを許してほしい。

 そして、たとえ交戦状態に入ったとしてもミネルバにはいきなり攻撃はせず、オノゴロ島にとどまっていた場合にも退去命令を出し、降伏の意思がある場合はオーブにて受け入れてほしい。

 最早プラントとの開戦が避けられなくなった状況にて、カガリが引き出せた譲歩はこれが限界だった。

 

 同盟締結に伴い、ウナトからミネルバの情報を得た大西洋連邦はザフトの最新鋭艦を沈めるべく、ハワイから繰り出した艦隊の進路を変えオーブの救援の名目でソロモン諸島に向けている。

 孤立しており通信妨害によって情報を得られていないミネルバは、この危険な現状を把握していない。

 

 オーブが完全にプラントの敵国に回る方針に動いたことを受け、ミネルバの危機を確認したマリア──マリュー・ラミアスとアンドリュー・バルトフェルドたちは、秘匿通信にてミネルバのこの危険な現状を伝えオノゴロ島から可能な限り早く退去するよう警告を出した。

 

 ミネルバが自艦に向けられたその秘匿通信を傍受したのは、修理を終え物資の搬入も終わりいざ出航するかというタイミングにてオーブから海が荒れているからと最大でさらに3日の滞在許可が突然降りたという状況であった。

 

 普段ならば、イタズラだと無視する秘匿通信を使った“今すぐオーブから出るべきだ”と訴える謎の通信。

 しかし連合によってやたらと繰り返される通信妨害と、このオーブからの突然のオノゴロ島の滞在の延長を許すという不自然な通達が、タリアにこれがただのイタズラではないのではないかという疑念を持たせた。

 

 オーブの現在の政権は大西洋連邦に近いセイラン家が実質的に国政を握っており、彼らは大西洋連邦との新たな軍事同盟締結に前向きであるという。

 カーペンタリアに向け、ハワイから新型モビルアーマーを擁する大西洋連邦の増援の艦隊が向けられている。

 もしも同盟締結がすでに決定して、オーブがミネルバの存在を大西洋連邦に明かしており、この艦隊がオーブに赴いているとすれば……? 

 

 そんな最悪な予想がよぎった彼女は、カーペンタリアと連絡が取れない現状、唯一の情報源になりそうなこの謎の通信に応答した。

 

「貴方は何者なの? 秘匿通信なんて、正規軍が耳を貸すわけないでしょう」

 

『へえ、応じてくれたのかい。嬉しいねえ』

 

 タリアの問いかけに、秘匿通信を飛ばしてきた相手は警告を呼びかけていた時の真剣な口調から、間延びする軟派な口調になる。

 一見緊張感にかける間延びした声だが、しかしタリアの耳にはそれは相手の油断を誘う染みついた演技の声色として聞き取れた。

 

『そうだなぁ……アンドリュー・バルトフェルドって男を知っているかい? これはそいつからの伝言さ』

 

「砂漠の虎……?」

 

 誰何された通信の相手が名乗ったのは、2年前の大戦にて北アフリカを中心に連合軍を相手に多くの戦果を上げ、ストライクガンダムに一度は討たれるも生き延び、ヤキン・ドゥーエ攻防戦では3隻同盟の一角であるエターナルを指揮し終戦に導いた、砂漠の虎の異名を持つ男の名であった。

 

『ともかく警告はした。降下作戦が始まれば、オーブもこれ以上は日和見を続けることはできない、大西洋連邦との同盟締結は押し切られるだろう。姫さんも頑張ってはくれているけどな。止まることを選ぶならそれもいい。あとはそちらの判断だ、艦長殿』

 

「通信、遮断されました……」

 

 砂漠の虎を名乗った男は、最後にもう一度警告を残し、通信を切る。

 

「……すぐに出航しましょう」

 

「艦長!?」

 

 わずかな沈黙ののち、タリアはオノゴロ島を出る選択をした。

 

 オーブの情勢がきな臭いことは、ユノからの報告で聞いていた。

 そしてプラント本国に対し大西洋連邦が核攻撃をしかけ、デュランダルたちによってそれはなんとか防がれたことも。

 

 今ならばカーペンタリアは東アジア共和国軍が抜けたことで包囲が薄くなっている。

 問題はハワイから派遣された艦隊がオーブに来るか、カーペンタリアに向かうかだが、いずれにせよ動くならば早くしなければならない。

 

 今のオーブは信用できない。

 今回の滞在許可期間の延期も、海が荒れているからとか通信が困難であるからとか、そんな理由で3日も取るのは不自然だった。

 ミネルバをはめようとしている──タリアの軍人としての勘が、オーブに止まることが危険であると警鐘を鳴らしていた。

 

 3隻同盟の勢力は戦後行方不明になっている。

 しかし彼らが身を寄せるとするならば、可能性が高いのはスカンジナビア王国かオーブ。カガリとの繋がりもあるだろうし、オーブの政情について詳しいとしてもなんら不思議はない。

 おそらくこの秘匿通信を飛ばしてきたバルトフェルドを名乗る男は本物であり、ミネルバへの警告はオーブを戦火に晒さない為でもあるのだろう。

 そう考えれば辻褄が合う。

 

「まさか今の通信を信じるのですか?」

 

「艦長命令です。いいから直ちに出航準備に取り掛かりなさい!」

 

「は、はい!」

 

 砂漠の虎を名乗る謎の秘匿通信という極めて怪しげで信用ならない通信を受けてのタリアの決断にアーサーは困惑したが、タリアが再度出航準備に取り掛かるよう命令を飛ばしたことで気を取り直しすぐに副官としての任務に戻った。

 

「メイリン、モルゲンレーテとオーブ政府に、艦の修理と補給への協力に対する感謝と、出航許可を求める旨を打電して頂戴」

 

「了解です艦長!」

 

「アーサー、艦の人員は全て収容済みよね?」

 

「はい! 物資の積み込みも完了、ミネルバ及び艦載MSの修理作業も全て完了しているとのことです!」

 

「オーブから出航許可が降り次第オノゴロ島より出航します。目標はカーペンタリアよ。ただし本艦は通信妨害を受け周辺海域の状況を把握できていません、いつ敵と遭遇しても良いように最大限の警戒体制を持つように。いいですね?」

 

「「「了解!」」」

 

「艦長、オーブ政府より明朝05:00〜09:00間にて出航許可の承認が出ました!」

 

「わかりました。では、明朝05:00をもってミネルバはカーペンタリアに向けオノゴロ島より出航します」

 

 ミネルバを売ったウナトは、ソロモン諸島に向けられた大西洋連邦の艦隊のオーブへの到着を待ってミネルバの制圧を計画していたが、流石に中立国から自ら出るという戦争の参加国の戦艦を引き止めるわけにもいかず、出航許可はスムーズに発せられることとなる。

 

 そしてそれを受けたミネルバは、翌朝──ハワイから出撃してきた連合の艦隊がオーブにたどり着く前に、オノゴロ島から出航。

 カーペンタリアを目指して、南太平洋の海に繰り出していった。

 

 

 

 

 

「やれやれ、ならばこうするだけだ──」

 

 だが、ウナトもタダでミネルバをカーペンタリアに向かわせるようなことはしない。

 大西洋連邦の艦隊にミネルバの航路を教え、オーブの領海ギリギリにてミネルバを捉えられるように動かす。

 同時にオーブ海軍にも出撃命令を出し、ミネルバの背中を塞ぐ形で展開。

 大規模降下作戦前だったことから、この時点では大西洋連邦との同盟は決定事項ではあったものの正式な締結と履行はまだ行われておらずあくまでオーブは中立国であったことからプラントに対する宣戦布告はしていないため、オーブ海軍はミネルバの背中こそ撃たなかったものの、領海を侵犯するなら問答無用で攻撃すると警告し、頭を塞いで展開してきた大西洋連邦の艦隊に対する退路を遮断してきたのである。

 

 

 

 

 

 オノゴロ島を出航したミネルバは、大西洋連邦の海軍をかわしたかと考えていたが、しかしオーブ了解を出た直後にまるで待ち伏せていたかのように敵艦隊が出てきた。

 

「前方に艦影多数! 大西洋連邦の艦隊──おそらくハワイからカーペンタリアに向かっていた敵の増援と思われる艦隊です!」

 

「背後にオーブ海軍の艦艇が多数展開! オーブ海軍より警告が──“武装解除せぬままに領海内に立ち入る場合オーブ連合首長国に対する武力を用いた領海侵犯と断定し攻撃する”とのことです!」

 

「なんですって!?」

 

 加えて背後にはオーブの艦隊が展開。

 後退しようにも、武装解除をしないままにオーブの領海を侵犯することは許さないと拒絶され、退路も塞がれてしまった。

 

「やってくれたわね……!」

 

 これにより、ミネルバは最悪の想定であった未知のモビルアーマーを配備した大西洋連邦の艦隊との戦闘をミネルバ単艦で強いられる状況に追い込まれた。

 

 タイミングからみて、あの大西洋連邦の艦隊は待ち伏せていたとしか思えない。

 

 加えてオーブ海軍のこの早い展開。

 それは紛れもなくオノゴロ島にて制圧できなかったからと大西洋連邦にミネルバの位置情報を売り、オーブが大西洋連邦と共謀してミネルバを罠に嵌めたとしか思えない状況だった。

 

「バカな、偵察機一つなかったはずなのに……!」

 

「信じたくない気持ちもあるけど、おそらくオーブが大西洋連邦の艦隊をここに呼んだのでしょうね……網も張らずに私たちの進路をここまで正確に予測することなんてできないはずよ」

 

 すでに軍事通行権を承認している同盟を締結しているとはいえ、ミネルバも警戒体制は厳戒に整えていた。

 道中も連合軍の偵察機も潜水艦も確認していなかったし、出航はオーブ政府に許可を求め認められた時間で最も早い日の出間もない時刻に出発している。

 それでこれほど正確な待ち伏せを実現するなど、オーブの情報提供がなければ不可能であった。

 

 偵察機の一つも飛ばしてこなかったはずの大西洋連邦の艦隊が正確にミネルバがオーブの領海を出る場所にて待ち構えていた事態に衝撃を受けるアーサーと、この正確な待ち伏せの裏にオーブが情報提供をしたという推測を立てるタリア。

 実際、彼女の推測は当たっており、大西洋連邦の艦隊はウナトからの情報提供を受けてこの海域に待ち伏せていた。

 

 オーブに売られた。

 その事実に、ミネルバにて混乱が起こる。

 

 さして時間を置かずとも敵対関係になる相手、それも位置情報を売られ手土産にされる形になったとはいえ、オーブは現段階では中立国であり、デュランダルの方針は攻勢を認めたとはいえあくまでもプラントの脅威になる軍事拠点などへの攻撃のみに限り、中立国の領海侵犯などもってのほかである。

 軍人としてこれに従わないわけにはいかず、独断でオーブの海軍と砲火を交えるなど許されることではない。

 だが、プラントを滅さんとする地球連合に与するオーブに武装解除しての投降もクルーの安全すら確立できない状況である。それもまたとれる選択肢ではない。

 

 よってこの状況において、後退の道は断たれた。

 戦力差は歴然だが、こうなれば前方の大西洋連邦の艦隊を突破する他に、見出せる活路はない。

 

「……後退はできない、降伏もできないとなれば、取るべき道は一つです」

 

「まさか艦長──」

 

「コンディションレッド発令! 対艦・対空・対モビルスーツ戦闘用意! モビルスーツ部隊を展開! タンホイザー発射用意! ミネルバの持つ全戦力にて、前方の大西洋連邦の艦隊を強行突破します!」

 

「……了解! コンディションレッド発令!」

 

 未知の大型モビルアーマーという新兵器を擁する敵の艦隊を強行突破する。

 その決断を受け、ブリッジは直ちに戦闘体制へ移行し、モビルスーツ部隊には出撃命令が出された。

 

「コンディションレッド発令。ブリッジ遮蔽、パイロットは搭乗機にて待機せよ」

 

「CIWS起動! アンチビーム爆雷装填!」

 

「タンホイザー、イゾルデ、トリスタン起動! ランチャー2、ランチャー7、全門パルジファル装填!」

 

「大気圏内戦闘よ。わかってるわね、アーサー」

 

「は、はい!」

 

 戦闘体制に移行したミネルバが、艦橋より艦内にブリッジをおろし、各砲門とミサイル発射管の射撃体制を整えていく。

 

 さらにモビルスーツ部隊にも出撃命令が下り、ハッチが解放され各々パイロットの乗り込んだモビルスーツの発進体制が整えられた。

 

「くっ……!」

 

 ブリーフィングルームにて待機していたパイロットたちの中で、シンもこれがオーブが裏で関わっていたからこそできた待ち伏せであると感じ、祖国の卑劣な姿に苛立ちから拳を強く握りしめる。

 

 その後出撃命令が下りたことで、ヘルメットを手に取り真っ先にコアスプレンダーへと走っていった。

 

「ちょっと、シン! ……何よあいつ、やけに張り切っちゃって」

 

「…………」

 

 カーペンタリアに向かうまでは敵のホームグランドである地球の海ということもあり、どこから敵が来るかはわからないため、オーブ領海を航行中から厳戒態勢は敷かれていた。

 しかし突然のコンディションレッド発令にルナマリアは現状についていけておらず、困惑している。

 そんな彼女からすれば普段はもっとおとなしいはずなのに出航してからずっと張り詰めた様子だったシンが、まるでこの事態を予想していたかのように出撃命令とともに素早く動いたので、より戸惑っていた。

 

 一方で、オーブが大西洋連邦と繋がっている可能性を考慮していたレイの方はあまり驚きはない。

 シンからもオーブは信用ならないからと言われていたこともあり、この状況がオーブが手引きした大西洋連邦の艦隊が待ち構えていたと現状を正確に察していた。

 

「グゥルも無い大気圏内の戦闘だから、君たちはミネルバの甲板で支援攻撃だよ。頼むね」

 

 その2人の背後から、パイロットスーツに身を包んだユノが声をかける。

 

「えっ、いきなり戦闘!?」

 

 ユノとしては突然の実戦に緊張している2人を落ち着かせるために声をかけたつもりだったが、その一言でむしろもう戦闘になるのかとルナマリアを余計に驚かせてしまった。

 

「ルナマリア、君はもう少し緊張感持っておこうか。残念だけどもうプラントは地球と戦争を始めてしまったし、ここは敵のホームグランド。いつ戦闘になってもおかしくないから今までコンディションはイエローだったんだよ?」

 

「す、すみません!」

 

「わかればよろしい。援護射撃と艦の防衛は任せるからね」

 

「はい!」

 

 まだ戦争になったことを実感できていなかったルナマリアに流石に気を抜きすぎだと嗜めてから、改めて彼女たちの役目を伝えた上でユノはアビスに搭乗する。

 

『コアスプレンダー、発進どうぞ!』

 

「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」

 

 その奥ではインパルスの発進シークエンスが進められており、コアスプレンダーが地球の空へと飛び立っていった。

 

 機動戦闘用装備であるフォースシルエットにて出撃していったインパルス。

 すでに敵はモビルスーツ部隊を展開しており、空にも多数の敵影が見える。

 コアスプレンダーに続き射出されたシルエットフライヤー、チェストフライヤー、レッグフライヤーと接続し、合体機構を持つモビルスーツ“フォースインパルス”を形成した。

 

『カタパルト進路クリア。アビス、発進どうぞ!』

 

「ユノ・アサガオ、アビス、出撃します!」

 

 インパルに続く形で、カタパルトからユノの搭乗するアビスが出撃する。

 グーンやゾノに代わる水中戦闘用として開発されたセカンドステージシリーズの機体は、青空に飛び立つとモビルアーマー形態へと移行し自らが最大の力を発揮できる戦場である大海原へと飛び込んでいった。

 

『続けてルナマリア機、発進スタンバイ。ウィザードはガナーを装備します』

 

 続けてカタパルトに赤いザクが乗せられる。

 宇宙での戦闘ではなかなかいい場面を見せられなかったこともあり、すでにここが戦場であると切り替えたルナマリアもまた、砲撃戦仕様の装備を搭載した愛機にて今度こそ活躍してみせると気負って出撃した。

 

『進路クリア、発進どうぞ!』

 

「ルナマリア・ホーク、ザク、出るわよ!」

 

 最後に白いザクファントムがミサイルランチャーと追加のブースターなどを備える機動戦仕様の装備を搭載し、カタパルトに置かれる。

 

『レイ・ザ・バレル機、発進スタンバイ。進路クリア、発進どうぞ!』

 

「レイ・ザ・バレル、ザク、発進する!」

 

 ハッチから姿を現した2機のザクは、そのままミネルバの甲板に降り立つと、それぞれの装備を手に迎撃戦用配置に展開した。

 

 そしてミネルバより出撃したモビルスーツに、メイリンを通じてタリアから各々のポジションと役目、注意事項が通達される。

 

『インパルスは空対空戦闘にて、レイ機及びルナマリア機はミネルバ甲板にて接近する敵モビルスーツ及び戦闘ヘリを迎撃してください』

 

「了解です!」

「了解した」

「ええ!」

 

『アビスは海中より敵艦隊に対し雷撃戦を展開してください』

 

「僕がマサカリってことか。了解、任せといて」

 

 今回は大気圏内の戦闘であり、グゥルも無いため、2機のザクは甲板からの狙撃等にてモビルスーツを迎撃する護衛。

 大気圏内でも飛行可能なフォースインパルスはミネルバ上空にて空戦にてモビルスーツなどを迎撃する遊撃役。

 そして海中を進めるアビスは、タンホイザーによる掃射後に残った突破口を塞ぐ敵艦に対し魚雷攻撃を仕掛け、ミネルバの進路をこじ開ける攻撃役である。

 

『それとシン、艦長からあまりミネルバを離れないようにと』

 

「えっ? 俺って遊撃役じゃ……」

 

『あの地球軍の艦隊には未確認の新兵器が配備されている可能性があるって。それが出てきた時、インパルスにはそれを食い止めてもらいたいの』

 

「新兵器……? まあ、うん、わかった!」

 

 加えてインパルスには遊撃役とはいえ、ミネルバを離れないように指示が出される。

 タンホイザーの一撃で艦隊を討ち払う予定ではあるが、先日ユノからもたらされた謎のモビルアーマーという未知の新兵器の存在を懸念し、念のためタリアはインパルスに件のモビルアーマーがタンホイザーの一撃を掻い潜ってきた場合の迎撃役をになってもらうためにミネルバから離れすぎないように指示を出した。

 

 モビルスーツ部隊の出撃後、タリアからミネルバのクルーに向け現在の極めて厳しい状況の説明と、奮戦を促す発破をかける通信が流された。

 

『現在、本艦の全面には空母4隻を含む地球軍艦隊が、そして後方には自国の領海警護と思われるオーブ海軍艦隊が展開中である。地球軍は本艦の出航を知り網を張っていたと思われ、またオーブは後方のドアを閉めている。我々には前方の地球軍艦隊突破の他に活路は無い。

 これより開始される戦闘はかつてないほどに厳しいものになると思われるが、本艦はこれをなんとしても突破しなければならない。

 このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない各員の奮闘を期待する』

 

 前方の敵の戦力は圧倒的であり、退路もない。

 その戦況にヴィーノら特に若い兵士たちは怖気付く。

 

 しかし数の上での戦力差に怯めばそれこそ敵の付け入る隙となる。

 ベテランを中心に経験のあるクルーが怖気付く若手を威圧するなどして奮い立たせ、ミネルバはこの戦闘に身を投じていった。

 

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