もしもザフト水泳部の新米が連合に盗まれずミネルバに加入したら   作:ちゃーらんき

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前半はガーティー・ルーとアーモリー1外部の警備艦隊との戦闘。
後半はアーモリー1内部の戦闘に戻ります。


戦いを呼ぶもの

 

 一方、アーモリー1の外では先刻より発生している謎の通信障害によりアーモリー1の軍港との連絡が取れず、4隻のナスカ級からなる警備艦隊が現状把握に努めようとしており、旗艦の艦長である黒服と艦隊指揮官の白服との間に意見の対立が起きていた。

 

「ですから、この通信障害は宇宙嵐のような自然現象とは違い、範囲がアーモリー1に集中していることから人為的に発生しているものと思われます! 直ちにモビルスーツ隊を発進させ、コロニーとコンタクトを取り必要とあれば議長閣下などの重要人物の保護を行うべきです!」

 

「そうは言ってもだね、艦長。テロリスト風情がL4宙域まで我々の警戒網を掻い潜り入れるはずがないだろう。この大規模な通信障害もどうせ自然現象さ、いずれ復帰する」

 

「アーモリー1には現在、デュランダル議長の他にもオーブからカガリ・ユラ・アスハ代表も来られている。この状況でテロが発生すれば──」

 

「明日のミネルバ進水式も控え多くの一般市民も来場しているコロニーに軍艦とモビルスーツを突入させる方がパニックを招きかねない。モビルスーツの出撃は許可できん」

 

「艦隊司令!」

 

「くどい! 宇宙嵐が止むのを待ちたまえ」

 

 艦長はこの通信障害が自然現象ではなく人為的なものだとし、ブルーコスモスのテロリストの襲撃をコロニーが受けていることを考慮してすぐにモビルスーツをアーモリー1に送り、現状を把握し必要ならばデュランダルらの保護をするべきだと主張する。

 

 それに対して艦隊司令はコロニー全域を覆うほど大規模な通信障害を起こすなどそう簡単にできることではなく、またL4宙域のアーモリー1までザフトの警戒網に引っ掛かることなく接近して破壊工作を行えるテロリストなどいるわけないと断じる。

 むしろ明日のミネルバ進水式を控え多くの一般人も入っている現在のアーモリー1にモビルスーツを乗り込ませるようなことがあれば、それこそパニックを呼び怪我人が出かねないとして、この通信障害はあくまでも宇宙嵐の自然現象によるものであり収まるまで待機するという方針をとった。

 

「だいたいねえ、オーブの代表が来られているコロニーにモビルスーツを突っ込ませるなど、それこそ戦争を起こしたいのかねきみは?」

 

「今まさにこの宙域で大戦を誘発する火種が起きているかもしれないんです!」

 

「くどい! とにかく艦隊は待機だ、分かったな!?」

 

 この異常事態に強い危機感を抱く艦長の意見を却下し、あくまで艦隊は待機せよと命令を出す艦隊司令。

 通信障害によりアーモリー1事変の発生を把握していなかった艦隊は、2年の平和を享受していたこともありこの宇宙で戦争が起きるなどもうないだろうとたかを括っていた。

 

 そんな艦隊に、宇宙の闇の中接近する1隻の謎の戦艦の姿があった。

 

 かつて大戦にてコロイド粒子を用いた最高クラスのステルス機能を発揮した特殊装備“ミラージュコロイド=ステルス機能”。

 オーブの軍需企業モルゲンレーテ社と大西洋連邦が共同で開発したモビルスーツ“ GAT-X207SRブリッツ”にて起用された新技術であり、電子的・視覚的にその存在を隠匿することが可能なこの技術は、後にザフトによって大量破壊兵器“ジェネシス”を隠匿するために用いられた。

 あわや地球を滅ぼしかねない破壊力を持つジェネシスの完成を成し得た技術だったミラージュコロイド・ステルスは、終戦後ユニウス条約にて全面的に保有・使用を禁止されたはずのものである。

 

 だが、その戦艦“ガーティー・ルー”はこのミラージュコロイド・ステルスを搭載して艦体を隠匿することが可能であり、また両舷に備えられている低温ガスを用いた推進器により航行時にも熱紋探知から身を隠せるなど高いステルス性を備えていた。

 

 ナスカ級のレーダーにも熱紋探知にも引っかからず、また目視でもその存在を確認できないため、ナスカ級からは観測できない。

 ミラージュコロイド・ステルスとこの低温推進によりガーティー・ルーはアーモリー1のザフトの哨戒網を潜り抜け、艦隊にこの至近距離まで接近することが可能であった。

 

 特務部隊“ファントムペイン”。

 地球連合軍の中にあって公には存在を否定されている特務に従事する秘密の特殊部隊であり、ザフトのセカンドステージシリーズの強奪──アーモリー1事変の実行犯である、スティング、アウル、ステラを始めとする者たちが所属している、この騒動の元凶たる部隊である。

 

 ガーティー・ルーはこのファントムペインの母艦と言える戦艦であり、このアーモリー1を混乱させている通信障害を発生させているモビルスーツ“テスタメント”や、宇宙港に展開するダークダガーLなどを運用している。

 

 そのガーティー・ルーのブリッジにて、ファントムペイン隊長であるネオ・ロアノークが腕時計を見て時間を確認している。

 タイマーモードとなっている時計はカウントがゼロになった時がコロニー外での行動──すなわちガーティー・ルーの参戦を始めるタイミングである。

 

 3、2、1……0。

 タイマーがゼロを示した時を見て、ネオは乗組員たちに開始の指示を出した。

 

「よーし行こう! ……慎ましく、な」

 

 標的はまず目の前の艦隊である。

 ガーティー・ルーの主砲であるゴットフリートが前方のナスカ級に照準を合わせ、各誘導ミサイルも発射体制に移行される。

 

「ゴットフリート、1番並びに2番起動」

「ミサイル発射管、1番から8番“対艦ミサイル(スレッジハマー)”装填」

 

 砲撃を行えば、流石にミラージュコロイド・ステルスでも隠匿は出来ない。

 つまり1発放てばザフト側にもその存在を探知されるということであり、この最初の攻撃でどれだけ削れるかが鍵であった。

 

 通信障害を受けてザフトの艦隊の方も慌ただしく動いている。

 そのやりとりを傍受し解析して、最優先目標である艦隊旗艦のナスカ級を見抜き、ガーティー・ルーの砲手は前方のゴットフリートをそのナスカ級へと向けた。

 

「イザワ機、ハラダ機、カタパルトへ」

「モビルスーツ発進体制。ダガーL出撃用意」

 

 さらにハッチの奥ではカタパルトにモビルスーツが乗せられ、発進体制に入る。

 地球連合製モビルスーツの主力量産機105ダガーの後継機、ストライカーパックによる換装システムを有する“ダガーL”である。

 

「主砲照準、左舷前方敵艦隊旗艦と推測されるナスカ級。発射と同時にミラージュコロイドを解除、機関最大!」

 

 仮面の男ネオが目標を指示する。

 すでにコロニー内ではスティング達が暴れているはずであり、ガーティー・ルーの参戦でこちらの役者が揃った時のザフトの見せる慌てぶりが楽しみだなと口元に笑みを浮かべるネオの横で、隣の艦長席に座るガーティー・ルー艦長の艦長イアン・リーが攻撃命令を発した。

 

「さーて、ようやくちょっとは面白くなるぞ諸君」

 

「ゴットフリート、撃てぇ!」

 

 イアンの砲撃命令を受けた砲手が、旗艦のナスカ級に向けてゴットフリートを発射する。

 突如として発生した戦艦の主砲の4条のビームは完璧な奇襲となり、無防備に航行する艦隊旗艦のナスカ級を撃ち抜いて一撃で撃沈に追い込み宇宙の藻屑へと変えた。

 

「な、なんだ!?」

 

 一方、他の艦は突然旗艦が破壊されたことに混乱する。

 

 ガーティー・ルーはステルス性に特化した低温ガスの推進装置から通常の推進機に切り替えて動き出すとともに、すでに位置が割れるためエネルギーの無駄にしかならないミラージュコロイド・ステルスを解除。

 突然の奇襲に訳もわからず対応が遅れるザフトの前にその姿を表すとともに、装填していた対艦ミサイルを発射し、さらにゴットフリートを次の目標のナスカ級に向けて放った。

 

「モビルスーツが出てくるぞ! ミサイル発射管、対空防御ミサイル(コリントス)に差し替えろ!」

 

「ゴットフリート3番起動! モビルスーツ隊発進!」

 

「モビルスーツ発進後回頭20、主砲照準インディゴ、ナスカ級! あちらの砲に当たるなよ!」

 

 ネオとイアンの指揮の下、ガーティー・ルーの主砲であるゴットフリートが別のナスカ級に狙いを移してビームを発射する。

 さらにハッチを解放してダガーLを出撃させ、ザフトのモビルスーツに備えて対艦ミサイルから対空ミサイルへと切り替えた。

 

 一方、奇襲を受けたザフトは旗艦を一撃でやられたこともあり艦隊は混乱。

 ミラージュコロイド・ステルスを解除して敵艦が姿を現したというのに、モビルスーツを出すことも艦を動かすことも迎撃を行うこともせずにただ慌てふためくばかりであり、そんな中に対艦ミサイル“スレッジハマー”が直撃。

 艦橋を吹き飛ばされたところにとどめと言わんばかりのゴットフリートを艦後部の推進器に直撃を受けて、2隻目のナスカ級が宇宙の藻屑に変えられた。

 

「な、何をしている! 急いで迎撃しろ!」

 

「モビルスーツを出せ! このままでは全滅するぞ! 機関最大!」

 

 いきなり艦隊の戦力の半数が何もできないまま消し飛ばされ、残る2隻は事ここに至ってようやく動き始める。

 慌ただしくハッチが解放されると共に、シグーやゲイツなどのモビルスーツが発艦した。

 

「くたばれコーディネイターども!」

 

「て、敵──うわあああ!?」

 

 だが、そのハッチが開かれる瞬間を狙っていたダガーLが開いたカタパルトに向かってバズーカを発射。

 この奇襲に全く反応できなかった出撃寸前のゲイツが撃破されてカタパルト上にて爆発を起こし、破壊。後続の出撃が困難となり混乱しているところに、もう1機のダガーLが艦橋へと攻撃を仕掛けた。

 

「沈めぇ!」

 

「敵モビルスーツが接近──ぐああああ!?」

 

 バズーカによって艦橋が吹き飛ばされ、更に1隻のナスカ級が沈黙する。

 最後の1隻となったナスカ級は何とか艦載機のモビルスーツ隊を出撃させたが、戦況は圧倒的に不利な状況であり、通信障害によりアーモリー1に援軍の要請をしても届かない状況だった。

 

「クソッ! 地球軍なのか!?」

 

「熱紋ライブラリに該当艦級無し!」

 

 一体何者の襲撃なのか? 

 姿を現したガーティー・ルーが地球連合の艦艇なのか確認をしようとするが、秘密裏に建造されたガーティー・ルーは該当データが存在しないため、ザフト側にとってガーティー・ルーは未知の所属不明艦として映る。

 

 一方、アーモリー1の港の方でも外の戦闘を確認しており、通信障害により正確な情報は得られなかったが司令所はこれを敵襲と断定。

 ガーティー・ルーを強奪犯の敵母艦と認定し、迎撃のためにローラシア級から順次艦隊を出撃させる。

 

「艦隊出撃! モビルスーツも出せ!」

 

「プフィッツマイヤー出航用意良し、これより出撃し──ぐあああ!?」

 

 だが、その先頭のローラシア級が出撃しようとしたまさにその時。

 ダークダガーLの部隊が進路を塞ぐように出てきて、プフィッツマイヤーの艦橋に向けてバズーカを発射した。

 

 これによりプフィッツマイヤーが撃沈される。

 さらに次々とビームライフルやレールガンなどを港の艦隊に向けて発射し、この奇襲攻撃を受けて戦艦が次々と破壊。

 それが誘爆を起こし、軍港は壊滅的なダメージを受けた。

 

「ま、まずい──うわあああぁぁぁ!?」

 

 さらに推進器を破壊されて航行不能に陥ったローラシア級がバランスを崩し、軍港の司令所に突っ込むという事態が発生。

 これによりエヴァンス以下基地長ら司令官達が戦死し、アーモリー1の守備隊の指揮系統は完全に麻痺することとなった。

 

 宇宙の方では生き残りのナスカ級から迎撃にゲイツやシグーが出撃したものの、ダガーL相手に苦戦し次々に撃破され、その数は瞬く間に半数まで削られた。

 

「隊長、助け──ぐあああ!?」

 

「オージュ!? チッ、ナチュラルごときにこんな……!」

 

 ザフトはこの2年の平和により堕落しており、実戦を知らない兵士が増えている。

 また戦争は2度と起こらないだろうという楽観的な考えが広がっており、銃撃戦になっても相手を殺す攻撃や当たる攻撃を満足にこなせる兵士もほとんどない状況だった。

 

 一方のファントムペインは、前大戦を戦い抜いてきた兵士が多い。

 ナチュラルでも操縦できるモビルスーツ“ダガー”の登場によりもはやモビルスーツという優位性の独占は崩れており、加えてザフト側の兵士の質の低下が著しくなっていたからこそ、セカンドシリーズやニューミレニアムシリーズの開発がザフトでは急がれていた。

 

 ダガーに次々と艦載機を落とされる。

 このナスカ級に配属された中で唯一かつての大戦にてヤキン守備隊として戦った経験のあった隊長の操縦するゲイツを残し、6対2だったはずの状況は覆され、部隊は壊滅に追い込まれた。

 

「母艦が丸裸だぞ?」

 

「ゴットフリート、撃てぇ!」

 

 艦載機を失ったナスカ級に、ガーティー・ルーがゴットフリートを発射して沈める。

 艦隊も全滅し、もはや艦隊はこの隊長機のゲイツを残して全滅した。

 

「くっ……舐めるなよ、ナチュラル!」

 

 所属不明だが、これだけダガーを扱えるなど連合以外には考えられない。

 敵が地球連合だと確信した隊長は、ゲイツのクローで接近戦に持ち込みダガーLのビームライフルを破壊する。

 

「これで──」

 

 まずは1機。

 ヤキン戦役を生き残った猛者である隊長が、ダガーLを追い詰める。

 

 だが、その瞬間。

 母艦でもない、ダガーLでもない、全くの別方向から伸ばされたビームサーベルが隊長機のゲイツを切り裂いた。

 

「な!? 何が──」

 

 バカな、これだけ接近して気づかないはずがない! 

 敵の武装がビームサーベルによるものだと即座に理解した隊長は、しかしレーダーにもセンサーにも何も反応は無かったのにここまで接近されるはずがないと、襲撃者の方にゲイツのモノアイを向ける。

 

 だが、なぜかそこには何もない空間だけが広がっており。

 一体何にやられたのか、敵の姿を見ることすらできずに隊長機のゲイツは爆発して宇宙の藻屑へと消えた。

 

 そう、ヤキン戦役を生き抜いた精兵だったこの隊長機は、何もない場所から伸びてきたビームサーベルの餌食となった。

 襲撃者の姿は見えない。

 存在も確認できない。

 しかし、その機体はそこにある。

 

 艦隊も軍港も潰されたアーモリー1は、相変わらず通信障害が広がっている。

 

「…………」

 

 通信障害を発生させている元凶、亡霊のように姿形を見ることも認識することもできないそのモビルスーツは、スティングからの要請に応じてアーモリー1へと飛ぶ。

 

 だが、そこには相変わらず何もない。

 ミラージュコロイド・ステルスでも隠匿できないはずの推進器の熱紋や、ビームサーベルのエネルギーなども認識されることはない。

 

「隊長、これは……」

 

「ああ、テスタメントを呼ぶことになるとはねえ。何か想定外のことが中であったかな、これは」

 

 ガーティー・ルーでもその存在を感知できない亡霊のモビルスーツ。

 ただし姿形は見えずとも、それが友軍機であることを知っているネオは想定外の事態が発生した時だけ頼る最後の切り札が援軍に駆けつけその時の片手間にダガーLを援護してゲイツを撃破したことを察していた。

 

 そしてその機体に援軍要請を出したということは、まさに想定外の事態が発生したということ。

 外の方は、ここまでは順調なので、問題が発生したとすればアーモリー1の方である。

 

「イアン、ここは任せる。スティング達が出てきたら回収しておいてくれ」

 

「隊長は?」

 

「エグザスで出る。テスタメントがコロニーに穴を開けたら、あいつらの撤退支援をしないとな」

 

「了解しました。ご武運を」

 

「ああ」

 

「エグザス発進準備!」

 

 テスタメントの参戦を見て、スティングたちの撤退支援のために自分の出撃する必要があると判断したネオが、ブリッジから出る。

 スティングたちの回収準備をしておくように指示を受けたイアンは、それに従いネオのモビルアーマー“エグザス”の発進準備をするように指示を出した。

 

 その直後、アーモリー1の外壁に突如として大きな穴が空いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ガーティー・ルーからの攻撃による軍港の壊滅は、アーモリー1内部にもその衝撃を伝えており、港の方からの爆発と衝撃を受けてミネルバ、アレックスたち、インパルス、アビス、スティング達が各々反応する。

 

「何? 今のは」

 

「軍港の方からでしょうか……?」

 

 何が起きたか正確に理解できていないミネルバは、この衝撃は何だと戸惑う。

 方向は軍港の方で起きた爆発だということくらいは認識できたが、今はこちらに意識を向けている余裕はない。

 

「爆発……港から?」

 

 一方、インパルスやゾクゾクと集まってくるザフトの増援により一息つけたアレックスたちは、その爆発が港の方で発生したことを察する。

 そしてこのモビルスーツの強奪と軍港の破壊から、アレックスはかつて自分がアスラン・ザラだった頃に加担したオーブのスペースコロニー“ヘリオポリス”におけるモビルスーツ強奪事件を似た状況から思い出し、その結末がスペースコロニーの崩壊だったことからこのままではアーモリー1も同じ結末になるのではないかという想像が膨らんだ。

 

「アスラン……」

 

「くっ……!」

 

 そうなれば、自分だけでなくカガリも危険にさらされることとなる。

 幸い、まだコロニーの壁に穴が開くなどという事態までは発生していないが、港の方で爆発が起きたということはそこも戦場になっているということに他ならないだろう。いつその外に展開する敵からの攻撃が始まってもおかしくない。

 最悪の結末を避けるためには強奪犯たちの確保をしてコロニー内部の戦闘を終わらせてから全力で外の攻撃に対応するべきなのだが、カガリが同乗している状況ではカオスとアビスの戦闘にもガイアとインパルスの戦闘にも介入することは危険であり、モビルスーツに乗っていながら何もできないという状況に悔しさから歯を食いしばることしかできなかった。

 

「今の爆発は──くっ!」

 

「でえええい!」

 

 シンの方も爆発は気づいたが、ステラのガイアとの戦闘中であり、またステラの方が爆発を気にする様子もなく苛烈に攻めてくるためのその対応に忙しく、気にする余裕はない。

 

「塵と消えろ!」

 

「その程度!」

 

 そして頭に血が昇っているユノもまた爆発を気にしておらず、シールドの内側にある3連装ビーム砲合計6門による一切斉射をカオスめがけて広範囲で発射し、カオスがシールドで命中弾を正確に防ぐ中流れ弾によってザフトの施設に被害を出すという暴挙をやらかしていた。

 それを気にすることなく、ならばと言わんばかりに胸部のカリドゥスを発射してくる。

 

 攻撃の予兆がわかりやすいカリドゥスに、不安定な姿勢でもなければあたるはずもない。

 余裕でカオスはスラスターを駆使して回避し、飛んで行ったカリドゥスは半分破壊され崩壊していたハンガーの残骸を消し飛ばした。

 人的被害はともかく、建物に関する被害はもはやカオスと同規模のものを出しているアビスだが、ユノは止まらない。

 マーレたちを切った(2人の赤服を切ったのはスティングではなくステラだが)犯人であるカオスの強奪犯を仕留めることに執心しており、周りに出る被害もお構いなしにその高火力を生かしてビームランスを振り回しビーム砲を撃ちまくっている。

 

「落ち着けユノ──っておいバカかお前!」

「言ってるそばから──俺は友軍だクソアマ!」

 

 その流れ弾はカオスの制圧に加勢しようとするディンの翼やゲイツの脚にまだ当たり、死者こそ出ていないが友軍機にまで被弾をもたらす有様である。

 

 通信でフレンドリーファイアを食らった友軍からバカだのクソアマだのといった抗議が飛んでくるが、ユノの耳には届かない。

 

「死ねぇ!」

 

「いい加減に落ちろ!」

 

 カオスとアビスの戦闘は激化の一途を辿っており、普段冷静なスティングも軍港の爆発というネオからの合図を気にする余裕がなかった。

 

 そしてこの戦闘に集中している2人を見ながらガイアを狙うディンを2機ビーム突撃銃で撃墜し、自分に切り掛かってきたジンを拾ったビームトマホークで両断するなど、新型を奪った2人を適度にサポートしつつ全体の戦況を冷静に見ながら暴れているアウルの方は……

 先ほど発生した軍港の爆発──ネオからの合図に気づき、撤退の時間だと戦闘に集中して合図に気づいていないスティングとステラに呼びかけていた。

 

「スティング、今のネオの合図! 遅刻するぞ、バス行っちまうぜ!」

 

「うるさい!」

 

「ステラ、今の聞こえた?」

 

「こんのォォォォォ!!」

 

「おーい、お二人さん? えぇ……ステラはともかくお前まで熱くなってどうするんだよスティング!」

 

 戦闘となれば豹変するステラのお目付役押し付けたのお前だろと、普段は冷静なのにアビスとの戦闘に集中するあまり熱くなっているスティングに思わず大声でツッコミを飛ばすアウル。

 もはや冷静なのがセカンドステージシリーズの強奪に失敗しザクを占領している自分だけという状況に、普段はスティングのおかげで気楽にやっていたのに好き放題する生体CPUのまとめ役というストレスが溜まるお役目が回ってきた現状に頭痛を感じた。

 

「マジかよ……スティングのやつ、いつもこんなのしていたのか? そりゃ怒りっぽくなるわ、納得」

 

 普段その役目を担って好き勝手やる自分やステラを制御しているスティングの苦労を知り、確かにこんなの普段からやっていたらやたら怒りっぽくなり老けてしまうなと同情する。

 

 そして、この自分に苦労のおはちを回すこととなる状況を作った最大の誤算であるガイアと戦うインパルスに、そしてそれを見落としていたネオに向けて文句をこぼした。

 

「だいたいアレなんだよ、新型は3機って話じゃなかったのか? あんなの予定にないぜ。ったく、ネオのやつ……!」

 

 ザクのコクピットで警報がなる。

 新たな増援であるシグーにロックオンされていることに気づき、下手くそな機銃攻撃をしなから接近しているシグーにビーム突撃銃を発射。

 コクピットに直撃を受けたシグーは黒煙を吐きながら墜落していき、途中で汚い花火を上げて爆散した。

 

「はいお馬鹿さん一丁上がりっと! 最悪()()で動き止めちゃって運ぶってこともできないことはないけど……」

 

 なんとか2人を連れて撤退する手を考える。

 戦闘に集中して冷静さを失っているとしても、最後の手段として自分たちエクステンデッドに設定されている暴走を止めるためのブロックワードを使えば戦闘を強引に切り上げさせることもできるのだが、その場合は2人を戦力として数えられなくなってしまうので追撃を受けた時にかなり厳しくなる。

 実体弾しかない有象無象ならVPS装甲もあるので無視してもいいが、アビスとインパルス──あの新型は強力なビーム兵器があるため無視するわけにはいかない。

 

「あいつも新型みたいだし、追撃されると面倒だから放っておけねんだよな……それに、やられっぱなしもカッコ悪いしね!」

 

 とりあえず、撤退するにせよあのインパルスだけはやっておく必要がある。

 そう判断し、ガイアとぶつかるインパルスの背中に狙いを定めてビームトマホークを投げつける。

 

「ハッ──!?」

 

 ビームトマホークの投擲に気づいたシンがすぐさまシールドを構えるが、質量を伴うトマホークの投擲の衝撃を殺しきれずに大きくバランスを崩す。

 

「そこ、もらい!」

 

 その瞬間を見逃さず、接近したアウルのザクが肩のシールドを使った突進攻撃でインパルスを吹き飛ばす。

 モビルスーツの重量を丸ごと攻撃に使う突進に、インパルスは突き飛ばされてコアスプレンダーのコクピットにも衝突の衝撃が襲いかかった。

 

「うぐゥ……!」

 

「ステラ!」

 

「でえええい!」

 

 スラスターを駆使して立て直そうとするシンだが、その背後にはガイアがビームサーベルで接近し、コアスプレンダーを狙う横一文字に切り払う斬撃を仕掛ける。

 それにもすかさずシンは対応してエクスカリバーで受け止めたが、真正面からの鍔迫り合いであればビームサーベルに押し勝つことができるエクスカリバーもこれほど不安定な体制では機体を支えきれず、インパルスが転倒してしまう。

 

「援護を──ぐあ!?」

 

「させねえよ!」

 

 そしてそれはこの上なく致命的な隙。

 友軍のゲイツがインパルスを助けようとするが、アウルのザクが妨害を許さずビーム突撃銃でコクピットを撃ち抜いて撃破、横槍を阻止する。

 

「これでぇ!」

 

「──ッ!」

 

 友軍機の援護もない中、シンのインパルスにステラのガイアがビームサーベルを振り下ろす。

 どうすることもできないシンが息を呑む中──

 

「アスラン!」

 

「捕まっていろ!」

 

 このままではインパルスがやられる。

 その光景を見たカガリの声に、アレックスは別のジンを落として一瞬アウルの注意が逸れた隙に、今まで静観していたザクを倒れたインパルスの前に動かし肩のシールドを使って先ほどアウルがやったように突進攻撃をガイアに仕掛けて突き飛ばした。

 

「はああああ!」

 

「ぐっ、うううぅ……!」

 

「ステラ!?」

 

 ザフトが次々に撃破される中でも動かずにいたアレックスのザクを見て故障したため動けない機体とアウルが判断していたこともあり、ガイアの妨害に出たのは想定外だった。

 

「テメェ、よくも──何ッ!?」

 

 逆にアレックスのザクに突き飛ばされ、ステラのガイアが転倒する。

 動かないと思っていたザクの行動にアウルは驚きながらも、ガイアを援護しようとビーム突撃銃を向けるが、アレックスがすかさずビームトマホークを投げつけたためシールドにて防御姿勢を取らざるを得なくなり、トマホークがぶつかる衝撃に吹き飛ばされた。

 

「チッ……!」

 

「今だ!」

 

 アレックスの介入によりガイアとザクが転んだ隙に立て直したシンが、ビームブーメランをガイアに飛ばす。

 

「うっ……!」

 

 ステラはなんとかその攻撃をガイアのシールドで防ぐが、そこへすかさずインパルスがエクスカリバーを、別のゲイツがビームクローを構えて挟撃を仕掛ける。

 

「トドメだ!」

 

「こいつで──!」

 

「ステラ!」

 

 転倒しているガイアにはどちらかの攻撃は防げても、もう一方の攻撃は防ぎきれない。

 さらに援軍できたガズウートの砲撃を背中に喰らい立て直そうとしたところを再び転倒に追い込まれたアウルにも援護はできない。

 スティングはアビスと交戦中でこちらを気にする余裕がない。

 

 このままではステラがやられる。

 その状況にアウルがステラの名前を叫んだ時──

 

 巨大な轟音がアーモリー1に響き渡り、その空を形作るコロニーの外壁が破壊され巨大な穴が開いた。

 

「「「────!?」」」

 

 ハンガーの爆発よりも、軍港の爆発よりも、大規模でありかつコロニー内どこからでもみえるその破壊に、中で戦闘を続けていたものたち全ての手が止まり、注目が集まる。

 

 暗黒の宇宙に繋がる穴。

 

「テスタメント、現着……攻撃、開始」

 

 コロニー内で戦うすべての者たちの戦闘の手を止めさせ視線が集まったその大穴から、亡霊のモビルスーツは降りてきた。

 

 

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