もしもザフト水泳部の新米が連合に盗まれずミネルバに加入したら 作:ちゃーらんき
今話から『PHASE-03 予兆の砲火』に入ります。
まずはインパルス&ザクファントムVSエグザスです。
インパルスはエネルギー残量、エグザスはガーティー・ルー撤退までと、両者共に時間制限があるため短時間の戦闘になると思われます。
テスタメントによってアーモリー1の外壁に開けられた穴を通り、ガイアとカオスの追撃に出たシンのインパルスと、それを追随するレイのザク。
アーモリー1の外では、テスタメントの援護によりコロニーより脱出に成功したスティング達が強奪に成功した機体とともにガーティー・ルーと合流、収容されようとしてていた。
「あれが敵の母艦……!」
「あの大きさの艦がザフトの哨戒網を潜り抜けここまで接近を可能とするならば、からくりは一つだ」
「──そうか、ミラージュコロイド!」
突如として現れたガーティー・ルーは、テスタメントとは異なりインパルスとザクファントムのカメラとレーダーにその存在を映していた。
何故敵艦がこんなザフト勢力圏のど真ん中まで来れたのか。
コロニーにてNダガーNを見ていたレイは、そのからくりをすぐに看破する。
ミラージュコロイド・ステルス。
ユニウス条約にて保有・使用を禁止されている、極めて高度なステルス光学迷彩技術である。
なるほど、ミラージュコロイド・ステルスを用いればあとは熱源探知の対策さえ施して仕舞えばザフトの哨戒網を潜り抜けアーモリー1の宙域に入り込むことは可能である。
外付けのパーツと思われる球体は、隠密性に優れた推進用の低温ガスを搭載したタンクなのだろう。
敵艦はアーモリー1の哨戒艦隊だろうザフトの部隊と交戦しながら、ガイアを収容し、続いてカオスとアウルの強奪したザクウォーリアの収容をしている。
敵はダガーLを繰り出しつつ、主砲であるゴッドフリートを始めとした地球連合軍の艦艇に用いられているローラシア級を圧倒する火力を持ってザフト艦隊を迎撃しており、友軍は接近できない様子であった。
「逃がすか!」
「単機は危険だぞ!」
敵の母艦とそれに収容されるカオスの姿を確認したシンは、友軍の艦隊との砲撃戦に集中しているだろうガーティー・ルーに対し、インパルスのバッテリー残量が危険域に突入しつつあるが強奪犯たちを逃すまいとすぐに追撃を選択。
機動性に優れるフォースインパルスを駆使し、一気に加速。
敵戦力が未知数の中での単独行動による追撃を仕掛けるのは危険すぎると追随するレイのザクファントムを置き去りにする勢いでその機動性能を活かし、ガーティー・ルーに対して攻撃を仕掛けようとした。
「今落とさなきゃ逃げられる!」
「シン! せめて単機はやめ──むっ……!? なんだ、この感覚……」
しかし、その時スティング達を追撃するザフト部隊を襲撃するために密かにアーモリー1の外壁に張り付き潜伏していたモビルアーマーが、インパルスが先行したことで孤立したレイのザクを狙い背後より奇襲を仕掛けてきた。
「──ッ!」
「完璧なタイミングだったはずなんだけどな、なかなかどうしてザフトにも骨のあるやつがいるみたいだな──!」
エグザスが襲来してきた瞬間、突然頭に走った不思議な感覚によりレイはその奇襲を察知。
完璧に背中を取られていたが、レイはエグザスの奇襲を防ぐことに成功した。
「あの新型をいただきたいが、まずは厄介そうな君から落とさせてもらうとしよう!」
エグザスを駆使するネオ・ロアノークはタイミングは完璧だったはずの奇襲を防いでみせたレイの反応に驚くも、すぐに気を取り直して4機のガンバレルを展開し四方から繰り出す攻撃でザクファントムを撃墜せんと攻撃を仕掛ける。
「くっ──!?」
エグザス本体を含め5つの射線から光線を撃ってくるガンバレルに取り囲まれ苦戦するレイ。
ガンバレルからの攻撃を捌ききれず機体の右足に損傷を受けたが、そこへレイの窮地にシンがガーディー・ルーへ向かう進路を反転させて救援に駆けつけてきた。
「レイ!」
「シン、何故こっちにきた!? 新型機は──」
「お前の方が大事だからに決まってるだろ! それに、俺1人だとあいつらに勝てない自信がある!」
「迷わずコロニーの外に飛び出した割に慎重だな」
フォースインパルスならば追いつけたかもしれないのに、逃げる新型機の追撃よりもレイの救援を優先してエグザスのところに飛んできたシン。
仲間思いであり、同時に熱くなりやすいのに意外と冷静なところもある同期に、レイはため息をこぼしながらも共闘してガンバレルを駆使するエグザスと対峙する。
フォースインパルスの加勢によりレイも持ち直し、同期ということもありバディを組んで機体を駆使することも多かった2人は互いの背中を預けて各々死角を庇いつつガンバレルに対応。
レイの窮地とネオの襲撃を察知したシンのインパルスが引き返し加勢してきたことで、背中を預ける友軍の援護によりレイも持ち直すことができた。
インパルスの加勢により、ザフトはモビルスーツが2機に対し、ネオの方はエグザス1機と数的不利な状況となる。
「背中は任せるぞ」
「そっちこそ! ──そこだぁ!」
加勢したフォースインパルス、そしてザクファントムがそれぞれガンバレルを捉えお互いに一機ずつ撃破に成功。
インパルスの登場と2機の連携によってガンバレルという手数を減らされるエグザス。
「おっと、こいつは──」
ガンバレルを半分に削られ、一度ガンバレルを戻してエグザスは離脱し距離を取る。
コロニーの外壁破壊によって発生したデブリを活用してインパルスとザクファントムの射線から外れ、モビルアーマーが優っている最高速度を生かして射程圏外に一時離脱する。
「これで……」
「油断するなシン、奴はまだ諦めていない!」
シンは合流して数的優勢を獲得することにより圧力をかけ、この状況ではエグザスの方も諦め一度母艦の方に撤退するだろうと考えたが、ネオの方はモビルスーツが2機に増えたくらいで引くことはしなかった。
「これで数的有利を獲得したって? エグザスを舐めてもらっちゃ困るな、ザフトのルーキーくん達! こいつの前身はダガーが出るまでジンを相手にまともに渡り合える唯一のモビルアーマーだったんだからな!」
「仕掛けてくる──!?」
ザクファントムの方はまだ戦闘可能だが、アーモリー・ワン事変当初から戦闘に加わっていたインパルスの方はバッテリーが限界であり、感情に任せて飛び出したとはいえシンとしてはアーモリー1の外におけるこれ以上の戦闘は控えたかった。
「さあ、
だが、彼の予想に反しエグザスは再び残った2機のガンバレルを展開。
即座に背中を合わせたインパルスとザクファントムに、二方向から無数のビームによる攻撃を仕掛けてきた。
「くっ──! マズイ、エネルギーが……!」
「下がれシン! 奴らの狙いは新型機──つまりインパルスだ!」
まるでメビウス・ゼロを彷彿とさせるような、しかし火力・速力ともにその性能は遥かに上回るエグザス。
先ほどの交戦でガンバレルを2機落とされたにも関わらず、手数が減るどころかむしろ操作する対象が減ったことで少なくなったガンバレルの操作に集中できるようになったらしく、エグザスの駆使するガンバレルはより複雑かつ素早い機動を取るようになっており、背中を庇いながら2機で対応しても落とすどころか捌くのすら難しくなった。
次々襲いかかるガンバレルの攻撃に、インパルスもシールドで機体を庇いきれずビームによる損傷が発生するようになる。
おまけにネオのエグザスはガンバレルを繋ぐワイヤーも駆使していざ本体を捉えたところでワイヤーに引っ掛けたビームライフルを引っ張り、絶好のチャンスを潰す上にあわやビームライフルという武器を失いかける場面まで出てきた。
「数が減ってるはずなのに……!」
「抑えきれん……!」
「手数が減ったら弱くなると思ったのかな? このエグザスを舐めてもらっちゃあ、困るね!」
ガンバレルを駆使して2機のモビルスーツを1機で追い詰めるネオ。
その間に目的のモビルスーツを収容したガーティー・ルーは周囲のザフト艦を沈め、離脱体制に入る。
インパルスとザクの残存エネルギーではすでに届かない場所に退避しており、この時点でシンたちがガイアとカオスを奪還することは不可能となっていた。
それどころか、エグザスにこのまま追い詰められエネルギー切れに追い込まれれば、すぐにこのモビルアーマーに捕まりインパルスまで奪われてしまうことになりかねない。
追撃に出たはずの自分達が逃げなければいけないという状況に追い込まれ、シンとレイの表情に焦りの色が浮かぶ。
エグザスを撃破できればいいのだが、ネオのガンバレルを駆使する能力はナチュラルとは思えないほど高く、2人の攻撃は悉く外れるのに向こうの攻撃は互いの死角を補いながら防ぐのがやっとという状態だった。
せめて、あと1機でも友軍がいれば建て直せるのに……
機体の故障により追撃に参加できずミネルバに撤退したルナマリアのことが脳裏をよぎるレイだが、戦場で無い物ねだりなど意味がないとすぐに切り替えてエグザスのガンバレルをなんとか捉えようとする。
このままいけば、エグザスが2機を戦闘不能に追い込めていただろう。
しかし、ここで宇宙港を潰したためアーモリー・ワンからすぐに出てくる敵艦はないと思っていた彼らの前に新たなザフトが出てくる。
リミットまでには間に合いそうかと時計とガーティー・ルーに接近してくるザフトの新手の艦隊を見ていたイアンの元に、予期せぬ方角からの敵艦の接近を知らせる報告が上がってきた。
「艦長、戦艦と思しき熱源接近! 類別不明、マーク80、レッド53デルタ!」
「近いな……この宙域に出てくるならザフトの艦艇で間違えない。潰した港の他に艦を出せる場所があったのか」
「沈めますか?」
「武装も分からない正体不明の敵艦との交戦はリスクが高すぎる上に、敵の増援も接近しつつある。目的をあらかた果たした以上、ここは撤退するべきだろう。エグザスに帰還信号を出せ!」
正体不明の敵艦──ミネルバの登場に、イアンは武装も不明の敵艦との交戦のリスクは高いと判断。
ザフトの増援も続々と接近しており、たとえ対艦戦闘で勝てたとしてもザフトの艦隊に捕まっては元も子もないと、エグザスに帰還信号を発射して戦闘区域からの離脱に動いた。
そして、撤退を促す通信はシンとレイを追い詰めるネオも耳にも届く。
「撤退? 今いいところ──」
「大佐、ザフトとも思われる未確認艦が接近しています! おそらく、事前の調査で確認できなかった専用の発進ゲートを用いて来たのではないかと。敵艦隊も接近しており、これ以上の戦闘は宙域からの離脱に支障が出るため直ちに撤退してください!」
「なるほど、新型はモビルスーツだけじゃなかったってわけか。──おっと!?」
撤退の指示と、ミネルバの登場。
それを受け、ネオもこの戦況は流石に欲を張る場面ではないと認識する。
さらに通信と新手の敵の出現に気を取られた一瞬に、レイがガンバレルを1機落としたことで、ネオの力量でも流石にモビルスーツを相手にするには厳しい状況に追い込まれた。
「やれやれ、欲張りすぎで台無しになるのは元も子もないか」
1機にまで削られたガンバレルを戻し、ガーティー・ルーへ撤退するエグザス。
一方、最後にガンバレルを落とした時点でザクのビーム突撃銃がエネルギー切れとなっていたレイと、すでに残存エネルギーが切れかかっており生命維持機能優先モードに切り替わりフェイズシフトダウンに陥る直前にまで追い込まれていたインパルスも、とてもじゃないが追撃する余裕などなく、むしろここまで追い詰めたタイミングで撤退していくエグザスに違和感を覚えるほどだった。
「撤退するのか……?」
「シン、ミネルバだ。敵母艦の方は対艦戦闘を避けるつもりらしい」
あと少し戦っていれば落とされていたかもしれない。
アカデミーの成績優秀者の証である赤服、そしてインパルスの正規パイロットの座を勝ち取った技量。
大戦に参加した先達たちも認めてくれた、訓練で積み上げ出してきた成果。その全てが通用しなかった、初の実戦で戦った強敵。
興奮と恐怖が冷めず、心臓が早鐘を打つシンは、エグザスの撤退でこの場の戦闘がひとまず終わったことをまだ認識し切れていない様子である。
シンよりは冷静に状況を見ていたレイは、ガイアとカオスを収容した敵の母艦とそれに向かっていくミネルバをレーダーにて確認し、エグザスが一瞬とはいえガンバレルの操作を怠る隙を見せ撤退した理由を把握した。
「エネルギー切れも近いはずだ。一度ミネルバに撤退し指示を仰ぐぞ」
「ああ……わ、わかった……」
ひとまず、シンが逸り気を起こしてエグザスの追撃に動くようなことをしなかったことを見て、こちらも一度ミネルバの方に撤退するべきと判断。
まだ熱が冷めきっていないシンを促し、インパルスと共にミネルバの方に向かって機体を動かす。
ガーティー・ルーが帰還を指示する信号を発射したこと、エグザスが引き上げたことはミネルバの方でも確認しており、2機が無謀な追撃に移る前にとミネルバからも帰還を指示する信号弾が発射された。
ミネルバの方も、この時点ですでにガイアとカオスの奪還よりも、インパルスの救援及び強奪の阻止を最優先目標としていた。
ファントムペインがミネルバを知らないのと同様に、ミネルバの方にもガーティー・ルーの情報はない。
初動が奇襲の形になっていたとはいえ、この時点で6隻もの友軍の艦艇を一方的に沈めている敵の未確認戦艦を相手に対艦戦闘を仕掛けるリスクは大きすぎる。まして今はデュランダルが乗艦しているのだ。
インパルスの援護に向かうのではなくガーティー・ルーへ進路を取ったのは、対艦戦闘目的ではなく、お互い沈むわけにはいかない荷物を抱えている状況で新型戦艦同士の撃ち合いになるかもしれない状況を敵への脅しに使うため。
敵艦の方も強奪した新型機を沈められる、或いは続々と接近しているザフトの艦隊に捕まるような無駄な戦闘に発展するというのは避けたかったらしく、あと一歩までシンとレイを追い詰めていたが撤退を決断した。
ガーティー・ルーに進路を取るというタリアの選択により、エグザスはインパルスを諦め撤退、ミネルバの方もインパルスを無事に収容することができた。
「目標、敵未確認艦! ナイトハルト、撃てぇ!」
「イーゲルシュテルン3番4番、迎撃せよ!」
「エグザス帰投します!」
「帰投後、回避行動! 加速40%! ……ミラージュコロイドを使わせないつもりか」
さらにダメ押しと言わんばかりに宇宙用ミサイル“ナイトハルト”をガーティー・ルーへ発射。
追撃するぞと言わんばかりのこの攻撃にガーティー・ルーはたまらず回避行動を取り、エグザスが撤退したこともあってミネルバとの戦闘を避け戦闘宙域から離脱していった。
回避行動やイーゲルシュテルンを起動する以上、どうしても熱探知に引っかかるため、姿をくらませるためのミラージュコロイドが意味をなさない。
この場ではインパルスの収容が最優先だったため本格的な追撃には動かなかったが、しかしミネルバの方もカオスとガイアを諦めるつもりはなく、ガーティー・ルーは姿を晒しながらの撤退を余儀なくされる。
「ナイトハルト再装填!」
「トリスタン、標準ロック!」
「トリスタン発射!」
ナイトハルトを撃ち落としたガーティー・ルーに、ミネルバの主砲である2連装高エネルギー収束火線砲XM47“トリスタン”が発射される。
「敵艦より攻撃!」
「回避しろ!」
「左舷ガスタンクフレームに被弾! 噴射システムに異常発生!」
すぐにイアンが回避行動を指示したことで直撃こそ免れたが、ミラージュコロイドを使用中も熱紋探知に引っかからずに移動できる低温ガス噴射装置の左タンクフレームに掠め、ガス噴射の制御装置に異常が発生し低温ガス推進機も使えなくなってしまった。
「ナイトハルト次弾装填!」
「ナイトハルト、撃てぇ!」
インパルスを収容しつつも、友軍の艦隊が追いつくまで可能な限りの足止めを試みるミネルバは追撃の手を緩めない。
ロックオンされているガーティー・ルーに、再度ナイトハルトが接近する。
「イーゲルシュテルン迎撃! アンチビーム爆雷発射!」
「すまんリー、遊びすぎたか」
「いえ、5分と言って持たせられず申し訳ありません」
「知らない新型含めこっちの諜報が未熟だった責任が大きい、別にいいさ。それより状況は?」
イーゲルシュテルンでナイトハルトの第二波を迎撃し、イゾルデの攻撃に対応するためアンチビーム爆雷を散布するよう指示を出すイアンの元に、帰投したネオが駆けつける。
イアンからミネルバが迫っていること、すでに低温ガス推進機が役に立たずミラージュコロイドを用いた撤退が困難になっていること、そしてザフトの増援が接近しつつあることを聞いたネオは、すぐにミネルバを引き離すために指示を出した。
「かなり足の速い艦です、厄介ですぞ」
「使えないならただの荷物だ。両舷のタンクを分離後爆破、敵艦の鼻っ柱にぶつけてやれ! アームごとでいい!」
低音ガスの推進装置がすでに使えなくなっていることを聞いたネオは、修理すれば使用可能になるかもしれないが、ザフトの艦隊に追いつかれる前にミネルバの追撃を振り切る方が重要だと判断し、推進機を切り離すことを決断。
それをミネルバの方に飛ばして爆破し目眩しにして、その隙に離脱するように指示を出した。
「よろしいので? ガスがなければミラージュコロイドを用いての撤退ができなくなりますが」
「この場から逃げる方が優先だ、急げ!」
「同感ですな。推進タンクを切り離す! 進路グリーン、アルファ!」
「了解、低温ガスタンク及び推進機接続解除! 起爆20秒!」
ネオとイアンの指示により、低音ガスの推進機が切り離される。
「艦長! 敵未確認艦の一部が切り離され飛んできます!」
「回避して!」
それはガーティー・ルーの背中を捉えて追撃するミネルバに飛んでいき、艦体の一部を切り離す質量攻撃に意表をつかれたミネルバの目の前で自爆してその視界を塞いだ。
「くっ──! 被害状況は!?」
「損傷無し! 自爆した模様です!」
「敵艦は!?」
「……ダメです! トリスタンの射程圏外に離脱!」
「やられた……!」
推進機の自爆により発生した爆風も利用して急加速したガーティー・ルーは、ミネルバの視界が一瞬塞がれた隙に宙域から離れ、ザフト艦隊の追撃を引き離す。
友軍艦隊が来るまでの足止めを図ろうとしていたタリアだが、逃げられてしまったことを受けしてやられたと思わず表情を歪める。
アーモリー・ワン近辺のナスカ級が潰されたこの状況では、ガーティー・ルーを追撃できるのは高速艦のミネルバのみ。
いつでも姿をくらませられるミラージュコロイドを搭載しているガーティー・ルーを捉え続けるためには単艦での追撃を試みる必要があるが、デュランダルが乗艦している状態で戦力も未知数の敵艦の追撃は非常に危うい。
諦めるべきか、ミネルバだけで追撃を試みるべきか。
迷うタリアに決断を促したのは、デュランダルだった。
「タリア、私のことは気にしなくていい。あのモビルスーツがテロリストの手に渡ればこの宇宙にどのような災禍をもたらすか……それを阻止できるなら、私は戦場に赴くことも厭わない。あの敵艦を追撃してくれ」
「議長……了解しました。以後、未確認艦艇を“ボギーワン”と呼称します。ミネルバはこれよりボギーワンを追撃、カオス及びガイアの奪還を試みる! ──アーサー!」
「了解! 進路、イエローアルファ、加速60%! 目標、ボギーワン!」
デュランダルから追撃するように指示を受けたタリアは、ミネルバ単艦によるガーティー・ルーの追撃を決断。
宙域から離れるガーティー・ルーを追い、プラントの議長とオーブの首長を乗せた状態でその戦力も所属も未知数の敵艦の追撃に向け、加速していく。
あのテロリストの母艦を叩き、新型機を奪還する。
それを目標とするこの時のミネルバの乗組員たちには、この旅路で多くの試練が降りかかることになるなど想像していなかった。