雷門中のベータちゃん! ~連載版~   作:もちごめさん

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第二十二話 悪意の襲撃

「なんだ、お前たちは」

 

 

 路地の向こうから大人の男性らしき人影が数人、ぞろぞろと現れたのが私たちにも見えました。しかもその全員、傘もさしていなければ雨合羽を着ているわけでもなく、ただ頭に奇妙な形のヘルメットをかぶっています。

 それは頭を守る用途のものにすら見えません。チカチカ光る電球だったりクルクル回るアンテナだったり真空管みたいな部品だったりがくっつけられた、いかにも怪しげなヘルメットの集団。鬼道さんが眉を顰めるのも納得なビジュアルで、付けている本人たちも奇異に思われることなど百も承知なはずなのですが、しかし。

 

 

「おい、聞いているのか――っく……!」

 

 

 鬼道さんの声を全く無視し、集団は彼を押し退けて私たちの方へと無言で歩いて来るばかり。さすがに不気味です。

 警戒心もほんのり湧いて、円堂さんを盾にして隠れようかとも思った、その時。

 集団が一斉に、ぴたっと立ち止まりました。

 

 

「……な、なんなんだ、この人たち……?」

 

「さあ……?」

 

 

 円堂さん共々怪訝に首を傾けて、そして――

 

 

『タイショウ、ヨネダ ケイ、ヲ、ハッケン。ツブセ、ツブセ……ツブセ!』

 

「えっ――!?」

 

 

 感情のない声と共に、彼らは私めがけて襲い掛かってきました。

 

 

『ショウガイ、ハイジョ。【スーパースキャン(・・・・・・・・)】!』

 

「ッ!? お、おいあんたら、何を――うおッ……!?」

 

「ベータ――うわっ!?」

 

 

 慌てて立ちふさがった土門さんと円堂さんを、いっそ鮮やかな動きで押し倒し、私へと迫ってくるいくつもの手。いつもであれば、それは避けられたはずです。私にはそれだけの能力があったはずですが、しかし――得体の知れない集団に襲われるという未知の体験が、私の身体を動かしてくれなかったのです。

 眼だけは迫りくる男性たちの手を凝視しながら、私はただその場に突っ立っていることしかできませんでした。

 

 

「豪炎寺ッ!!」

 

 

 しかし鬼道さんの大声。そして同時に鋭い回転がかかったサッカーボールが彼らのすぐ横を掠めてその体勢を崩し、ホップして上がったボールを、

 

 

「【ファイアトルネード】ッ!!」

 

 

 豪炎寺さんの必殺シュートが打ち返しました。

 

 

『ウボげッ……!?」

 

『ボハァーー!』

 

 

 などという気の抜けた悲鳴と共に、シュートが直撃した男性が吹っ飛び、他の人たちがなぎ倒されました。しかしまだ安堵するには早いらしく、直撃した一人はヘルメットも外れてピクピク痙攣し、ノックアウトされてしまったようですが、その他は折り重なって倒れた中から起き上がろうともがき始めています。

 わさわさと蠢くさまにゾワッと背に悪寒が走り、視線を外せず後退ってしまう私。その腕を、豪炎寺さんは無理矢理に引っ張りました。

 

 

「ベータ、通りまで走るぞ! 人の眼があれば、こいつらも妙なことはできないはずだ!」

 

「ここからだと、近いのは商店街だ! こっち!」

 

 

 円堂さんの声がして、直後、私はまた引っ張られて走らされていました。

 傘が手から離れて置き去りになるのを見て、それからどれくらいでしょうか。手を引かれて走らされながら、その内に私も事態への理解が追い付き始め、練習の疲れで荒くなっていく息の中、なぜだかふと、至極どうでもいいことが頭に浮かびました。

 

 

「……そう、いえばッ……。鬼道さん、あのサッカーボールッ……、どこに隠し持っちゃってたんです……ッ?」

 

「近くの公園に落ちていた忘れ物だ! というか、黙って走れ! ……円堂! 商店街とやらはあとどれくらいだ!?」

 

「もう少しッ! そこの角の……ハァッ、先だッ……!」

 

 

 円堂さんの声と同時に私の正気も戻り、そして角を曲がります。果たしてそこは円堂さんの言う通り、私もたまに買い物に来るお店が並ぶ商店街だったのですが、期待した人の目は、雨のせいかありません。

 しかし一方、あってほしくなかった人影は、しっかりとそこにありました。

 

 

「なッ……!? こいつら、先回りを――ぐぅ……ッ!!」

 

 

 ヘンテコヘルメットの集団の一部が、あろうことかそこで待ち構えていたのです。

 出会い頭に体格の勝る相手にぶつかって押し退けられてしまう鬼道さん。足が止まり、その間に後ろから追ってきていた一団にも追いつかれ、囲まれてしまいました。

 

 ピンチです。じりじりと距離を詰めてくる男たち。円堂さんたちにもどうしようもなくなって、私の背中に恐怖がまた蘇りかけたその時。

 ガラガラッと、ちょうど目の前にあったラーメン屋さんの扉が勢いよく開き、

 

 

「テメェら!! 子供に何やってんだッ!!」

 

 

 飛び出してきたいぶし銀のおじさまがヘルメット男を背負い投げして、そのままあっという間に全員を伸してしまったのです。

 

 必死に逃げることしかできなかった集団が、おじさま一人にあっけなく制圧されてしまう光景は、正直、非日常的すぎて現実感が伴ってきません。しかしともかく、ヘンテコヘルメット集団は全員道路に転がされ、沈黙しました。もう彼らに追い掛け回されることはありません。

 遅れてそのことが受け止められて、同時に去来した安堵感が、冷え切っていた頭のどこかを緩ませました。

 

 すると、ぺたんと。

 

 

「あっ、れ……?」

 

「っ! 米田!?」

 

 

 不意に足の力が抜けて、その場に尻餅をついてしまいました。

 

 焦る土門さんと同様に、私も意味がわかりません。どうして急に力が抜けてしまったのでしょう。

 

(……まさか、安心して腰が抜けちゃった? 私が?)

 

 信じ難く、そして恥ずかしすぎます。そんな無様を晒す私とは対照的に、鬼道さんは表情硬く、警戒心を保ったままおじさまに注視し続けていました。

 

 

「……あなたは、何者だ?」

 

「ん? ……ああ。俺は鬼瓦だ。一応、刑事をやっている。ほれ、手帳」

 

 

 転がるヘンテコヘルメットを拾い上げて眉をしかめるおじさま、刑事の鬼瓦さんは、一瞬怪訝な表情で振り返り、そして私たちの姿を認めると、途端におヒゲの顔を優しげに緩ませました。本物かどうかは私には判断が付きませんが警察手帳らしきものを提示して、それからしゃがんで私たちに目線を合わせます。

 私たちを見渡し、そして最後に私で止まって、彼は頭をなでるように穏やかに微笑みました。

 

 

「俺はお前さんたちの味方だよ。……怖い目に遭っちまったようだが、もう大丈夫だ。安心しな」

 

 

 子ども扱いながらもそう言って、次いで今度はラーメン屋さんの開けっ放しな戸のほうに、怒鳴るように言い放ちます。

 

 

「おいオヤジ! この子らになんかタオルとか、拭くモン貸してやってくれ! かわいそうに、雨ん中でびしょ濡れだ!」

 

「わかったから、大声で喚くな。客が逃げちまう。……お前たちもな、店の前でたむろされると迷惑だ。さっさと入んな」

 

 

 声に応じてお店の中から、小さなサングラスにバンダナと前掛けの、いかにも店主っぽいおじさまが顔を覗かせて、のれんを押し上げ促してきました。

 しかしそうは言えどもこっちのおじさまもまた見知らぬ他人。私の足が動かないのもあって躊躇いに押し黙っていると、今度は一転、彼は居心地悪そうに、どうやら鬼瓦さんに言われる前から用意をしていたらしいタオルを私へ抛り、ため息を吐きました。

 

 

「……余り物でよけりゃスープも出してやる。そんなとこに座ってたら、風邪ひくぞ」

 

 

 ぽりぽり頭を掻きつつ、おじさまはお店の中に引っ込んでいってしまいました。

 垣間見えた優しさはこっちのおじさまもまた善人であることをなんとなく理解させてくれましたが、とはいえ他の皆さんはどうなのかと、目線を上へ持ち上げます。しかし尋ねるまでもなく、円堂さんと、そして豪炎寺さんが、へたり込んでしまった私に手を差し伸ばしてくれていました。

 

 頷く彼らに導かれるまま、私は彼らの手を借りつつ立ち上がり、お店ののれんをくぐりました。

 

 

 

 

 

 そうして入ったお店の中には、他にお客さんがいませんでした。

 スープが余り物だったのはそのせいです。だから頂いた中華風のそれは出来立てで、ちびちびと飲み進めるうち雨で冷えた身体も温まり、そのうち私は落ち着きを取り戻すことができました。

 

 少なくとも、『円堂さんたちの頭を殴ったら、安堵で腰を抜かしたなんて私の醜態の記憶を消去できたりしないでしょうか』、というような野蛮な思考はもう浮かんではきません。

 頭にかぶったタオルで羞恥の顔を隠す必要もなくなって、ちょうどその頃。円堂さんが水でも飲むように一息でスープを完飲するのをサングラスの眼差しで見つめていた店主のおじさまが、息を吐き、視線を手元の仕込み作業に戻すと、世間話でもするように切り出しました。

 

 

「……それで? 大介さんの孫の坊主。あんな妙な連中に襲われて……今度はいったい何をしでかしたんだ?」

 

「何って、そんなの俺にもわからないよ。突然あいつらがやってきて、襲われたんだ」

 

 

 そして円堂さんも、緊張するそぶりもなく気安くそう答えます。物怖じしないのは彼の気性ではあるのですが、気になることがあと一つ。

 

 

「『大介さんの孫』……。おじさまと円堂さん、お知り合いだったりしちゃうんですか? 豪炎寺さん?」

 

「ああ。秘伝書の件があっただろう? あの時、秘伝書の存在と在処を教えてくれたのが、あのおやじなんだ」

 

 

 こっそり豪炎寺さんに尋ねると、そんな答えが返ってきます。なるほど、円堂さんに金庫泥棒を唆したのは彼だったようです。

 

 ちょっとだけ信用度が下がりました。が、もちろんそんなことに気付くはずもないおじさまは、要領を得ない円堂さんの返答にさらなる詳細を促します。

 

 

「『わからない』だと? 何かあるだろう、過去にお前が怒らせた相手だったとか。……どう襲われたか、最初から思い返してみろ」

 

「そんなこと言われても、正体も目的も、わからないもんはわからないって。あんな奴ら会ったこともないし……そういえば、狙いはベータだったような気がするけど……」

 

 

 まさか単なる痴漢とかストーカーとか、そういうものではないでしょう。あまりにも異質だったヘンテコヘルメットたちに円堂さんが首をひねっていると、

 

 

「……いや。少なくとも、首謀者には察しが付く」

 

 

 鬼道さんが、硬い言葉を絞り出すように言いました。

 

 

「奴らが米田に襲い掛かった時の動き……お前たちは、見覚えがあるんじゃないか……?」

 

「動き? 襲い掛かってきた時って……」

 

「っ! そうです、あれ、【スーパースキャン】……御影専農のフォワードさんが使っちゃってた必殺技です……!」

 

 

 言われるがまま思い返したくない光景を思い返して、ハッとなりました。あの当時は気付けませんでしたが、確かにあの動きは、完成度は違えど、フォワードさんに仕掛けられたそれと同じです。

 

 

「それってつまり……あいつら、御影専農の手先ってこと……?」

 

「あるいは、手先にされた(・・・)一般人、だな」

 

「鬼瓦の親父。警察への引き渡しは終わったか」

 

 

 鬼瓦さんが戸をガラガラ鳴らして入ってきました。ヘルメット集団の後始末を警察に任せてすましたらしい彼は、そのヘルメットの一つをカウンターの上に置き、その不格好に部品がくっついた表面を突っつきながら頷きました。

 

 

「ああ。それでたまたま機械に詳しい奴が来たんだが……どうやらこいつは、被った人間を電波で操る、言ってしまえば洗脳装置みたいなものらしい。……知ってるか? お前たちが次に戦う御影専農は、似たようなコンセプトの装置を運用してることで有名だ」

 

「……ということだ。この洗脳装置が御影専農のものであることは、確かだろう」

 

 

 鬼道さんも頷きます。彼がそう言うならそうなのでしょう。なぜなら、彼はその御影専農に、土門さんからもたらされたデータを提供しているのです。

 

 

「じゃあ……まさか、鬼道さん……今回の襲撃は、帝国がって、ことなんですか……!?」

 

「……わからない。少なくとも影山総帥からは、何も聞いていない」

 

 

 慄く土門さんに唸るように首を振る鬼道さん。さっきから彼の声が固かったのは、つまりはそれ(・・)です。

 絶対的に信頼している総帥さんの、明らかな悪行。そしてそれを伝えられていないことによる、忠義の揺らぎ。実際、証拠はどこにもないでしょうし、鬼道さんは恩師の悪意を認められないのです。

 少し哀れに思いました。が、その直後。

 

(……あら? “影山総帥”……って、その名前、どこかで……)

 

 聞いたような気がしたのですが、しかし思い出す前に、思考は断ち切られてしまいます。

 

 

「影山……ッ!?」

 

「なにっ!? 影山だと!?」

 

 

 私以上に強い反応を見せ、とうとうネギを刻む手が止まった店主のおじさまと、さらにより劇的だった鬼瓦さんが身を乗り出してまで叫ぶせいで、浮かびかけた直感はすぐ吹き消されてしまいました。

 

 もちろんそんなことなど知る由もない鬼瓦さんは、鬼道さんと土門さんへ、すっかり興奮した様子で詰め寄ります。

 

 

「今、影山と言ったな!? お前たち、奴の関係者なのか!?」

 

「ちょ、ちょっと! どうしたんだよ、鬼瓦さん!?」

 

 

 が、その興奮も、円堂さんに制されてすぐに止められました。彼も、私たちが大変な目に遭ったばかりだということを思い出したのでしょう。あるいはもう一歩進んで、彼のその興奮にありありと滲む影山総帥への敵意を、鬼道さんがどう感じるのか慮ったか。

 ともかく、「あ、いや……悪い」と鬼瓦さんはしどろもどろに謝って、席に腰を下ろしました。しかし彼が出鼻をくじかれ落ち着いた代わりに、今度は店主のおじさまが、深々とため息をつきました。

 

 

「……なるほど、影山か……。おい坊主、前に言ったこと、覚えてるか?」

 

「え……?」

 

 

 おじさまの眼が円堂さんへと向きました。キョトンとする彼を見つめる眼は、心なしか誰か別の人を見ているように見えましたが、しかしそれも再びのため息と共に外れ、また小気味いい作業に戻ってしまいます。

 しかしそれでも、おじさまは呟くように言いました。

 

 

「……秘伝書は、お前たちに災いをもたらす。その通りになっただろう」

 

「……どういうお話なんです?」

 

 

 『災い』だとか、思いもよらぬ抽象具合。思わず尋ねると、おじさまは少しだけ眉を寄せ、それからまたまた盛大にため息を吐きました。

 

 

「……“イナズマイレブンの悲劇”、なんて言われていてな。四十年前、当時のイナズマイレブンが乗っていたバスが事故を起こしたんだ。よりにもよって、フットボールフロンティア決勝戦の会場に向かっていた最中に。……部員たちは這ってでも会場に行こうとしたよ。だが……どこの誰かは知らないが、会場にたどり着く前にイナズマイレブンを騙った棄権の電話が大会の運営に届き……そうしてイナズマイレブンは再起不能になった。そんな話だ」

 

 

 諦念を以てしておじさまは語り、そして一呼吸の後、再び円堂さんへ。

 

 

「わかったら、もうサッカーなんぞやめることだ。碌なことにならん」

 

 

 諭すように、おじさまは言いました。

 

 円堂さんが憧れていたイナズマイレブンの、意外な顛末。それを知るおじさまからすれば、そりゃあそんなことも言いたくなるでしょう。

 しかし円堂さんは、少なくともサッカーにおいて聞き分けがいいわけではありません。

 

 

「嫌だ。俺は絶対、サッカーをやめない」

 

 

 きっぱりと、彼は真正面からそう言ってのけました。

 そんな果断な拒絶は、いやに実感の伴った悲劇を語ったおじさまからすれば思いもよらぬもの。一秒くらい唖然と口を開け、そしてその後、かぶりを振ると、おじさまはバリバリ頭を掻きむしりました。

 

 

「……わからんやつだな。懲りるということを覚えろ。また今日のような目に遭うかもしれんというのに、それでもか? 今度は助けが入るとは限らんのだぞ?」

 

「……それでも、俺はサッカーから逃げたりしない。例え何をされたって、キーパーらしくどーんと正面から受け止めてやるさ!」

 

「っ……!」

 

 

 一瞬の苦悩の後に再び言い切る円堂さんに、おじさまの眼が、今度は私に向きました。あからさまに、こいつ(円堂さん)をどうにかしてくれ、といった眼差しです。被害にあった私ならばと思ったようですが――しかし残念。円堂さんがその気であるならそれを説得する術なんて思いつきませんし、そもそも私も円堂さんと同意見なのです。

 

 

「泣き寝入りしろだなんて、そんなのムカついちゃいません?」

 

「はは……確かに。やられっぱなしは雷門の流儀じゃないな」

 

「ムカつくどうこうはともかくとして、そうだな。俺ももう、サッカーから逃げるつもりはない」

 

「………」

 

 

 土門さんに豪炎寺さんも円堂さん側に立ち、おじさまはもう呆れ顔で言葉もないようでした。

 しかし、昔はどうだったか知りませんが、これが今の雷門です。

 

 だから、ついでに言ってやりました。

 

 

「私たち、おじさまが知ってるイナズマイレブンみたいに腰抜けじゃないんです。こんなことでビビっちゃうような意気地なしじゃありませんから、安心してください」

 

 

 しかし、たぶん――いえ明らかに、余計な一言だったのでしょう。

 

 

「……なら、もう話すことはない。身体も十分温まっただろう。――とっとと出てけ!!」

 

 

 どこかがとうとうキレてしまったようで、声を荒げたおじさまに、私たちはたちまちお店を放り出されてしまいました。

 戸がぴしゃりと閉められて、再びの雨の中。警察の方たちが拾ってきてくれたのか軒先に立てかけられていた傘を、各々微妙な顔になりながら手に取ります。

 

 巻き込まれ事故に遭ってしまった鬼瓦さんだけが肩をすくめて、それから彼は原因である私たちを責める気配も微塵も出さず、代わりに神妙な顔になりました。

 

 

「……いいか、お前たち。俺も洗脳装置の件から当たってみるが……敵が次にどんな手段を取ってくるかはわからん。くれぐれも気を付けるんだぞ?」

 

「はい。……あの、今日はほんとにありがとうございました」

 

 

 忠告をもらうついでにヘルメット集団から助けてもらったことにまだお礼を言っていなかったことを思い出し、頭を下げます。鬼瓦さんは軽く手を上げて応じ、そのまま去って行きました。

 

 そして、鬼道さんも。

 

 

「……俺も、失礼する。じゃあな」

 

 

 影山総帥への信頼に入ったヒビは、やはりしっかりと存在感を発している様子です。それだけ言うと、鬼瓦さんに続いて彼も去り、ラーメン屋さんの前に残るは私たちだけ。

 とにかく、帰りましょう。まずは明日の試合に集中すべし。そういうことになって、それぞれ分かれるその間際。

 

 

「おじさん! 明日の俺たちの試合、見に来てくれよ! ……俺が言いたかったこと、きっとわかるから!」

 

 

 円堂さんはぴたりと閉まった戸に向けて、そんなことを言いました。

 

 

 

 

 

「――やはり、土門くんは裏切りましたか。総帥がおっしゃったとおり、彼にも正体を隠しておいて正解でしたね」

 

 

 ヘンテコヘルメットが入ったカバンを担ぐ冬海先生が、離れた角で私たちの様子を見つめていたことには誰も気付かず、そうしてその日の私たちの動乱は終わりを迎えたのでした。

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