雷門中のベータちゃん! ~連載版~   作:もちごめさん

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第五十九話 がけっぷち

 【トライペガサス】の失敗と同時に、私たちはチームの士気の立て直しにも失敗してしまいました。

 

 ハーフタイムの間、声なく項垂れるしかなかった皆さんの心の内にあったのは、豹変した円堂さんと試合に対する不安感だけ。加えて一之瀬さんもそれらの失敗には動揺を隠せず、「なぜ」とか「どうすれば」とか、難しい顔をしながら一人ブツブツ呟くばかりでした。

 彼の思惑、雷門に溶け込むために【トライペガサス】で見せつけることができなくなったのだから、さもありなん。ともかく、円堂さんが怒りに囚われてしまった今、チームにとって唯一の頼みの綱だった一之瀬さんのリーダーシップの喪失は、特に守備にとって致命的な綻びとなったのです。

 

 そして後半戦、木戸川のボールからスタートしたことも相俟って、それは開始数分で現実のものとなりました。

 

 

「――動きが悪くなったんじゃないか、雷門? この程度の守備じゃ、百年経っても俺たちは止められねぇ!! 【バックトルネード】!!」

 

「この……今度こそッ!! 【ゴッドハンド】ッ!!」

 

 

 キックオフするなり突っ込んできた兄弟のトライアングルコンビネーション。平時でも止めきれなかったものを精神的支柱を失った今の皆さんが止められるはずもなく、手も足も出ずに突破され、今度は勉さんの【バックトルネード】が放たれます。

 雪辱を果たさんと歯を食いしばり、円堂さんもまた【ゴッドハンド】で迎え撃ちましたが、しかし。

 

 

「うっ……うわぁッ!!」

 

 

 光の手のひらはまたも破られ、ボールはゴールネットを揺らしてしまいました。

 

 あっという間に、そしてあっさりと失ってしまった一点。これでスコアは0-2です。まだ十分に返せる範囲の点差ですが、やはり皆さんの間にはたったの二点では済まないほどの絶望感が立ち込めています。

 

 

「イエーイ! 二点目ゲット! この調子なら、大会の最多得点とか狙えちゃうんじゃね?」

 

「かもしれませんねぇ。どうやら彼ら、前半戦からさらにザコになってしまったようですし」

 

「ディフェンスもキーパーもザル同然だ。必殺技も失敗してたし、とうとう雷門のサッカーとやらの化けの皮もはがれてきたみたいじゃん?」

 

「ッッ……!!」

 

 

 そんな中、相変わらず憎悪の嘲弄を撒き散らす三兄弟に、いよいよ円堂さんの目付きも危うさを増してきています。

 

 ドンッと、地面に叩きつけられる拳。悔しさと、もはや普段の彼とは似ても似つかない怒りに満ち満ちた眼差しが、三兄弟へと向けられました。

 

 

「……次は、絶対に止めてやる……ッ!!」

 

「ああはいはいそうっスか。また口だけデカいいつものアレっスか」

 

「なら、止めてみろよ。……どうせ、またすぐだ! みたいな!」

 

 

 その言葉の通り、プレーが再開するとまたもあっという間に木戸川のペースになりました。ボールは奪われ、さっきの繰り返しのようにこちらのディフェンスを蹴散らし、彼ら兄弟が攻め込んできます。

 しかも今回は一人ではなく、三人全員が揃ってゴールの正面です。以前のカチコミの光景が頭に蘇ります。

 

 つまりあの時、彼らの監督さんや一之瀬さんに止められお披露目されることがなかった、彼ら曰くの最強の必殺シュートの予感です。

 そしてその予感は、悪いことに的中しました。

 

 並んでいた三人が散開し、それが始まってしまいます。

 勝さんが足を振りかぶってボールを蹴り放ち、先行していた友さんがそれを蹴り上げると、最後に勉さんが勝さんの肩を踏み台に高くジャンプ。

 

 

「くらえ……これが俺たちが編み出した、最強の必殺シュート……!!」

 

「「「【トライアングルZ】!!」」」

 

 

 蹴り放ち、着地した勉さんをてっぺんにした組体操みたいなポーズを取る三兄弟はともかくとして、放たれたシュートは確かに強力に見えました。

 離れた位置からでも一目でわかる、【バックトルネード】を優に超えるその威力。三人分のチカラが完璧に合わさったそれが、ブレることなく一直線にゴールへと突き進んでいきます。

 

 円堂さんの真正面です。ですがしかし、【バックトルネード】をも防げなかった今の彼には、それを上回る威力の【トライアングルZ】を止めることなどできません。

 

 できない、はずです。というかむしろ、今ここは止めてはいけない(・・・・・・・・)シーンでした。

 

 しかし頭に血が上ってしまっていた円堂さんはそれに気付かず、それ(・・)を使ってしまったのです。

 

 

「そっちが『最強の必殺シュート』だっていうのなら、俺だってやってやる……最強のキーパー技……ッ!!」

 

「ッ!? よせ、円堂ッ!!」

 

 

 私と同様、それを止めてはいけないことに――もとい、使ってはいけないことに気付いた鬼道さんが声をあげるも、円堂さんには届くことなく、

 

 

「【ゴッドハンドW】ッ!!」

 

 

 【ゴッドハンド】の倍以上も強固で巨大な光の手のひらは、発動されてしまいました。

 

 恐らく、【ゴッドハンドW】と【トライアングルZ】がぶつかり合えば、普通は【ゴッドハンドW】に軍配が上がったでしょう。あの必殺技はそれくらい強力です。

 しかし、今の円堂さんは全く普通(・・)ではありません。鬼道さんの声も聞こえないほど、平常心とは程遠い今の彼に十全の力を発揮できるわけもなく――結果、光の手のひらは己を穿つ三兄弟のチカラが集ったボールの威力に軋み、そして、全体に蜘蛛の巣のようなヒビを走らせることになりました。

 

 砕け、無数の光芒と化す【ゴッドハンドW】。しかし一方、【トライアングルZ】のほうも光の手のひらを貫くためにチカラを使い果たしてしまったようでした。

 

 

「ぐっ……うわぁッ!!」

 

 

 【ゴッドハンドW】を破ったシュートは、威力を無くしてノーマルシュートも同然でした。それが円堂さんの真正面に飛来しますが、しかし円堂さんも円堂さんでそれをキャッチする余力がありません。身体を盾に弾き飛ばし、辛うじてゴールを守るのが精一杯。

 

 そして武方三兄弟、勝さんは、そんなこぼれ球を認めるや否や、喜色満面で飛びついていました。

 

 

「もらったぁッ!!」

 

「くっ、しまっ……!!」

 

 

 【トライアングルZ】を全力を絞り尽くして止めた円堂さんにはもう、続くそれを止める手立てはありません。押し込まれ、ボールはまたゴールネットを揺らすことになりました。

 

 チームから、呆然とした絶望が零れてきます。

 

 

「嘘だろ……【ゴッドハンド】どころか、【ゴッドハンドW】まで破られるなんて……」

 

「しかもこんな、立て続けに三点失点……。いや……」

 

 

 三点失点どころではありません。今のシーン、実質的には四点目や五点目、それ以上の失点と同義です。

 

 【ゴッドハンドW】に存在する、強力であるが故のデメリット。あの巨大な光の手のひらを生み出すためには、円堂さんが文字通り『全力を振り絞る』必要があるのです。全てのチカラを使い果たし、彼はもう、【ゴッドハンドW】はもちろん、【ゴッドハンド】や【爆裂パンチ】、【熱血パンチ】ですらまともに使えないでしょう。

 つまり、もしかしたら間に味方のブロックが入れば止めることもできたかもしれない【バックトルネード】すら、もう絶対に止められなくなってしまったのです。

 

 ここから先、円堂さんはほとんどただの置物です。シュートを打たれてしまえば失点確定なザル状態。私と鬼道さんの危惧は、現実のものとなってしまいました。

 

 兄弟の言う通り、木戸川の大量得点はもう回避のしようがありません。もはや私たちにはそれ以上の大量得点を挙げること以外に勝ち筋がなくなってしまったわけですが、対してチームの士気は最底辺。皆さんが木戸川に通じるプレーをしてくれるとは到底思えないような現状です。

 ならば――

 

 

「――やってやるよ。オレ一人でも……!!」

 

 

 皆を勝たせてやれるのは、もはやオレだけだ。目の前に広がる事実に、オレはそう心を決める他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

「――【ダブルショット】!!」

 

 

 宙へ飛び、両足でシュートを打ち放つ。もう何度も見せてやったそれに、木戸川の連中はもはや慌てふためくばかりだ。

 オフェンス組は半分裏返ったような声で必死に「止めろ」と叫び、そしてディフェンス組は顔に恐怖交じりの汗をかきながらゴール前で盾となって立ちはだかっている。

 

 だがその全ては、何度やっても変わらず無意味だ。

 

 

「うわぁッ!!」

 

「ぐはっ……!!」

 

「クソッ……!! 軟山ッ!!」

 

 

 オレのシュートは盾の須らくをなぎ倒し、ゴールへと突き進む。そして最後の壁であるキーパー、軟山とぶち当たることになるのだが、しかし。

 

 

「う、うぅぅ……ッ!! た、【タフネスブロック】――ぐほぁっ……!」

 

 

 軟山の心と身体は、既にオレに叩きのめされボロボロだ。元より気が弱いらしい奴がそれを克服できるはずもなく、シュートを受けた身体はディフェンス同様あっけなく吹き飛ばされ、そのままボールと共にゴールネットに突き刺さった。

 

 得点だ。これでスコアは8-9。円堂もディフェンス陣も役に立たず、案の定、三兄弟にはバカスカ点を決められることにはなったが、どうにかここまでやってきた。

 同点まであと一歩。後半戦の残り時間ももう四分の一を切り、時間的な余裕はまるでないが、しかしそれでも逆転は間に合うだろう。

 

 もちろん希望的観測なんかではない。オレ一人による大量得点をどうやっても止められない軟山たちの体たらくが、三兄弟の怒りを煽り立てているのだ。

 

 

「この……ッ!! 何回同じシュートにやられてんだお前らは!! しかもどれもこれもディフェンスライン前からのロングシュートだぞ!? どうして止められねぇ!!」

 

「我々全員ハットトリックを達成したというのに……!! これでは全く意味がない!!」

 

「せっかくここまで死ぬ気で頑張ってきたのに、このままじゃ全部無駄じゃんよ!! ……やっぱり、仲間なんてクソだ!! 足ばっかり引っぱる仲間なんて、いない方がマシだ!! みたいな!!」

 

「……おい、いくらなんでもそれはないだろ武方兄弟……!! まるで取られた点の全部が俺たちのせいみたいな言い方してるけど、違うだろ!?」

 

「そうだ!! 半分くらいはお前ら兄弟からボール奪われてるんだぞ!? 俺たちだけのせいじゃない!!」

 

「兄弟だけでボールを回してるから狙われるんだ!! 文句言う前に、もっと俺たちにもボールを回せよ!!」

 

 

 兄弟とそれ以外の選手たちとの間で散る対立の火花は、俺たち雷門と同じくらいにその士気を壊滅的なものにしてしまっていた。

 

 前半戦のいがみ合いとはもはや比較にもならない。特に三兄弟なんかはキックオフの度、オレだけでなくパスを求めて近寄る味方にまで威嚇するような状態になってしまっている。

 元より仲間を信じる気などないと豪語していた兄弟だったが、今はもうそれに拍車をかけて、むしろ敵対的ですらあった。

 

 しかし、オレとしてはそんな兄弟の怒りが的外れだとは思わない。文句が飛び出る気持ちはよくわかる。

 オレも同じだからだ。

 故に、読みやすいのだ。

 

 

「よし、今度こそ――っ!?」

 

「わかりやすくて助かるぜ……! もらった!!」

 

 

 キックオフ直後、勉に抛られるパスにダッシュで飛びつき、奪い取る。さっきから全く同じ調子のパスカットを決められて、三兄弟は憤死寸前だろう。

 しかしそれでも、三兄弟には他の味方にパスする気など生まれはしない。そして味方も、突破された三兄弟のカバーをする気はない。もしそんな問題がなければオレの八得点の内、幾らかは防ぐことができただろうが、もはや奴らに選択肢はないのだ。

 

 このボールも、そのままゴールへ蹴り込めば九点目に変えることができる。

 そしてあともう一回同じことを繰り返せば、晴れて逆転。オレたちの勝利が決まる――いや、あっち(三兄弟)が点を取り返してくることも考えて、後二、三点は欲しいだろうか。

 しかしともかく、あと一息だ。

 

 

「あと一息で、勝てる……!!」

 

 

 それが、このチームのためにオレが唯一、できること。

 

 滲む汗を拭い、さすがに疲労を感じ始めた身体に改めて気合を入れた――その直後だった。

 

 

「待ってくれ……ベータ!」

 

「一之瀬……!」

 

 

 前半戦終盤で希望をへし折られた一之瀬だった。どうやら後半戦の四分の三の時間をかけ、ようやく持ち直したらしい。

 

 

「君ばっかりに頑張らせてごめん! 今からは俺も一緒に戦うよ! 【トライペガサス】で……!」

 

 

 とはいえ戦意を取り戻してくれたのはいいものの、それでいきなりこんなことを言い出されてはたまったものではない。舌打ちを呑み込み、しかしそれでも喉が鳴る。

 

 【トライペガサス】なんてやらせられるくらいなら、しょぼくれたままでいてくれた方がいくらかマシだっただろう。

 

 

「はっ、誰がやるかよ! 失敗するってわかりきってるだろ!」

 

「そんなの、わからないじゃないか……! 今までは成功させられてたんだから、たった一度の失敗で諦めるなんて――」

 

「そのたったの一度の失敗はどうして起きた!? いつも通り、動きもチカラも成功してた時と完璧に同じだったのに、どうしてペガサスは消えたんだ!?」

 

「っ……! それは……」

 

 

 答えられるはずがない。そもそも、“信じる”がわからないオレがそれを成功させられていたこと自体が不可解なのだ。なら前半最後のあれはむしろ、自然な成り行きなのだろう。

 

 であれば、何の策もなく挑戦しても失敗するのは自明の理。一之瀬だってそれくらいのことはわかっているはずだが、奴は明らかに惑乱しながらも、それでもその眼に諦めの色はない。

 後に引けないのだ。元々一之瀬が雷門に入部したのも、オレを使って【トライペガサス】を復活させたのも、全ては秋たちとのサッカーに復帰するためだ。その思惑が破れれば、復帰もサッカーも後悔も、全てがご破算になってしまう。

 だから奴には【トライペガサス】を成功させてこの試合に勝利し、雷門イレブンに認められることが至上命題、それ以外に道がないのだ。

 

 しかし――

 

 

「……悪いけど、一之瀬。俺も正直、うまくいく気がしない……」

 

「ど、土門……!」

 

 

 恐らく一之瀬に無理矢理連れてこられたのだろう。土門が、やはり円堂のせいでガタガタになった精神を引きずったまま、一之瀬の後ろから走り出てきた。

 

 

「ベータの言う通り、あの【トライペガサス】は完璧だった……! なのに失敗したんだ。もう一度やってもどうなるか……。それなら、ベータに任せた方がまだいいんじゃないか? 実際、うまくいってるしさ……!」

 

「それでも、ダメだ……!! ベータ一人に全部させるわけにはいかない!! ……【トライペガサス】は“仲間を信じて”初めて使える必殺技だ。なら、きっと足りないのは“仲間を信じる気持ち”だよ……!!」

 

「チッ……」

 

 

 “仲間を信じる気持ち”が足りない。事実だし、オレも認めるところではあるが、面と向かって言われるとさすがにイラっと来る。我慢した舌打ちは結局漏れて、言い募る一之瀬へと続いた。

 

 

「大丈夫、今度は成功するはずだ!! 頼む、ベータ!! もう一度、俺を信じてくれッ……!!」

 

「無理だ……!!」

 

 

 土門の言う通り、オレに全部任せていればいい。苛立ちと共に切って捨て、加速し、鬱陶しいそれを置き去りにしようとして――その直前。

 

 

「今だ……!! 【スピニングカット】!!」

 

「ッ!?」

 

 

 突然、目の前に青いチカラの障壁が広がった。

 

 西垣だ。オレが一之瀬達に気を取られているうちに、いつの間にか近づいてきていたらしい。

 おかげで寸前まで気付けず、行く手を塞ぐその必殺技はもうすでに避けられない距離だ。このままではボールを奪われ攻められて、皆はそれを止められず、せっかく詰めた点差がまた一点開いてしまう。

 

 ボールを渡すわけにはいかない。考えを回す暇さえなかったその瞬間で、オレの頭にあったのはそれだけだった。

 故にオレは反射的に、障壁に塞がれていない側面へ、ボールを蹴り出してしまっていた。

 

 

「しまっ――!!」

 

「くっ……!!」

 

 

 ボールは西垣の手を逃れた。が、同時にオレの手からも離れてしまったのだ。今の試合に於いて、その状況は安堵とは程遠い。

 偶然ボールの行き先にいた染岡がそれを確保したとしても、同じことだ。

 

 

「ッ――!! 染岡、早くこっちにボール戻せ!! 腑抜けたお前らじゃ、すぐに奪われて終わりだ!!」

 

 

 土門のように、今は雷門のほとんどが戦意を無くしている。そんな奴らにボールを触らせても何もできやしないだろう。

 わかりきっていることだ。だからこそ、オレが全て一人でやらねばならない。

 

 

「……誰が腑抜けだ!!」

 

「は……!?」

 

 

 西垣を抜き、染岡の背を追いかけながら放った指示に、そんな口答えが帰ってきた。一之瀬と同じように気力を取り戻したのか、と一瞬思ったが、振り返ってオレを睨みつけてきた奴の眼に、そうではないことを瞬時に悟る。

 

 そもそもこいつは最初から、皆のように腑抜けてはいない。ずっと静かに、内に怒りを燃やしていたのだ。

 円堂への失望や困惑よりも激しい、奴のプライドを以ってして。

 

 

「全員が全員、雷門のサッカー(・・・・・・・)を忘れちまったわけじゃねぇ!! ……なあ、そうだろ――豪炎寺ッ!!」

 

 

 オレと豪炎寺に挟まれながらずっとエースストライカーを叫び続けた染岡は、そう、豪炎寺へのパスを蹴り放った。

 

 豪炎寺もフォワードとして前に出てきてはいる。実力も、あの軟山を破るには十分だ。だからそのパス、もといセンタリングは、平時であれば当然の判断だろう。

 だが前半戦、染岡はオレが豪炎寺にやったパスがどうなったか、その身で知っている。忘れているはずがない。

 なのにどうしてと、オレはもちろん当の豪炎寺さえ困惑していた。呼ばれ、振り向いた奴は驚愕に眼を見張っている。

 しかしボールはもう放たれた後。上がったセンタリングは無視できず――あるいは身体が勝手に反応したのか、奴はボールを追ってジャンプした。炎を纏い、回転しながら飛翔する。

 

 

「豪炎寺、打てッ!!」

 

「……っ!」

 

 

 だがしかし――いや、やはり(・・・)だった。

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