お前、つまんない嘘つくね   作:イノウエ・ミウ

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アニメ一話で推しの子にハマり、そこから原作を一気読みして、興奮が冷めぬままつい書いてしまった。
SAOやハイスクールD×Dの方を優先するので、基本亀更新になりますが、それでも読んでもらえたら嬉しいです(お気に入り登録や高評価してくれたらもっと嬉しい)。


OP「カーストルーム」
ED「Stellar Stellar」


噓が見える少年

突然だが、君たちに問いたい。

この世界には、どれだけの噓が溢れているのだろうか?

面白い噓

優しい噓

厳しい噓

苦しい噓

悲しい噓

残酷な噓

これらの噓を人は何故つき続け、本当の自分を隠そうとするのか。

それはきっと、噓を付き続けた先にある光を求めているからだと俺は思う。道がどれだけ暗くても、その先にはきっと、希望に満ちた未来()があると信じて。

ではもし・・・もし、生まれつき他人の噓が見える人間がいたら?

もしそんな人間がいたら・・・そいつの世界はきっと、暗くて、闇で満ちた世界なのだろう・・・

 

 

 

 

都会のど真ん中にある道路を一台の車が走っていた。

 

「もう少しで着きますよ」

 

車の運転席に座りながら、少し年老いている男性、松岡(まつおか)(たけし)は後部座席で外の景色を眺めている少年に語りかける。

その後部座席に座っている白い髪に赤い瞳を持った少年、天ノ川(あまのがわ)彗星(すいせい)は視線を窓から松岡の方に移す。

 

「面倒掛けたね。まだ、他の皆の事もあるだろうに」

 

「心配いりませんよ。彼らの新しい住居も順調に決まっています。君は、君のことだけを考えていなさい」

 

松岡がそう言うと、彗星は視線を窓に戻し、再び外の景色を見る。

外の景色は先程からビルが並んでいる景色が続いているが、彗星にとっては、初めて見る景色で非常に興味をそそるものだった。

何せ彗星はこの年になるまでの間、この目で外の景色を見たことが一度もないのだから。

実の親に捨てられた彗星は、物心がついた時から、とある施設で育てられ、十年近く外に出たことがなかった。

ところが、数ヶ月前に彗星がいた施設の創設者が逮捕され、施設はその機能を完全停止した。

当然、施設にいた子供たちもあるべき場所に戻った。

しかし、親がいる子供は親元に戻ったが、彗星のような身寄りのない子供は違う。彼らにとってその施設は家も同然であり、住む家を奪われたようなものだった。

そんな帰るべき場所が無い子供たちをどうにかしようと動いたのが、現在彗星を車に乗せて運転している松岡であった。

彼は逮捕された創設者の執事であり、施設の事を警察や政府に告発したのも彼だった。

施設が無くなればこうなることを予期していた松岡は、創設者が逮捕された後、子供たちの新しい引き取り手を必死に探していた。

彗星もその対象の一人だったが、彼の場合は新しい引き取り手を見つけるのではなく、彼の持つ才能を最大限に発揮できる場所へ行ってみないかと松岡から提案された。

その話を聞いた彗星は、二つ返事で了承し、現在は車でその場所に向かっていた。

絵や写真とは違う本当の景色を堪能しながら、視線を窓の方に向けたまま松岡に問う。

 

「それで松岡さん。出発してから結構走ってるみたいだけど、俺をどこに連れていくつもり?」

 

「それは着いてからのお楽しみということで。ここで明かしては面白くないでしょう」

 

松岡は微笑みながら答える。

車は丁度赤信号で停止し、松岡は運転席から顔を僅かに彗星の方に向けながら再び口を開いた。

 

「一つ言えるとしたら、その場所はきっと、君にとって有意義なものになるでしょう」

 

その松岡の言葉を聞いた彗星は、視線を松岡の方に戻すと、少し目を細めながら呟く。

 

「松岡さん。あんた・・・つまんない噓つくね」

 

そう呟く彗星の赤い瞳が僅かに光り輝いた。その光はまるで、暗い夜を照らす星のようだった。

やがて車は目的の場所へ辿り着いた。

駐車場に車を止めて、車から降りた松岡が視線を建物の方に向ける。

 

「ここだよ」

 

松岡に釣られて顔を少し上げると、彗星の目の前に建物があった。

建物を見上げる彗星の隣で松岡が説明する。

 

「黒井プロダクション。私の旧友が社長を務めている芸能事務所でね。今日から君は、ここのタレントとして、この事務所に所属してもらいたいと思っている。無論、強制はしないさ。今日一日、この事務所を見て回って、君自身の目で見極めるといい」

 

「・・・・・・」

 

説明する松岡の隣で、彗星は黙って黒井プロダクションの事務所を見つめる。

 

「待っていたぞ松岡」

 

ふと、松岡に誰かが声を掛けてきた。

声がした方に振り向くと、黒いスーツを着た無表情だが厳格な雰囲気を持つ男が立っていた。

 

「やぁ、黒井君。久しぶりだね。相変わらずの仏頂面で安心したよ。最近どうだい?」

 

「聞くまでもないだろう。これ以上、貴様と無駄なおしゃべりをしている暇はない。それで、彼が例の少年か・・・」

 

「そうだよ。きっと、君も気に入るはずさ」

 

松岡と軽いやり取りを終えると、黒井と呼ばれた男は鋭い眼差しで彗星を見下ろす。

 

「私はこの事務所の社長を務めている黒井(くろい)(しげる)だ。君のことは松岡から聞いている」

 

「天ノ川彗星です。よろしくお願いします」

 

軽く会釈をする彗星に、黒井は右手を差し出す。

 

「こちらこそよろしく頼む」

 

握手を交わした二人の間に沈黙が流れる。

しばらくしてお互いの手を放すと、黒井が口を開く。

 

「私の事務所は基本役者の仕事をメインに行っている。ここに所属している者達は皆、その道のスペシャリストばかりだ。俳優や女優だけでなく子役の活躍もかなり期待されている。君の年齢は確か十二歳だから、最初は子役として活動することになるだろう。なに、心配せずとも、努力すれば、誰だって一流の役者になれるさ」

 

無表情ながらも何処か彗星をフォローするような言い方をする黒井。

しかし、彗星もまた、表情を変えることなく、黒井に一言だけ返す。

 

「えっと・・・黒井社長、だっけ?」

 

「なんだ?」

 

「あんた・・・つまんない噓つくね」

 

彗星がそう言った途端、黒井の顔が無表情から一転して、口元を僅かに歪ませた。

 

「くっくっくっ、どうやら、噓が見えるという話は本当のようだな。この程度のハッタリは通用しないと考えた方が良さそうだ」

 

笑みを浮かべながら喋る黒井だったが、再び無表情に戻る。

 

「ここ黒井プロダクションは完全な実力主義の事務所だ。毎年、数百もの人間がオーディションに来ているが、ここに入ることができるのは、ほんの一握りだ。つまり、ここにいる者達は皆、選ばれた才能ある者達。己の与えられた'役'を完璧に演じることができる噓のスペシャリストだ」

 

言葉の一言一言に底知れぬ重みを乗せながら淡々と喋る黒井。

しかし、彗星は臆することなく、黙って黒井の言葉を聞く。

 

「努力すれば誰でも役者になれるだと?嘗めるなよ。それでなれるのは精々三流の大根役者だ。私が求めているのは完璧な役者(アクター)。己の才能を全て発揮し、噓を最後まで貫き通すことができるスペシャリストだ。松岡の推薦で私は君をスカウトするが、その上で聞こう。君にこの業界を生き残る覚悟はあるか?」

 

黒井のその問いかけに、彗星は一度目を閉じる。

そして、ゆっくりと目を開けると、黒井の目を見ながら答える。

 

「・・・一つだけ言っておくことがあります」

 

「なんだ?言ってみろ」

 

「俺は噓を見えることができるが、同時にできないことがある。それは・・・噓がつけないことだ」

 

「ほう・・・ならば、どうする?」

 

言外に噓をつけない人間がどう生き残ろうというのか。そう問い掛ける黒井に、彗星は堂々と喋った。

 

「簡単なことだ。噓を演じれないのなら・・・'本当'を演じればいい」

 

そう答える彗星の瞳の星が、再び光り輝いた。

 

「噓を演じるのが役者の役目だというのなら、俺は本物になる。本物になって証明する。この世界で頂点に立てるのは、本物ただ一人だけだと」

 

「君にできるというのか?この業界にいる才能ある噓つき達を全て欺き、役者(アクター)の頂きに立つことが?」

 

「・・・今まで俺が生きた世界は、勝った者だけが光を浴びる世界だった。舞台が変わろうが、その本質までは変わらない・・・勝ち続けること。それだけが、俺の生きる意味だ」

 

無表情で語る彗星だが、その瞳にある輝きはよりいっそう輝いていた。

その目を見つめる黒井は、数ヶ月前に聞いたある施設のことを思い浮かべていた。

 

「(白い部屋(ホワイトルーム)・・・幼い子供たちを集め、完璧な人間を作ることを目的に生み出されたが、その教育があまりにも非人道的すぎた為、つい最近廃止された教育機関・・・そこで育った勝利のみを求める未完成の人間が、この少年というわけか・・・)」

 

ホワイトルーム。全国から子供たちを集め、幼い頃から高度な教育を施して、全てにおいて完璧な人間を作るための施設。その教育内容は、あまりにも非人道的すぎて、世間に知られたら批判間違いなしのものばかりだった。

しかし、松岡の告発でその全貌が日本中に明かされてしまい、創設者や一部の職員は児童虐待やその他諸々の罪で逮捕され、その施設は完全に消滅した。

そして、彗星はその教育機関で育てられた完璧な人間(未完成な人間)の一人。

 

「この世界は勝つことが全てだ。人が他者を犠牲にして前に進む生き物だというのなら、俺はただ、人と変わらない生き方をするだけだ。例え、その先に辿り着いた場所が闇に満ちていたとしても――」

 

「(世界を知らず、白い箱の中で育てられた未完成の哀れな人間・・・いいだろう。見せてもらうぞ。未完成の君が、この業界でどのような輝きを放つのかを・・・!)」

 

「最後に俺が勝っていれば、それでいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、噓が見える少年は、黒井プロダクションで俳優の道を目指すことになる。

そして、その過程で自分と同じ星の瞳を持つ一人の少女と出会う。

 

「B小町のセンター、星野アイで~す♪よろしくね、天ノ川君♪」

 

「お前、つまんない噓つくね」

 

 

 

 

その出会いはやがて少女を、そして少年をも変えていく。

 

「俺には愛なんて必要ない。どうせ、この世界は噓にまみれているんだ。いくらファンが愛を叫ぼうが、そこに本物なんてない。この世界に本物があるとすれば、それは勝利だけだ」

 

 

 

 

「私は君が羨ましい。噓をつくことができない君が・・・」

 

「何故、そう思う?」

 

「だって、噓をつけないってことは、君が誰かに伝えようとする気持ちは、全部噓の無い本当の気持ちだってことじゃん。好きも嫌いもありがとうもごめんなさいも・・・愛してるも・・・」

 

 

 

 

「ただ勝つこと。そのためなら、他人を犠牲にしても構わない。けど・・・やっぱり、俺は未完成のままだ。自分がのし上がるために他人を傷つける。昔は容易にできたことが、今ではそれを行うことを躊躇う俺がいる」

 

「私は思うんだ。心は矛盾するもの。噓ばっかりの私の人生だけど、こうして子供を産んで・・・本物の愛を求めている私がいる。天ノ川君も同じなんじゃないかな?」

 

 

 

 

「怖いんだ。愛してる。この言葉が噓だということに気づいてしまうことが・・・」

 

「なら、試しに俺に言ってみたら?愛してるを」

 

「フエッ!?」

 

 

 

 

「すいせい、君・・・?」

 

「やはり、このタイミングで仕掛けると思ってたよ」

 

「な、なんだお前は!?」

 

 

 

 

「これが・・・君の'本当'か・・・綺麗だ」

 

「今なら、胸を張って言える・・・彗星君、私はあなたを・・・」

 

 

 

 

「・・・いいだろう、○○○○○○。何年かかろうが、俺は必ずお前を舞台に誘おう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄という名の大舞台にっ・・・!」




<オリキャラ紹介>
※名前の横に☆マークがあるキャラは、他作品のキャラをモチーフにしたオリキャラです。
・天ノ川彗星
CV:河西健吾
この作品の主人公。見た目は「ワールドトリガー」の空閑遊真だが、その赤い瞳にはアイのような星模様がある。元ホワイトルーム5期生で生まれつき相手の噓が見える。また、噓が見えるからなのか、彗星自身は噓をつくことができず、思ったことをそのまま言ってしまう癖がある。ホワイトルームが壊滅した後は、松岡の勧めと計らいで芸能事務所の黒井プロダクションに所属することになり、俳優の道を進むことになる。

・松岡武☆
CV:中博史
元ネタ:「ようこそ実力至上主義の教室へ」の松雄(ただし、松雄は原作でも詳しい容姿や性格はほとんど描かれてないため、見た目及び性格は同じくよう実のキャラである月城理事長を想像してもらいたい)
温厚な雰囲気を持つ老紳士。ホワイトルームの創設者の執事を務めていたが、彼がホワイトルームの存在を世間にリークしたことで、創設者は逮捕されて、ホワイトルームは壊滅した。現在は親元がいない元ホワイトルーム生たちをどうにかしようと頑張っている。ちなみに、原作同様息子もいる。当然、息子も原作のようなことになっておらず、現在は志望していた私立高校に通っており、最近は幼馴染の彼女と交際を始めた。

・黒井茂
CV:諏訪部順一
見た目は「Fateシリーズ」のロード・エルメロイ二世だが、髪型はショートであり、口元に薄い髭が生えている。黒井プロダクションの社長を務めている。完全な実力主義者で冷酷で容赦の無い性格の持ち主。事務所は少数精鋭であり、所属するタレントも自身の目で見極めた一流の者ばかり。松岡とは旧友であり、後に登場予定の苺プロダクション社長、斉藤壱護とは同期である。


最後の○○○○○○は、アニメ派のネタバレ防止のため、敢えて隠しています。原作を読んでいる人なら、○に入る人物が分かるはずです。
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