仮面ライダーギーツ アナザーワールドジェネレーションズ 作:Naniro
「どういうことだ!快斗!」
「そのままの意味だ一夏。お前の姉程の実力者が敵になれば、厄介である他はない」
「まあまあ、一夏も大角君も落ち着いて…」
2組との合同訓練を終えた後、一夏の怒号が教室に響く。どうやら一夏と快斗が言い争っているようだった。シャルルが割って入り、止めようとしているが、一向に収まる気配がない。
「何?何があったの?」
「大角君が織斑先生が実力者だからテロを起こせば蹂躙できるだろうと言って、それで織斑君が怒って…」
どうやら快斗は千冬がテロ起こせば、世界にマウントが取れると言い、それに一夏が怒ったとのことだった。姉を尊敬する一夏にとって快斗のこの発言は千冬を危険人物扱いしてるようなものだからだ。
「千冬姉がそんなことするわけがない!」
「そうとは言い切れんぞ一夏。力を持った人間は調子に乗って道を踏み外すことが多い。特に世界最強の称号を持ったあいつなら、さぞ鼻が高いだろうな」
「快斗…!どうしてお前はそこまで…!」
「俺にも姉がいたんだよ」
「何…!?」
教室が一瞬にして静寂に包まれる。快斗は構わず続ける。
「俺には10歳離れた姉がいた。しかも実力のあるIS操縦者だった。だが5年前、そいつは突然失踪してしまった。捜索届も出したさ。だがその1年後、そいつは女性権利団体の一員として町を襲い、両親を手にかけた。優秀という地位があの野郎を堕落させたんだよ。両親を殺すのを躊躇しないくらいにな。だからお前の姉もそうなる可能性が高いんじゃないか?」
「貴様、教官をあのイカれた集団と同類扱いする気か?」
快斗が振り向くとラウラが立っていた。
「お前もだよ。口振からしておそらく軍人…。素人より実力はあるだろうし、あの団体には元軍人もいた。ご丁寧にドイツ軍出身と言ってたな。大口を叩いていたが、俺がちょっとボコしてやったら泣きじゃくって許してくださいとか言い出して」
ラウラは心当たりがあるのか、顔を顰める。
「次はお前の番かもな?」
「私をあんな奴と一緒にするな!」
ますますヒートアップしそうになったそのときだった。
「そこまでだ!」
「千冬姉!?」
「教官…!?」
やってきた千冬の一声で一気に静まり返る。
「大角、来い」
快斗は面倒くさそうにしながら渋々千冬に着いていった。
「…大角、お前の姉というのは、真由美さんのことか?」
「……!知ってるのか」
移動中に千冬が先程、快斗が話していたことについて聞いてきた。
「あぁ、お前がアリーナで暴れていた時に使ったあの剣の技、間違いなく真由美さんの技だった。まさか弟のお前も会得していたとはな」
「……」
「…真由美さんは当時、史上最強のIS操縦者と言われていた。私は何度も彼女に挑んだことがあるが、一度も勝てなかった。もし彼女がモンド・グロッソに出ていたら、世界一の称号は彼女になっていたかもしれないな。そんな人がテロリストに…か…。とても信じられん。あの人は争いごとを好まない平和主義者だった。決してそんなことをするような人柄ではなかった」
「だが事実、あいつは町を襲い、両親や色んな人を殺した。俺はあいつだけはこの手でぶち殺すつもりだ」
「…実の姉をか?」
「あんな奴、もう姉じゃねえ!!ただの憎い敵だ!!」
「大角…」
「お前もだブリュンヒルデ。世界一の称号を持ったお前が敵にまわればこの上厄介なことはない。今この場で始末してやってもいいんだぜ?」
「…私はそんな愚かな真似をするつもりなどない」
「どうだかな?お前も内心そう考えているんじゃないのか?ましてや密かにテロリストと繋がってたりな?」
「全てのIS操縦者が悪人であるとは限らない。時には他人の言葉を信じることも必要だ」
千冬はそう言いながら、出席簿で快斗の頭を軽く叩いた。
「それに、いつもお前の面倒を見てくれている奴がいるだろう。たまには彼女の要望を聞いてやったらどうだ?」
「……」
「…それと、盗み聞きは感心しないぞ、織斑」
千冬が後ろを振り向くと、そこには一夏がいた。どうやら先程の会話を聞かれていたらしい。
「快斗!お前いい加減にしろよ!いくらなんでも─」
「一夏、大角とお前は見てきた世界が違う。私を危険視するのも無理はないだろう」
「だからといって……!」
「大角は、誰も助けてくれず、暗い地下牢でずっと拷問を受けてきた。それがどんなにつらいことか、考えた事があるか?お前も誘拐されたならわかるはずだ」
「……!!」
一夏はかつて、自分が誘拐された日の事を思い出した。すぐに千冬が助けに来てくれたが、捕らえられているときはかなり苦痛だったことを覚えていた。それ以上の苦痛を快斗は経験しているのだ。
「…あまり大角をせめるな」
「…はい。ごめん、快斗」
「……」
◇
「こうズバーン!とやってから、ガキン!ドカン!という感じだ!」
「なんとなくわかるでしょ?感覚よ、感覚。…はあ!?なんでわかんないのよバカ!!」
「防御のときは右半身を斜め上前方へ5度。回避のときは前方へ20度ですわ!」
「…率直に言わせてもらう。全然わからん!」
「何故わからん!?」
「ちゃんと聞きなさいよ!ちゃんと!」
アリーナにて、一夏は箒、セシリア、鈴からISの戦い方について教えてもらっていたが、全く理解できないでいた。
「ふん、お前らの説明が下手過ぎるだけだ」
そこへ、パワードビルダーフォームとなったシーカーがやって来た。
「どういうことよ!?」
鈴が言い返すが、シーカーは淡々と説明する。
「そのまんまの意味だ。そこのツインテール、感覚とか言ってるが、その感覚は人によって違う。勘でやれって言ってるようなもんだ。説明がめんどいから丸投げしてるだけだろが」
「うぐ…」
「金髪ロール、お前は細かすぎて相手の理解が追い付いていない」
「そ、そんなぁ…」
「そしてお前は論外だ。なんだドカンとかガキンとか、擬音で説明とか幼児か」
「よ、幼児…!?」
シーカーの容赦ない言葉の連続に3人は撃沈寸前だった。そんな様子を一夏は苦笑いしながら見ていた。
◇
309:グレア司令官
シーカーの様子はどうだ?
310:情報屋亡
最近は落ち着いているようです。ですが、シャルル・デュノアを疑いの目で見るようになりました。気づくのは時間の問題のようです。
311:ヒーロー科のパンクジャック
シャルルって、2人目の男性操縦者だろ?なんかあるのか?
312:素晴らしい世界の狸
>>311あの子は実は女の子なんだよ。
313:ヒーロー科のパンクジャック
あ、やっぱり?なんか怪しいと思ってたんだよな…。
314:シンフォギアナーゴ
というかよくそれでバレないよね。
315:名無しのギーツ
彼…もとい、彼女の正体がバレたらシーカーの怒りを買いかねない。
316:ありふれバッファ
確かにな。あいつからしたらこれ以上ない屈辱だろうな。
317:トータスガッチャード
少し思ったんだけどさ、あのセシリア・オルコットっていう人、ミレディ・ライセンと声似てる気がするんだが。
318:名無しのギーツ
>>317それは言わないお約束。
◇
GIGANT STRIKE
ドォオオオオオオオン!!
「うわああああああああ!!」
シーカーはシャルルと手合わせをしており、終始シャルルを圧倒していた。
「うぅ…、やっぱり強いね。大角君は」
「……」
シーカーはシャルルを無言で見つめていた。
◇
アリーナでの練習を終え、更衣室で着替えていると*1、シャルルがやってきた。
「じゃあ僕は先に部屋に戻ってるね」
「え?ここでシャワー浴びていかないのか?お前いつもそうだよな?」
「なんか事情でもあるのか?」
「えぇ…?」
一夏と快斗にその事を指摘され、戸惑うシャルル。
「なんで俺達と着替えるのを嫌がるんだよ」
「べ、別にそんな事はないと思うんだけど…」
「そんな事あるだろ。たまには一緒に着替えようぜ」
「……」
シャルルの動揺ぶりに快斗は少し目つきが鋭くなる。
「い、いや…」
「そうつれないこと言うなって」
そう言いながら一夏はシャルルの肩を掴んで抱き寄せた。
「……!!うわあああああああ!!」
「シャルル!?」
するとシャルルは叫びながら一夏の腕を振り解き走り去っていった。
「…なんだ?」
「……」
◇
「はぁ、はぁ…」
シャルルは急いで部屋に戻ると一息つき、少し落ち着くとシャワーを浴びようとしたそのときだった。
コンコン
「ん?」
部屋のドアをノックする音が聞こえ、開けてみると、そこには快斗がいた。
「あれ?大角君?珍しいね。どうしたの?」
「……」
「…大角君?」
「……」
快斗は黙ったままその場に立っていた。
「えっと、とりあえず入る?立ち話もあれだから」
シャルルは快斗を部屋に入れた。
「……」
「どうしたの?大角君」
すると次の瞬間、快斗の目つきが鋭くなりシャルルの首を掴み、締め上げる。
ガシッ!ギュウウウウウウウウウ!
「うぐ…!?大角君…!?何を…!?」
「おいてめえ、なんのつもりだ?」
「な、なんのこと…!?」
「とぼけるな!男装してまでこの学園に来るとは何が目的だ」
「…!?な、なんで僕が男装してることが…!?」
すると一夏が部屋に戻ってきた。
「快斗!?お前何やってんだよ!?」
「丁度いい所に来たな一夏。こいつの正体が分かったところだ」
「な、なんだって…?」
快斗は一夏にシャルルが女だということを説明した。
「シャルルが女だって…!?」
「そうだ、性別詐称とは随分と舐められたもんだ」
「快斗!とりあえず離してやれって」
一夏に離すよう言われ、快斗は渋々シャルルの首から手を離した。
「ゲホ!ゲホ…!」
「大丈夫か?シャルル」
「う、うん…。あ、あれ…!?僕のリヴァイブは…!?」
「探し物はこれか?」
シャルルは自分の専用機の待機形態であるネックレストップがなくなっていると思ったら、快斗に取り上げられていた。
「お前が暴れることを想定して、没収させてもらった」
「…どうして僕が男装しているってわかったの…?」
「お前がここに来てからだ。しかし見た目だけでは女とは言い切れないから確信がなかった。だがお前の行動を見て疑念が確信に変わった。着替えを見られるのをやたら嫌がったり、俺達が着替えをしているとあからさまに動揺したり、前に一夏とお前が間違えて女共が着替え中に教室に入った時に、一夏は慌てていたが、お前はほとんど動じていなかった。これを怪しいと言わずに何というんだ?」
「鋭いんだね大角君…」
「お前が男を演じるのが下手過ぎなんだよ。んで、何が目的だ?」
「…実は──」
シャルルは事情を話し出した。父の命令で男装し、一夏の専用機である白式のデータを盗むために送り込まれたこと、父の正妻の子ではなく、妾の子であること、一夏は驚きつつも聞いていたが、快斗は鋭い目つきのままだった。
「つまりお前はデュノア社のスパイということか。それに社長の隠し子とは、マスコミの恰好の的だな」
「快斗!そんな言い方はないだろう!」
「一夏、こいつはお前の白式を狙っていたんだぞ?なんなら後ろから刺されてもおかしくなかったという事だ」
快斗はそう言いながらシャルルを睨みつける。するとシャルルは一息つく。
「ふう…。本当のことを話したら楽になったよ。聞いてくれてありがとう。それと、今まで嘘をついていてごめん」
「…いいのか?それで」
「…え?」
「それでいいのか!?いい筈ないだろ!!」
「…一夏?」
「お前はこの後どうするんだ!?」
「どうって…。女だってことがバレたから、きっと本国へ戻されるだろうね。あとのことは分からない。よくて牢屋いきかな…」
シャルルは諦めたかのように目を閉じる。すると快斗が口を開く。
「ほう?つまりお前は何されようと覚悟はできるていると?」
「うん…」
「いいだろう。ならばお望み通り、貴様をブタ箱へ放り込んでやる!!」
快斗はシャルルの胸ぐらを掴み、連れていこうとした。すると一夏が止めに入る。
「やめろ快斗!!」
「一夏!なぜこいつを庇う!?こいつはスパイだぞ!?ましてやお前の白式も狙っていた!なのに許すというのか!?」
「確かにそうだけど……、シャルルはきっと俺達に危害を加えない!」
「なぜそう言いきれる!?根拠はあるのか!?」
「根拠はない!でも俺はシャルルを信じる!だから連れていこうとするな!」
「……」
一夏の真っ直ぐな瞳に快斗は舌打ちをすると、掴んでいた胸ぐらを離した。そしてシャルルのISを投げ渡した。
「…大角君?」
「勘違いするな。一夏に免じて見逃してやる。だが、もし変な気を起こそうものなら、容赦なく叩き潰す」
快斗はそう言い残すと、部屋を出て行った。
「…大角君」
「ごめんなシャルル。あいつも悪い奴じゃないんだけど…」
「ううん、大角君の経験からしたらそれは仕方ないと思うよ」
◇
快斗は一夏とシャルルの部屋出て、自分の部屋に戻りながら、一夏がどうしてそんなに女性に対して甘いのか疑問に思っていた。
(女共が調子に乗るこの世の中であんな接し方したら、ますます調子に乗り出すに決まっている…)
「快斗!」
「…!なんだお前か」
自分を呼ぶ声に振り向くと、そこには簪がいた。
「どこ行ってたの?探したのよ?というかどうしたの?なんかいつも以上に不機嫌そうだけど…」
「…別に」
快斗はシャルルの事を言おうとしたが、さっき自分が言ったことを思い出し、言うのを辞めた。
IS操縦者データ
シーカーニキこと、快斗の実姉で、弟である快斗とは10歳年が離れている。千冬でさえも歯が立たないほどの高い実力を持つIS操縦者で、もし彼女がモンド・グロッソに出場していたら、ブリュンヒルデは彼女だったかもしれない。襲撃事件が起こる1年前に突如行方不明となる。その後、襲撃事件を起こした女性権利団体の一員となっていたことが快斗の口から語られた。性格は千冬曰く、争いごとを好まない平和主義者だという。
次回でシーカー編を区切る予定です。