持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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スマホ版だとすぐ固まって強制終了されるのでリンバスカンパニーが出来ません。スペックの良いパソコン買おうにも金銭に余裕が無いので苦しいです。


あとご飯の描写楽しいです。


それでは、どうぞ


第10話

「と言うわけで、玉狛に所属してくれることになった巷で噂の狩人くんでーす!」

「三雲修です。遊真と千佳共々、改めてよろしくお願いします。」

「空閑遊真です。ヨロシクオネガイシマス。」

「雨取千佳です。これからお世話になります。」

 

絶句した3人と気絶した小南が落ち着きを取り戻した後、修達は改めて挨拶を行う。しかし、4人は疑問が尽きないようで代表して小南が突っ込み始める。

 

「ちょっと迅!そういうのは早く言いなさいよ!というかいつの間に知り合ってたの!?」

「えーっと、大体……何年前だっけ」

「面識自体は6年前で、本格的に協力者として動き始めたのは第一次侵攻の少し後位です」

「あーそうだったそうだった」

「めっちゃ前じゃないすか」

「そんな前から……全く、暗躍するのも程々にしておけ迅」

 

3人分の呆れを含んだ目線が突き刺さるが、迅は特に気にした様子もなくぼんち揚をバリボリと食べている。

 

「質問いーですか迅せんせー?」

「はいどーぞ宇佐美くん」

「修くんが変身してたけど、あれなんですかー?」

「いい質問だ宇佐美くん!まぁ俺も詳しくは知らないし、多分本人から説明した方が良いだろうから狩人くんにパス!」

「えぇ……まぁ良いですが」

 

雑に話を回された修は少しばかり思考した後に仕方がなさそうに話し出す。大方遊真の知っているような情報を開示したものの、その存在をつい先程まで知らなかった4人は今一理解できていないようで全員が首を傾げていた。

 

「「…………?」」

「えーっと、つまり修くんが使うEGOっていうのは元になった存在……アブノーマリティってやつの自我を抽出して形にしたもの、ってことで良いのかな?」

「概ねそのような認識で構いません。まぁアブノーマリティに限らず、人間も発現させる可能性はありますが……余程の事がない限り関係ないので気にしないでください。」

「そんなものが存在するとはにわかには信じ難いが………実例が目の前にある以上認めない訳にはいかないか」

「にしても、何でそんなもんをアンタが持ってるわけ?話を聞く限り個人で持つような物じゃないでしょ」

「俺のはアブノーマリティから押し付けられたギフトを元にして過去に扱った事のあるEGOを呼び出した物です。こんな風に

 

幻想模倣 Penitence(懺悔)

 

そう言って修は手を軽く開く。すると手の中で光の粒子が渦巻き、十字架型のメイスが構築された。十字の交わる部分には赤い棘の冠を被った頭蓋骨が存在しており物々しい雰囲気を醸し出していた。

 

「すごいデザインだな。十字架に頭蓋骨なんてバイト先に来たバンドマンのシルバーアクセサリー位でしか見たことないぞ」

「言いたいことは分かりますが一応俺が呼び出せるEGOの中で一番安全な物ですよ、これ」

「ふーん……持ってみていい?」

「えぇ、これなら特に害などはない筈ですから」

 

メイスを受け取り軽く振るうと、重そうな見た目に反して軽やかな風切り音が鳴る。

 

「思った以上に軽いわね。せいぜい孤月くらいの重さしかないわ」

「これも何か特別な能力とかあるの?」

「持ってると精神が安定します。あと生物相手だといくら全力で殴ったとしてもなんかちょっと痛いと感じる位で絶対に怪我を負わせられません」

「へぇ~…………」

「………なぁ小南?なんでこっちに向けて振りかぶってるんだ?」

「さぁ、なんでかしらねぇ?」

「あ待った、未来が見えた………ちょ、待て待て待て待て!」

「一人でこそこそやってんじゃ無いわよこのスットコドッコイッ!!」ブオンッ!

「あべしッ!?」ゴンッ!

 

フルスイングの一撃は迅の顎を捉え、そのまま後方へ吹き飛ばした。

 

「ふむ、いいスイングだ」

「あー、すっきりした。あんがと、これ返すわ」

「大丈夫っすか迅さん」

「あー、うん、本当に衝撃だけで痛みは軽くビンタされた位しか無い……けどぶっ飛ばされて地面で打った背中が痛い……」

「一人で抱え込むからだ。いい加減、少しは俺達も巻き込む位の事はしろ」

 

遊真が感心したように頷き、烏丸の手を借り背中を擦りながら起き上がる迅を木崎が呆れたように叱る。そんな中、千佳は返されたメイスに異変が無いかを確かめる修に声を潜めながら話しかけた。

 

「修くん、貸して良かったの?」

「数ある中でも唯一一般人が持っても侵食が起きないEGOだ、問題はない。それに元々これは懺悔を受け入れる O-03-03(たった一つの罪と何百もの善)の一部みたいなものだ、迅さんの罪の意識の払拭程度にはなっただろう」

「けど、この前アルバイトで行った廃教会で光ったと思ったらそこを根城にしていた空き巣の人が気絶してたし……」

「罪善さんがいくら慈悲深いとはいえ、流石に自分も関係しないこともない場所で悪事を働く輩は見逃しはしないだろう。別世界の話だが、正真正銘の救世主だからな」

「………つまりこの頭蓋骨の元になった人、この世界にとってかなり凄い存在なんじゃ……」

「例の救世主と同等の存在かもしれないな」

 

軽く言ってはいるが、要約すると歴史に残る聖人の一部を武器として転用しているのと同義である。宗教関係者が聞けば卒倒して1ヶ月は目覚めなさそうな事実だが、修は特に興味は無いようで、いつものようにEGOを収納していた。

 

「……まぁ修くんが良いならいっか」

 

数瞬だけ思考を巡らせるが深く考えた所で答えを得ることは出来ないと理解したため、すぐにそれを放棄する。暫くして、話題は再び修の異常性に戻った。

 

「うーん……けどさっき腕が完全にゲームに出てきそうな化物みたいになってたあれは何なの?」

「EGOと身体を融合させてます。よりアブノーマリティに近い姿になってるってことですね」

「そもそも、そのアブノーマリティって言うのは何なんだ?」

「見た方が早いので呼びますね」ピーッ!

 

木崎からの問いかけへの返答に指笛を吹く。

 

「……いやここ地下よ?あり得ないわよ」

「先輩、もう忘れたんですか?ワープしてくる奴とか地面を泳ぐ奴が居るに決まってるじゃないですか」

「はっ!た、確かに……ってことは地面から来るってこと!?」

「あー……京介、少し右に行った方がいい」

「何のはな"ッ!?」

 

迅の忠告も間に合わず、突如として天井をすり抜けるように現れた罰鳥はその勢いのままダイブした。ふわふわの羽毛に包まれながらもそこらの生物よりも頑丈な肉体は言葉を発していた最中だった烏丸の頭にヒットし、そのままバウンドした後に一度羽ばたいて修の肩に収まった。

 

フンスフンス

「早かったな罰鳥、あと毎回言ってるがスピードを殺すために人にぶつかる癖は治してくれ」

「うぐおぉ………!」

「うわ~クリーンヒット……」

「とりまるくん大丈夫~?」

「めっちゃ痛いっす……なので昼飯カツ丼にしてくださいレイジさん……」

「元気そうだな。あと昼飯は皿うどんだ」

 

痛みで地面に沈む烏丸を囲む3人とはまた別で、天井から突っ込んできた罰鳥を呆然と見つめていた小南は烏丸のうめき声でようやく再起動を果たした。

 

「へ?地面から来るんじゃないの?」

「今確認している中でこの世界にいるアブノーマリティはこいつ含めた3羽と外国に何体かだけですし、その中に地面を潜れる奴は居ませんよ」

「…………と~り~ま~る~!!」

「ちょ、いま追い討ちはいだだだだだだた」

「昨日ここ来て律儀に窓開けて帰ってった子?」

「えぇ、流石に覚えてましたか」

「覚えてるよ~、忘れる方が難しいよ~。確か罰鳥ちゃんだっけ、ちょっと触ってみてもいい?」

「罰鳥が良いなら別に構いませんよ」

「やった!おいで~罰鳥ちゃ~ん」

 

脳天をグリグリと抉られて呻く烏丸を他所に、呼ばれたバットリは差し出された宇佐美の手の器の中に収まると、つぶらな瞳で見上げる。

 

モフッ コテンッ

「ん~、可愛い!うりうり~ここがええんか~?」

バサバサ

「言語を理解しているのか、確かに普通の鳥とは違うな……胸の模様は何なんだ?」

「あまり弄りすぎないで下さい、怒らせたら噛みつきますよ」

「こんなちっこいのに噛まれても特に何かがある訳じゃないでしょ」

「ついでに言っておくと人の指程度なら軽く噛み千切れますからねそいつ」

 

その瞬間、罰鳥をつつこうとしていた小南の手が残像が出る速さで引っ込められ、モフモフしていた宇佐美はピシリと固まる。罰鳥は満足したのか宇佐美の手の上から飛び立ち、遊真の頭の上に収まった。

 

「罰鳥は罪人に罰を与える役目を背負った鳥なので、その程度出来て当たり前です」

フンスッ

「何でそんな誇らしげなのよそいつ………」

「彼がその役目に誇りを持っているからですよ。罰鳥を含めた3羽は自分の故郷を守るための過程でアブノーマリティへと変化した存在ですし、今も時折夜の散歩で罪人が居ないかパトロールしてますから」

 

遊真の頭に陣取る罰鳥が翼を開きながら胸を張り、不自然な胸の模様をありありと見せ付ける。その顔は人間で言うどや顔と形容しても良いぐらいにはキリッとした表情だった。

 

「因みに罰鳥ちゃんも他の子達も普通にトリオン兵ぶっ壊せるぐらいには強かったよ」

「マジで!?え、種類は?」

「モールモッド」

「バリッバリの戦闘用じゃないっすか」

「余程の事がない限りはトリオン兵以外は殺さないように言い聞かせてるのでご安心を。まぁ誘拐等をしようとしている輩は後遺症がギリギリ残る程度の半殺しまでは許可してますが」

「それは安心していいの?」

「罪を犯す方が悪いんですよ」

 

当然だと言わんばかりにあっけらかんと答える修は隣の罰鳥の頭を撫でた。

 

「まぁ普通に可愛がるならただの賢くて可愛い小鳥ですから、普通に接して貰えれば大丈夫です。その内他の2羽も来るかもしれませんが、その時も普通に接して貰えれば……」

「んお?シンパンドリとオオトリもここに来れるのか」

「あまり目立たないようにと言い聞かせてはいるが割と自由にさせてるからな、どこからか狂ってしまっただけで本質はただの優しい鳥だ」

「………シンパンドリとオオトリの見た目言っとかなくて大丈夫か?」

「別に大した問題はないと思うが」

「はいはい、一旦ここで話切るよ~。取り敢えず、狩人くんの特訓相手は全員でやらなきゃいけない理由は分かっただろ?まぁトリガーとか一切使ったことが無いからそこら辺を教えるのは京介と宇佐美に任せるよ。師匠と言うよりかは先生だな」

「そっすね、了解しました」

「りょうかーい!」

「お二方共、よろしくお願いします」

「………そろそろいい時間だな、飯にするか」

「豚カ「皿うどんだ」ウィッス」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「いただきます」」」」」

「イタダキマス」

「すまないな、手伝って貰って」

「構いませんよ、昔から料理は好きなので」

 

地下の訓練室からリビングへと戻ってきた一行は木崎と修が作った皿うどんを味わっていた。野菜と豚肉、海鮮がたっぷりと使われたあんはとても香ばしく、食欲がそそられる。それをしっかりと絡ませた揚げ中華麺を口に含むパリパリとした部分を残しながらもあんをしっかりと捕らえ、その材料の旨味を存分に引き立たせる。まだしゃきしゃきとした食感を残した野菜や海鮮特有の噛み応えがありそうな海老やほたての貝柱もまた魅力的だった。

 

「ふーむ?この固いやつ、食感は良いが味がないな」

「遊真くん、皿うどんは麺をあんに絡めて具と一緒に食べるんだよ」

「ほほう、こうか?………おぉ、これはうまい」

 

この世界の食事に慣れていない遊真がほんの少し戸惑う事はあったが、全員が昼食に舌鼓を打つ。

 

「それで、昨日千佳ちゃんからかるーく聞いたけど、結局のところアブノーマリティってなんなの?」

「………色々と説明が面倒なので細かいところは省きますが、言ってしまえば従来の方法や現代科学で説明が出来ない異常存在の総称です。存在的には怪異みたいなものと言ったほうが分かりやすいですかね」

 

少しの間思案して簡潔に答えた後、持ち上げた状態で温くなっていた皿うどんを口に含む。温度が奪われてもなおその旨味は劣化することなくしんなりとした麺と共に運ばれた後に口の中に広がる。

 

「そういやなんやかんや話が流れたけど、アンタ私の双月当たった時血出てなかった?」

「えぇ出ましたが……それが何か?」

「いやそう流しても良い事じゃ無いでしょ。そもそもボーダーのトリガーは安全装置として生物相手は傷つけられない筈だし……」

 

半分程食べ終えた所で小南から先程の話を振られる。呆れと少しの心配が見え隠れしているが、大して気にしていないような修は試合で付けられた筈の傷があった場所をなぞりながら答えた。

 

「シンプルな話ですよ、トリガーがその時の俺を生物として認識してなかっただけです。」

「今は普通の人間に見えるが………」

「あんな姿してる時点で人間止めてますよ。さっきも言った通り、EGOと融合……言い換えれば侵食されると存在自体がアブノーマリティへと近づいて行きます。現実の科学で証明出来ないような存在になればそちらの道理が通じなくなるのは良くあることですよ」

「確かにEGOはトリオンを破壊できるけどそもそもトリガーとは別物だぞ。その証拠にレプリカにも解析して貰ってもトリオン反応とか一切なかったし、そもそもそれが何なのかすら分からなかった」

「だがあの身体能力はどう説明するんだ?局所シールドを拳一発で殴り砕いたり電柱を片手で投げ飛ばしたりかなり無茶苦茶やっていたが」

「あぁ、あれ狩人くんの素の身体能力」

「「「………はぁ?」」」

 

何でもないかのような迅の呟きに玉狛第一の面々は揃って皿うどんを食べる手を止めて眉を顰めるが、当の本人は呑気にあんの水分を吸って若干柔らかくなった部分を食べ進めている。

 

「もう狩人くんごとブラックボックスみたいな扱いで良いと思うんだよ俺は。割と考えたら負けみたいなとこあるし」

「随分な言い様ですね」

「オサム、トリオン兵を殴り飛ばしてひっくり返す奴は普通じゃないんだぞ?」

「修くん、普通の人は握力だけで電柱は壊せないし、突っ込んできたトラックを蹴り一発で止められないんだよ?」

「………二人揃って諭すように言うんじゃない、自分が普通の範疇から大きく外れてる自覚はある」

「何よそれ、じゃあ私達3人を相手取ってた時も生身のままだったってこと?」

「いえ、流石にEGOを着込めば多少身体能力にブーストが掛かりますし完全に普段通りというわけでは……」

「ん?バムスター殴り飛ばしてたときもラッドの足引きちぎってたときもEGOなんtモガッ」

「余計なことを言うんじゃない」

「………ムグムグ……うむ、うまいなこれも」

 

横に座る修によってほたての貝柱を突っ込まれた遊真はその旨味に目を輝かせ、話を断ち切りながらそのまま残っていた皿うどんを掻き込み始めた。不自然なまでの口封じに怪訝そうな目線を向けてくる小南からそれとなく目をそらして己の分の皿うどんを箸で持ち上げて息を吹き掛けて冷ます。

 

「修くん修くん」

「ん?どうした千佳」

「あー」

 

一人黙々と食べていた為既に完食した千佳は雛鳥のように口を開く。

 

「………分かった分かった」ヒョイッ

「はむッ………ん、おいしい」

 

修は仕方ないといった様子で遊真にしたよりも優しく料理を千佳の口元に運び、千佳はそれを頬張った。目的を果たしてご満悦のようで、咀嚼している様子は大変幸せそうである。

 

「………なぁ遊真、あの二人付き合ってるの?正直千佳ちゃんとはあまり関わってなかったからそこら辺知らないんだけど」

「修は「そんなわけないだろ」って言ってた。嘘じゃなかったのは確かだぞ」

「えぇ……いやあの距離感はもう恋人でしょ」

 

 

 

 

 

 

「ん?………すいません、少し席を外します」

 

食事も終わり少しばかり休憩を取っていると、突如として修の携帯電話が鳴り出した。断りを入れ電話に出た修だったが、しばらくして声色に少し困惑が混ざり始めた。

 

「………早くないか?前回送ってきたのは一週間前だぞ。それに今からは受け取れない………ん?あぁ、確かに川沿いだが………おいちょっと待て、もう来てるってどういう………」

「オサム、どうかしたのか?」

 

修が眉をひそめながら電話の向こう側の相手に問いかけたとき、何処か遠くから断続的に機械の駆動音が響いてきた。

 

「……エンジン音?」

「多分ボートだな、それも漁船レベルの」

「支部の近くにボート通る事なんてあったっけ?」

「んなもん知らないわよ、迅はなんか知ってる……迅?」

「おぉ、マジか。喜べみんな、晩飯が豪華になるぞ」

 

聞き慣れない音に首をかしげる四人を他所に、一足先に豪華な海鮮鍋を囲んでいる未来を見た迅はウキウキで立ち上がった。そうこうしている内にエンジン音は窓のすぐ向こう側まで近づき、ベランダ辺りで止まった。向こうからはガチャガチャと作業をしているような音が聞こえる。

 

「あ、もしかしてウェルチアースさん達?」

「あぁ、何でもここ数日大漁だった日が続いたらしい。ノルマは軽く超えたし他のものまで大漁で、売り捌いても余るほど取れたとのことだ。何箱か持ってくる………っと、来たか。すいませんベランダの近くに船を留めたらしいので搬入手伝って下さい。」

「良いよー、わざわざ届けてくれるなんて親切な人だね狩人くんの知り合いは」

「………そもそも何で修がここに居ることを知ってるんだ?」

「……確かにそうっすね」

 

木崎と烏丸の呟きを他所に修と千佳はベランダに続く大窓を横にスライドさせて外に出る。

 

「はいはーいっと、初めま………」

「どったの迅さ………」

 

手伝おうとベランダから船を覗き込んだ迅と興味深々でついてきた宇佐美は言葉を止めて立ち尽くす。それを奇妙に思って近づいた玉狛第一の面々もそれを視界に入れた瞬間、脳が処理落ちしたかのように絶句した。

 

ワシャワシャ

 

外に確かに止められていた漁船の甲板にいたのは、人間サイズのエビをデフォルメしたマスコットのような見た目をした何かだった。頭は完全にエビだが、首から下は人間の漁師のように作業着や長靴、ゴム手袋を身に付けている。

 

「1週間ぶりだな………まったく、新鮮な魚を分けてくれるのは感謝してるがあまり頻度を増やされても処理に困るぞ。」

「こんにちはウェルチアースさん。この間のエビ美味しかったです」

ブンブン

 

そんな珍妙な生物達を前に固まっている者は気にせず、修と千佳は当然のように会話を始めた。エビもそれに答えるように髭を動かし、ジェスチャーをしている。そうこうしている内に割と大きな船の船内から発泡スチロール製のそこそこ大きめな箱が4つ程運び出され、

 

「よっと……あぁ、もしよかったら2箱分貰ってくださいませんか?流石にこの量は食べきる前に腐らせてしまいそうなので」

「いや、まぁ、それは構わないんだけどさ………なに?この………何?」

「エビ捕り漁船をやってるアブノーマリティです」

「エビがエビ捕ってるの………?」

「別に気にすることでもないでしょう。大きな魚が自らよりも小さな魚を食べるような物ですし、普通に人間の乗組員も居ますよ」

 

そう言って修が指差した先には寸胴鍋を持って船内を移動している人物が見えた。首から下の格好は同じだが、頭にはエビがそのままデザインされたような帽子を被っている。

 

「昔修くんと私の家族で行った旅行先で座礁してたのを助けたり……あと取引先として親戚を紹介したりして以来色々と交流がありまして、時折こうして余ったり目標じゃない海鮮を届けてくれるんです」

「うーん、どっから突っ込めば良いかにゃ?」

「考えないで感じて下さい」

「それで次はどこの海域に行くんだ?」

ワシャワシャ

「そうか……気を付けろ、あの辺りは安全とは言い難い。まぁ船に乗ってる戦力を考えれば大丈夫だろうが」

「なんでエビと会話が成り立ってんのよ……」

「オサムだからな」

 

 

 

 

 

 

「差し入れ?蓋は……開いてないな。ありがたくいただく」

ブンブン

「分かった、また今度馳走になる。その時はまた日持ちする大量のバゲットを作って持って行くのが条件で良いな?日にちは事前に知らせてくれ」

ウンウン

「なんて言ってるの?」

「次来るときはシーフードスープとアヒージョを振る舞ってくれるそうです」

「………お、未来見えた。めっちゃ美味そう」




罰鳥くんは修の近くで小分けにされた皿うどんを食べてます。カワイイですね。
公式設定で異世界にいる可能性があったので出したウェルチアース達ですが、一応あと何体かアブノーマリティを出したいと考えております


ちなみに千佳は兎も角、修は千佳に対して親愛はあれど恋愛感情は一切抱いてません。心情としては年の離れた妹か娘だと思ってる節があります。

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