持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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ロボトミRTAとかいうこの世の業の煮凝りみたいな物が生まれてしまった今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。色々ありますが私は元気です。





それでは、どうぞ


第11話

「なんかまぁ色々とあったけど気にせず特訓始めようか」

 

昼食を終え、エビ達からの贈り物を一先ず冷暗所に移動した後、修達は再び地下の訓練室前に集まっていた。

 

「遊真はそれを使ってくれ」

「ほほう、これがボーダーのトリガーか」

「中には俺のオススメのスコーピオンっていう自由に形を変えられる攻撃用のトリガーを入れてあるし、他のトリガーも試せるように訓練室内に用意しといた。お前もボーダーのトリガーに慣れておく必要があるから、小南と実践形式で覚えてくれ」

「ふむ、ヨロシクオネガイシマス」

「ふぅん……アンタも強いんでしょうね?」

「それについては俺が保証するさ」

「ボーダーのトリガーがどんなもんかはまだ知らないけど、油断するなら遠慮なく勝つから覚悟しといたほうが良いよ」

「はんッ!生意気抜かしてんじゃないわよ!」

 

二人揃って好戦的な笑みを浮かべるとそのまま『002』と書かれた扉の先へと入って行く。その背中を見送った迅は今度は千佳にトリガーを差し出す。

 

「千佳ちゃんはこれ。イーグレットっていう狙撃銃が設定してあるから、取り敢えずレイジさんに狙撃の基礎から教わって」

「はい、頑張ります!」

「うん、やる気があってよろしい!それじゃあレイジさんよろしく~」

「わかった。宇佐美、003号室を河川仕様にしてくれ。それと的の人形の出現の設定も頼む」

「あいあいさ~」

 

ふんすふんすとやる気満々の様子の千佳と、冷静沈着な様子のレイジが別の訓練に入った様子を先程のように見届けた後、迅は残った三人のほうへ向き直った。

 

「それじゃあ俺はこれから任務入ってるから後は頼んだよ」

「また暗躍っすか?」

「いんや、普通にシフト入ってるだけ。確かレイジさんも1時間後位にあった筈だから……っと?」

 

そのまま出ていこうとしていた迅だったが、修の肩に止まっていた罰鳥が突然頭の上に乗っかって来たことでその足を止める。

 

「どったの罰鳥ちゃん?」

「あー、そろそろ罰鳥のパトロールの時間なので、ついでにつれていけって言ってます」

「えーマジで?それはちょっとこま……いたたたたたたた!わかった、わかったから!お願いだから髪引っ張らないで!」

「大丈夫っすか迅さい"っだ」ゴツッ

ジーッ プイッ

 

騒ぐ迅を落ち着かせようとした烏丸だったが、伸ばした手を罰鳥にどつかれその痛みで思わず手を引っ込める。驚きで目を丸くしながら罰鳥を見ると、一瞬だけジト目でこちらを見たかと思えばすぐにそっぽを向いて「さっさと連れていけ」と言わんばかりに再び迅の髪を引っ張り始めた。20にもなっていないのに禿げたくない迅がそそくさと外に出ていったあと、残された2人はなんとも言えない雰囲気に包まれていた。

 

「…………」

「…………」

「………俺は、あの鳥になんか嫌われるような事したか?」

「………結構な頻度で嘘ついて小南先輩騙してるからじゃないですか?罰鳥の罪判定は割と緩いので」

「………そうか」

「おー、始まったよ2人ともー、ってあれ、とりまるくんどうかした?」

「何でもないです………」

 

 

 

 

『それじゃあ早速解説と行こうじゃないか』

「よろしくお願いします」

 

気を取り直して訓練室内に入りスピーカーから聞こえてきた宇佐美の指示に耳を澄ます。

 

『そこにトリガーがあるでしょ?ひとまずそれを起動してみて~』

「分かりました……トリガー、オン」

 

トリガーを握り起動の為の文言を唱えると、自分が殻を纏うような感覚と共にトリオン体が完成する。体を動かし調子を確認していた修は、右の腰に鞘に入った状態の刀が携帯されているのを視認した。

 

「鞘付きですか」

「それが『弧月』だ。ボーダーの攻撃手用のトリガーの中でも一番人気のやつだな」

『とりまるくんも使ってるよ~』

 

柄の部分を掴み取りそのまま鞘から抜き放つ。光を放つ刃を物珍しそうに眺めた後、その使い心地を確めるように振るった

 

「丁度いい重さですね。重心も実際の刀とかなり近い仕上がりですし」

「そうなのか、俺は本物の刀を持った事が無いから分からないな」

『知ってる方が珍しいと思うよ~。それじゃ、次のトリガーいってみよ~』

 

スピーカー越しに聞こえる宇佐美の声が腰に差していた鞘と手に持っていた弧月がまるでホログラムの様に消える。

 

『お次は『スコーピオン』!形を想像したら刃を生成できるよ!』

「例としてはこんな感じだ」

 

掲げた手の中に光るナイフのような刃物が生成したり、足から突然三日月型の刃が生やしたりとその使い道を次々と見せていく。それを感心したように見つめる修に対して烏丸は解説を始めた。

 

「体から生やしたり、こうして独立したブレードとして使える。他のトリガーに比べると耐久力に難があるが軽いから取り回しは格段に良いし、トリッキーさは随一だ」

「成る程……投げナイフとしても使えますか?」

「あぁ、逃げようとする相手への最後のトドメとして投げ使われることもあるな。壊されるか改めて作り直した場合には消えるからそこは気を付けてくれ」

「分かりました。すいません宇佐美さん、的かなにか出せますか?」

『人形と円形どっちが良い?』

「両方一つずつお願いします」

 

機械的な光の輪の中から出現された的から少し離れた場所に無手の状態で構える。一瞬の空白の後、右手の中に生成された少々変わった形のナイフは修の手から離れ、浮かんだ的の中心を貫いた。続けて人形の的に肉薄した修はいつの間にか握られていた長い針のような形になったスコーピオンを振るった。ヒュカカカッ、という小気味良い音が鳴った後に的を見ると綺麗な穴が3ヶ所に空いていた。

 

「へぇ、レイピアか。多才だな」

「EGOにある武器は扱えるので」

『お次は『レイガスト』だよ。そのホルダーに収まってるヤツ取って起動してみて』

「……っと、これは」

『攻撃力と単体の機動力はほか二つに劣るけど、その分レイガストはモードの切り替えで頑丈な盾にも変形させられるのだ!』

「そのブレードも生成する時に自由に形を決められる。スコーピオンみたいに後から変形させるのは無理だが」

「木崎さんが俺を殴ってた時に拳に纏わせてたのもこれですか」

「そうだ。レイジさんはそれに加えて『スラスター』っていう外付けのブースト機能を使って相手を殴り砕いている」

 

烏丸の言葉を聞きながら修は腰に備え付けられたホルダーからトリガーを抜き取って起動する。その瞬間に先の2つには感じなかった若干の重さが手にかかった。それも試し斬りを行った後、ホログラムのように消え、今度は長さ10cm程度の棒状のトリガーが腰に携えられていた。

 

『そして、最後の攻撃手用トリガーがこれ!最近開発されたばかりの完全打撃用トリガー『ダスト』!ガッチガチに固い武器で相手をシールドごと粉々に!相手が弾丸を撃ってこようが問題なし!それごと相手を押し潰せ!』

「まぁ、馬鹿みたいに頑丈な分レイガストよりも重いし消費するトリオンも大きい。形は色々あるが基本は警棒サイズのスタッフとかメイスの形で使うヤツが多いな。そもそも使うヤツが少ないが」

『確かにそうだけど、一撃の重さはロマンが詰まってるよ!オプショントリガーの『インパクト』で巨体なトリオン兵まで粉砕!玉砕!大・喝・さ~い!』

「テンション高いっすね宇佐美先輩、やっぱ開発に関わった側としては勧めたいんすか」

『いや~ゴメンゴメン、ダストの試運転でモールモッドを足ごと叩き潰した時を思い出して興奮がね。ささっ!試しに使ってみて修くん!』

 

指示にしたがって今まで通りに武器の生成を念じる。そして、手の中に構成されたものを見て修は眉を顰める。

 

「………長くなっただけ?」

『それがダストの初期状態なんだ~。デザインはある程度決まった物を事前に設定して使うの。大物から片手用の小さめの物まで色々あるよ~』

 

その言葉と共に宇佐美が設定を変更すると握っていた棒の形が切り替わる。シンプルな棒に始まり、メイス等様々な種類に変わっており、その度に重さや重心も変わっているのが手から伝わってきた。余程リアリティーを求めた代物らしい。

 

『最後大きめの奴に変更するよ~』

「了解です……っとと」ズシンッ

 

突如として変化した重みに少し体勢を崩す。驚きながらも柄より先を見ると、130cm程の八角形の柱のような物がついていた。見た目通り、手には今までとは比べ物にならない程の力がかかり、地面に降ろした時の音もかなり重々しい物だった。

 

『エンジニアの悪ふざけで誕生したその名も金砕棒モード!重さと消費トリオン量を忘れて威力に全振りしたロマンの塊だよ!』

「今更っすけど、これ振り回せる奴ボーダーにいるんすかね?」

『ど~だろ、レイジさんに一回試して貰ったけど扱いづらくて大変そうだったしな~……修くんはどう思う?』

「よっと、これは中々……あぁはい、なんでしょう?」

「……余計な心配だったっすね」

『そーだね~』

 

人が使うことを想定していない代物を慣れた瞬間から片手で軽々と持ち上げて素振りをする姿に何とも言えぬ表情になる二人を他所に、修は的に向かってダストを振り抜く。

 

バギャンッ!!

 

圧倒的質量が超スピードでぶつかった結果、人形の的は下の部分を僅かに残して粉々に消し飛んだ。人にぶつかっても同じ結果が得られるだろう。名前の由来を察した修は片手でダストを扱いながら思案していた。

 

「攻撃力は申し分ないが屋内戦には向かないか……」

「そうか?お前なら壁ごとぶち抜いて相手を倒せそうなもんだが」

「どうあがいても目立ちますし行動が制限されますよ。味方の居ない乱戦にはもってこいですが、これ同士がかち合った時が怖いですね」

『大丈夫~、警棒型とかメイス型なら兎も角その形状のダストを満足に振れる人中々居ないんだよね~重すぎて』

「それは重大な欠陥では?」

『他は使えるから問題な~し!』

「それにお前が使えるなら良いんじゃないか」

「……それもそうですね」

 

 

 

 

『今度は中距離の銃手と射手用のトリガーだよ!さぁさぁどうぞご覧あれ~』

 

新たに的が現れ、訓練室内にいる二人の側に机が作られる。その上には何種類かの銃火器が置かれていた。

 

『まずは弾トリガーの解説からだね。とりまるくん実践よろしくね~』

「了解です。………それじゃ、始めるぞ、まず弾トリガーはそれ単体で起動するとこういうキューブ状で出てくる。これを分割して撃ち出すと……」

 

烏丸が伸ばした手の先に現れた光の立方体は細かく規則正しく分けられ、その一つ一つが光の弾丸へと変化する。そして烏丸が念じた瞬間、一斉に前方へと放たれ的を穿った。

 

「こうなる。因みに今のは『アステロイド』という一番スタンダードな弾トリガーだ。特殊能力が無い分威力が高い。さぁ次行くぞ」

 

続いて両手で先程と同じ様に立方体を生成・分割して弾を放つ。しかしその軌道は曲線や画線状となっており、右側は大きく膨らんだ軌跡を描きながら全て的に直撃し、左側は的を通り過ぎた後に折れ曲がるような動きで後ろから人型の的を撃ち抜いた。

 

「奇妙な動きをしますね」

「右に出したのが『ハウンド』、左に出したのが『バイパー』だ。ハウンドは視線による誘導かトリオン反応の感知で曲線状に動く、俗に言う誘導弾だな。そしてこっちのバイパーは自分で軌道を決められる特殊な弾だ。予めイメージしておくか、リアルタイムで決める方法があるが………リアルタイムは思考能力が割かれるから余程慣れてないと難しいな。だが予想のしにくさという点では随一だ」

「………成る程、意識外からの不意打ちと対処の強要で相手を動かす事に長けて、突き詰めれば相手を殺す方法にもなり得ると」

「そんな認識で問題ない。現に今A級1位のチームにいる射手は大量のトリオンに物を言わせてこれらや他の弾トリガーを弾幕にしてばらまいて来る。そうして制圧して相手を仕留めるか、誘導して近接戦闘がトップクラスに強いリーダーの方へ向かわせるのが基本戦術だ」

「追い込み漁か何かですか?」

「多分そうだな……次行くぞ」

 

話を程々で切った所で新たなキューブを出現、分割、発射する。アステロイドのように一直線に進み着弾した瞬間、着弾地点が爆発し、的の人形が粉々に砕かれた。

 

「小南先輩も使っていた『メテオラ』だ。見ての通り着弾するとそこで爆発する炸裂弾で、発射せずに置けば地雷にもなる。トリオンの消費量が多いが地形をぶっ壊したりするのには一番向いてるな」

「千佳が雑に絨毯爆撃すれば大変な事になりそうですね」

『遊真くんも言ってたけどそんなに凄いの?』

「少なくとも俺の5倍以上はあるそうですよ」

「へぇ、一回見てみたいなそれ……んじゃ、次が最後だな。宇佐美先輩、壁出してください」

『あいあいさー』

 

的の周りに光の粒子が固まり、無機質な壁が出来上がった所に烏丸は新たに生成したキューブを分割してショットガンのように放つ。烏丸の手元を離れた弾丸は壁や床にぶつかるとそのまま跳ね返って飛んでいき、その内の十何発かは的の人形を貫いた。

 

「跳躍弾ですか」

「あぁ、さっきのダストみたく最近開発された『リフレクト』だ。性能は見ての通り、トリオン体やトリガー以外に当たると光と同じような感じで跳ね返ってそのまま直進する」

「室内だと猛威を振るいそうですね」

「下手すれば自分に跳ね返って来るがな」

「跳弾の回数を決める事は出来ませんか?それならかなり有用ですが」

『出来るよ~。リフレクトは跳ね返りにトリオンをそこそこ使ってるから、そこら辺弄くれば威力とかも上げられるよ。そして~……』

 

スピーカーの向こうからカタカタとキーボードを打つ音がしたかと思うと、端に寄っていた机が空中をスライドするように動き2人と的の間へと滑り込んだ。

 

『じゃんっ!今まで説明した弾トリガーを安定して打ち出すための型が机にある銃トリガーなのだ!ハンドガンにアサルトライフル、ショットガンにガトリング、グレネードガン、リボルバーだってあるよ!』

「手が無くなれば使えなくなるが、弾を打ち出すまでの工程が引き金を引くだけで済むから弾トリガー単体よりも速い。威力や射程の補正も乗るから、基本的には銃トリガーを使う人が多いな」

「……………成る程」

 

目の前に立ち並ぶ銃器の中から一つ、拳銃を手に取って姿勢を取り具合を確める修の姿を見て、その洗練された動きに感心していた烏丸はしばらくしてから口を開く

 

「攻撃用のトリガーはこれぐらいだな。一応狙撃銃もあるが、今は取り敢えずこんなもので良いだろう」

『あと、防御用のシールドもあるよ~』

 

その言葉と共に修と的の間に半透明なシールドが出現する。何発か拳銃型トリガーで狙って撃ってみたが、ほんの少しヒビが入っただけで壊れることはなかった。一通り性能の確認を終えた修は隣に立つ烏丸へと向き直る。

 

「烏丸さん」

「なんだ?」

「トリオン体での戦闘に慣れておきたいので、お相手願えますか?」

「良いぞ。それと、出来ればさん付けじゃなくて先輩にしてくれ」

「別に構いませんが……何故ですか?」

「歳もそこまで変わらないだろうからそこまで他人行儀じゃなくて良いって思っただけだ」

「ふむ……分かりました、烏丸先輩」

『いよーし!それじゃ話も纏まった所で早速模擬戦に行こうか!修くん、メインとサブで4つずつ設定できるけど構成はどうする?』

「でしたら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」チーン

「わ~、大丈夫かいとりまるくん?」

「つかれた………」

 

解説を終えて数十分後、訓練室のコントロールルームに戻ってきた烏丸はベンチに死にそうな顔になりながら倒れこんでいた。

 

「修くんの戦い方エグかったもんね~」

「そこまでですか?」

「とりまるくんの足を地面ごと踏み潰してその勢いのまま金砕棒で上半身吹っ飛ばしたのは見てて面白かった!」

「それだけじゃないっすよ……視線誘導も含めて戦い方かトリッキー過ぎて、修に意識を割きすぎると後ろから弾が飛んできますし、かといってそっち警戒してたら真正面から修が突っ込んで来ますし………兎に角考える事が多かったですしシンプルにクソ強いんで……」

「結構対処出来てたと思うけど?」

「ガイストのブレードシフトかスピードシフト使わされてる時点でアウトっすよ。しかも最終的には相討ちにすら届いてませんし……」

 

完全に意気消沈していた烏丸だったが、少しばかり回復したようでのっそりと体を起こしながら話を続ける。

 

「あとちょっと怖いんすよ、戦ってる時の修」

「そうなの?どんな感じ?」

「俺の頭とか吹っ飛ばすのに一切躊躇が無いですし、絶対に殺すという意思が半端なく感じます。ほら、2試合目の最後とか」

「あー、至近距離で銃撃食らって頭の半分消し飛んだ修くんがそのままレイガストでとりまるくん叩き斬って相討ちに持ち込んだやつ?」

「そうっすね。普通頭が半分無くなったりしたら多少は動揺する筈なんすけど、修の場合そういうのが無くて終始俺から目線が外れてなかったです」

「漆黒の意思かな?」

「自分的にはいつも通りやってるだけなんですが」

 

特に疲労した様子もない修はそう言って頬を掻きながら水を渡す。礼を言いながら受け取りそのまま開封して喉に流し込む烏丸だったが、ふと何かに思い当たったようでそのまま問い掛ける。

 

「そうだ修、途中から急に動きのキレが段違いに良くなったがあれはなんだったんだ?」

「あぁ、あれですか。最初はトリオン体が馴染んでなかったので少し反応が遅れたんですが、途中からEGOを使うつもりでやったら生身と変わらない感覚で動けましたから、多分それかと」

「ふーむ………ちょっと調べても良い?」

 

そのまま部屋のデスクの上に置いてあるパソコンに向き合いながらキーボードを打ち込み始めた宇佐美だったが、途中でピタリと動きを止める。

 

「うっわ、何これ」

「何か異常がありました?」

「いや、異常と言えば異常なんだけど……えぇ?」

 

首を傾げる2人を招き指を差し示した先には小難しいデータか並ぶ画面ざ存在しており、その一角を見るように促すと宇佐美は説明を始めた。

 

「ほらここ、トリオン体と生身の遮断値が0になってる」

「つまり?」

「トリオン体の感覚が生身から据え置きの状態になってるの。普通ならトリオン体は生身の肉体とは別物って無意識の内に認識させてる筈なんだけど、修くんのトリガーだとそれが無くなってるの。痛覚の遮断も働いてないし………」

「あぁ、道理で途中からダ・カーポで切られた時と似たような感覚があったんですか」

「……多分EGOなんだろうが、一応そのダ・カーポが何なのか聞かせて貰っていいか?」

「指揮者を型どったマネキンのアブノーマリティから抽出した大鎌のEGOです。刃の部分は人間の肉体を傷つけることはありませんが、魂に干渉して切り刻めます」

「痛くないのか、それ?」

「痛いですよ。なんなら脳内麻薬の効果が無い分普通に斬られるよりも苦痛は上ですし」

「……………本当に大丈夫なんだろうな?頭とか吹っ飛ばした俺が言えた義理じゃないんだが………」

「ホント、修くんよく意識保ってられるね?普通だったら痛みで何も出来ないよ。ほら、座って座って」

「ミミックと同化して体の構造を書き換える時の方が痛いですし、今さら腕斬られたり頭吹っ飛ばされた痛み程度は何とも思いませんが………」

「それはそれでどうなんだ」

 

普通の人間では耐えられなさそうな痛みを受けていた事を何でもないかのような声色で報告してきた修をベンチに座らせながら事情聴取を始めるが、本人にとっては前世で経験してきた事に比べればほんの些事であるため顔色一つ変えずに首を傾げている。その様子を見てか、それ以上の情報は望めないか自分達が想像しているよりもおぞましい事が語られそうになることを察してか話題の転換を図る。

 

「………言うなれば最適化ってやつすか。なんかガイストみたいっすけど、自力でそんな事出来るんですか?」

「いんや、ガイストはあくまでも「わざとトリオン体のバランスを狂わせられるトリガー」で普通起動した状態トリガーの設定を本人が勝手に変えれる筈無いんだけどなぁ」

「……トリオンの変質とかって関係ありますか?」

「およ?心当たりある感じ?」

「空閑が連れてる自律型トリオン兵にトリオンを測定して貰った際に『トリオンが変質している』と言われたので」

「その自律型トリオン兵が気になる所だけど……成る程、そういうこと。これも一種の副作用なのかな?」

「トリオンの精密操作ってとこですかね。それもトリガーの設定の変更が出来るレベル………バイパーと組み合わせたら面白い事になりそうな………教えるなら出水先輩とかが良いっすかね」

「かもねー。あ、でも最近那須ちゃんがバイパーメインの射手になったらしいからそっちのほうが良いかも」

 

話は段々とボーダー隊員の方へと移り始め、修には分からない事が多くなって来た頃に訓練室の一つの扉が開き、中から小南が現れる。

 

「あ、こなみおつかれー」

「……………………ありえない……」

「どうしたんすか小南先輩?」

 

よろよろと自動扉から出てきた小南の後ろには髪の毛が爆発した遊真がてくてくと着いてきていた。

 

「随分と愉快な髪型になったな。どうだった?」

「おう、勝ったぞ」

「「!?」」

「へぇ、流石だな」

 

修からの問い掛けに手を上げながら返す遊真。その答えに修は感心したような反応を示すが他2人は驚いた様子で小南の方へと顔を向けた。

 

「小南先輩負けたんすか!?」

「まっ、負けてないわよ!」

「20回勝負して途中と最後に1勝しただけだよ、トータル18対2」

「そうよ、18対2!まだ私の方が上なんだから!」

「今はね。でもこなみ先輩の戦い方は掴んできたから多分次はもっと勝てるかも」

「調子乗んないでよね遊真、さっきのが最後の勝ち星だから!」

 

ビシッと指を突きつけての宣言に対しニヤリと好戦的な笑みを浮かべて挑発しているが、ほんの少し先程よりも仲良くはなっているようであった。

 

「あ、そういやそっちはどうだったのよ。トリガーの解説してたとはいえ何回か戦える時間はあったでしょ」

「5回やって1:3:1で負け越しです」

「一つ数字多くない?」

「俺が修の頭ぶち抜いた次の瞬間カウンターでレイガストのブレード叩き込まれて引き分けました。最初の一勝も修がトリオン体と生身の動きの乖離で発生したちょっとしたぎこちなさを突いて勝ってますし、これから先はもっとヤバくなるでしょうね。そもそもの錬度が半端ないっすよ」

「ふーん、あのEGOってのが無くても中々やるのねアンタ」

 

まじまじと見てくる小南にどうしたものかと頬を掻く修だったが、不意に服の袖をクイッと引かれる。

 

「なぁオサム、チーム組もう」

「?それはB級に上がってからだろ?」

「違う違う、2対2でやろうってことだ。オレとオサム対こなみ先輩ととりまる先輩って感じで」

「へぇ?1人じゃ勝てないからってチームで挑もうって言うの?上等よ、アンタ達2人とも叩き潰してあげるわ!行くわよとりまる!」

「……そうっすね、流石にこのままじゃ先輩としての威厳が無くなるので手伝います」

「ほら、先輩達はノってくれたぞ、どうするオサム?」

 

外見の年相応ないたずらっ子のような笑みの遊真とやる気満々の先輩2人を見て、逃げられないと悟った修は数瞬思考を巡らせた後に口を開いた

 

「お前の戦闘スタイルはどうする?俺はお前に合わせて変えるから気にしなくて良い」

「じゃあ俺が斬り込んで隙を作るから、援護と止め頼んだ」

「承知した。宇佐美先輩、トリガーの編成は最終戦と同じでお願いします。」

「オッケー!」

 

 

 

 

 

「その前に水分補給しますか?」

「あら、気が利くじゃない……これなに?」

「グレープソーダですよ。ウェルチアース……さっきのエビ達の会社の商品です」

「……さっきエビ漁やってるって言ってなかったか?」

「アブノーマリティの事を深く考えても仕方ないですよ。人間の尺度で生きてないですし、そもそも死なないので」

「へぇー。あ、結構美味しいねこれ」

「1箱分あるので貰ってください。蓋が開いてる奴は無かったので多分大丈夫です」

「蓋が空いてたら何かあるのか?」

「睡眠薬仕込まれて眠らされてそのまま強制的にあいつらの一員になる。半分洗脳みたいなものでな、俺も一回なったことがある」

「へぇ、どうだった?」

「まぁ福利厚生がそこらの企業より充実してるし元の職場に比べればはるかにマシだったな。普通に連れ戻されたが」

「「「……………」」」




『ダスト』は「レイガストパンチ以外に打撃武器ねーかな」という思いを元にしたオリジナルトリガーです。名前の由来は「対象を粉々(ダスト)にする」というコンセプトからです。
オプショントリガーの『インパクト』はダストで触れている部分に名前通り衝撃波を発生させて相手のトリオン体や物質を砕きます。

もう一つの『リフレクト』は自分のトリオン製のものを除いたトリオン体とトリガー以外に当たると跳ね返る弾トリガーです。跳ね返る回数は決める事ができ、オペレーターと連携したりすることでで弾道を精密に決めて跳ね返りを利用した攻撃を行えたりします。
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