持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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ついにAC6買いました。取り敢えずルビコプターは切り刻んでどうにかしました。暫く休みなので思う存分楽しみます。





それでは、どうぞ。


第14話

「さぁ2人とも!出かけるから準備して!」

「いきなり呼び止めて第一声がそれですか」

 

金曜日の昼下がり、午前中に訓練を終えて寛いでいた遊真と修に迅がテンション高めに話しかける。そんな様子に呆れた表情を見せる修の頭の上には突然として荒ぶり始めた罰鳥がいた。

 

「ほら、あまりの唐突さに罰鳥が素振りを始めましたよ」

「すごいな、動きだけで迅さんの髪の毛を抜くイメージが鮮明に伝わってくるぞ」

「ごめん、調子に乗ったのは謝るから勘弁して?」

「それで、わざわざ俺達2人だけだということは遊真の入隊関係の話ですか?」

「さっすが、話が早くて助かるよ」

 

顔を見合わせる修と遊真だったが、互いに頷き合うと手に持っていたマグカップの中身を飲み干して片付けた。

 

「すまない陽太郎、恐らく審判鳥が来るだろうからそっちに相手してもらってくれ」

「うむ、よかろう!しんいりとはなにかといそがしいものだからな!」

「いやぁ、まさか真っ先にあの子達になれるのが陽太郎とは予想外だったなぁ。動物と会話できるからこそなのかな?」

「みためはかわってるがれいぎただしかったからな!」

「まぁアブノーマリティと言えど元は鳥ですからね」

「罰鳥ちゃんはともかく他の2羽は鳥に分類して良いのか悩ましいとこなんだけど………」

「そんな事言ってたら審判鳥と大鳥から抗議の体当たりが飛んで来ますよ」

「わー俺が吹っ飛ぶ未来が見える~」

 

遊真から見えた未来の一つに自分が大鳥の巨体で吹っ飛ばされる景色があった事に迅は乾いた笑みを浮かべる。

 

「おーい迅、そろそろ行くぞ~」

「りょうかーい、ちょっと待っててボス~。じゃ、そういうことだから」

 

外から聞こえてきた支部長の声に迅が答える。雑談もそこそこに3人は準備に取り掛かった。途中、宇佐美と共にクッキー作りをようと準備していた千佳が当然のように付いてこようとしたが、何やら宇佐美が耳元で囁いたと思うと笑顔で玄関先で見送るという一幕があったが、修自身は特に気にせず千佳の頭を撫でてから車に乗り込む。その姿を車内から見て(こういうとこだよなぁ……)と図らずも同じ感想を抱いていた迅と遊真も乗せて車は玉狛支部から出発した。

 

「それで?ボーダーに行って何を話し合うんだ?」

「お前とメガネくんを玉狛に所属させるための交渉だよ。ボーダーにも派閥があるって話は聞いてるだろ?」

「そういえばオサムが言ってたな。玉狛は近界民と交流する派だったんだっけ?」

「そうだな、実際スカウトに行ってるウチのエンジニアは近界民だ。ただなぁ、今のボーダーだと圧倒的少数派なんだよ」

「成る程、オレはアウェーというやつですか」

「学校行ってなかった割には語彙あるな遊真。親父さんから習ったのか?」

「習ったというか真似だな」

 

昔を懐かしむように目を閉じてウンウンと頷く遊真の横で、修は怪訝な顔をしながら尋ねた。

 

「空閑が近界民だと言わなければ良いのでは?戸籍もありますし、話を聞くに空閑が純粋な近界民というわけでも無いでしょう」

「うん、そこは俺もそれ程問題視してないよ。そもそも第一次侵攻は「狩人」のお陰で死傷者も予測よりかなり少なかったし絶殺派も多いわけじゃない」

「じゃあ何でだ?」

「黒トリガーだよ」

 

その言葉に遊真は自分の手で存在感を放ち黒く輝く指輪を目を落とす。その力は本人も知るところであり、容易に戦況を一転させることが出来るというのも理解していた。

 

「成る程、小さな派閥一つにそこらの兵器以上の戦力となる物が2つも存在するのは向こうから見たら危険だと」

「そゆこと。まぁそれを言ったらメガネくん自体も黒トリガーレベルの扱いにならなくもないけど」

「たしかにオサムがEGO使ったら黒トリガー使った俺より強いもんな」

「………ですが交渉材料にするには危険過ぎます。黒トリガーが高機能戦闘機だとしたらALEPHクラスのEGOはいつ暴発するか分からない核爆弾ですよ?」

「ちょいまち、そのアレフってなに?」

 

何人もの人間がEGOに呑まれて死んでいく記憶が脳裏に過り、なんとも言えない表情を浮かべる修だったが、迅はそれよりも聞きなれない単語を聞き返す。それに一瞬眉をひそめるも、すぐに納得したような表情になり口を開いた。

 

「そういえば言ってませんでしたか、アブノーマリティとEGOは危険度をランク付けされてるんです。下から比較的安全なZAYIN(ザイン)、ミスをすれば重症を負うTETH(テト)、厄介な能力で死人を出すHE(へー)、対処を怠ると街一つが終わるWAW(ワゥ)、そして解き放たれれば国が一つ滅ぶALEPH(アレフ)の5つで分類されます」

「うへぇ……説明が録でもないものばっか。罰鳥ちゃん達もランク付いてるの?」

「罰鳥はTETH、審判鳥と大鳥はWAW、昨日来たウェルチアース達はZAYINですね。まぁたとえZAYINだとしても一般人は死ぬ可能性が十分ありますが」

「安全って謳い文句はどこ行った?」

「言ったでしょう、()()()と。人間が主食の妖精ですらそこに分類されてるんですから察してください」

「つまりバットリはそれよりヤバいと」

「まぁあいつが攻撃されたと判断したら即座に断罪モードに入って対象を一噛みするが………それさえなければ可愛い小鳥だぞ?」

「ちなみにその一噛みの威力ってあの時見たやつで良いんだよね?トリオン兵噛み潰すレベルなら人間相手じゃオーバーキルにも程がない?」

「まぁ確かに俺も何回かやられてその度に死にかけましたが………」

「じゃあだめだろ」

「だめだね」

「だめだな」

 

反論しようとするも全員からアウト判定をもらい、珍しく若干しょんぼりと肩を落とす修であった。当人からしたら見慣れてる上、何年もの間可愛がってきた鳥達だが、端から見れば化物以外の何者でもないので当たり前と言えば当たり前なのだが。

 

「じゃああの他の鳥どもが暴走したらどうなるんだ?」

「………取り敢えずボーダーは半壊するし、A級隊員も何人か死ぬね。しかもなんか死因が頭噛み千切られるか首が吊られるかなんだけど………」

「あぁ、審判鳥から有罪判決を食らった者は原理はどうあれ問答無用で縛り首ですし、大鳥は苦しみながら死ぬのを防ぐために頭を食い千切りますから。もし俺が止めなかったらそうなる可能性が存在します」

「わーお………あ、ホントに未来が消えた」

「まぁ自分のテリトリーを侵害されるか余程怒らせなければなければなにもしませんよ。現在は深夜のパトロールで犯罪者を見つけても半殺しで済ましますし」

「ちょっと待て、こないだのニュースで死ぬ一歩手前の状態で見つかった連続強盗犯をボコボコにしたのってそいつらか?」

「………そういえばそんなこと言ってましたね。窓ガラス割るところに出くわして咄嗟にロープで捕まえて蹴りで沈めたとかなんとな」

 

とんでもない情報に玉狛支部にいる義理の息子の安否を心配しながら運転を継続する。なお、陽太郎は審判鳥の高い高いでテンションが爆上がりしているので特に問題は無かったりするがそれを知る手段はないのである。

 

「まぁアブノマ談義はここまでにしといて本題なんだけど、レプリカ先生いる?」

『なんだろうか』

「レプリカ先生の情報領域にさ、多分だけど近界についての資料ってあるよね。それぞれの国の詳細とか移動する軌道とかが事細かに記録されてるやつ。それを交渉材料の一つにしても良い?」

『成る程、承知した。一度確認するのであれば表示しよう』

「助かるよ、お願い」

 

炊飯器の蓋のように口を開け、そこから投影器で立体映像を映し出す。真ん中には大きな丸が存在しており、それを囲むような円とそれに貫かれた小さな丸がいくつも見受けられた

 

「これは……」

『今までユーゴとユーマが渡り歩いてきた国で集めた情報を立体図で表したものだ。真ん中にあるのが玄界、辺りに漂っているのがこちらで言う近界の国だ』

「ふむ、俺が玄界に来る前に通った国がここか。あんまし広くなかったけど、自己完結してる感じの場所だったな」

「じゃあ今のこの周辺に出てるトリオン兵には関係ない感じ?」

「そもそもあの国が動く速度が速いせいで侵略しに行こうにも帰れなくなる可能性があるからな」

『トリフロは軍事力も防衛にのみ割り振っている。他の国に攻め入る余裕もないだろう。少なくとも、改造されたラッドを数千単位で用意するなどは出来ない筈だ』

「そんな感じの情報が詰まってるなら大丈夫だな」

 

確証を得たと言わんばかりの笑みを浮かべる迅はそのまま情報の精査をし始める。一方で興味深そうに空中の立体映像を見ていた修は納得したかのような声色で呟く。

 

「防衛という点では他の国の情報は必要になるんですね」

「そういうこった、相手の情報があれば対策がしやすくなる。迅の予知で不意打ちには強く出られるしある程度情報も集められるが、こいつだけに負担を掛けるわけにはいかねぇからな」

「別に俺は大丈夫だって言ってるのに~」

「そう言ってぶっ倒れて桐絵にぶちギレられてたのはどこのどいつだろうな~」

 

自分の上司からの一言に口をつぐんだ迅はそのまま車の外へと顔を向け、微妙に空気が抜けて情けない音になった口笛で誤魔化すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな風間、疲れは無いか?」

 

ボーダーの食堂の出口にて声をかけられた青年……風間蒼也は振り向りむいて返答する。

 

「お久しぶりです東さん。俺達は何も異常はありませんが、冬島さんはまだ復帰できてないそうです」

「まだ遠征艇酔い醒めてないのか。歳を取るのは嫌じゃないんだが、考えさせられるよなぁ」

「まだそこまで考える歳でもないでしょう」

「忍田さんが最近になって焼き肉の時に大盛りの飯を食べるのがきつくなったって聞いてから少し……な?」

 

そう言って東は苦笑いを浮かべ、悩みを打ち明けられた風間は普段のポーカーフェイスから若干表情を崩す。恐らく、己の好物であるカツカレーをその内体が受け付けなくなる想像でもしたのだろう。何とも言えぬ雰囲気の中、東は話題を変えた。

 

「それで、風間は今回の召集の理由は聞かされてるのか?」

「いえ、遠征後の報告は既に終えましたので思い当たる節は特に無いです」

「お前も知らないのか。他の奴らも大体そんな感じだったし、恐らく向こうで知らされるんだろうな」

「……東さんもご存知ではないのですか?」

「ははは、一応古参の括りには入ってるんだろうが今の俺はしがないB級隊員だぞ?」

「元A級1位チームの隊長が仰っても説得力はありませんよ。しかしそうなると考えられるのは……」

「恐らく迅が関わってるんだろうな」

「……やはりそう考えますか」

「まぁこんな事やりそうな奴を考えると自然とあいつに行き着くからな。そろそろいい時間だし行くか」

「えぇ、そうですね」

 

話を切り上げ、揃ってボーダーの廊下を歩く。途中、何人かのボーダー隊員に声をかけられながらも目的地に着いた2人は自動扉を起動して中に入った。

 

「おー、風間さん」

「……珍しいな太刀川、普段なら時間ギリギリに来るだろうに。大学のレポートもたまには期限の一週間前ぐらいに提出したらどうだ?」

「ひどくね?」

「事実でしょ太刀川さん。というか今日俺が言わなかったらすっぽかしかけてたでしょあんた」

「ちょ、それ言うなよ当真~そっちの復帰できてない隊長よりはましだろ~」

「……相変わらずか貴様」

 

風間は呆れを隠さず溜め息を吐きながら、当真と太刀川の間の空席に腰を下ろす。一方で東は己の教え子である加古から声をかけられていた。

 

「あら、東さんも来たの?」

「城戸司令に呼ばれてな。調子はどうだ?」

「特に問題無いですよ。双葉もしっかりと成長してきてますし順調です」

「へぇ、ランク戦で解説するのが楽しみだ。そういや、防衛任務中に『狩人』に遭遇したって聞いたんだが本当か?」

「えぇ、真衣と双葉と一緒に」

「加古さん達も遭遇したんですか?」

 

加古の隣に座っていた嵐山が会話に交ざってくる。

 

「あら、そういえば貴方達も『狩人』と会ってたわね」

「はい、俺達が現着した頃には三門第一中学校に発生したトリオン兵を全て破壊した後でそのまま消えてしまって………一言位はお礼を言わせてほしかったんですが」

「あら、どうして?」

「恥ずかしい話、『狩人』がいなければかなりの被害が出ていた可能性がありまして……それに、俺の妹はトリオン兵に襲われる直前で助けられてますから、直接お礼を言いたくて」

「へぇ、三輪くんと同じね」

「ッ!?……加古さん、その話は」

「あら、ごめんなさいね」

 

ぼそりと呟かれた言葉に近くに座っていた青年……三輪がビクリと反応し、苦虫を噛み潰したような顔で加古を制止する。元チームメイトから止められた加古は大人しく引き下がったが、代わりにニヤリとからかうような笑みを浮かべて三輪にちょっかいをかけ始めた。そんな青年達の様子を見て、大人は、

 

「若いもんは呑気なものだな」

「無駄に気張るよりかは良いではないですか……それで、これで全員でしようか城戸司令?」

「いいや、あともう1人だ」

 

既に席に座る幹部達と司令である城戸は静かに今回の会議の中心人物を待つ。暫くして会議室の扉が開き、林道が姿を表した。

 

「すまん、少し遅れた」

「他の者は既に揃っている。着席したら今回私達を集めるように言った理由を他の者達にも話せ」

「あぁそうだな。お前らもすまんな、突然召集なんかして。予定があった奴もいただろうに」

「御託はいいわい、さっさと話さんか」

「まぁまぁそう急かしなさんな。俺よりも適任の奴を呼んでるから」

「どうも皆さん御揃いで」

 

自動扉が開き、迅が軽い調子で挨拶をしながら入室してくる。会議室にいた面々もある程度予想していたのか動揺は少ないが、その代わりに共に入ってきた少年の方に意識が割かれる。

 

「?迅、そっちの子は?」

「今回はこいつについて話があって来たんだよ。彼は空閑遊真、つい先週近界からこの世界に来たばかりの玉狛の新人だよ。今日はこいつの正式な入隊について話をしに来た」

「どうも空閑遊真デス」

 

そう軽い調子で紹介し、遊真もそれに伴って頭をペコリと下げる。自分達が普段から敵対している存在の一人と聞いて、目を細める者、見開く者と反応は様々だが、いの一番に反応した三輪は椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がり迅を問いただそうとし始めた。

 

「近界民だとッ!?ふざけてるのか!」

「いんや、大真面目だ秀次」

「近界民は俺達の敵だ!それをボーダーの内部に引き入れる所か所属させるなんて罷り通ると思うのか!」

「それを言うならそもそもウチのエンジニアも元は近界民だぞ?」

 

飄々と詰問やんわりといなしていく迅に憎悪を隠そうともせず三輪だったが

 

「一旦落ち着け、秀次。まだ全て話してない状態で決めるのは良くない」

「東さんッ……ですが」

「東さんの言う通りよ三輪くん」

「………ッ!」

 

恩師と先輩に窘められ、三輪は納得できない様子のまま椅子に腰かける。その光景を横目に、太刀川は焦げたメロンパンのような目を迅に向ける。

 

「迅、何でそいつをわざわざ連れてきたんだ?お前だったら上手く隠し通す選択肢もあったろ」

「後から判明したらそれこそ決定的な争いの火種になりかねないからだよ太刀川さん。それに、その火種になる要素はそれだけじゃない。遊真は黒トリガーの保有者だ」

「……成る程」

 

 

 

「………その黒トリガーはどう処理するつもりだ」

「城戸司令!?まさか受け入れるつもりですか!?」

 

幹部の一人……根付がひどく動揺した様子で城戸の方へ振り返る。しかし冷徹そうな表情を一切動かさない城戸は真正面に立つ迅へと問いかけた後、その答えを待つように沈黙した。重苦しい雰囲気のなか、不意に迅は首を横に振る。

 

「残念だけど、遊真の黒トリガーは譲れない。これは遊真の親父さん……空閑有吾の形見で、遊真の生命維持に必要なんだ」

「それなら、それ相応の対価が必要だが」

「だからこうするんだよ」

 

迅はポケットから自分が所有する黒トリガーとUSBを取り出し、テーブルの上に置く。

 

「こっちからはまず風刃を出す。もちろん出力や機能、戦闘データを合わせてね」

「はぁ!?」

「なッ………!?」

「………良いのか迅。それは」

「問題無いさ、別に手放したって最上さんは怒らないよ。それと………レプリカ先生」

『承知した』

「うおっ!?」

 

突如として現れたレプリカに近場にいた当真が仰け反るが、そんなことお構い無しに機械音声は流れ始めた

 

『私はレプリカ、ユーマのお目付け役だ。ユーマの黒トリガーの付属品の自律トリオン兵だと思ってくれたら良い』

「へぇ……それで?そのオメツケヤクが何を差し出すんだ?」

『私の作り手であるユーゴが記録し、私自身も随時更新し続けた近界の情報だ』

 

問い掛けに答えたレプリカは先程の車内で見せたデータを更に拡大したような物を会議室の真ん中に投影する。

 

『これは私達が旅をして通った国の軌道図だ。玄界周辺を通る国の殆どがそこに記されている。無論、彗星のように通りすぎる可能性も無くはないが』

「なんじゃと!?」

『あくまでも旅人兼傭兵という立場だった為国の中枢までとはいかないが、その国の持つ戦力や特徴などの情報はまとめてある。ユーマの保護の交換条件として、このデータを全てそちらに差し上げよう』

 

各々が驚きや疑いなど様々な反応を見せるなか、東はスッと手を挙げた。

 

「質問しても?」

「どうぞ~」

「俺達からしてみればその情報の真偽の判定を今ここでするのは難しい。少なくも過去の遠征で手に入れた情報との照合は必要だが、そこはどうするつもりだ?」

『それなら私自身を差し出そう。サイズはこの通りだが、演算能力は一般のトリオン兵を凌駕していると確実に言える。もし必要であるのであれば、そちらの業務の力になろう』

「この後でもいいなら開発部門の方で解析するなりなんなりすればいいさ。一応玉狛でもやったし、特にこちらを害する仕組みが組み込まれているわけでもなかったがな」

『私の要望はユーマに危害を加えない事のみだ。それを実現するのであれば協力は惜しまない』

 

レプリカはそこまで話すと自分の役目は終わったとばかりに沈黙する。沈黙が続く中、風間は一つ溜め息をついた。

 

「なぜそこまでしてその近界民を引き入れようとする?」

「ま、色々あるけど………少しでも良い結果にするために遊真の力も必要なんだよ風間さん」

「………予知で何を見た」

「今年いっぱいは何もないけど、来年の始めにボーダーが半壊する可能性がある。食い止められなきゃ確実に4年前よりもひどい事になるし、最悪ここに居るメンバーが誰一人居なくなるかもしれない」

 

語られた未来に緊張が走る。中にはそれが嘘であると思う者も居るようだが、会議室にいるメンバーの殆どは迅が戯言で破滅の未来を語る事はしない事を理解しているためその、事実を重く受け止める。

 

「その時の為に、戦力はなるべく多い方がいい。遊真も手伝ってくれるか?」

「おういいぞ。玄界は過ごしやすいし、何より親父の故郷なんだろ?」

 

問い掛け対しにサムズアップと共に返答する遊真の頭を迅はワシャワシャと撫でる。ぐわんぐわんと首を揺らすがそれも楽しんでいるようだった。

 

「む、むむむ、近界民を引き入れるなどと思ったがあの軌道図が本物であるならこの取引に応じるだけで遠征30回分の価値のある情報と非常時の強大な戦力が手に入る…………」

「しかしですね鬼怒田開発室長、いくら情報が有用とは言え玉狛の手引きで得体の知れない者を引き込むというのは……」

「えー?得体の知れない者を利用してるのは根付さんの方が先でしょ?あと唐沢さん」

「んなっ!?」

「何の事かね迅くん?」

「『狩人』」

「ッ!?」

「…………」

 

迅の一言で急激に冷や汗を流しながら目を泳がせる根付と無言で笑みを浮かべたままの唐沢。そんな様子もお構い無しに迅は笑いながら話を続ける。

 

「いやぁすごいよね彼。都市伝説とか言われてるけど、三門市に住んでる人からはニチアサのヒーローレベルで人気だし。しかもそんな存在が()()()()()()()トリオン兵を狩っているなんてねぇ?」

「そ、その事についてかね………」

「別に俺は良いと思うよ?准達の部隊とはまた別の、朧気だけど人気な象徴。多分ボーダー隊員にもファンは沢山いるんじゃないかな?」

「まぁ狙撃手の訓練室でもその名前を聞くことはちらほらあるな」

「あ~、確かにC級がそんな話してたっけか」

「というか、私達に関してはついこの前会ったばっかりよ?ホントに強かったわね、話に聞いてた不思議な武器ってのも見れたし、私は満足よ」

「へぇ~、一回戦ってみてぇな~。風間さんも忍田さんもそう思わない?」

「……お前に同意するのは癪だが、気にならないと言えば嘘になるな」

「…………ノーコメントだ」

「……………」

「東さん?」

「なぁ迅、一つ気になったんだが」

 

少しの間、眉をひそめて沈黙していた東が口を開く。

 

「なんでお前は『狩人』を「彼」って言ったんだ?まるで『狩人』が男だって知ってるような口ぶりだが、報告書には性別についての記載なんて無かった筈だぞ?」

「だって俺その『狩人』本人と何年も前から知り合ってたし」

「「「「………は?」」」」

 

軽い調子で告げられた事に、少しの間脳が理解を拒んで沈黙が走り、何人かの口から思わずといった様子で声が溢れる。

 

「聞いてないぞ貴様!?」

「言ってないからね、というかボーダーに情報入らないようにしてたの俺だし」

「何故そんな回りくどい事を……」

「俺の副作用がそうすべきって言ってたから。ついでに今日その問題も解決しようと思って呼んでるんだよね」

「……話には聞いてたが、本当に実在してたんだな」

「というか既に()()()()()狩人くん居るよ?」

「…………何?」

 

まるで日常会話のごとく入れられた情報に空気が一変する。何人かは近場にいた白髪の少年に目を向けたがそれに気付いた遊真は(三3三)のような顔で手を横に振った。

 

「……質の悪い冗談はよせ、迅」

「えー、嘘なんか言ってないよ俺。ちゃんと俺が入った時に遊真と一緒に入って来たよ?」

「ではどこにその『狩人』が居ると?」

「俺の隣」

 

今度は会議室に居た者達が反射的に迅が指差した虚空へと視線を向ける。全ての者が瞬きをした直後、それまで認識していなかった筈の場所に血のような赤色を捉えるのだった。

 

「もうよろしいのですか?」

「うん、そろそろ話を進めたいからね……それにしても器用なことするよね相変わらず。俺と遊真以外に存在すら悟られないなんて、それもEGO?」

「いえ、この程度なら自力で出来ますが?」

「あぁ、うん。そういや狩人くん自身がそもそも規格外だったね、忘れてた」

 

あはは、と気が抜ける笑い声を上げる迅に首をかしげる侵入者。やがて遊真以外の全員が呆然としているのを見て、迅はニヤリと笑いながら向き直り、修はフードとマスクを外してその素顔を露にする。開かれた目は赤色に光っていた。

 

「改めて紹介しようか。この度ボーダーに正式に協力してくれることになった『狩人』こと、三雲修くんだよ」

「ご紹介に預かりました、三雲修と申します。これからどうぞよろしくお願い致します」





恋愛強者千佳ちゃんとメガネ推進委員会会長の会話


「千佳ちゃん千佳ちゃん」
「何ですか宇佐美先輩?今から修くんと一緒に……」
「玄関先で修くんの服を整えて、「行ってらっしゃい」って見送ってあげたらさ……………とってもラブラブな新婚夫婦っぽくないかな?」
「ッ!!!!!!!」




「うーん、まさかあんなナチュラルに頭ポンポンを実行するとは……修くんのポテンシャルは侮れないね!千佳ちゃんもドキドキしちゃったんじゃないの~?」
「いつもよくやってくれますから、恥ずかしがる程じゃ無いですよ?修くんにドキドキしないって言うのは嘘になっちゃいますけど」
「………いつも?ちょっとそこkwsk」
「えっと、一緒に料理したときとか、勉強見てくれる時とか、一緒にテレビ見てる時とか………あと一緒に寝るときとかは私が抱き締めたら「しょうがないなぁ」って感じで優しく抱き返して頭を撫でてくれるんです。修くんの胸に顔を埋めて心音を聞きながら寝ると、とっても安心するんです」
「わーお、予想を遥か越えるレベルでズブズブだった。やっぱそれで付き合って無いとか嘘でしょ?」
「うーん………修くんは男女問わず親しい相手ほど距離感が近くなりますし、それが当たり前だと思ってる節があるので……多分遊真くんが頼んだら膝枕位なら普通にしてくれると思いますよ?」
「………それさ、ちょっと心配にならない?」
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