持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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この作品のオッサムは都市での記憶がまだ色濃く残っているためワートリ原作のペンチメンタルが更に捻れに捻れております。




それでは、どうぞ。


第1話

「おはよー」

「あ、三雲くんだ、おはよー」

「あぁ、おはよう」

 

学生服に身を包んだ修が教室に入ると、クラスメイトの何人かと挨拶を交わす。そして、自分の席に荷物を置いたと同時に一人の男子生徒が近づいてきた。

 

「なーなー三雲、今日2時間目に小テストあんじゃん。ちょっと教えてくんね?」

「三好、この間のテストで勉強ほったらかして泣きついてきてただろ。学ばなかったのか?」

「だってムズいんだよあの先生のテスト!寧ろなんで三雲はそんな成績維持できるんだよ!」

「意欲の違いだな」

「真顔でド正論かましてくんなよ、悲しくなるじゃん」

「はぁ……で、何処が分からないんだ?」

「よっしゃ、ジュース奢るわ!んで、ここなんだけど………」

 

修は三好と呼ばれた少年が持ってきた教科書を覗き込もうとした時、背後から飛んできた物を一瞥もせずに受け止めた。反射的に掴んだ物は筆箱であり、飛んできた方向を見るといかにも不良といった風貌の三人がニヤニヤしながら修に向けて何かを催促するように手を動かしていた。しかし、それを直ぐに意識の外側に追い出した修は、席を立ち不良達の後ろでオロオロしている少年に筆箱を手渡した。

 

「ほら、ちゃんと持っておけ」

「う、うん、ありがとう」

 

筆箱を返された少年は礼を述べてそそくさとその場を離れる。それが面白くなかった不良達は修に向かって煽るように話しかけてきた。

 

「けっ、面白くねぇメガネだな」

「カッコい~」

「そこまで遊びたいなら自分達の物でやったらどうだ………あぁ、すまない、人の物と自分の物の区別がつかない程のド低能だったんだな、忘れてくれ…………まぁそんなおめでたい頭だったら忠告なんて直ぐに忘れるだろうし言うだけ無駄か」

「んなっ!?」

 

直球かつ流れるように罵倒され怒りで震える不良を意にも介さず、自分の席に戻って来た修に三好と近くに寄ってきた少女が心配そうに話しかける。

 

「ねぇ、大丈夫なの?」

「一之瀬か、何がだ?」

「いやいやいや、あいつら刺激してんじゃん。何かしらやり返されるんじゃないのか?」

「精神を壊して錯乱してる様な狂人に比べれば、イキり散らかして自分が強いと勘違いしてるだけの奴らの何が怖いんだ?」

「おおぅ……すごい事言ってんな」

「思った事をそのまま言ってるだけなんだが」

「あはは………なんというか、すごい大物だよね三雲くんって」

 

不思議そうな顔で少し首をかしげる修に思わず苦笑いになるクラスメイト達。しかし、前世にて人生が常に修羅場を越えた何かだった修にとっては現在の生活は平穏そのものである。たとえ不良に敵意を向けられたとしても、彼からしたら普段と変わり無いという認識なのだろう。少々気まずくなったのか、少女……一之瀬は話題を変える。

 

「あ、そうそう!今日さ、うちのクラスに転校生が来るんだって!」

「珍しいな、もう卒業まで半年も無いこの時期に」

「しかも三門市に~だなんて……もしかして、ボーダー関係なんじゃ!?」

「お前のそのボーダーに向ける熱意を少しは勉強に向けたらどうなんだ?確か隊員の名前は暗記出来たんだろう」

「うぐっ!?」

 

図星を突かれて変な声を上げる三好とそれを見て吹き出す一之瀬、その様子を見ながら仕方がなさそうに教科書を開く修はふと時計を見た。

 

(そういえば、もうじき教師が来ても良い時間だが気配すらないな………例の転校生で問題でもあったのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして、担任の女性と共に入って来たのは白くふわふわとした髪を持つ小学生程の背丈の少年だった。

 

「空閑遊真です!背は低いですが15歳です!遅れて申し訳ない」

 

黒板に平仮名で「くがゆうま」と書いた少年………遊真はペコリと頭を下げる。それを一目見た修は誰にも分からないようなレベルで小さく眉をひそめた。

 

(………今現在少年兵を育成してる国は何処だったか?見た目と気配がちぐはぐだな…………にしても)

 

修の脳裏に浮かぶのは、かつてL社に勤めていた際の同僚の姿だった。

 

(似てるな、あいつ(ユージーン)に………いやあいつはセフィラ様方だろうと敬語なんて使わないし、何より俺より背は高かったからな………あ、癖毛の白髪か)

 

自分が知る中で特に荒々しかった後輩を思い出し、少々懐古的な気分になる修だったが、ふと周りがざわついているのに気がつく。どうやら着けている指輪についてもめているようで、壮年の男性である教頭から外すように迫られた遊真はそれを拒否していた。渋々退室しようとした所で見かねた修が話に入った。

 

「事情があるのではないですか?」

「事情?」

「親の形見です」

 

修の言葉に乗せて遊真はハッキリと答える。不良がそれに便乗して茶々を入れるが、直ぐ様教頭に黙らされる。

 

「君ねぇ、そんなでまかせが……」

「?本当です、親の形見です」

「…………………!?」ゾッ

 

真正面に遊真と話していた教頭は気分が悪そうに教室を出る。そしてそれを心配し着いて行った担任は退室する間際に思い出したかのように修の方へ振り返った。

 

「それじゃあ自習ね!三雲くん、空閑くんのことお願いね」

「………俺ですか?」

 

フォローはしたものの、そんな役目が回ってくるとは思っていなかったのか、少々意外そうな顔になる修だったが既に担任は行ってしまっていた。そして

 

「よろしく、メガネくん」

「……あぁ、まぁよろしく」

 

差し出された手を断る理由は無いため、素直に握手に応じる。その後、後ろの席の不良が遊真に向かって丸めた紙を投げつけてからかおうとして、投げられた紙を圧縮して打ち返されて盛大に倒れたのを修は(馬鹿かコイツ)と思いながら見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

1日の授業を終わりを告げるチャイムが鳴り、中学生達は各々の部活や帰宅の準備を始める。修は遊真に学校の案内をし、そのまま共に帰路に着いていた。

 

「それで、これからどうするんだ?」

「ふむ、そうですな。この国に来たばかりだから立地すらよく分からん」

「おいチビ、ちょっと付き合えよ」

 

二人が揃って中学校を出て道を歩いていると周りにぞろぞろと柄の悪い者達が集まって来た。

 

「こいつらは何しに来たんだ?」

「朝方にお前に喧嘩を売ってやり返されて、自尊心が傷つけられたんだろ。所謂報復ってやつだ」

「うーむ、おれはやられた事をやっただけなんだけどなあ。今まで巡った国もそんな感じだったし」

「こういった輩は何処でも面倒だろう。手を出されない限りは相手するな。取り敢えず軽食でも食いに行くか?」

「ほうほう、それは良いですな。こっちの飯がどんなのか知りたいから、案内してくれると助かる」

「丁度暇だから構わないぞ」

 

自分達など意に介さず呑気に食事の話をする二人の様子に既に怒りが溜まっていた不良は声を荒げる。

 

「無視すんじゃねぇ!てめぇもだこのクソメガネ、俺らを虚仮にしやがって!」

 

自分にも矛先が向いたことに溜め息を溢す。

 

 

 

 

 

 

「さっきの話の続きだ、」

ゴキッ!!

「あがッ!?」

「こういった輩が手を出して来た時は、」

ガキョッ!!

「いぎぃっ!?」

「外見が問題ない程度にぶちのめせ」

「な、なんだよお前!?」

「やってきたのはそっちで、これは正当防衛だ」

ドゴォッ!!

「アバッ!?」

 

向かってきた不良の関節を外し、腹を膝で抉り、顎を殴り脳を揺らす。10人程で囲んで来たのに対し、すでに半数は外見的には怪我がない上死なない程度にボコボコにされ、戦意を喪失していた。

 

「明確な傷を残すと治安維持組織が動いて面倒な事になる。多分お前なら出来るだろ?」

「ほー、やっぱり強かったんだなメガネくん」

「メガネくんじゃない、三雲修だ」

「オッケー、オサムね」

「さて………ん?」

 

引き続き向かってくる不良を処理しようとした所で辺りにサイレンが鳴り響く。それと同時に修達の上空に黒く巨大な穴のような物が生まれ、そこから白く機械的な化物が顔を出した。

 

「ひ、ひぃッ!?」

「あぁ、近界民(ネイバー)か」

「お、バムスター。ラッキー、逃げようぜオサム。」

「いや、少し待っててくれ」

「?こいつら助けるのか?」

「個人的な用件だ。あいつらが死のうが別に気にしないが、近界民……お前が言うバムスターの方に用がある」

 

気絶している者達の襟を雑に掴み、怯えて固まっている他の不良達へと投げつける。

 

「邪魔だ、さっさとそいつを持って遠くに行ってろ。じゃなきゃお前から死ぬぞ?」

「は、はいぃぃ!!?」

 

修に勝てないと悟り更には命の危機に瀕していることを本能で感じた不良達は動けない者を掴み一目散に逃げていく。それを既に意識の外側に追い出した修はこちらを狙っている化物……バムスターの方を向いて軽く体をほぐしていた。

 

「さて、と」

「生身でやるのか?いくら弱いバムスターって言ってもトリオン兵相手だと流石に無謀だぞ」

「問題無い、俺の体は

 

こちらを食らおうと迫るバムスターの口の辺りを右手で受け止める。大きな質量による衝撃は強く少々地面が凹んだが、それでもしっかりと受けきった修は左手を握り締め、

 

少し特殊なんでなッ!」ドコッ!!

「おぉッ!?」

 

それ以上の陥没を踏み込みで作りながらバムスターの顎を下から殴り抜き、仰け反らせた。予想していなかった光景に目を丸くする遊真を他所に、修は冷静に次の行動へ移行していた。

 

「幻想模倣 Wrist Cutter(リストカッター)

 

伸ばした左手が何処からか現れた血に染まった包帯に包まれ、その中に血のように赤い刃のサバイバルナイフが現れる。それを掴み取った修はクラウチングスタートのような低い姿勢になり、その場から弾かれた様に跳んだ。その速さはおおよそ普通の人間が出して良いものではなく、一瞬で仰け反ったバムスターの頭までたどり着いていた。手を強く握り締めると包帯から血が滲み、ナイフを伝う。流れた血でよりその気配をおどろおどろしい物にしたナイフを修はバムスターの口の中にある球体へと突き刺した。

 

「ダメ押しだ、喰い破れ」

 

続けてヒビの入った器官に深く刺さったナイフに向けて拳を振り下ろす。何かが盛大に割れる様な音と共に更に奥へと埋まったのを見届けて跳んで地面に着地した修は、仰け反ったまま動かないバムスターに向けて包帯と血でまみれた手を向ける。

 

バキバキバキバキッ  バキンッ!

 

すると、バムスターの腹部にヒビが入り、そのまま弾け飛ぶように割れる。その原因となったナイフは腹を喰い破った勢いのまま、自分の主の元へ向かいその手の中に収まった。甚大な損傷によって機能を停止したバムスターはそのまま後ろに倒れ込んだのだった。

 

「さて、核はどの辺り…………っと、そこか」

 

ナイフを数回振るい、装甲を紙を断つかのように切り裂いて中身を抉り出す。作業を終えた修の手には光輝く四角形の物体が握られており、それを鞄に仕舞った。握られていた筈のナイフは何処にもなく、辺りに散らばっていた筈の血も跡形もなく消えていた。

 

「よし、行くぞ空閑。さっさとここから逃げないとボーダーに見つかる。ここは立ち入り禁止区域だから確実に面倒な事になるぞ。お前の事情もあるだろうが一先ず飯でも喰いながら話すか」

「色々と説明してほしい事が沢山だな。レプリカもよくわかんないって言ってるし」

「レプリカ?」

『私の事だ』

 

何処からか機械的な声が聞こえてきたかと思うと、遊真が着けていた指輪からニュルンと液体のような物が出て来て空中に留まる。形を成したそれはウサギの耳のような物が付いた炊飯器と表現出来るような姿をしていた。

 

『初めまして、オサム。私はレプリカ、ユーマのお目付け役をしている』

「あぁ、初めまして……凄い高度な人工知能を搭載してるな。見る限り、さっきの奴の一種か?」

『その通り、私はユウマの父に作られた自律型トリオン兵だ。行動を遮ってすまない、移動が必要であるのなら場所を変えよう』

「それもそうだな、オサムが言うようにメンドウな事に巻き込まれたくないし」

「わかった、着いてきてくれ」

 

 

 

 

 

「おーおー、スッゴい事になってんな。どんな攻撃すりゃこんな惨状になるんだ?」

『………おかしいわね、私達が一番始めに到着した筈よ』

「どういう事だ、じゃあ一体誰かこれを………?」

 

 

 

 

 

 

「おぉ、旨いなこのハンバーガーとやらは。オレが巡った国でもこんな旨い物は早々無かった」

「チェーン店の商品は一定以上のクオリティが約束されている。この国は食に関しては妥協しないからな」

「ほうほう」

 

修がバムスターを討伐してから数十分後、途中遊真が札束を出して厄介な輩に絡まれるというアクシデントがあったが、路地裏に誘導してからゴミ箱に頭から突っ込ませて何とかしてから有名チェーン店のハンバーガー屋に向かった。そして商品をテイクアウトした二人の姿は人気の少なくなった公園にあった。

 

「そういえばお前は何処から来たんだ?朝から思っていたがそこらの武術嗜んでる奴らより何倍も強いだろ」

「オサムに強いとか言われても困るな」

「いいから教えろ、他言はしない」

「うーん………良いよな、レプリカ?」

『それを決めるのは私ではない、ユウマ自身だ』

「よっし、じゃあ話すか」

 

周囲に誰もいない事を確認してレプリカが出てきてから、遊真は説明を始める。

 

「まずオレはこの世界とは別の場所から来た」

「……近界民か。ああいうのが生物として闊歩している場所かと思っていたが人間も居たのか」

「さっきオサムが倒してたバムスターとかはトリオン兵って言う奴で、お前達の言う近界民は近界の住人が作った兵器だぞ」

「あぁ……通りで作りと挙動が機械的だったのか。装置から無限に湧き出てくる生物かと思っていたんだが………」

「むしろそんな生物居たら見てみたいな」

 

修の脳裏に浮かぶのは前世にて相対した蝶頭の紳士と彼の持つ棺から出てくる蝶達や死んだ筈のウサギチームの隊長が何食わぬ顔で次に要請された時に居た景色。特に後者は特異点が関わっているだろう事情を考察すると止まらなくなるため、修は一旦ハンバーガーにかぶりついてそれを忘れることにした。

 

「んで、オレは近界を旅して玄界のボーダーにいるっていう親父の知り合いに会いに来たってわけ。そういや、オサムはボーダーに入ってたりしないのか?」

「だったらあの場所から逃げたりしてない。さっきトリオン兵の核を抜き取ったのも個人的な研究の為だ」

「だよなぁ」

「しかし、旅か。お前1人だけだったならそれなりに困難もあっただろ」

「そこは問題ない、オレにはこれがある」

 

その言葉と共に、遊真の腕にレプリカが纏わり付き近未来的なスーツのようになる。修は差し出されたそれをまじまじと観察しながら感心したように頷いていた。

 

「へぇ………ボーダーが似たようなのを扱っていたな。お前のは特別製みたいだが」

「そういう認識で大丈夫デス。なんなら戦ってみるか?」

「機会があったらな。まぁ、その時はこっちもEGOをフル活用して相手してやるから覚悟しておけ」

「!ほほぅ、それは楽しみですな」

 

意外にも挑発するように笑う修に一瞬だけ目を丸くするが、すぐに遊真も好戦的な表情を浮かべる。

 

「じゃあ今度はそっちの番か、何が聞きたい?」

『まずは君が扱っていた武器について聞きたい。私のデータベースの中にトリオンを用いずトリオン兵を打ち倒せる武器は存在していなかった』

「レプリカが知らないなら俺も知らん」

「いきなりそれか………本格的に話したら相当な時間がかかる。色々と省略するが構わないか?」

「おう、全然いいぞ」

 

 

 

「俺の使う武器………俺自身は『E.G.O』と呼んでるんだが、一言で表すと自我の具現化だ」

「自我?」

「つまりは心を抽出して形にした物だ」

『心という曖昧な物を実体に出来る技術か、玄界にはそのような物が存在するののだな』

「玄界……近界のこの世界の呼び方か。いや、これに関しては俺が例外なだけだ。本来人が持って良いような物じゃないしな」

副作用(サイドエフェクト)……って訳じゃ無さそうだな」

「俺はその副作用が何なのか知らないんだが」

 

眉をひそめる修の問いに答えたのはいつの間にか遊真の腕から分離していたレプリカだった。

 

『副作用は多大なトリオンの影響によって身体が変化し、超人的な感覚がもたらされ発現する能力の事だ』

「オレの場合はウソをついてるのが分かるぞ」

「成る程、視覚の強化で嘘をついたときの反応を可視化したのか」

「………驚かないんだな」

「ん?あぁ、俺もEGOで似たような事が出来るからな。最悪相手が死ぬから滅多に使わないが」

「どういう原理?」

「嘘をついたら罪を犯したと認識してEGOが勝手にどこかに繋がっている縄で縛り首にする」

「おぉ、カゲキですな」

「?……話を戻すぞ」

 

ほんの少しだけ嬉しそうな遊真の様子に疑問符を浮かべながらも修はEGOについての話を続ける。

 

「EGOを抽出するためにはその元になる強い感情が必要になる。歓喜でも悲哀でも、人の粋を越えた物ならEGOに成り得るし、その感情が大きい程より強力になる。何なら素質さえあれば自分の力で発現させる事も出来るぞ」

「ふむふむ、感情がトリガーになってるわけか。オサムの場合はどうなんだ?」

「俺は記憶と魂に紐付いていたギフトを使って使った事のあるEGOを呼び出している。自分の物じゃ無いから完全に扱うことは出来ないが、ある程度は働きかけることは可能だ」

 

ハンバーガーを持っていない方の手に先程のように血が染み込んだ包帯がシュルシュルと巻き付き、締め付ける。今度はその光景をまじまじと見つめている遊真が不思議そうに問いかけた。

 

「かなり特殊だが武器なんだろ?使いこなせないのか?」

「逆に聞くが、お前は他人の自我を完璧に操れるか?」

「無理だな」

「そういうことだ。例え凡人だろうと握れば使い方を理解出来るが、所詮は借り物だからな。あぁでも…………いや何でもない」

「どうした?」

「例外を思い出した。ひとまず、今言えるのはこのくらいだな。トリオン兵を壊せるのは恐らく既存の物質の法則から外れているからだな。レプリカ、EGOについての情報を保存する時はくれぐれも情報が漏れないようにしてくれ」

『承知した』

 

レプリカが承諾した後、二人は再びハンバーガーを再び食べ始め、完食する。ポテトの塩気によって渇いた喉を潤すためにドリンクを飲んでいた遊真は独り言のように呟く。

 

「ふぅむ、これからどうするか」

「俺自身はボーダーには所属していないが、伝手ならある。連絡してお前の事を相談してみるさ」

「おぉ、そいつはありがたい。けどさ、なんで今日初めて会ったオレにそこまでしてくれるんだ?」

「………お前が昔仲が良かった奴に似てたからだな、世間知らずな所とかが特に」

「…………それだけか?」

「そうだが」

 

そうあっけらかんと言い放たれた言葉に遊真は目をぱちくりさせた後数秒考え込み、納得したかのように口を開いた。

 

「オサムはお人好しなんだな」

「お人好しな奴だったらあいつらを叩きのめしたりしないだろ。俺はやりたいことをやってるだけだ」

「そのやりたい事でオレを助けてるんだからお人好しだろ。な、レプリカ」

『私のデータベースを参考にオサムを表現する言葉を検索した結果、「お人好し」が含まれているのは事実だ』

「だってさオサム」

「………お前は悪人じゃないだろ。俺からしたら理由はそれで十分だ」

 

なんとも言えない表情でそっぽを向く修に対し、ニマニマとからかうような笑みを浮かべる遊真なのだった。

 

 

 

 

 

 

「そういえばそのイージーオーってやつはオサム1人で使ってるのか?ボーダーとかで扱えば戦力を増強できると思うぞ」

「実体化してるが本来は凝固した自我みたいな物だからな。下手に精神が弱い奴が触れると逆に侵食されて死ぬか化物になる。最悪1日で国か大陸一つが滅ぶ事もあるからな、そんな危険物を赤の他人に安易に渡せるわけ無いだろ」

『先程のナイフもそうなのだろうか?』

「リストカッターの事か?持ってると手首を切り刻んで自殺したくなるが、他に比べればまだマシな部類だぞ。覚醒させれば自分の血液をある程度自由に操れるし、見るだけなら何の影響も無いからな」

「その言い方ってことは見るだけでヤバいのもあるのか?」

「一番被害が甚大なのは……精神がそこそこ強い奴でも見た瞬間即座に発狂して自殺を図ろうとする奴だな。お前でも危険だろうし、俺も出来れば使いたくない」

「おおぅ………」




最高ランクのEGOを普通の人が触れるとすぐに食いつぶされて元となった幻想体の成り損ないが生まれます。蒼星様辺りだと国一つの人間を数十分程度で全部吸収するんじゃないですかね。
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