持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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キャラクターが多くなると書きづらいですね。もっと筆が速くなりたい……


それでは、どうぞ。


第19話

「来たか三雲」

「はい、今日はよろしくお願いします」

「あぁ……そして何故お前も居る?」

「必要書類の提出のついでに付き添いで来ただけだ。玉狛のメンバーは全員狩人の事情を知っているがボーダー本部に関してはその限りではないからな。上層部から誰か一人は付いているように命じられている」

「つまりは監視か、ご苦労なことだな」

「後輩の為だ」

「……立ち話もあれだ、続きは向こうでするとしよう。付いてこい」

 

修がボーダー本部にて身分を明かし、流れで太刀川隊と一戦交えた数日後、その姿は再びボーダー内部の廊下に存在していた。同行者の木崎と共に風間の後をついていく最中、不意に風間が友人である木崎へと目線を向ける。

 

「確か迅は「対黒トリガー戦闘訓練」と言っていたが、本当にそのような強さがあるのか?」

「俺達玉狛第一をほぼ無傷でやり込めて各個撃破する程の力はある。ノーマルトリガーの迅ともやっていたが……あれは反則にも程があるな」

「何があった?」

 

言葉を濁す木崎に訝しげに問いかける風間。

 

「未来視があれど体を動かす速度が速くなる訳ではないので視認出来ないレベルの速さで殴り続けただけです」

「想像以上に脳筋だな?」

「あいつが対処出来ないレベルの連撃が「だけ」な訳無いんだがな。しかも最後隙を見て掴み掛かったと思ったら喉を食い千切って止めを刺してただろう」

「つい」

「ついでやるな。迅が涙目で震えてたぞ」

「仕方ないでしょう、あのEGOの元になったのが童話に出てくる悪役の狼なので思考や反射的に繰り出す攻撃がそちら寄りになるんです」

「そんなものまであるのか、底知れないな」

 

感心したように頷く風間は続けて先日の戦闘訓練について尋ねる。

 

「太刀川隊との模擬戦を行って勝ったことは既に本人から聞いている。お前から見てどう思った」

「……そうですね、まぁ戦闘能力と制圧力がそれぞれ飛び抜けて高い2人が組んでいるという時点でまず対人戦には強く出れますね」

「ほう?」

「物量や質で負ける相手には少し工夫する必要がありそうですが戦闘経験さえあればどうとでもなる範囲ですし、一応唯我さんも意識を向けておく必要のある存在として妨害になっているのであまり今の役割を崩す必要は無い……とは思います」

「ふむ、役割か……バランサーとなっていた烏丸が抜けてから更にその傾向が強くなっているのは確かだが、それを成り立たせてられているのはあいつら個人の力というわけか。お前はどうやって勝った?」

「徹底的に出水さんの射線に太刀川さんが入るように立ち回りながら近接戦闘を仕掛けてフレンドリーファイアを意識させてました。隙を伺ってた唯我さんを仕留めた後は後はEGOで壁を作って分断して出水さんから各個撃破……といった形ですね」

「成る程、訓練相手としては申し分無いな」

「光栄です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………それで、何故俺だけが室内に?』

 

10分後、修は一人だだっ広い無機質な訓練室に立って眉をひそめていた。そんな状況の中、訓練室の操作を行う部屋から見ていた木崎がマイクを起動させた。

 

「ランダム転送で始めたいのだがお前はトリオン体ではないからな、転送が不可能だから先に入ってもらった。今からトリオンで街を作る、自由に開始場所を決めてくれ」

『…成る程、了解しました』

 

その会話の後、修は納得したのかそれとも使うEGOを選び始めたのか、それ以降口を開かなくなった。

 

「いきなり何なんですか?隊での訓練を行うって聞いてたのにやってきたのがあの変なメガネに玉狛第一の隊長って、訳分かんないんですけど」

「おい菊地原……」

「いい、歌川。数日前に事情を説明せずに突然都合を合わせるように言ったのは俺だ。木崎に関しては今準備をしている三雲の付き添い兼名目上の監視だから気にするな」

「監視……ですか?」

 

率直に文句を言う青年とそれに苦言を呈する青年……菊地原士郎と歌川遼を他所に、風間の隣で不思議そうに首を傾げる女性……三上歌步の疑問に対し、木崎は言葉を選ぶように答えた。

 

「一応入隊が決まっているとはいえ現時点ではまだ一般人に該当するからな」

「直接所属しているという事ではないが、関係者と言っても過言でも無いだろう?」

「その辺りは修に直接聞いてくれ。今言えるのはこれは上層部からの指令であるということ、そしてこれから先に起こると思われる対黒トリガー戦闘に対応出来るようにする訓練であるということだ」

「黒トリガー…ですか?」

「新しくS級隊員が増えるわけ?」

「いや、現在の所はその予定は無い。それより……」

「おうすまん、待たせたな」

 

更に深掘りして説明しようとしたところで訓練室の自動扉が開く。ドアが横にスライドする音に反応してそちらを見れば、既にトリガーを起動してトリオン体になった当真と髭を生やして髪をオールバックにした男性、凛とした女性……冬島慎次、真木理佐が入室してきた。

 

「あ、真木ちゃん!」

「うっげ……」

「冬島さんに当真さんまで」

「今回の訓練は冬島隊と合同で行う。緊急時の連携の訓練でもあるというわけだ。早速始めよう、オペレーターの2人は席に行ってくれ、他の者は転送が始まるまで待機だ。木崎、ステージの操作を頼んだ」

「あぁ、了解した」

 

操作のためにブースに入っていく木崎を尻目に、当真は風間へと話しかけた。

 

「なぁ風間さん、三雲の奴、どういった感じで仕掛けて来ると思う?」

「……そうだな、ランダム転送である以上向こうは気配を殺して来るだろう。俺達の隊は殲滅力に欠けるから炙り出しはしにくい。それに相手がトリオンを使用しないのであればレーダーも意味を成さないのは分かっている。やはり菊地原の耳が頼りになるか」

「うっへぇ、やっぱそんな感じか。遠征の時とは訳が違うねぇ」

 

事情を理解している二人が軽い作戦会議をしている中、他の面々は事情が説明されてないのか一様に首を傾げたり眉をひそめていた。その中でも、いい加減痺れを切らした菊地原が代表するように二人へと尋ねる。

 

「いい加減、少しぐらいは説明して下さい」

「そうだな、そろそろ箝口令が意味を成さなくなる頃合いか…………つい先日、迅の手引きでボーダーに入隊することになった隊員が2名居る。そのうちの一人が今訓練室の空間に入っていった三雲修だ。独自に研究していたトリオンの技術とトリガーとは別系統の技術を引っ提げて来てな……その本質は今から体験することになるだろう」

「へぇ?じゃあ何だ、今エンジニアとか技術者達がバタバタしてるのはあいつのせいか」

「あぁ、交渉材料として提出してきた物だからな。鬼怒田開発室長も唸っていたのは確かだ」

 

元々の職場で今も繋がりのある開発部が死屍累々だった記憶が冬島の頭の中を駆け巡る。麟児は涼しい顔で退勤していたが、それ以外の面々は机に突っ伏したり口からコーヒーやエナドリを垂らして気絶同然の状態で背凭れに過度に体を預けて寝ていたその光景は地獄以外の何物でもないだろう。

 

「迅が言うには今回が丁度良いタイミングだったらしい。今まで一人でトリオン兵の駆除をしていた三雲をもう一人と共に引き入れる事で最悪の未来を回避できる………とのことだ」

「解せんな、その三雲とやら一人で何が変わる?」

「少なくとも4年前の侵攻がもう一度訪れても半分はあいつ一人で何とかなるだろうな」

 

訝しげな真木に対し、断言するように風間は答える。

 

「玉狛第一と太刀川隊を撃破出来るレベルと言えば十分か?それに加え加古隊、二宮隊と交戦し無傷で撤退したという記録も残っている。実力で言えば間違いなく黒トリガーと同等と言えるだろうな」

「「「!!」」」

「……それはなんともまぁ」

「………」

「ま、そういうこった。気ぃ引き締めろよ~?なんせ相手はあの"狩人"なんだからな」

「……………は?」

 

 

 

 

 

 

 

「 幻想顕現 ーーーー 」

 

 

 

 

 

 

 

「三上、真木、反応はあるか?」

『トリオン反応は隊員の分しかないわ』

「すまない、付け加え忘れていたが三雲はトリオン体じゃない。生体反応を探してくれ」

『了解』

「相手はレーダーを使わない。総員、バッグワームは使用せずすぐに身を隠せ。菊地原、周囲に異音は無いか?」

『………少し離れた所で歌川と冬島さんが走っている音が聞こえる位。逆にそれ以外が静か過ぎて不気味』

『こちらも特に異常はありません』

「警戒は怠るな、向こうがどこから来るか…………?」

 

通信を通して呼び掛けようとした瞬間、肩にポツリと水滴が落ちて弾けた。晴れているはずの空から雨粒らしき物が降ってきたという状況、普段であれば少し珍しい天気雨程度の認識だろうが生憎街を再現したこの空間では雨が降る筈もない。しかし風間が見つめる空は段々と雨足が強くなっていた。

 

「……まずいな、早速仕掛けて来たか」

《風間、この雨は無視したらいけない奴だよな?》

「恐らく狩人の能力の一つだ、全員出来る限り避けるか建物の内部に隠れろ」

《当真、了解》

《冬島、了解》

《菊地原、了解》

《歌川、了解……風間さん、彼は一体何なんですか?》

「さっきも言ったが、ボーダーが設立される前からこの街に居る狩人だ。お前も都市伝説の話ぐらいは聞いたことあるだろう?」

《あれってデマじゃないんですか?毎回入隊してきた後にボーダーに本人が居ないって聞いて項垂れてるミーハー飽きる位見てるんですけど》

《残念だけど菊地原、ついこの間御本人様を迅さんが連れて来たんだよな~。いやぁ、まさか数年前から繋がってたとは思わなかったわ》

 

先日直接会った風間と当真はさも当然のように話しているが、他の面々は差はあれど全員が困惑の反応を示すか絶句していた。

 

「そういうわけで、相手はトリオンとは無関係の能力を扱う存在だ」

《ッ!なんかが着地した》

「どこの方向だ?」

《ぼくから見て東南、恐らく冬島さんが居るところ辺りです……あぁクソッ、雨の音が邪魔になってきた》

《参ったな、まだ少ししかスイッチボックス置いてないんだが》

 

即座に意識を切り替え、情報の収集と整理を始める。周囲への警戒を怠らず

 

「三上、聴覚の共有を頼む。菊地原、歌川はそのまま隠密行動をしたまま索敵を……」

《こちら当真、三雲らしき人影を見つけた》

 

指示を出す最中、それを遮るように報告が入る。

 

《しっかし可笑しいな、位置関係的にはうちの隊長とは真反対だぞ?菊地原は何聞いたんだ?》

「何?」

《はぁ?そんなわけ………》

《ちょっと良いかしら。生体反応でサーチしても貴方達の言っている存在すら引っ掛からないのだけど》

《まじ?じゃあスコープ越しに車レベルの速さで走ってる三雲は偽物ってわけ?》

《………そっちでは設定に無い雨が降っているのよね?》

「少なくとも途中で天気が変わるなんて事はない筈だ。十中八九三雲の仕業だろう」

《すまん、しくじった》

 

オペレーターとの情報共有の最中、その言葉と共に風間から少し離れた地点で爆発が起き、そこから一つの光の線が走るように空中を突き抜けた。

 

《冬島さん!?》

《………隊長のベイルアウトを確認、後はスイッチボックスの操作をさせておくわ》

《おいおい、もうちょっと耐えてくれよ隊長》

「想像以上だな……当真、そちらに見えてる三雲は何をしている?」

《もうそろそろ通り過ぎて……やっべ》

「どうした」

《急に方向転換してこっちに来た。あんにゃろ、端から気づいてやがったな?600m離れてんのに気付くとかかきくっちーじゃねぇんだぞ》

《ぼくを引き合いに出すのやめてくんない?……あぁもう、雨がうざったい!》

《こちらも駄目です、雨音がノイズになって周りの把握が困難になってます》

「……区域毎に雨の強さを調節してるのか?」

 

自分の部下の訴えに訝しげになる風間の耳には小雨がパラパラと地面にぶつかる音が入って来ていた。しかしそれは到底周囲を探る妨げには成り得ないレベルであり、それによって獲得できる情報の中に有益なものは無かった。

 

《真木ちゃん、一番近くのスイッチボックスどこ?》

《そこから南方向に100mの赤色の屋根の家の玄関前、早く行きなさい》

《はいよ……ッと!?》

 

通信で焦ったような声が聞こえたと思えば、即後に爆発音が辺りに響き渡る。強化聴覚を共有してた為その爆音が脳を揺らす感覚に顔をしかめながら

 

「当真、そちらの状況はどうなってる!」

《俺がさっきまでいたビルが爆発したと思ったらそん中から三雲が出てきやがった!しかもなんか雨に交じってボロボロな傘も降ってきてる!》

「こちらからも確認できた、加勢する」

 

軒下から飛び出した風間は地面を蹴って跳び上がり、そのまま屋根を駆ける。視界の端に屋上の一部が土煙で見えなくなったビルを捉えながら、雨と言うには明らかに可笑しな物が降り注ぐエリアへと向かって行く風間だったが、不意に耳に入ってきた近づいて来た風切り音に対して反射的にスコーピオンを体から生成し周囲を凪払った。

 

「気付くか。勘か……それとも感覚が鋭いのか?」

「……そう言うお前は随分と大胆な衣替えだな、三雲」

 

ガキンと音を立てて一撃を防いだ後、もう片方の手の中に生成したスコーピオンで追撃を受け止め、その力を利用して弾かれるように下がった風間は突如として現れた相手を睨み付ける。その目線が向けられているのは、先程の普段着とは似ても似つかない裾が泥のような物で汚れた白色のレインコートを身に纏い、骨組も生地もボロボロになっている深緑色の閉じられた雨傘を持っている修だった。頭に被ったフードには犬の耳のように尖っている部分があり、若干の可愛さも感じられるのだが、それ以上に修が放つ微弱な殺気でそんな感情も掻き消されてしまう。

 

『こちら風間………』

 

 

 

 

 

 

『………狩人と接敵した。白のレインコートに緑色の傘を持っている』

《すまない、今から俺もサポートに入る。それと菊地原達は出来る限り雨が当たらない場所に居ろよ》

「なんで?」

《どうやら向こうは俺達の位置を探っていたらしくてな、少しの間スイッチボックスを設置するために雨の中を移動してたらこのざまだ。狩人の奴、()()()()()()()()()。》

《現在地から移動するルート、算出出来ました!出来るだけ雨が降り込まないようにしましたが完全にとは行きません、注意してください!》

《スイッチボックスの操作はこっちでする、風間の援護に向かってくれ》

《歌川、了解》

「………ぼくはちょっと探したい物あるから先行ってて」

《……あぁ、分かった。当真先輩、援護をお願いします》

「三上先輩、ここに安全に行けるルート探してくんない?」

 

 

 

 

「シッ!」

 

 

 

「……やはり一筋縄では行かないか」

「戦闘においてはそれなりの自負がある。そう簡単に俺を打倒出来ると思うのは推奨しない」

「あぁ、今も嫌と言うほど思い知らされているところだ。その傘一本だけでこうも追い詰められるとはな」

「EGOは危険度を判断しにくい物が多々ある。見た目が少しばかり古臭くとも、それが元となったアブノーマリティの本質を反映しているだけで存在強度はそこらの物質とは比べ物にならないぞ。トリガーが負けてるのが何よりもの証拠だ。違うか?」

「………いや、その通りだ」

 

その言葉と同時に傘と打ち合った結果ヒビが入ったスコーピオンを投げつける。相当のスピードで迫るそれは難なく振り抜かれた傘に粉々に砕かれるが、その光景を見てもなお風間の目には闘志が宿っていた。

 

「だがそれがどうした。武器の差なんて戦闘方法で補えば良い。まだ俺と遊んで貰おうか」

「俺?俺達の間違いだろう」

 

風間の発言に怪訝そうに返した修は即座に振り向きながら閉じていた傘を開き、その勢いのまま空中に回し蹴りを放つ。

 

ドパンッ!!

 

「グッ!?………すいません、失敗しました」

《オイオイ、マジかよ。イーグレット防いで何ともないボロ傘って見た目詐欺が過ぎんじゃねぇの?》

「気を抜くな、畳み掛けるぞ」

 

いつの間にか背後まで文字通り姿を消して近づいていた歌川は腹部に食らった一撃で吹き飛び、豆粒よりも小さく見える程に遠くに居た当真の狙撃は傘に直撃するも、傷一つ付けることすら叶わなかった。蹴り抜いた所を狙う風間だったが、肉薄して瞬間にコンクリートの床を突き破って生えるように出現した傘がそれを阻む。

 

「"鳴き声"」

 

唱えた言葉に応えるように下から串刺しにしようと次々と傘が出現する。不利だと判断した風間が下がると共に離れていた歌川がメテオラを放つが、手に持っている開いた傘を自分との間に入れるように投げることで防がれた。修は爆風を気にも留めず側に生えた傘のうち己を超えるレベルの長さの一本を抜き取り槍のように構える。

 

「"激流"」

「ッ!」

「風間さんッ!?」

 

突然のリーチの変化をものともせず振り回される傘の槍を両手に生成したスコーピオンで凌いでいた風間だったが、一拍静寂が生まれたと認識した瞬間に雨が降る向きが横になったかのような圧と空間を突き破るような鋭い一撃が飛んで来る。回避ではなく2枚の分厚い局所シールドでの防御を選んだ風間は何とか間に入り込ませることには成功し、二枚の壁は容易く砕かれたもののその攻撃の軌道を僅かにずらす。そして、台風を越える風圧に晒されながらも体を最大限にひねり己の首ではなく左肩に被弾させた。

 

「すまん、片腕が吹き飛ばされた。恐らく目標がそちらを移るぞ」

《現、在、交戦して、ます!グッ!?》

《俺も撃てねぇな、多分隊長がやられた雨の弾丸が狙ってやがる……うおっ!?貫通してきた!?》

 

戦っていた屋上から吹き飛ばされ100m程度離れた場所にある民家を突き破った風間の耳に入ってきたのは劣勢に立たされている現状だった。

 

「真木、残りのトリオン量は?」

《約36%、現在の漏出の量を考えると数分後には25%を下回るわ。これ以上負傷すればすぐにベイルアウトしかねない》

「そうか…………ッ!」

 

半壊した民家の瓦礫から出て一歩踏み出そうとしたその時だった。

 

 

 

《雨を降らせてた原因っぽい狐の置物、ぶっ壊しました》

《生体反応、捕捉できました!》

 

 

 

 

雨が止み、無意識の内に体にかかっていた重圧から解放される。

 

「当真!」

《りょーかい》

 

雨による攻撃を考慮する必要が無くなった為、堂々と屋外へと出た当真はイーグレットのスコープを覗き込む。その視界には先程まで着ていた白いレインコートは比べ物にならないほどにボロボロで薄汚れた物へと変化している修が己が持つ傘を歌川の胴体へと突き刺している場面が見えていた。

 

「そのまま抑えとけよ~?」

《ッ!了解です!》

 

意図を理解した歌川が周囲にメテオラの置き玉をばら撒きながら自らを突き刺す修を掴もうと足に力を込める。

 

「拡がれ」

「ぐおッ……!?」

 

だがその抵抗をさせまいと、傘本来の機能である骨組と布地の展開を行い、突き刺さった傷口を抉り広げる。EGOからの膨らむ力にトリオン体が耐えきれず弾け飛んでベイルアウトしたと同時に狙撃され、被っていたフードの部分に当たった。

 

「………おいおい」

《………あなた、当たらない弾は撃たないんじゃなかった?》

「流石にあれはノーカンで良くね!?確実に当たってんのにびくともしてねぇんだけど!」

 

しかし、少し首を傾げさせる程度のダメージにしかならず、それどころか無意識中の人体反射で瞬きをしてしまった後、500m以上離れている上、死角から撃った筈である修と目が合った。

 

「こっわ」

 

目だけでこちらを睨む姿に、流石にその場に留まっていられないと判断したのか即座にそのビルから飛び降り、路地に姿を隠す。その様子が見えていたのかゆるりとそちらへと歩を進めようと足場になっていたビルから飛び移る修だったが、とある民家に着地した瞬間に切り刻まれる。

 

「話は聞いていましたが、スコーピオンの柔軟性は相当高いようですね。危うく巻き込まれる所でした」

「難なく避けておいて何を言う……まぁ良い、片腕を失った以上動き回って刃を振るうのは得策ではないからな。今は後輩が編み出した技術の世話になろう」

「良いですね、その姿勢。使えるものは何でも使う、というのは戦いにおいて重要な要素となり得ます。例えば………

 

ガキンッ!!

 

このような不意打ちもそうですね」

「きっしょ、何で分かるのさ」

 

風間と相対している修に、気配を消し透明になって近づいていた菊地原がスコーピオンを振り下ろすが間に入れられた傘がそれを阻む。思わずといった風に悪態をつくがそれすらも涼しい顔で受け流している。

 

「もう少し気配を消す練習をお勧めしますよ……さて、

 

 幻想顕現 Dimension Shredder(次元裂き) 」

 

ボロボロのレインコートの存在が上書きされるように姿が切り替わって行く。本能が警鐘を鳴らしたのを感じた二人が下がった瞬間、言葉通り空間を裂く一撃が元居た場所を通り過ぎる。

 

「後半戦と行こう」

 

藍色で統一された何かの特殊スーツから覗く筋繊維と牙が不気味な姿に息を飲み警戒心を抱く2人を他所に、修はバチバチと紫電を走らせる機械仕掛けの鉈を構えた。




はい、Limbus Companyから「さすらいの狐」の「狐雨」と「道を失った乗客」の「次元裂き」の登場です。参考にしてるのはEGOと幻想体戦で生えてくる傘ですね。詳しい解説は次回をお待ち下さい。


それと第二次大規模侵攻の難易度は原作よりもハードモードにするのは確定していますが、アンケートで難易度を決めたいと思います。取り敢えず今のところ考えてる中で一番最悪なのは原作のボーダーだと10分程度で全滅するレベルだと思って下さい。

一応説明しておくと、プロムン世界の事件の危険度や厄介度を示す都市災害ランクは低い順からあらぬ噂、都市怪談、都市伝説、都市疾病、都市悪夢、都市の星、不純物です。不純物レベルになると都市の最高戦力が投入されます。

大規模侵攻の難易度は?

  • 都市悪夢
  • 都市の星
  • 不純物
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