持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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描きたい所が色々あって困りますね。早くB級のキャラ達も出したいです。




それでは、どうぞ。


第22話

白を基調とした制服を着たトリオン体になっている訓練生達がざわざわと落ち着きがない様子で各々待機している中、他とは違う黒を基調とした制服のトリオン体の修はなんとも言えぬ表情をしていた。

 

「………なぁ、本当に何か迷惑をかけたりしてないよな?」

「だから特に何もなかったって言ってるだろ?俺とレプリカが保証する。な、レプリカ」

『私もユーマに同意する、オサムは彼らに危害を加えたことなどは無い筈だ』

「じゃあなんで迅さん達は俺と目を合わせようとしないんだ。千佳に関しては訓練か風呂かトイレの時以外はこうしてくっついて離れないのに目は絶対に合わせてくれないんだが」

「それはお前……あんなネツレツにやっといて責任とらないとか人としてどうかと思うぞ?」

「本当に何をしたんだ俺は……!?」

 

隣に立つ同じような格好の遊真に対し、周りに配慮して小声で問い詰める。腰に抱きつきながらも修のほうに顔を向けようとしないこれまた同じような格好の千佳を一瞥しながらも、遊真は疑問に思っていた事を尋ねた。

 

「というか、なんで記憶が無いんだ?ポヤポヤしてただけでしっかり動いてたぞ?」

「…………前世からの体質だ。昔っから少しでもアルコールが体に回るとそこから暫く記憶がふっ飛ぶからその間のことは他人から聞くしかない……………まさかこれまで引き継がれてるとは思ってなかったんだよ」

「ほうほう、じゃあ前世でも似たような事をしたと」

「?まぁ迅さん達みたいに時折気まずそうに目を逸らして顔を真っ赤にしてるやつは結構な人数いt「ねぇ修くん、今の話本当?」

 

突如としてグリンッ!と首を動かしてハイライトの消えた瞳を向ける千佳。しかしそれによって一切動揺していない修と真正面から目を合わせてしまう。

 

「あっ」

「やっと目を合わせたな千佳……ほら、もうそろそろ入隊式が始まるから離してくれ」

「むぅぅ……」

「ちーか」

「…………後で膝枕してね」

「その程度だったらいくらでもやってやる」

 

諭すようなその一言で顔を赤くしながらもようやく掴んでいた服の裾を離した千佳の頭を修は優しく撫でる。そんな事もありつつ言葉を交わしていた3人だったが、不意に壇上に上がる気配を感じ取ってそちらに顔を向けた。入隊式が始まるアナウンスが流れ、周りの人間も緊張気味にざわつきが収まり始める。

 

「ボーダー本部長、忍田真史だ。君達の入隊を歓迎する」

 

「おぉ、こないだ迅さんに連れてかれた時にいた人だ」

「本部長……つまりは最高幹部の一人だな。恐らくあの人自身もかなりの実力者だぞ」

「そうなの?」

 

他の訓練生に気取られないようひそひそと話し合う3人を他所に本部長からの話は進んでいき、今度は現れた嵐山とその隊員達に新入訓練生達がざわめきだした。

 

「おー、こないだの学校のときもそうだが人気だなーアラシヤマ」

「あーあー、哀れだねぇ」

「ホント、素人ってのは……」

「んお?」

 

説明の途中、遊真達の耳に小馬鹿にしたような声が入ってくる。チラリとそちらを見ると、澄ました顔の3人組が嵐山隊を下に見るような発言を重ねていた。やれ顔だけで大したことないだの、裏事情を知ってなくても見抜けるだの、やたらと自信満々に発言する男子に遊真は眉を潜めてレプリカや修達に問い掛ける。

 

「なぁ、あいつら本気で言ってるのか?嘘は感じないんだが……」

『無知ゆえに踊らされている可能性が高いな』

「隊長だけでも俺と空閑と千佳を除いた全員を殲滅するのに1分も要らないレベルだぞ。恐らく自分が何かしら優位な地位に立っているのが原因で優越感に浸っているだけだろ」

「修くんって時折すごく辛辣になるよね」

「あぁやって力を過信してやらかして死んでいく奴は前世で飽きるほど見てきたからな」

 

呆れたように息を吐く修だったが、澄ませていた耳で聞いていた総合での説明がもうじき終わることを察してそちらに意識を向ける。どうやらここから先はポジション毎に分かれるようで、それを聞いた千佳は残念そうに移動し始める。

 

「後で迎えに行く、しっかりとやってくるんだぞ」

「うん、頑張るね修くん!」

 

手を大きく振って狙撃手達のグループへと混ざっていく千佳を見送った2人は、すぐさま再開された説明に耳を傾ける。その途中、こちらに気が付いた嵐山が投げ掛けてきた視線に軽く手を振ったり会釈したりして返したりしながらもその内容を頭に入れていく。

 

「今、君達はC級隊員……つまりは訓練生だ。防衛任務に就くにはB級に昇格して正隊員になってもらう必要がある。では今からその正隊員になるにはどうするかを説明しよう。各自、自分の左手の甲を見てくれ」

 

説明に従い2人も自分の手の甲を見るために目線を下げる。遊真の視界には手の甲に「1000」という数字が浮かび上がっているのが見えた。

 

「ほうほう……これか?」

「その数字は君達が起動させているトリガーホルダーに入った戦闘用トリガーをどれだけ使いこなしているかを示しているんだ。その数字を「4000」まで上げること、それがB級に昇格する条件だ」

「成る程、分かりやすい指標か」

 

修はさっさと数字から目を離して続きを聞こうと見据える。視界の端には先程の3人組が澄ました顔で周囲からの目線を受けているのが見えた。

 

「ほとんどの人間は1000からのスタートだが、仮入隊の間とかに高い素質が認められた者はポイントが上乗せされてスタートする。当然その分即戦力としての期待がかかっているから、そのつもりで励んでくれ」

 

「成る程、だからなんかえらそうだったのか」

「………?」

 

「ポイントを上げる方法だが、週2回の合同訓練で良い結果を残すかランク戦でポイントを奪い合ってもらう必要がある。まずは合同訓練について体験してもらおう」

 

そこで言葉を切った嵐山はそのまま訓練生達を引き連れて施設の中を案内し始める。その最後尾についていく2人だったが、不意に遊真が修に声をかける。

 

「そういやオサム、オサムのポイントってどれぐらいだ?俺と同じ1000か?」

「いや、どうやらボーダーはさっさと俺を実働隊員として働かせたいらしい」

 

後ろに立ってこちらを怪訝そうに見やる気の強そうな嵐山隊の少女から隠すように修は左手の甲を遊真に見せる。

 

そこには、「3750」という数字が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 

「………今更っすけどすごかったすね、ほろ酔いの修」

「あーもー思い出させないでよ!折角忘れてたのに!」

「えー?あんなえッゲフンゲフンセクシーと可愛いが絶妙な感じで両立してる男の娘とか居ないよー?忘れるなんて勿体無い!」

「むしろなんで先輩は普通に直視できるんです?」

「小南みたいに初じゃないし、とりまるくんみたいに拗らせてないからね~」

「だ・れ・が・初ですって~ッ!?」

「宇佐美先輩に拗らせ云々を言われたくないんすけど」

「あっはっは~、さーてあの子達はどこかな~?」

「無視すんな!」

「あまり騒ぐなお前達」

 

一方その頃、玉狛第一の隊員達も訓練生と同じ目的地を目指して歩いていた。その途中、年始の話が持ち上がって烏丸はほんのわずかに上の空になり小南はもぎゃって宇佐美はそれをいじくり、隊長の木崎はそれを静めようとする。すると別の方向から複数人の足音が近付いて来ていたようで、木崎はその存在の方を見る。

 

「玉狛第一揃い踏みか」

「あ、風間さんおひさ~!うってぃーもきくっちーもあけおめ~」

「もう一週間過ぎてますが……」

「何してんのさこんなゾロゾロと、暇人?」

「んなっ!?私たちは弟子の様子を見に来ただけよ!」

 

そこにいたのは風間隊の戦闘員で、玉狛第一と同じく私服なのを見る限りどうやら純粋な興味で合同訓練の見学をしに来たようである。

 

「弟子……というと三雲とあの近界民か?」

「それと修の幼馴染みだな。俺が狙撃手の師匠をしているが、中々筋が良い」

「ほぅ、お前がそう言うか」

 

酒飲み仲間の2人が新入隊員の話で盛り上がる一方で、高校生組も話題は新しく後輩となる存在へとシフトしていた。

 

「え、お前が狩人の師匠やってんの?」

「師匠じゃなくてトリガーを教える先生みたいなもんだ。現にガイスト使っても勝てないし、小南先輩も勝率は1割行かない程度だ」

「A級としてどうなのそれ」

「じゃあ後で戦ってみなさいよあんた、そんで頭をぶっ潰されたらいいのよ」

「やだね、こないだ10回ぐらいされてお腹いっぱいだし」

「……宇佐美先輩、彼トリオン体でも強いんですか?」

「ん?うん。一人で迅さんが加わった玉狛第一を相手できるレベルで強いよ。多分ランク戦に一人で突っ込ませても上位は行くんじゃないかな。基本的に」

「あいつホントに人間?いや、あんなの持ってる時点で人間じゃないか」

「ちょっと、それ本人の前で言うの止めてよね。なんか地味ーに気にしてるっぽいし」

「僕は事実を言っただけだし、そもそもあいつそんなの気にするような奴なの?」

「あー、すまない。菊地原は三雲くんを気に掛けてこう言ってるんだ」

「大丈夫です、分かってますよ」

「うっさい歌川!烏丸も同調すんな!」

 

照れ隠しのように2人をゲシゲシ蹴る菊地原。そんなことをしながらも歩みを止めず進んでいると、一段と騒がしい空間へと近付いていた。

 

「さて、例の2人を見るついでに今季の新人がどのようなものか見ておこうか」

 

 

 

 

 

「さぁ、到着だ」

 

案内された先は3つの巨大な部屋を囲むように観客席のようなものが設置された広い部屋だった。玉狛の訓練室しか知らない修と遊真もかなり巨大な設備を物珍しそうに眺めていた。

 

「まず最初に行うのは対近界民戦闘訓練だ。仮想戦闘モードの部屋の中でボーダーの集積データから再現された近界民と戦ってもらう」

「いきなり戦闘訓練!?」

「ほほぉ」

「仮入隊の間に体験した者も居ると思うが、仮想戦闘モードではトリオン切れはない。怪我もしないから各自思いっきり戦ってくれ!」

(言い換えれば死なないから体で覚えろと、素人相手に随分と過酷な事を……まぁ効率的といえば効率的か。Lobotomy社だと初日から鎮圧に駆り出される事もあったがそれに比べればまだ訓練という形で慣れさせてくれるボーダーはマシな方……いやそもそも比較対象がおかしいのか)

 

割と物騒な事を笑顔で宣う嵐山に前世の職場が脳裏に過り、それを振り払っていた修だったが不意に何かを感じ取ったように顔を上げる。

 

「………」

「オサム、どうかしたか?」

「いや、カメラを通した視線を感じてな。どうやらここには居ないがどこかで正隊員が見ているようだ。恐らくは………あそこか」

「………よく分かるな?」

「機械相手に隠密することもあったからな、意外と使う機会が多くて便利だぞ」

「成る程、帰ったら教えてくれ」

 

そんな事を話している内に他の訓練生達は次々とトリオン兵に挑んでいた。暫くすると、先程嵐山と共に前に立っていた隊員の一人だった気の強そうな少女が遊真達に向けて話しかけて来た。

 

「ねぇ、貴方達はやらないのかしら?もう少しで他の全員が終わるのだけど」

「ん?あぁ、すまない。少し考え事をしていた」

「んお?誰だアンタ?」

 

三門市に住んでおり、ボーダーのこともそれなりに知っている修は兎も角、この世界に来たのがつい最近である遊真からしたら本当に知らない人物である為この反応も当然なのだが、少女……木虎藍にとっては相当ショックだったようで、表情にも動揺が現れていた。

 

「んなッ………!?まさか、私を知らないって言うの!?」

「あー……すまない、こいつは帰国子女でな。最近こちらに来たばかりで迅さんからスカウトされて入ったからボーダーの事情には疎い点は許してほしい」

「………まぁそういうことなら知らなくても仕方ないですね。ほら、順番が回ってきたからさっさとしなさい」

「む、そうか。じゃ、行ってくるぞオサム」

「あぁ」

 

手を振って下に向かう姿を微笑ましく思いながらもそれを表情に出すことなく見送っていると、ショックから調子が戻って来た木虎が隣に立つ。

 

「貴女も向かわなくて良いんですか?」

「あいつの後でやるつもりだ……所で、さっきから視線を寄越していたが何か用があったのか?」

「ッ!……へぇ、気づいてたんですね?」

「何かしら警戒していたのは分かっていたが、敵意があるわけでもないのにわざわざ尋ねる程親しい間柄では無いだろう。君はボーダーのエリートで俺はただの新入隊員だ。広報を担当した上でA級でも上位に居るのであれば相当な努力もしているのだろう?」

「そ、そうですか……ま、まぁ、私はボーダーとしては貴女の先輩にあたりますし、年下からの指導が嫌でなければ多少の事はお教えしますよ?」

 

暫定年上と思っている相手に嫌味等が一切感じない誉め言葉を貰って少し動揺するも、それ以上に気分が上がった結果、先程よりも積極的に話をしようとする木虎だったが、怪訝そうな顔をする修の一言でそれもすぐに終わることになった。

 

「年下?何を言ってる、俺は君と同い年だぞ」

「………高校生じゃなかったの貴女!?」

「ついでに言えば空閑も事情があってあの姿だが同い年だ」

「嘘でしょ!?」

「つまらない嘘は言わない……と、そろそろあいつの番か?」

 

目を丸くする木虎に若干不思議そうな表情を浮かべつつも、周囲のざわつきを聞き取って意識をそちらに向ける。どうやら遊真の前の順番にいた少年が丁度トリオン兵を討ち取った所のようで、その記録は今までの新入隊員の者と比べても高いと分かる物だった。

 

「58秒か、ボーダーとしてはどんな感じなんだ?」

「………大きな声で言いたくは無いけど、新入隊員でこの記録ならまあまあって感じね。正隊員になる頃には最低でもこの半分以下にまでタイムを縮められる位には慣れて貰わないと」

「そうか……君の場合はどうだったんだ?」

「9秒よ」

「へぇ、相当センスがあるんだな」

「……誉めてくれるのは悪い気はしないけど、私は才能だけに頼ることはしないわ。それを磨いてこそ本当の実力が出せるもの」

「違いない………始まるか」

 

少し自慢気な様子の木虎の言葉に同意しながらも意識はたった今戦闘訓練を始めようとしている遊真へと向けられていた。数秒後、提示された結果は先程よりも大きなざわめきを生んでいた。

 

「んなっ、0.5秒……!?」

「まぁあいつならあの程度は余裕か……すまない木虎、そろそろ俺は行く。解説感謝する、話していて楽しかった」

「へ?あ、ちょ、待ちなさい!」

 

礼を言い、制止を聞き流して階段を下る。観客席のようになった部分を通り過ぎて下に降りると丁度遊真が訓練室内から出てくる所だったようで、修は騒然としている周囲を気にせず名前を呼んだ。

 

「空閑、調子はどうだ」

「いつもどーり。まぁいつもはやしゃまる相手にしてるし、こんぐらい出来なきゃこなみ先輩に怒られるだろうしな。これで満点になんのかな」

「少なくとも高得点なのは間違いないはずだが、どの程度加算されるかは俺も分からんからな……木虎に聞いておくべきだったか」

 

マイペースに目標量のポイントの収集方法を探る二人だったが、そこに思考を遮るように叫び声にも似た怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「ま、まぐれだろ!計測器の故障だ!もう一回やり直せ!」

「ふむ、もう一回?いいよ」

 

言葉に従い、再び訓練室に入る。そして開始のブザーが聞こえた瞬間に先程と同じ様にコアとなる頭のセンサーをスコーピオンでぶったぎり、先程よりもタイムを0.2秒近く縮めてから帰って来た。

 

「よっし最適化できた」

「相変わらず高い適応能力だな」

「それでオサムに勝てたら良いんだけどな、いい加減一勝ぐらいくれよ」

「お前は手を抜かれて勝ちたいのか?」

「それはやだ」

「……よし、お前の実力がまぐれじゃないってことは分かった、合格だ」

 

いの一番に相棒の元へと駆け寄ろうとするが、先程の3人組のリーダーらしき少年がそこに手を差し出す。

 

「俺達と組もうぜ、強者同士が手を組めばより上を「おことわりします、もうオサムと組むって決めてるし」目指せ………ってまだ言ってる途中だろうが!」

 

決め台詞を吐こうとするも食いぎみに拒否されてキレ散らかす少年だったが、それ以上詰め寄ろうにも近くに立つ嵐山が遊真達に話しかけた事でそのタイミングを逃してしまい、大人しく引き下がって行った。

 

「君達2人がチームになるのか」

「それとチカを加えて3人だ」

「ははは、次のランク戦は荒れそうだな。あ、そういえば三雲くんはまだやってなかったな、すぐに準備しよう」

 

そう言って手元の端末を操作する嵐山。修はそれにペコリと礼をしてすぐに状況がリセットされた訓練室へと入って行った。その背中をどっしりと構えて見送る遊真に対し、嵐山はふと思い出したかのように尋ねた。

 

「そういえば三雲くんはどのトリガーを選んだんだ?太刀川さんと戦った時は刀と銃を使っていたから弧月か拳銃っていったところか」

「いんや、オサムが選んだのはレイガストだったな。あの形のEGOはあれ一本だけらしくて、普段使いしてるのは直剣みたいなのが多いぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはり手に馴染むのはこの形か)

 

修は手の中で刃を展開するレイガストをチラリと見る。デモンストレーションで見せられた物はグリップ部分を覆うようにガードが付いていたが、現在修が握るレイガストのブレードにはそれがなく、刃渡り120cm程度の両刃剣へと変化していた。

 

(…………)

 

前世がフラッシュバックし血に濡れた手とおどろおどろしい大剣が過る。一瞬だけ周囲が幻想体の核と巻き込まれて発狂していた職員の肉片が転がるかつての職場が見えたが瞬きをした後には真っ白な空間……今の光景が正常に映っていた。そして己の前に鎮座するバムスターに対し、両刃剣を片手で構える。その姿からは一切の気迫はなく、しかしそれでも見入ってしまうような何かが感じられた。

 

《五号室、用意》

 

アナウンスを耳にして、修はなんでもないかのように一歩前に踏み出す。

 

《始m

 

開始のブザーが鳴り響き、デジタル式のタイマーの端の5が4に切り替わる。しかし本来であれば歩き出す筈の仮初めのバムスターはその場から動かず、タイマーの数字も殆どの数字が一度切り替わったのみですぐにその数を減らすのを静止した。

 

「…………はぁ」

 

剣を振り切った姿勢で息を吐き、姿勢を戻しながら流れのようにビッと剣を凪ぐ。そして昔のように鞘に戻そうとする直前で今の己が握る武器にそんなものがなく、血を払う動作を行う必要もないのを思い出して内心何とも言えない感情になりながらもブレードを消した。

 

「………もう一閃いけたか?」

 

顎に手を当てて思考する修の()()にあったバムスターは縦に断たれており、2分割されて崩れ落ちる。しかしそれでも満足はしていないようで、特に喜ぶこともなく開始時よりも遠くなっていた訓練室の出口へバムスターの残骸の真ん中を通って向かう。その途中、開始のカウントダウンをしていた時と同じ無機質なアナウンスが流れた。

 

 

《記録、0.1秒》

 

デジタル式のタイマーのには《04:59.92》と表示されていた。

 

 

 

 

 

「うーむ、抜かされてしまった。やっぱオサムってEGOとか関係なく純粋に速いし強いんだよな」

『そうだな、私の記録の中でも何か特別なものでもない普通のトリガーを用いてあの速度でトリオン兵を破壊する事ができる存在は確認できなかった。抜きん出た強さというのはああ言うものなのだろう』

「レプリカがそう言うってことはホントに滅多に居ないんだろうな。まぁオサムレベルの奴がポンポン居たら多分今ある近界の国幾つか無くなってるんだろうけど」




貶す時は容赦ないですが、誉め言葉は素直にポンポン出すのでいつの間にか相手が絆される事が多いのがうちのオサムです。
ついでに言えばギフトによる偽装がない限りほぼほぼ初見の印象はクール系の眼鏡美少女なので、現時点ではまだ木虎はオサムの事を変わったしゃべり方をする女子だと思ってます。
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