それでは、どうぞ。
「また1秒切った!?」
「うっそだろ!?さっきの白いチビといい今期の新人どうなってやがんだよ!」
修が存在を指し示していた観測者の2人……諏訪洸太郎と堤大地は訓練室の様子を映し出したモニターがいくつも並ぶ部屋の中で目を剥いていた。するとそこへそのタイミングを見計らったかのように木崎が現れる。
「お前ら居たのか」
「あん?……お前がここに来るなんて珍しいなオイ。玉狛はこういうのノータッチだったろ」
「どうもです木崎さん」
挨拶もそこそこに話題はたった今見せられた異常とも言える光景へとシフトした。
「諏訪、堤、お前達から見てどうだあの2人は」
「あの2人……あぁ、いまさっき1秒以下とかいう馬鹿みたいな新記録出してたあの白いチビッ子とポニテメガネか?何者だよあいつら、動きが完全に手慣れてる奴のそれじゃねぇかよ」
「最後の子に関しては動きが全く見えませんでしたしね」
「そうか」
「…………おいちょっと待て、まさかお前がここに居るのって」
「お察しの通り、あの2人は
「それで俺がわー楽しみー、ってなるとでも思ってんのかてめぇはよ」
「諏訪さん落ち着いて…」
指で挟んだタバコを突きつけながら問い詰める諏訪をなだめる堤。だが同年代のノリで慣れている木崎は気にした様子もなく話を続ける。
「ついでに言えば修……眼鏡をかけている方は上層部の協議の結果既に3750ポイントを与えられている。恐らくすぐにでもB級に上がって次のランク戦には参加するから覚えておけ」
「マジかよ、今までの初期ポイントの最高点数どれぐらいだったっけか?」
「烏丸に聞いたんだが、木虎が3600だったらしい」
「うわぁ、そんな強さだったら一人でもヤバそうな……あれ、でもオペレーターはどうするんです?確か玉狛のオペって今は1人だったような……」
「宇佐美が兼任して玉狛第二のオペレーターとして就く予定だ」
「そうかぁ?お前的には兼任じゃなくて愛しのゆりさんにオペしてほしいだろ」
「…………ゆりさんは今県外でスカウト活動の最中だ」
「否定はしねぇのな。まぁそれだとお前が落ち着かない筋肉になっちまう訳だが」
「やかましい」
モニタールームでそんなやり取りが行われている中、先程よりもざわめきが強くなった訓練場へと戻ってきた修がそれに気を留めず遊真の元へと歩み寄る。
「2人とも流石と言うべきかな。三雲くんは映像越しで見て空閑くんは迅から言伝てに聞いていた程度だったんだが、直接見ると君たちの技術が洗練されていることがよく分かるな」
「ありがとうございます」
「アリガトウゴサイマス」
「うん、2人とも正隊員になるのが楽しみだ」
「嵐山さん、この2人と知り合いなんですか?」
透明な自動扉越しに一連の出来事を見ていた嵐山は素直に感心した様子で二人を誉めている。さすがに様子がいつもと違うことを感じ取った眠そうな眼の少年……時枝充が尋ねると、嵐山は笑顔で答えた。
「あぁ、実は三雲くんと空閑くんは迅がスカウトしてきた新人なんだ。前に一回顔を合わせる機会があってな」
「へぇ、そんな事が」
「……………」
「?どうかしたのか、木虎」
時枝が納得した様子を見せる中、整った顔を歪ませた木虎がずんずんと近づいて来る。その足の方向から自分に向かってくる事を察するがその理由までは判らず首を少し傾げていた。
「貴女、さっきのあれは嫌味だったのかしら?」
「別にそう言う訳じゃない、純粋に感心から来る言葉だったんだが……」
「嘘は要らないわ、あんな記録を余裕そうに叩き出しておいてよくもまぁぬけぬけと……」
修からしたら自分がどれだけ人間離れしているか理解しているが故に(純粋な人間基準なら)という枕詞が付くが特に裏表もなく放った言葉なのだが向こうからしたら煽っているように感じられたようで、腹立たしげに文句を吐こうとする。しかし、その言葉が続く前に別の不満げな声がそれを遮りその主が修に食って掛かった。
「ちょっと修!何で
「機械で計測できなければ意味がないでしょう、玉狛支部で試した時にバグを引き起こしましたし。あとここでそこまでやると他の新入隊員のやる気を削いでしまう可能性も……」
「無視していいのよそんなやつら、こんぐらいで心が折れるんなら向いてないわ」
「一理ありますが、それだと人材不足になりかねませんよ?」
「む……確かにそれは少し困るわね……」
プンスコプンスコと憤っていた小南を説き伏せてクールダウンさせたそのタイミングを逃さず嵐山は声をかける。
「桐絵、来てたんだな」
「私の弟子と後輩達を見るためよ。レイジさんもとりまるも来てるわ……そういやとりまるどこ?」
「置いていかないで下さいよ小南先輩」
「ごめんごめん」
「……まぁなんと言うか、目立ってますね俺ら。やっぱ修の言ってたように小南先輩が美人だからでしょうか」
「え、やだ、嘘!?そんな事言ってたの!?」
「……確かに小南先輩は美人ですが口に出して言ったことは無い筈ですよ」
「へ?」
「すいません嘘です」
「………だーまーしーたーわーね~!!」
「何故俺の首を絞めようとするんですか」
「うっさい黙って受け入れなさい!」
チョークスリーパーを決めようとしてくる小南に対し、顔色一つ変えずに自分の腕を絞めようとする腕と自分の首の間に滑り込ませる修。その状況の原因である烏丸はふと思い出したかのように嵐山達の方へ向いた。
「っと、そうでした。挨拶が遅れてすいません嵐山さん、ついでにあけおめ時枝。それに木虎も久しぶりだな」
「か、烏丸先輩……!」
「うん、あけおめ」
「それにしても今回も嵐山隊が入隊指導の担当ですか。大変っすね」
「確かに仕事は多いが、新入隊員達が安心するのは顔が広い俺達だろ?なら、やらない理由はないしこのぐらいは大丈夫だ」
「流石っすね」
素直に感心している様子の烏丸に、木虎は先程とはうってかわって大変しおらしい様子の木虎が話し掛ける。
「あ、あの、烏丸先輩、もしよろしかったらなんですけどまたお時間などがあればまたお稽古つけてください!」
「?いや、お前十分に強いだろ。もう俺が教えられることなんてないよ」
「そんな、私なんてまだまだです!」
「とは言ってもな……」
「別に相手してあげたら良いじゃない」
憧れの先輩と話せている事への歓喜が雰囲気に溢れ出ている木虎に対して烏丸が何かを渋っていると、いつの間にか修から離れて遊真の頭に顎を乗せている小南が口を挟んだ。
「とりまる、あんた最近修にボッコボコにされまくるのが嫌で時間があれば訓練してるじゃない。前より強くなったのは確かなんだしその子なら丁度良い相手でしょ」
「………確かにその通りなんすけど、出来ればここで言わないで欲しかったっすね」
小南が己の弟子の頬をもにもにしながらあっさりと暴露した事実に烏丸はその整った顔を若干歪ませる。しかしそれ以上に衝撃を受けていたのは本部にいた頃の烏丸の強さを知る周りにいた面々である。
「………ボッコボコ?」
「……まぁ少し恥ずかしい話なんだが、修との模擬線の勝率は1%位なんだよ。流石に先輩として情けなくてな、今は迅さんとかレイジさんに鍛え直して貰ってる最中だ」
「何で私の名前出さないのよ」
「勿論、小南先輩にも感謝してますよ。ただ修に負けた鬱憤を俺で晴らさないでほしいんすけど」
「一応あんた修の先生みたいなもんでしょ。実際トリガーの使い方とか教えたのあんただし、なら丁度良い相手じゃない」
「……先輩も勝率5%行ってないくせに」
「あんたより上だから良いのよ!」
顔を背けながら生意気にもカウンターで暴露してきた後輩にうがー!と食って掛かる小南。未だにもにもにされてる遊真はされるがままでその隣に立つ修は一切の感情が読み取れないストンと表情を落とした状態であり、なんともカオスな状況に放置されている訓練生達は困惑するしかなかった。
「驚いたな、トリガーを用いてもお前達相手にそこまでやるのか」
「ヤッホー!2人とも調子はどうかな~?」
「風間さん、先日はどうも」
「やっほーしおりちゃん」
更には風間達も合流し、その空気は更に加速していく。
「嵐山、そろそろC級を移動させないのか?」
「おっと、もうそんな時間でしたか。充、誘導頼めるか?」
「わかりました……みんな、一旦休憩しよう。ラウンジに案内するからついてきて」
時枝の先導で修と遊真を除いたざわめきが収まらないままの新入隊員達が移動していく。それを全員で眺めていると、小南が不意に何かを思い出したかのようにあ、と声を漏らした。
「そうだ准、迅から伝言あるんだった。「
「そうか……わかった、直ぐに予定を合わせよう。木虎、確か午後から仕事は入ってなかったな」
「はい、今日はこの新入隊員の訓練指導だけですが……」
「じゃあ午後からは俺達の訓練だ、対黒トリガーを想定したものを行うぞ」
「え、えぇ?わ、かりました」
元気ハツラツと笑顔で告げる嵐山に対し、木虎は困惑を隠せずにいた。中々に収集のつかない雰囲気になろうとしていたが、それを遮ったのは烏丸だった。
「嵐山さん」
「なんだ?」
「修と戦ってみますか?一回は体験しておきたいでしょう」
「んなッ!?」
「成る程、それは良いな。頼めるか、三雲くん?」
突然の提案に笑顔で頷く。しかしそれを良しとしない少女が焦ったように間に入ろうとする。
「ちょっと待ってください!いくら玉狛で訓練しているとはいえ、彼女はC級です!対決するにしても立場と言うものが……」
「……?まぁ問題はない、このためにC級は下がらせて噂をばらまく原因になりそうなB級には木崎が釘を刺しに行った」
「なるほど、だからレイジさん居なかったのか」
「決まりだな!」
「よろしくお願いします」
2人はトリガーを起動したまま設定を変更した訓練室へと入っていく。トントン拍子に話が進み置いていかれて呆然としている木虎に対し遊真が近づく。
「なぁ木虎、お前一つ勘違いしてないか?」
「……強さ云々の事を言ってるなら間違いよ空閑くん。三雲さんがそこらのC級どころかB級とは比べ物にならないぐらいには強いってことはわかってるわ」
「………そこはまぁいいとして、お前さっきオサムの事を「彼女」って言ってたけどアイツ男だぞ?」
「……………………………ふへ?」
長い沈黙の後、口から出たのは何とも間抜けな声だった。
「さぁ三雲くん、全力で行くぞ」
「……こちらは盾の機能を抜かれたレイガスト一本ということはお忘れなく」
「はははは、手を抜いた状態でもトリオン兵の部隊を殲滅出来そうな君がそれを言うのかい?」
「まぁこの程度で油断を誘えるとは思って居ないですが……貴方の精神性だと普通にあの場所でもやっていける………いや、精神的支柱が無くなれば暴走しそうだな」
「何か言ったかな?」
「いえ、お気になさらず………いつでもどうぞ」
そう言って以降黙り込んだ修は嵐山に対し静かかつ冷淡な目線を向け、レイガストを両刃剣の形で呼び出し構える。
(すごいな、あの時の殺気といいこの気迫といい……攻撃を通せるビジョンが見えない。少しでも油断すれば持っていかれそうだ……だが)
対峙する修に気圧され内心冷や汗を流すもその程度では屈しない嵐山は、右手にシンプルな
「ッ!」
「弾幕薄いですね……ッ」
機関銃と比較するとどうしても威力も弾数が劣ってしまう突撃銃に見切りをつけ、早々に終わらせようとした修だったが切り払った弾が突如として爆発し、煙を撒き散らす。
「一瞬でアステロイドとメテオラを切り替えたのか…?」
修は見覚えのある煙を切り払うが、拓いた視界の中に嵐山の姿は確認出来ない。その事実に対する思考を即座に終わらせると同時に自分の背後に向けて放った広範囲の横凪の一閃は後ろの煙の中から現れていた嵐山が振るったスコーピオンによって受け止められる。剣同士のぶつかり合いで煙も晴れる程の風圧が生まれるが、トリガーの特性の一つである耐久力の差で嵐山のスコーピオンにヒビが入った。
「ッ!一撃で……!」
「テレポーターですか、あれは確か片枠を潰して使うものでしょう。即座に別のトリガーを展開して攻撃できる辺り、相当の錬度ですね」
「焦り一つない顔で受け止められちゃ世話ないけどね!」
左向きに回転するように振り返りながら左手に握るレイガストを振るった修に対し、嵐山は自らの左手の中から生やしたスコーピオンを同じ様に振るっている状態。しかし、嵐山の右手には最初から展開していた突撃銃が握られており、状況だけ見れば手数の多さは圧倒的に嵐山に軍配が上がる。
「シッ!」
「がッ!?」
その解決法として選ばれたのは、トリオン体にはダメージを与えられない徒手空拳による近接戦闘だった。振り切ったレイガストの柄を手放した修は突撃銃が自分に向けられる前に引かれた状態の右足に力を込め、振り返った勢いのまま右手の拳を相手の心臓辺りに叩き込む。予想していなかった衝撃を受けた嵐山は後ろに吹き飛ばされ、奇しくも最初と同じような距離まで放される。床に突き刺さる直前のレイガストを拾った修はそのまま人間がおおよそ出せないような速度で走りだし、まるで瞬間移動したかのように嵐山の前に現れた。
「ず、いぶんと、乱暴だな、三雲くん!」
「乱暴とは随分な言い草ですね、俺は自分の使えるものを使っているだけです。それを言うならば貴方もその突撃銃を使っているではないですか」
「ごもっとも!」
上位の隊員と訓練生、その実力差は覆らず訓練生はなす術もなく殺られる筈である。しかし今この時、余裕そうにしながらも一切気を抜かずに相手を睨み続ける強者は訓練生であり、それに対して追い込まれている状況を笑みを浮かべることで自分を鼓舞する挑戦者はエリート隊員だった。嵐山は己を両断しようとする両刃剣に対し、破棄したスコーピオンの代わりに扱えるようになったシールドを間に入り込ませその凶刃を大きな音を立てながら受け止めた。
ピシリッ
先に限界が来たのは範囲を犠牲にして強度を底上げしたシールドだった。本来であれば強度の関係上刃溢れ無しにシールドを割ることは叶わない筈のブレードモードのレイガストに破られた事実に嵐山の思考が一瞬だけ持っていかれる。その隙が見逃される訳もなく、修に返す刀で右腕を切断され人体のバランスが崩れた事によりほんの少しよろけてしまったが、そのままテレポーターを使い横に飛ぶことで首に迫った三撃目を回避する。たたらを踏みながらもシールドを張り、スコーピオンを生成するが振り向いた先に既に相手の姿は無かった。
ドスッ
「ぇ?」
突如として胸の辺りが自分のものではない力に動かされる。目線を落とせば本来心臓があるであろう場所から先程から対峙していた相手の持つ武器の刃が突き出ていた。
「敵から早々に目を放すものではありませんよ」
「ッ!」
最後の最後まで抗おうと背後から話しかけてきた存在へとスコーピオンを振るう。しかし言い終わるや否や刃の主は柄を握り、
ザシュッ!!
そのまま頭を吹き飛ばすように振り上げた。
「」
「木虎、木虎、大丈夫か?……駄目だな、呆然としてる」
敬愛する先輩から揺さぶられても反応しない程に混乱し、動かなくなった木虎にどうしたものかと頭を悩ませる烏丸だったが、生憎他の者がその様子を気にする事はなかったようだった。
「相変わらず容赦なく頭吹き飛ばすわね。まぁそっちの方が張り合いあるし私は別に良いんだけど」
「確かにそうですな、オサムと戦うと命の取り合いしてる感じがして良い鍛練になる」
「まぁ、実践的って意味ではそうっすけど、あいつはとどめを刺すタイミングは現実でも確実に仕留められる場所を攻撃することが多いからそう映るんじゃないっすかね」
取り敢えず後輩を近場の席に座らせた後、物騒な感想を言いながら感心している師弟に同意を示す。思考の片隅でエグいとは日頃から思っているものの、理にかなっているのは事実である上自分自身も良い経験になっているため否定をすることは無かった。
「どういう事だ?」
「簡単に言えば、少しでも隙を晒したら人体の弱点……首とか目とか脳とか……あと心臓か?そこら辺をぶった斬ったり突き刺したり吹っ飛ばすんだ。まぁそれ自体は他のボーダー隊員もやってるし俺達も普通に狙うんだが……あいつの場合は気迫、と言うよりも殺意が凄くてな。お陰でいつもトリオン切れになる前にぶち殺されてる」
「あぁ………確かに、この前模擬戦をした時の記録を見返しても軒並み首を断たれたりしてやられる事が多かったな……」
先日の蹂躙とも言えるような訓練を思い出し、思わずといった様子で首を擦る歌川の様子にうんうんと頷く烏丸は今は既に慣れたもののそれは己が通った道であると達観した目をしていた。
「………ふむ」
「どうかしました~?」
「宇佐美、あいつはトリオンに関する副作用かそれに準ずる物を持っているのか?」
「おや、どうしてそう思ったんです?」
「その反応から見るに当たりらしいな。いやなに、ブレードモードのレイガストで嵐山のシールドを破壊した所に違和感があってな。いくらレイガストとはいえアステロイドとメテオラを切った後に集中シールドを叩き割ったのなら刃溢れの一つや2つしていてもおかしくないだろう」
「あはは~、まぁそりゃ風間さんならこのくらい普通に見破りますよね~。修くんも隠す気無いし」
一方で、風間は体を修復し再び戦い始めた修と嵐山の様子をじっと観察していた。そして考察した上で投げ掛けられた質問に対し宇佐美はニヤリとした面白さが隠せないような笑みとを浮かべていた。ずっと耳に入っていた菊地原はしびれを切らしたように口を開く。
「もったいぶらないで早く教えてよ宇佐美先輩」
「そう急かさないでよきくっちー……こほん、簡単に言うと修くんはトリオンの精密操作が可能なのです!」
「精密操作……ですか?」
「うん、精密操作。ほら、普通自分の中にあるトリオンってトリオン体を維持したりトリガーを起動する燃料みたいなもので、自分で形を変えたりどうこうする事は出来ないでしょ?」
「まぁそれはそうですね。そもそも外部に出力した物は兎も角体内のトリオン自体をどうこうできるという発想が無かったですし……」
「修くんの体質は特殊でね、トリオンの出力……今回の場合はブレードの硬度につぎ込むトリオンの量だね、それとかを自分の意志で完全に操作出来るし何かしらの構築とかも余裕でこなせちゃうの。それになんと起動してるトリガーに対して干渉して設定を最適化するように書き換えるなんて芸当も出来ちゃうし……まぁ最後のは無意識でやってたみたいだけど」
「何?」
聞き流せない一言に風間が反応して振り向く。長い間トリガーに関わって来た者としてはその異常とも言える現象が気になるようで無言で続きを促し、宇佐美はそれに応えた。
「どうもいくら設定し直しても生身の感覚が反映されるように書き換えられちゃって、だから他の人がトリオン体で身体能力が強化されてるなかで唯一修くんだけ身体能力とかが生身の状態から据え置きなんですよね~」
「……は?据え置き?」
「そうよ、あの戦闘技術もEGOとか関係なく元々備わってる能力だしあの瞬間移動もどきを実現できるレベルの身体能力も。道路標識片手で地面から千切り取ってるのなんて初めて見たわ」
「えぇ~……なんなのあいつ、マジで都市伝説の類いじゃん」
「まぁオサム自身が自分が純粋な人間かって聞かれたときに首傾げてたし、案外間違ってないかも知れませんな」
宇佐美と小南からあっさりと告げられた奇妙だが間違いない事実に対する理解が出来ることに若干顔を歪ませる菊地原。同じ隊の風間と歌川も先日の経験から「まぁそのくらいは出来るだろうな」という納得を見せる中、唯一事情をほぼ何も把握していない者が一人いた。
「あ、あの………先程から皆さん何をおっしゃってるんですか?三雲さ……三雲くんがやたらと話題に上がってますけど……あとあの強さといい彼は一体……?」
「ん?何お前、まだ嵐山さんから知らされてないの?」
理不尽にも見える圧倒的強さを目の当たりにして少しの間呆然としていた所から復活したが未だ混乱から抜け出せない様子の木虎に対し、菊地原は心底呆れた様子で声をかける。プライドが高い彼女はそれに対して腹立たしさを覚えるがそれを抑えながら極めて冷静に返答した。
「何の話ですか?」
「あいつが巷で噂の狩人だよ。て言うか確かおまえ前にも会ってた筈けど、声とかで気付かないもんなの?」
「………は?………え、は?」
「あ、バグっちゃった。もうきくっちーってばこの情報一応機密だよ~?」
「別に良いでしょ、どうせ後から知らされる事になるんだろうし。早いか遅いかの違いしか無いんなら黙ってる理由無くない?」
「それでも順序があるだろ……」
再び呆然とし始めた木虎へ一切悪びれた様子の無い菊地原に各々苦笑いや呆れを含んだ感情を向ける中、戦闘音が止み訓練室から修と嵐山が出てくる。
「いやぁ参ったな、せめて一回ぐらいは撃破したかったんだが……弾幕が薄かったか」
「技術の傾向からして、貴方は連携で輝くタイプなのでは?テレポーターによる転移とメテオラをセットした突撃銃による弾幕は隙を生むのにはかなり有効だと思いますが」
「それを悉く突破した君が言うのかい?」
「乱射してくる銃相手でもその軌道が真っ直ぐなら必要最低限自分に向かってくる弾を対処すれば良いんですよね。一番剣でしのぎづらいのは誘導を緩めにしたハウンドです」
「それは普通でも同じだな三雲くん。威力を下げる代わりに相手を削る力が高い……だが俺はそこまでトリオンの量が多いわけではないんだ。普段は充との連携でクロスファイアを食らわせる事が多いし、火力が必要になるとどうしてもアステロイドやメテオラが欠かせなくなる。同じ燃費でも威力が高いのはそちらだからな」
「まぁそうですね……バイパーも思考能力が割かれる為それを扱う才能がなければ指揮をする者には向いていない、リフレクトは万が一の事故が考えられる上使うならキューブでやった方がいい……テレポーターとの相性なら確かにその2つになるか………あぁそうだ、テレポーターの使用は視界に関係してますか?」
「確かにそうだが何か違和感でも………ん?すまないちょっと待ってくれ、佐鳥から連絡が入った」
先程まで割と容赦無しの殺し合いをしていた2人が和気藹々と戦闘スタイルについて話している最中、突如として入った連絡に話を切り上げそちらに集中し始める嵐山。その様子を小南の元から離れてひょこひょこと近寄っていた遊真と修が共に様子を見守っていると真面目な表情に切り替えた嵐山が二人の方に向き直った。
「三雲くん、空閑くん、君たちのチームメイトの所でトラブルがあったらしい」
「本当……のようですね、向かってもよろしいですか?」
「あぁ、仲の良い君達がいた方が安心するだろう。俺が案内するからついてきてくれ」
「わかりました、行くぞ空閑」
「了解、隊長」
「すまない木虎!少し対応しなければならない事が出来たから先に充と合流しててくれ!」
取り敢えず第二次侵攻と修の過去までにあと三部隊との訓練と何人かとの絡みを書きたいです。
修はEGOの試運転係のようなこともしていた為使い方等の感覚はすべて覚えており、その動きを普通の武器を扱うときにも投影しているのであまりにも特異的でなければ大抵の武器は使えます。ちなみによく使わされていたEGOは"黄昏"で次点で"ジャスティティア"や"ダ・カーポ"、"失楽園"、初期は"決死の一生"や"魔法の弾丸"、そして時たまに一部からの要望で"愛と憎しみの名のもとに"を装備させられていました。
女顔に関しては前世から変わりませんし、現在のようなクール系ではなく童顔かつ可愛い系の容姿だったので普通に着こなしていたそうです。