ついに自分も社会人ですが、皆様はいかがでしょうか。取り敢えずリンバスカンパニー楽しいです。
それでは、どうぞ。
「やられたわね、先に支援役を潰された。効率的というかなんというか……流石は狩人、とでも言うべきかしら」
敵の姿が見えなくなってから味方の離脱する様子を遠くから見ていた加古に悔しさなどは見られず、むしろ今の状況を楽しんですらいるような笑みを浮かべていた。また、初見の筈の米屋も遠くを眺めながらもその口元には好戦的な笑みが見える。
「移動速度が尋常じゃねぇな。どうなってんだありゃ?」
「シンプルに身体能力に物を言わせてるらしいわ。迅くんから聞いたけど、生身の状態でもトリオン兵の攻撃を受け止めて殴り返してひっくり返すぐらいは出来るって話よ」
「………最早人間なんですかそれ?」
『では問うが、今の俺が人間に見えると?』
「ッ!?」
少女がほぼ独り言のように吐いた言葉に返答したのは先程彼女達の仲間を脱落させた蜘蛛の怪物だった。黒江が確かに存在している筈なのに気配だけが無い相手に気味の悪さを感じている間に戦闘狂な槍使いが飛び出した。
『随分なご挨拶だが………いい反応だ。槍の使い方は我流か』
「いかにも余裕って感じだなッ!」
刺突は剣の腹で受け止められる。少しだけ拮抗したように見えたそれも払われて下がる米屋だったが、その表情に陰りは無く嬉々として再び攻撃を仕掛けた。
「ほっ、よっ、そらッ!」
『そして上からの叩きつけだろう?』
ガギンッ!
「ッ!」
しかしその連撃も先読みしていたかのように振るわれた直剣が槍の刃の根元とかち合った事でストップする。
「……と、思うじゃん?」
『ッ!』
「ぐおッ!?」
米屋がニヤリと笑った瞬間、トリオンの光を放つ穂先がグニャリと形状を変えて独立した刃のようになって襲いかかる。咄嗟鍔迫り合いから逃れるように斬り払ってその勢いのまま回し蹴りを決める。互いに距離が空いた所で修は感心したような声色で口を開く。
『幻踊か、中々上手いな』
「おいおい、今のは当たっといてくれよ」
『すまないが、流石にここまで目を開いておいて見逃しはしない。やるならもっと瞬間的にすることだ』
「やっぱそれ飾りじゃねぇんだ。気持ち悪くねぇの?視界が滅茶苦茶に広がるってのは」
『お気遣いどうも。だが自分の身体は少しばかり特殊なんでな、この程度なら処理出来る』
言葉と共に振るった剣は後ろからの強襲者の刃を弾く。凶刃の主であった加古は軽い調子で再び斬りかかるも
「あらら、防がれちゃった」
『殺気を隠す気も無かった癖によく言うものだ。まぁいい、まとめてかかってこい』
「そう?それじゃ遠慮なく」
直後、様々な場所に仕掛けられていた時限式の誘導弾が修目掛けて解き放たれる。降り注ぐ光弾を最低限の物を選択してその尽くを対処する最中、合間を縫ってスコーピオンを握った加古が襲い掛かった。
グイッ
「ッ!?成る程、蜘蛛の糸ッ!」
『彼らに出来て俺に出来ない道理は無いんでな』
加えられようとしていた斬撃はそれよりも前に間に挟まれた糸によって受け止められる。更に地面と繋がれ動きを止められた加古の体に斜めに線が走り、そこから両断された。しかしベイルアウトすると思われた瞬間、加古の表情は驚愕や悔しさではなく不遜な笑みだった。
「魔光」
『ッ!』
最後の一撃として放たれたのは攻撃ではなく妨害のための閃光、そして仲間への合図だった。
「そぉらッ!」
(韋駄天ッ!)
加古のベイルアウトと共にその空間を刺し貫くように槍を突き出す米屋と神速の居合を行うシステムを起動する黒江。正面から来た米屋は突きを体をひねって回避しカウンターで吹き飛ばす勢いの斬撃を放って仕留めたが、その背中は無防備に晒されていた。
『あぁ…………中々、悪くない……』
(獲った!)
ザシュッ!!!
『だが、思考は最後まで止めない事だ』
「ガッ………ハッ!?」
煙が晴れた後、現れたのは背中から先が鋭い四本の異形の脚が生えた怪物と、刀を振ろうとした姿勢でその脚に貫かれ空間に縫い留められた少女だった。
『ヒントは渡していた筈なんだが……まぁいい、その話は終わった後にするとしよう』
少しだけ顔を横に向けて無数の瞳に黒江を映すと爪に突き刺さったままだった相手の体を打ち上げ、振り向くと同時に両断する。ベイルアウトの風圧を浴びながら周囲の確認をする修は自らを覆う殻をほどき、自分とリンクしていた小蜘蛛達が消えていくのを無意識の内に感じていた。
「ま、こんなところかしらね。もう少し抵抗出来た気もするけど……まだ難しいかしら」
「自分達の戦術の押し付けが出来るような状態では無かったのが第一だろう……早々に落ちた俺が言うのもお門違いだが」
「あら、貴方はあのEGOの切り替えを起こさせるぐらいまで行ってるじゃない」
「それで消し飛ばされて相手が無傷なら元も子もないがな」
残った修が訓練室から帰ってきたタイミングで早速反省会に入ろうとする隊長2人だったが、流石に事情を知らない他のメンバーからのストップが入る。
「おいおーい、ちゃんとそいつのこと説明してくんねーの?俺は別にいいけど奈良坂と黒江の視線がヤベーんだよ」
「「………」」
「とりあえず自己紹介からかしら」
「初めまして……ではない方もいらっしゃいますが、今季からボーダーに入隊した三雲修と申します。今回は対黒トリガー訓練の相手として招集された為参りました。恐らくこれからも度々相手となると思いますがその際はよろしくお願いします、先輩方」
そう言って頭を頭を下げる姿には先程までの鋭い刃のような気迫は無い。礼儀正しく丁寧な様子に呆気に取られたのか無言の間が続き、それを不思議に思った修が顔を上げる。
「聞きたい事があるのなら受け付けますが…」
「いやすまん、ここまで滅茶苦茶に礼儀正しいとは思わなかった。つーかなんかさっきと口調違くね?」
「あれはEGOと融合して素が表出した結果です。気に障ったのなら申し訳ございません」
「別に俺は気にしてねぇよ、楽しかったし。それよかそのイージーオー?とかいうやつが何なのかすらわかんねぇから説明してくれ」
「確かに、そこからですね……」
〜説明中〜
「ほへー、マジモンのファンタジーじゃん、おもしろ!」
「えぇ………なんでそんなに受け入れるの早いんですか米屋先輩」
「そうかぁ?一般人からしてみればトリオンだって十分ファンタジーだと思うぜ。しかもこいつのは俗に言うバケモンを素材にした武器!ゲームみたいでおもしろそうだろ?」
「興味を引かれるのは間違いないが………お前みたいに心を踊らせる者は少ないと思うぞ」
「ちなみに太刀川くんは満面の笑みで再戦申し込んでたわよ」
「でしょうね、慶ならやりかねないわ」
脳裏に浮かぶのは生粋の戦闘狂の姿。特に関わりの深い攻撃手の米屋は太刀川の幼馴染である女性……月見蓮の言葉にウンウンと頷いている。
「それにしても、本当になんでもありなのね。まさかファラリスの雄牛まで出てくるなんて思わなかったわ」
「ファラリス?」
「西洋の処刑道具よ。中が空洞になっている金属製の牛の置物で、その中に人を入れて下から焼いて処刑してたらしいわ」
「ちなみにアブノーマリティとしては赤熱している真鍮製の牛が動いているような姿をした存在です。口から出てくる全身が焼け爛れて呻いている人間とワンセットです」
「それは、なんとも恐ろしい話ですね……」
「アブノーマリティは基本的にこういった物ですよ。他のアブノーマリティと関われば首を絞め殺そうとしてくる存在も居ますから」
さも当然のように語ってはいるが内容としては異常そのものであり、話を聞いた後もそれぞれの反応は分かれていた。しかしその力を体験した故か理解は及ばずとも納得はしているようだった。
「あの……」
「何かしら?」
「さっき『ヒントは出してた』って言われたんですけど、何なんですか?」
「背中から突き出した蜘蛛の脚の事だと思う。さっきの話が本当ならあの小さな蜘蛛の親玉そのものだったわけだから、彼自身も蜘蛛の特徴を有していても違和感は無い。まぁ異常と括ってしまえばそれでおしまい、思考停止は駄目だって事だね」
「あら、真衣に全部言われちゃった」
「成る、程……」
「まぁ取り敢えず反省会はまた後でしましょう。ほら、これ見て」
「なんでs」
スッ(犬モチーフの付け耳&手袋装備で仏頂面の二宮)
「ン"ッ」
「え、何のしゃしnブフォッ」
「んはははははははははwww」
「…………」プルプル
不意打ちで晒された写真に映る堅物で有名な人物のコスプレもどきの姿に部屋の部屋に居た面々の半分が吹き出したり笑いを堪えようとし始める。反応していないように見えるのは奈良坂と喜多川位である。
「……その写真どうした?」
「何年前かにそこにいる狩人くんに攻撃を仕掛けた二宮くんが反撃でEGOの……「ギフトと武器です」その2つを強制的に装備させた結果こうなったのよ」
「何がどうなってこういう結果に至ったんだ……」
かつて同じ隊長の下で研鑽を積んでいた先輩が中々に愉快なことになっていた事実に三輪は諦めたかのように頭を抱えて溜息を吐く。
「当時はボーダーと特に関係があるわけではなかったですし下手に反撃すると面倒なことになるのは明白だったので……」
「ので?」
「カワイイ!!を装備させてほんの少し能力を発揮させてこちらへの意識を薄れさせようとした結果がこれです」
「ンッフフフフフ」
そしてEGOの名前で笑いが再燃した加古も沈んだのだった。
「………そろそろ空閑と合流したいんですが退室しても良いですか?」
「……はぁ、コイツらは放置しても構わんだろうが……まあいい、ついてこい。奈良坂、後は頼んだ」
「分かった」
「落としたぞ」
「おぉ、これはどうも、ってどこ行ってたんだオサム。合同訓練終わっちゃったぞ」
合同訓練が終わり、休憩用のブースの端で自販機を前にもだもだしていた遊真が落とした硬貨を修が拾い上げた。
「狩人としての仕事が急遽入ってな、今からランク戦の所に行くつもりだ………そういえば訓練の結果はどうだった?恐らく順位があったと思うが」
「全部一位取ってきたぞ。オサムが居なかったから余裕だった。ランク戦もときえだ先輩に教えてもらってやったけど、大して苦戦しなかったな」
「流石だな。普段の訓練相手が小南先輩であれば当然と言えば当然か」
和気藹々と言葉を交わす中、それを遮るように少々不機嫌になった三輪が声をかける。
「話は終わったな?そこを真っ直ぐ行けばランク戦のブースだ。使い方は案内役に聞け」
「ありがとうございます、三輪さん」
そこまで言い切ってから去ろうとした三輪だったが、視界に入った遊真に足を止める。かつては姉の足を奪った為存在そのものを呪った近界民で、恩人である存在が引き連れた相手。そんな複雑な立場を相手に、思わず顔をしかめた。
「んお、何か用かミワ先輩?」
「………貴様は近界民だったな」
「そうだよ。まぁオヤジの故郷は玄界だけど」
「何故お前はこの世界に来た」
「黒トリガーになったオヤジを元に戻すため。ま、今んとこは無駄足だったけど、オサムがオレの体を正常に戻すのを手伝うって言ぅてくれたから一緒にボーダーに入りマシタ」
「……正常とはどういう意味だ?」
「オレの本来の身体は傭兵の真似事してた時に侵略者っぽいやつにやられたせいで死にかけてて、ずっと黒トリガーを起動してなきゃ死んでるってだけ」
「そう、か」
ある程度事情や黒トリガーの仕組みを聞かされていたのか、その優秀な頭脳で目の前の少年が奪われた側であると察した三輪はかなり複雑そうな表情を浮かべて立ち尽くす。あからさまな敵意が薄れたことに首をかしげる遊真と思考を巡らせる三輪だったが、不意に手を軽く叩き2人の注意を自分に向けた。
「取り敢えず何処かに腰を落ち着けましょうか。目立ってますし、ここでする話でも無いでしょう。三輪さんはどれにしますか?」
「年下に奢らせる趣味は無い」
修を退けて数瞬手をさ迷わせた後にボタンを押し、ポケットから端末を取り出して機械にかざせば自販機からピッという電子音が鳴る。落ちてきた缶コーヒーを取り出し口から拾い上げた三輪はもう一度端末を機械にかざした。
「三輪さん?」
「さっさと2人分決めろ」
「おぉ、アリガトウゴザイマス」
「……すいません、ありがとうございます」
遠慮なく少しジャンプしてココアのボタンを押す遊真と少し申し訳なさそうに躊躇いながら紅茶を押す修。ガタガタと取り出し口に落ちてきた缶とペットボトルをそれぞれ拾い上げて開封した丁度その時、何故か陽太郎を肩車してちてちと歩いている雷神丸を引き連れた米屋がそこに現れた。
「ここに居たのか。あ、俺の分も奢ってくれ秀次~」
「自分で買え」
「がんばっとるかねしょくん」
「おぉ、陽太郎と……どちら様?」
「俺は米屋、そこにいる三輪のチームメイトだ。お前さんの事はこいつと栞の奴から聞いてるぜ。というか噂になってるしな、白色のチビと黒色のメガネがヤベーって」
「何故しおりちゃん?」
「あいつとは従兄弟同士なんでね、だから時々このクソガキ様を預かってるって訳だ。まぁついさっき拾ったんだが」
「へぇ、あんまし仲は悪くないのか」
「とりまるとしおりちゃんは一年前まではほんぶに居たからな」
「今も時々来てるしな。つーか秀次、お前今日会議じゃなかったっけ?」
「それは今から行く………そういえば、お前が来てるってことは他の奴らの笑いも引いたんだろうな?」
「加古さんなら俺が出た後も笑いが止まってなかったな」
「…………別にいいか。それとお前」
三輪は呆れをかなり含んだ溜息を吐きながらのほほんと奢ったジュースを開けて飲む遊真に人差し指を向ける。
「何?」
「例の会議に提示していたあの炊飯器擬きは何処に居る。確かあいつも今日の会議に呼ばれていた筈だ」
「レプリカの事か?」
『すまない、伝えるのを忘れていた。今から分体を生成するので少々待ってくれ』
「成る程。じゃあオサム、先に行っといてくれ」
「あぁ」
ペットボトルの紅茶を手に修はその場を後にする。後ろではコソコソとレプリカの子機を生成する遊真とそれを興味深そうに覗き込む米屋が陽太郎と共にわちゃわちゃしていたが、その集団から離れて一人となった修に対して周囲から視線が向けられる。
「もしかしてあれが噂の……」
「確かにそれっぽい……」
(視線が多いな、少し気配を断つか)
「ねぇ、少し聞きたいんだけどさ」
「?」
いい加減自分に突き刺さる目線や意識を無視しきれなくなったのか自分の存在を薄れさせて意識から外れようとした瞬間、自分よりも年若い少年の声が掛けられる。気配の遮断を中断し足を止めて振り返ればその声の主が立っていた。
「そのエンブレム、玉狛でしょ?玉狛支部の人?」
「そうだが……それがどうかしたか?」
「いや、珍しいなーって思って。あそこ少数精鋭みたいな感じだから」
人懐っこい笑みを浮かべて近づいてきた茶髪の少年……緑川駿は訓練生の制服の肩辺りに目を向けながら話を続ける。
「少し特殊な事情があるんだが、迅さんという人からのスカウトがあったから今季から入ることになった」
「ふーん……まだC級なんだよね?じゃあさじゃあさ、今から俺とランク戦しない?」
少し間が空いてから、今度は若干好戦的な物が混ざった表情を浮かべて首をかしげる。相対する修はその笑みから感じられる物に内心溜め息を吐いた。
(若干目線に含まれる感情が変わったな。これは……恐らく嫉妬か?)
「面倒だな……」
「なんか言った?」
「いや……別に俺は構わないが、正隊員が訓練生と戦うのは規則的に問題は無いのか?」
あまり呆れを表に出さないまま尋ねる。しかし向こうはそう聞かれるとは思っていなかったのか、若干目を丸くしていた。
「あれ、もしかしてオレのこと知ってた?」
「別にお前のことを知っていた訳じゃない。だが訓練生がこの場所に居る時にわざわざトリガーを解除する理由は無いからな。それと訓練生にしては玉狛への詮索が露骨だ、おおよそ何かしらの因縁でもあるんだろう」
「そりゃそっか……ま、ポイントの移動無しならいくらでもやれるんだ。ほら、構わないって言ったんだからさっさと始めようよ」
自分を引っ張って急かす子供にほんの少しばかり前世を思い返す。ざわめく周囲は今の会話を聞いていたのか移動する2人には多くの傍観者が付いてきていた。かつて己を貶めようとした相手の策略によって似た状況に置かれた事もあったが、修の表情に怯えなどは一切見受けられなかった。
(狙いはこれか………まぁいい、茶番に付き合うか)
多くのC級隊員が集まり、たった今人口密度が更に上がったランク戦のブースに入る。
「何本勝負にする?1本?3本?それとも10本?」
「そちらに任せる」
「じゃあ10本ね」
「成る程、傭兵か……一回戦ってみねぇか?ポイント移動なしなら訓練生ともやれるしよ」
「ほほぅ、それは面白そうですな」
「んじゃ早速あいつも交えて……お?誰かやってんな」
「おー!修の名前があるぞー!相手は誰だー!?」
「相手は……緑川か。あいつも目ぇ付けんの早いな~」
「へぇ、オサムに喧嘩吹っ掛けたのか……大丈夫かあいつ」
「何がだ?」
「いや、事前情報もなくて心をへし折られなきゃいいんだけどって話」
「………そこまでエグいやり方すんのあいつ?」
侵攻編終わったら別の世界に生まれ変わったifでも書きましょうかね。多分そのうちアンケートを取ると思います。
あとオリジナルの小説の執筆も始めようと思っております。新生活の事情含めて投稿頻度は落ちると思いますが、どうか