持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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遅くなって申し訳ございません。肉体労働をやってると帰って来ても書く気力が無いのでちまちまとやって手遅くなり申した。そろそろ大規模侵攻編に行きます。




それでは、どうぞ。


第32話

「よ、メガネくん。もう正隊員になったみたいだな」

「お疲れ様です迅さん…えぇまぁ、かなりの御膳立てがされていたので」

 

軽く挨拶を交わし、騒々しさが戻り始めたランク戦ブースを見渡す。自分の手の甲に表示された数字をちらりと見て、溜息を吐いた修に迅は苦笑いを浮かべていた。

 

「俺も聞いたよ、初期ポイント3750だっけ?まぁ素の身体能力でボーダーのトップチームを尽く下したとなれば妥当だと思うけどね」

「……それで、何か御用ですか?ここに姿を現したとなれば自分と空閑を呼びに来た、という辺りでしょうが」

「お、当ったり〜、察しが早くて助かるよ。ほら、陽太郎も起きてくれ」

「ふがっ……む?もうあさか?」

 

雷神丸に乗ったまま夢を見ていた陽太郎が顔を上げ、眠気を覚ますように首をブルブルと振る。

 

「ぁあ"〜!負けた〜!」

「ふむ、オサムやこなみ先輩程じゃなかったけど中々危なかったな」

「ねぇもう一回やろ!次は負けないから!」

 

その一方で、修と同じようにバトロワ形式のランク戦を一分足らずで勝ち抜いた遊真に興味を持って誘った形で行われたランク戦が終了し、瞳を闘争心でギラギラさせた緑川が再戦を強請っていた。

 

「よ、元気そうだな遊真、駿」

「おぉ迅さん、オツカレサマデス」

「ッ!迅さんだ〜ッ!」

 

しかしその駄々捏ねも迅からの呼び掛けで即座に終わり、今度は迅の周囲で飛び回るようにはしゃぎ始める。その姿はおおよそ仕事から帰ってきた飼い主にじゃれつく子犬だろうか。

 

「ね、ね!確か迅さんランク戦出来るようになったんでしょ?じゃあやろうよ!」

「あっはっは!元気があって大変よろしい。けどゴメンな、今は用事があってメガネくんと遊真を呼びに来たんだ。また今度やろうか」

「え〜……」

 

やんわりと要求を断られ、落ち込む緑川に思わず苦笑いを浮かべる迅。

 

「そういうわけで二人共、メガネくん達借りてくよ」

「ざーんねん、せっかくなら俺もやりたかったんだけどなぁ」

「そう落ち込むなよ、これからは満足出来る位に戦えるんだからさ。出水に関しては射手の先輩として教えを請うかもしれないし」

 

いきなり名前を呼ばれた出水は一瞬呆けたように固まると、そのまま目を丸くしたままバッと顔を向ける。

 

「え、三雲射手になんの?」

「いえ、どちらかと言えば木崎さんのような万能手を目指す形になるかと。ただ弾トリガー単体での使用については学べることが少なく……」

「あぁそういうこと、確かにボーダーでも弾トリガーメインで使ってる奴はレアだもんな。多分俺と加古さんに二宮さん、あと那須と……水上と蔵内もそうか?まぁ広く見てもそんぐらいか。ちょっと呼びかけてみるか、多分加古さんは二つ返事でOKだろうし」

 

驚いたのも束の間、ブツブツと考え込み始めた出水に面食らった修はおずおずと声を掛ける。内容からして自分の指導の為に大人数を巻き込もうとしていると悟ったのか、その声色には少しの申し訳無さを含んでいた。

 

「あの、別にそこまでしていただなくても…」

「いーんだよ、面白そうだし。やるなら徹底的にやって射手界に新たな風を吹かすんだ」

「へぇ〜、俺も混ざっていいか?」

「的としてなら歓迎するぞ槍バカ」

「お?やるか弾バカ」

「え、何々?俺も混ぜてよ」

「「ややこしくなるから黙っとけ迅さんバカ」」

「なにおう!?」

 

売られた喧嘩は即座に購入され、ワーギャーワーギャーと騒がしくなり始める。

 

「そんじゃ行こうか二人共、途中で千佳ちゃんと……あともう何人か拾って行こうか」

 

 

 

 

 

 

「うへ〜……やっぱ厳しいなこれ、3週連続上位15%とか無理でしょ」

「でも150人の中での89位だよ?一番最初の記録としてはかなり良いんじゃないかな?」

 

その頃、狙撃手の訓練ブースでは先日の入隊式から仲を深めた2人が隣同士となったスペースで合同訓練に励んでいた。

 

「そう言うチカ子は…うぉッ!?31位!?滅茶苦茶上じゃん!」

「ちょっと色々あって狙撃銃の取り扱いには昔から心得があったからね、初めて触った出穂ちゃんからしたらズルなのかな」

「いやいや、普通に暮らしてたら銃触る機会なんてないから。でもチカ子のアドバイスのお陰で命中率上がったのも確かなんだよなぁ……お、ランキング出た」

 

思い通りに行かない事にウンウン悩みながらも表示された結果に目を通す。ずらりと並んだ名前の中から自分の順位を確認した後、最後にボーダーラインとなる点数を確認する為に画面をスワイプした。

 

「この間の指導員の先輩4位じゃん。1位は同率2人でナラサカ先輩とハトハラ先輩……満点!?」

「やっぱりこれぐらい出来ないとA級は厳しいのかな」

「ぐぐぐ……正隊員への道は遠い」

 

入ったばかりの自分との差を見せつけられ、頭を悩ませる。本来なら銃器を使用し始めた辺りにも関わらずそこそこ安定した命中率が出ている時点で割と優秀なのだが、比較対象は昔から想い人を守るために腕を磨き続けている友人であるためイマイチ実感が無いのだろう。

 

「よ、お疲れさん」

「あ、東さん。こんにちは」

「チーッス、どもっす」

 

そんな所に現れたのは多くの隊員を指導し、才能を伸ばした実績のある初代狙撃手だった。

 

「へぇ、ついこの間入隊したばっかりだって言うのにもうここまで出来るのか。これは将来有望だな」

「やー、これでも今まででも一番調子よかったんすけどね〜、半分も行けなかったのは悔しいっすわ」

「はは、2桁の順位に食い込んだだけでも上々だよ。玉狛で少し前から訓練していたと聞いた雨取もそうだが、夏目もこのまま行けば1年以内に上がれるかもな」

「そうっすか〜?」

 

実力ある先人の率直な意見を聞いて若干照れながらも満更でも無さそうに頭の後ろを掻いている少女に千佳もウンウンと頷く。

 

「おーっす東さん、新人指導っすか?」

「こんにちは、東さん」

「当真と鳩原か。まぁそんなところだ、この時期はやる気のある新人がこぞって参加するからな、実力とかを知るには丁度良いだろ?」

「ふーん、まぁ確かに面白そうなのが何人か……」

 

そう言って辺りを見回していた当真の目に千佳の肩……正しくはそこに記されたエンブレムが入る。

 

「お、玉狛。てことは三雲の同期か」

「修くんをご存知なんですか?」

「おぉ、そりゃあもう。なんせ迅さんが連れてきた大型新人だからな、もう一人の空閑って奴と揃って噂になってるぜ。トリオン兵撃破タイムアタックの記録更新者ってな」

「へぇ、そんなことが」

「うかうかしてたらあっという間に二宮隊も抜かれちまうかもな」

「あはは……そこまでなんですか?」

「ハハッ、まぁ確かにそうかもな」

 

少々疑わしげにおずおずと尋ねる弟子に東は否定せずに笑って返す。しかしその心の中ではいずれ来る彼らとの対決に頭を悩ませていた。

 

(下手すれば彼一人で全員蹂躙される可能性がある上にそこに近界の傭兵と本部の壁を一撃で破壊できるスナイパーが加わるわけか……2人にも注意喚起するとして、俺個人でも色々と対策しておかないとな)

「あっ、修くん!」

 

各々がそれぞれ別の考えを巡らせる中、不意に千佳がぱッと顔を輝かせ、トテトテと早足で狙撃手の訓練ブースの出口に向かう。他の面々が釣られてそちらを向けば、丁度その時通路から迅と遊真を連れた修が顔を出す場面が見えた。

 

「千佳、訓練はもう大丈夫なのか?」

「うん!さっき丁度終わった所だよ」

 

入口付近にて駆け寄って来た婚約者を受け止める修。その様子は大変微笑ましいのだが、千佳に置いていかれた正隊員達は何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「……なぁ3人とも。今完全に姿が見えない状態で三雲に駆け寄ってたよな?」

「私の目が狂って無ければそうですね。ここじゃ他の隊員の会話もありますしそこそこ離れた……しかも壁を挟んだ場所の足音を聞いたとは思えません」

「確かアイビスで壁にクレーター作ったんだろ?なら何かしら気配を察知する副作用でも持ってんじゃね」

「あぁ、多分チカ子がメガネ先輩の事が好き過ぎるだけっすよ」

 

とてつもなく自然に行われた異常とも言える行為に3人が考察を始めようとした所でよくわからない説が蚊帳の外になりそうだった夏目からぶち込まれた。

 

「おいおい、何でいきなりそんな方向性になるんだよ」

「いやぁ〜…私チカ子と同じ学年なんすけど、あの2人ウチの学校では一番有名なカップルなんすよ。メガネ先輩の方は知らないっすけどチカ子の方はもうこれでもかって位に惚気振りまいてますし」

「へ、へぇ、そうなんだね」

「しかも婚約してるんですって。本人がメガネ先輩を囲い込んだ形で約束を取り付けたつってました」

「へぇ、あんなちっこいのに肉食ってわけか。人は見かけによらないってのはこういうことかねえ」

「………最近の中学生は進んでるな」

 

まさかの方向からの解釈に当真は面白そうに、鳩原は戸惑ったように、そして東は遠い目をしながらそれぞれ笑う。そんな状況を知ってか知らずか図らずも狙撃手の上位陣に自分の存在を刻み込んだ千佳が戻って来た。

 

「おーい、出穂ちゃーん!」

「んお?どったのチカ子」

「迅さんが出穂ちゃんと東さんに用事があるらしくて、もし時間があったらついてきてくれないかな?」

「へ?私?」

「俺はまだ納得は出来るが……この子もか?」

 

突然の呼び出しとその面子に疑問を呈する2人。そこへ伝言を頼んだ迅が頭の後ろを掻きながら現れると口を開いた。

 

「いやぁゴメン、何人かに事前に見せときたい事があってね。第3会議室の方で待っといて」

「……まぁお前のことだ、無駄なことじゃないんだろ。すまない夏目、時間を取らせる」

「い、いえ!私は別に構わないっす!」

「当真と鳩原もすまないな、少し行ってくるから新人たちの指導を頼んだ」

「んー……ま、ぼちぼちやっときますよ」

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす」

「遅い!何をモタモタやっとる!」

「いやー、どうもどうも。ちょっと色々とやることがあってね」

 

あの後、東や他数名を別室に待機させた迅はそのまま修、遊真、千佳、陽太郎を引き連れて会議室に入る。中には上層部の数名やA級部隊の隊長、そして中央に鎮座する投影機械を操作する宇佐美の姿があった。

 

「またせたなぽんきち」

「って何故関係のない者まで引き連れとるんだお前は!?」

「陽太郎、陽介はどったの?」

「かれはよくやってくれました」

「まぁまぁ落ち着きなよ、強ち無関係って訳じゃないんだからさ」

「……今は時間が惜しい。早く始めてもらおうか」

 

いざこざで少し騒がしくなった部屋も城戸の一言で収まり、それと同時に会議をスタートさせたのは本部の長である忍田だった。

 

「まず初めに我々の調査の結果、近々近界民による大規模な侵攻があるという予想が出た。幸い今のところ目立った被害は無いのだか、それでも先日海に墜落した爆撃型、C級を動員して捜索を行った偵察型という明確な変化も見られる。平たく言ってしまえば、近界民としての意見が聞きたい」

「ふむ、近界民としての意見」

「君の父親である空閑有吾と共に傭兵として様々な国を渡り歩いたと聞いている、その知識を分けてほしい」

「成る程」

「近界にいくつもの国があるのは分かっとる、なんなら遠征も行った。だがまだデータが足らん!知りたいのは攻めてくるのがどの国でどんな攻撃をしてくるか、ということだ!」

 

険しい顔でそう言い放った技術者はジロリと遊真の方を見やる。

 

「この間、貴様の入隊と引き換えに提出すると言っておったデータはどうなっとる」

『そちらに関しては問題ない、すでにアップロードは終えている』

 

宇佐美と共にプロジェクターの操作をしていたレプリカがフヨフヨと位置を変えた。

 

『まずは前提の話をしよう。近界の国は玄界のように国境で区切られている訳ではなく、一つ一つが様々な軌道を描き夜の闇の中を動いている。ユーゴはその在り方から近界の国々を惑星国家と呼んでいた』

「惑星……ということはその中心となる恒星に該当する存在があるのか?」

『もちろんだ。恒星はこの空中に投影された図で中心で光り輝く部分、それがこの世界……玄界だ。中心にある玄界に軌道通りに動く惑星国家がかすめた時に向こう側から、もしくはこちら側からアプローチを仕掛け、移動もしくはトリオン兵などを送り込むことが出来る』

 

そこで一度言葉を切ったレプリカは空中に図解を投影し、説明を再開した。

 

『即ち、「何処の国が攻めてくるのか」という問の答えは「現在こちらの世界に接近している国のどれか」だ』

「そこまでは分かっとる!知りたいのは「それがどの国か」!そしてその「戦力と戦術」だ!」

『その説明をするにはこの配置図では不十分だ。私の提供したデータを追加しよう』

「宇佐美頼んだ」

「あいあいさー!」

 

宇佐美がチョチョイと端末を操作すれば、投影されていた世界がその姿を拡げた。

 

『これが、ユーゴが目と耳と足で調べ上げた惑星国家の軌道配置図だ』

 

堂々と映されたのは広い会議場の天井を埋め尽くさんとする位に情報が詰め込まれた宙。その壮大さにその部屋の中に居た面々が圧倒、もしくは感嘆している間にも情報提供者であるレプリカは淡々と話を進め始める。

 

『この配置図によればこちらの世界に接近している惑星国家は4つ、

広大で豊かな海を持つ水の世界 海洋国家リーベリー

特殊なトリオン兵に騎乗して戦う 騎兵国家レオフォリオ

厳しい気候と地形が敵を阻む 雪原の大国キオン

そして、近界最大級の軍事国家 神の国アフトクラトル』

「……そのうちのどれか、もしくはいくつかが大規模侵攻に絡んでくると?」

『断言は出来ない、未知の国が攻めてくる可能性もある。また、惑星国家のように決まった軌道を持たず国ごと自由に飛び回る彗星国家も存在する』

「成る程…細かい可能性を考えていたらきりが無いな……」

「話を戻しましょう、まずはその4国に絞った話を」

 

無限の可能性がある危機に頭を悩ませ、それぞれが会議の内容を纏めながら情報の精査をする。対処を間違えば多くの命が危険に晒されるとなれば、手を抜くことは出来ない。

 

「ふむ、イルガーを使ってくるとなったらおそらくキオンかアフトクラトルだな。コストの関係で使う国はあんまりないし。というかそういうのって迅さんの副作用で予知できないの?「何処の国が攻めてくる」とか」

「会ったこともない奴の未来は見れないんだよ。分かるのは「何かが攻めてくる」って事だけでそいつ等が何者なのかまではわからない」

「ふむ、成る程」

 

納得の声をよそにレプリカに声をかけたのは考えを纏めた城戸だった。

 

「では今はひとまずその2国を攻めてくる相手として仮定し話を進める。次に必要なのは相手の戦力と戦術、特に重要なのは敵が黒トリガーを所有しているかどうかだ」

『我々がその2国に滞在したのは7年以上前なので現在の状況とは異なるかもしれないが、当時キオンには6本、アフトクラトルには13本の黒トリガーが存在した』

「「「………!」」」

「……近界最大級の軍事国家という表現は伊達では無いと言う訳か」

『しかし、黒トリガーというのはどの国でも希少な物なため、通常は国の防衛に使用される。遠征に複数投入されるとは考えづらい。多くても一人だろう』

「あー、その事についてなんだけど……」

 

レプリカの説明を遮るように若干顔を顰めた迅が手を挙げる。

 

「俺が予知できた未来ではさ、三門市が丸々滅ぶ可能性もあるから絶対に黒トリガー持ちの奴が複数人来るはず。もしくはそれに準ずる、それ以上の何かってとこかな」

『……確かに、こちらへの侵攻を重視していた場合、複数の黒トリガーを用いての殲滅の可能性も僅かながらに存在している。遠征艇で運べる人数も考えれば少数精鋭と大量のトリオン兵といった所だろうか』

「恐らくね。見えた惨状からして多分あの爆撃型も引き連れてくるだろうから本部の強化も必要かな」

「それに関しては急ピッチでやっとる。雨取隊員の砲撃一発で潰れるようじゃ耐久性が足りんからな」

「さっすが、仕事が早くて助かるよ」

 

迅の言葉には皮肉等は一切含まれていなかったが、受け取った側は鼻を鳴らすだけで応える。

 

「いずれにせよ、大量のトリオン兵団が現れるのは確定だ。先日の爆撃型も投入されることを考えればそれを対処できる人員の用意も必要だな」

「イルガーは中途半端に仕留めると自爆モードに入るから、仕留めるなら一撃でコアを破壊するか真っ二つにしないといけないぞ。自爆モードに入れば爆撃に回してたトリオンを外装に回してガッチガチになるし」

「!そうか、そういう情報は有り難い。引き続き情報の補足をお願いする」

「了解了解」

 

承諾の意に会議が締めくくられる雰囲気になった所でパン、と手を打ち鳴らした音が会議室に響く。全員が音がした方向を見れば、迅が手拍子をした後のような格好をしながら突然集まった視線に動じることなく口を開いた。

 

「んじゃ、基本的な情報は出揃ったから、次は俺から話していい?」

「む?何だ、まだ何か隠してる事があるのか?」

「まぁそうっちゃそうだね〜。おーい、入ってきて良いよ〜」

「「「失礼します」」」

「失礼しまーす」

「っす」

「「し、失礼しまっす!」」

 

会議室の扉が開き、先程迅によって連れられた東や夏目、待機していたらしい太刀川、その他様々な隊員が入ってくる。中には修や遊真、千佳からしたら見覚えのない人物もいた。

 

「何故彼らを呼び入れた?」

「ちょいとばかし打ち合わせ……というか顔合わせだね。今の所、ここにいるメンバーは確実に()()()()()()()()()()()から」

「すまない、話が見えて来ないんだが」

 

怪訝な風間の意見に目線で落ち着くように促した迅はそのまま修の方へ向き直った。

 

「それじゃメガネくん、

 

()()()()()()()()()()()()()?」

「「!」」

「………あぁ、成る程そういうことですか。ですが宜しいのですか?まだ明かしていない方々もいらっしゃいますが」

「どの道彼らには隠し通せない。なら早めに事情を話してスムーズに進めたほうが良いでしょ?」

「承知しました」

 

一言で察したのか渋々といった様子で前に歩み出る修。その背中を見送る迅の袖を引っ張ったのはこれから来る存在に度肝を抜かれた一人である宇佐美だった。

 

「良いの迅さん?」

「おいおい、一体何を見せられるんだよ俺等」

「そう遠くない未来にお世話になる子達だよ。とっっってもユニークな見た目してるし、戦場で初対面だったら絶対動揺するだろうから。慣れは大事だよ?んじゃお願い狩人くん」

「……ん?」

「狩人?」

「……本当に大丈夫なんですよね?」

「見えてる未来に後遺症が残る物は無いよ」

 

事情を飲み込みきれていない面々を他所に、疑わしげに迅を見て頷きを返された修は一つ息を吐いて手を前に出す。

 

「幻想模倣 ■■(???????)

 

紡がれた言葉の半分は世界から修正が入ったかのように掻き消され、周囲の人間の耳に入る前に無意味な音の集合体へと成り果てた。

 

「少し来てくれ、終末はまだ遠いがな」

 

しかし、それでも彼らがここにポイントを定めるには十分だったようで、この世界に居場所等は無かった筈の者達は拠り所となった友の呼び掛けに応じる。それに伴って近未来的な内装の室内には似つかわしく無い扉が彼らの友の背後に現れた。

 

「………」パタパタ

「………」シャラン

「………」ドシドシ

 

罰する為に腹を裂いた小鳥は宙を漂い、罪を裁き続けた鳥はかつては不ぞろいだった天秤を首にかけ、幾多の視線でもって監視役を果たした鳥は自らの羽を燃料としたランプを手に提げて沢山の目を開いた。根本からズレてしまった守護者達は各々がその存在を主張し、己を世界に刻みつける。

 

「 」

 

いつも相手しているトリオン兵よりも明らかに生物的であり、それでいて非現実的な存在を認知した事でその場に居た面々から一部を除いて正気度が削れる音がした。ある者は目を見開いて固まり、はたまたある者は額から汗を滲ませながら後退る。初見の者達の反応は比率は様々だが一様に驚愕と恐怖に染まっていた。

 

「彼らは俺の仲間です。少々変わった見た目をしていますがどうぞ、よしなに」

 

そんな中でも、一切の動揺もなく傍に立つ狩人はそっと手で仲間の羽を梳かしながらそう告げたのだった。




それでは皆様、この世ならざる生物の召喚を目視した為、SAN値チェック1d3/1d6でございます。

ぶっちゃけこの3羽よりも「黄昏」を直接見たほうが正気度削れます。普通に取り出そうとすると世界からの修正力で掻き消されそうになる代物ですが、修が「むんッ」ってやるだけで簡単に無視できますし。





あともしこの主人公が別の世界に生まれ変わったor飛ばされたifも書き始めてます。そのうち投稿するので暫くお待ち下さい。今のところはダンまち、ブルアカ、Fate、原神等を予定してます。原作キャラに転生するか前世の姿のまま飛ばされるのかはそれぞれですが、多分短編集みたいになると思います。
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