筆の進む速さは相変わらず遅いのでご了承の程を宜しくお願いします。
それでは、どうぞ
第33話
「はぁ……人に囲まれるのは慣れんな」
「クラスメートからものすんごい勢いで問い詰められてたもんな。まぁこの学校にはボーダーの正隊員は今の所オサムしかいないから仕方無いだろ」
「ボーダーというだけであそこまで露骨に態度を変えるのはいかがなものかと思うがな。あのボーダーオタクは相変わらずだったが」
「ミスミだったか。なんか一番熱量がすごかったな」
昼休みに入った学生達がざわめきながら昼食を取ろうと移動したり自由に行動していた頃、修達もまた屋上で弁当をつつき出していた。
「いやぁ、それにしてもあの会議はアビキョーカンでしたな。何人か武器持ち出してきた時は焦った焦った」
「半分程度まで掛かっている枷を外した状態で呼び出した俺が悪いんだが……慣れてもらうにはこの位しなくちゃならなかったからな。コラテラルダメージというやつだ」
「それでシンパンドリ達をいきなり見せられた方はたまったもんじゃないけどな」
〜〜〜〜〜
「「「「トリガー、
「シッ」バババババギンッ
「おー、武器が全部へし折れた」
「うーん……さも当然のように素手でへし折ってるのも見慣れたなぁ」
「………迅、そのおぞましい怪物は何だ?」
「あ〜……今回の侵攻でボーダーのサポートに回ってくれる予定の狩人くんの仲間だよ城戸司令。予測で遭遇するのが確定してる人員に予め顔合わせしときたかったんだけど……何かいつも以上にオーラがヤバい状態で出てきた。ナニコレ、俺も知らないんだけど」
〜〜〜〜〜
即座にトリガーを起動して武器を構えられた瞬間を思い返しても、まぁ仕方ないという感想が出てくる程に異質な雰囲気を纏った3羽は既に何度も会ったことのある遊真の記憶にも残っていた。
『一つ疑問がある。私が記録した彼ら3羽の姿とあの時会議室に現れた3羽の外見に殆ど違いは無かったのだが、観測結果に異常が生じていた。これには何か理由があるのか?』
「ある、というかそれが本来あるべき反応だ。何時もはこの世界自体に抑制されているから多少誤魔化せているが、そもそも存在してはならない、世界の異物とも言えるのがアブノーマリティだ。あれは次元の乖離から起こる認識の遅延、理解が困難かつバグが起きる事で相手の正気を削ってしまう。その異質さが上がる程にな」
「…………?」
レプリカからの質問に淀みなく答える修。しかしその内容は要所要所に小難しい単語が交ぜられており、それを聞かされた側は口にプチトマトを運んだ箸を咥えたまま首を傾げる。
「あー…要は普段は存在を縮小させられてるが俺の匙加減で枷を取っ払えばあいつ等は見るだけで正気度を削る化け物に戻る」
「ほほう、戻るとな?」
「ああ、進化するんじゃない、
「罰鳥くんは兎も角、審判鳥くんと大鳥くんの力は凄いもんね」
アブノーマリティ談義をしていた2人の元へ千佳が会話に交ざって来る。後ろには若干だが怯えた様子が伺える夏目がおずおずとついてきていた。
「お待たせ、修くん、遊真くん」
「ど、どもっす………」
「どもども」
「今朝ぶりだな千佳。それと夏目、この間はいきなり済まなかった」
「い、いえ……」
あの鳥達への恐怖が未だに忘れられないのかしどろもどろになる夏目に対し、修は一つの弁当を差し出す。
「えっと……?」
「お前の分も用意してくれと千佳に頼まれてな。迷惑だったら下げるが……」
「い、いえ!いただくっす!」
少女が少しばかりビビり散らかしながらも弁当箱を受け取り、恋人の隣に陣取った友人の更に隣のスペースに座り込む。
恐る恐る蓋を開けてみるが中身は非常に彩りのよい美味しそうな弁当である。少しばかり驚いた様子で早速一口食べた瞬間、目を見開いた。
「うわうっま!?店出せんでしょこれ……!」
「流石はオサムですな、今日も飯が美味い」
「気に入ったのなら何よりだ」
思わずと言った様子で出た感想とそれに同意する声に修は少し気恥ずかしそうにしながら自分の分の弁当を食べ進める。
そんなこんなで和やかな雰囲気の中、腹を満たす行為は直ぐに終わった。
「ごちっす!いやぁ〜弁当ってあそこまで美味く作れるもんなんすね」
「数少ない趣味が料理なものでな、色々と凝り続けたらいつの間にかこうなっていた」
「ほへ〜、流石はチカ子の旦那様。家事まで完璧って事っすか」
「もう、出穂ちゃんってば……もっと言っても良いんだよ?」
自分の恋人が褒められて嬉しいのか、頬をほんのり赤く染めながらも更なる言葉を求める千佳に何とも言えない表情を浮かべる修。
そんな自分をニヤニヤと小突く遊真を他所に、満足そうにしながらお茶を飲む夏目に対し不意に問いかけた。
「……あぁ、そういえば一つ聞きたいことがある」
「あ、はい、なんすか?」
「何故夏目は狙撃手を選んだんだ?予測でしかないが何かしらの武術を修めてるだろう、それもかなりの練度だ」
「えっ、わかるんすか!?」
「前々から思っていたが歩き方が常人よりも隙がなかったからな」
「それは俺も思ってたな」
2人に問われた本人は少々気恥ずかしそうにしながら答える。
「いやあ、まぁ確かに空手の段位持ってますけど……なんかこう、狙撃手ってカッコイイじゃないっすか。ゴルゴ13とか」
「……まぁ俺がとやかく言うつもりはないが、選択肢の一つとして近接武器の装備も考えておくといいかもしれんな」
「私もB級に上がったら近接武器トリガーを入れるつもりだし、一緒に頑張ろ?」
「ふむむ、成る程……え待って、チカ子近接戦闘すんの?」
「うん、今はアイビスの特訓がメインだけどダストの練習もしてるよ」
「結構やるぞチカは。多分C級のランク戦に交ざったら直ぐに上がれると思う」
「ほへー……」
小さな友人はトリオン量が膨大で狙撃技術も自身が教わるレベルである事は分かっていたが、その体躯からして近接戦闘を行っている様子がどうも想像出来なかった。
「んー……ダストってなんすか?」
「最近開発されたばかりらしい打撃特化型のトリガーだ。重量がそれなりにある上消費するトリオンも少し多いが破壊に特化していてな、孤月と数回打ち合えば孤月の方が砕け散る」
「取り回しが不便だけど、油断してる相手を仕留めるならこれが一番だと思うの」
「チカ子って見た目に騙されそうになるけど結構な脳筋だったりする?」
「………修くんに近寄る不埒な虫はね、早々に潰すに限るんだよね」
「ヒェッ」
フフフフフフ、と黒いオーラを纏いながら笑う千佳は何とも言えない威圧感があった。それに顔を引きつらせながらも夏目は思い出したかのように修にある事を尋ねる。
「そういや聞きそびれたんすけど………三雲先輩ってマジであの都市伝説の狩人なんすか?」
「そうだが」
「めっちゃあっさり認めた!?」
「お前には既に隠す必要も無いだろう。本来の姿を見てる訳だからな」
そう言いながら周囲にこちらを見る人物が居ない事を確認すると、自分の姿を偽る能力の起点となっていた眼鏡を外した。
「………」
「たとえ短く切っても翌日には元の長さに戻るから一々髪を切るのが億劫でな、こうして特殊な方法で誤魔化して……大丈夫か?」
「ッは!だ、だだ、大丈夫っす!」
「出穂ちゃん………?」
「ちょっと呆気にとられただけだから!それだけだから!だからそんな目ぇ向けないでチカ子!」
己の素顔を間近で見て固まる後輩に怪訝そうな表情を浮かべて声を掛ける。そこでようやく意識を取り戻した少女は深淵を体現したかのような光のない瞳を向ける友人への弁明に少しばかり時間を費やすのだった。
そんな風に食後の和気藹々(?)としたやり取りをしていた最中、不意に修が動きを止めた後ゆっくりと立ち上がる。
「………3人共、トリガーは持ってるな?」
「んお?」
「へ?」
「修くん、どうしたのいきな………ッ!」
遊真と夏目が呆けたような声を出す中、問いかけようとした千佳も不意に固まり何かを察知したかのように立ち上がって修と同じ方向を向く。
プルルル、と携帯から着信音が鳴ると同時に通話ボタンを押した修の顔は、既にスイッチの入った『狩人』としてのものへ変貌していた。
「迅さん、始まるんですよね?」
『話が早くて助かるよ。それじゃあ世界を救おうか、狩人くん』
「えぇ、承知しました」
電話の向こう側の迅と会話しながら見据える屋上からの景色、ボーダー本部のある警戒区域の上空には数多の門が開かれていた。
同時刻、薄暗い部屋の中に一組の男女が向かい合っていた。その雰囲気は恋仲…と言うよりも主君と忠誠を誓う騎士といった感じである。
「…………」
「オルニス様、体調の方はいかがでしょうか」
「私は大丈夫よ、ヒュース……今からやる事に抵抗が無い、と言えば嘘になってしまうけど」
「………やはり貴女様のお手を汚すわけにはいきません。どうかこの艇で待機を「却下だ」
ヒュースと呼ばれた少年が迷いを含ませながらオルニスと呼ぶ少女に進言しようとした時、新たに一人の人物が会話に加わる。
その声はひどく冷徹であり、その表情も固いものであった。
「ハイレイン隊長……」
「貴様も分かっている筈だ。此度の遠征においての目標、金の雛鳥の確保が何れ程重要かを」
「…………」
「決定した計画に変更は無い。邪魔をする現地住民の抹殺も躊躇するな、わかったな?」
そう言い残しその場を去るハイレインの背中を無言て睨むヒュースを止めたのは他でもないオルニスだった。
「良いの、ヒュース。これもアフトクラトルの存亡の為、私一人が我儘でじっとしてる訳にはいかないもの」
「……承知、しました」
少女は傅く少年に向け少し怯えを抑え込みながらも笑い掛け、少年はそんな様子の主人に苦々しい思いを抱きながら承諾する。
そんな二人の居た部屋から離れたハイレインが廊下を歩いていれば会議室のような空間に入る。
「良いのですか、ハイレイン隊長。例の黒トリガーに適正があったためとはいえ彼女は従軍経験の無い者、貴族としての教育はされているとしても戦闘に耐えられるとは到底思えませんが」
「構わん、その時が来れば否応無しに使用する事になるだろう。第一、あの者の役目は戦闘ではない」
「態々本国から引っ張り出してきた支援特化の黒トリガーだもんなぁ!精々役に立って貰おうじゃねぇかよ」
「口を慎め、エネドラ」
そこに居たのは一様に同じようなデザインのトリオン体に換装した面々。例外は居るもののその大半の者の頭からは特徴的な角が直接生えていた。
「あの忌々しい怪物共に削られた国力を取り戻す為にもここで躓くわけにはいかん。総員、全てを蹂躙する気概でやれ」
「……………」
『不安かい?』
『……いや、迷いはない。俺は主を守り、そして主が帰る場所を残す。その為なら俺はいくらでも手を汚そう』
『そっか、それが君の選んだ道だって言うのなら、僕はそれを見届けるよ』
『あぁ……いざと言う時は力を使わせてもらうぞ
■■■』
投稿が停止していた間に執筆していた小説もよろしくお願いします。
『司書補J、シャンフロにて奔走する』
https://syosetu.org/novel/349345/
シャングリラ・フロンティア×プロムン作品です
オルニス
アフトクラトルを統治する4大領主の一つであるベルティストン家直属のエリン家の次期当主候補の少女。
引き取られたヒュースの姉として振る舞っている。
アフトクラトルの保有する守護に特化した黒トリガーの適合者で、有力な神候補の一人。
■■■
ヒュースが幼少の頃から隣にいる、ヒュース以外には認識出来ない幽霊的な何か。
元々は普通の人間だったらしいが色々な実験とその後にあった出来事でこうなったらしい。