持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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侵攻編を終えたら修の過去についてもやるつもりです。
一先ず言えることは、家族と呼べる存在は誰一人として居ませんでした。




それでは、どうぞ


第34話

生徒や教師の携帯、学校の放送設備から近界民の出現を知らせる警報が流れ出し、それを聞いた者達にパニックが伝染し始めた頃、修達は屋上から駆け下りて廊下の生徒を掻き分けながら情報の伝達の為に奔走していた。

 

「すいません先生、避難先はボーダー本部から離れるように誘導を。他の先生方への情報共有もお願いします。自分達は現場に向かいますので」

「…!わかったわ、直ぐに取り掛かる!」

 

途中自身の担任を見掛けて端的に指示を出し、承諾を得られた事で次に行こうとした所に同級生達に声を掛けられる。

 

「三雲くん!」

「な、何が起きてるんだ?」

「大規模な侵略行為だ、予期出来るような事があったから無論ボーダーも対策している。お前たちは出来る限り避難しろ、余裕があれば周囲への呼び掛けも頼む」

「お、おう!」

「気を付けてね……!」

 

動揺する同級生達を落ち着かせながら冷静に指示を出す修。

その姿に幾らか気持ちを落ち着かせられたのか、同級生達はその場を後にする修と遊真の背中を見送り自分達も行動を開始するのだった。

 

 

 

その後、他学年や放送担当者にも情報の伝達を終えた4人は校門前に集まり、今後の行動を話し合う。

 

「千佳、夏目、2人は換装して避難誘導の補助を頼む。訓練生とはいえ隊員だからな、素直に指示を聞く奴も増える筈だ」

「りょーかいっす!」

「うん、分かったよ」

「それといつでもトリガーを使えるようにしておけ。何かあれば即座に相手を仕留めろ、何もさせるな。狙撃の精度が不安なら相手の懐に潜り込んで銃口を胴体か弱点らしき場所にねじ込め」

「一応連絡用のちびレプリカ渡しとくな」

 

ポイ、と放り投げられたワイヤレスイヤホン並の大きさになったレプリカの子機を千佳が難無くキャッチするのを横目に再び携帯電話で迅と連絡を取っていた修は通話状態をそのままに遊真の方に向き直る。

 

「空閑、行くぞ。迅さん曰く互いにまだ本気は見せるなとのことらしい、どうやら向こう側もこちらの戦力を測りたいようだ」

「おうよ、それじゃあ黒トリガーは止めとくか」

「現場までは俺が運ぶ、掴まれ」

「ういうい、そっちの方が速いもんな」

 

そう言いながらトリガーを起動した修はそのまま遊真を小脇に抱え、人類の範疇を超えた速度で走り出した。

明らかにトリオン体だとしても出していい速さではないその姿を見送る出穂はポカンと呆けた顔を晒していた。

 

「ほぇ〜……スッゲぇなぁメガネ先輩。つーかトリオン体になったとしてもあんな動けるもんなの?」

「それについては後で説明するから待ってて。それよりも、早く私達も仕事しなくちゃね?」

「っと!そーだったそーだった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵の戦力は!」

「現在確認出来たのはトリオン兵のみ!それぞれ集団に分かれて市街地方面へと進行中です!」

「総数は…ッ!約700体!本部基地から見て西・北西・東・南・南西方向の5方向です!」

「バムスター、モールモッド、バンダー、バド、ラッドの存在を確認、ラッドには先日掃討した個体のようなゲート機能が付けられている可能性があるかと!」

(厄介だな、こちらの戦力の分散が目的か。だが各個撃破では間に合わないな、追うしかない)

 

突然の大規模な侵略行為。

司令室に集まった人員達は敵勢力の把握の為に尽力し、事態の収束を図ろうとしていた。

 

「現場の部隊を3手に分けてそれぞれ東・南・南西の敵に当たらせろ!」

「了解!」

「ちょ、ちょっと待って下さい本部長!西と北西はどうなるんです!?」

「心配は要らない」

 

根付からの心配の声に忍田は確信を持って返す。

 

「そちらには既に迅と天羽が向かっている。そちらはその2人に任せれば問題無い」

「おぉ……!いやはや、こういう時は頼もしいねぇ…!」

「問題は他3方向の侵攻速度だが……鬼怒田開発室長」

「わかっとる、冬島と組んで対策済みだわい」

 

その時、大部屋の画面の一部に変化が起こると同時にアラームが鳴る。

そこに映っていたトリオン兵を表すアイコンはバツ印へと変わっていた。

 

「罠起動!トリオン兵を捉えました!」

 

 

 

 

 

 

「ほほう、これまた凄いですな。玄界の防衛設備はこんな感じなのか」

「警戒区域から人が退去している事を存分に生かしているな……と」

 

トップスピードのまま警戒区域に入り、ボーダー本部方面へと走り続けていた修達が目にしたのは町中に仕掛けられたトリオン製の固定兵器によって敵トリオン兵を迎撃している光景だった。

侵入した端から下から出てくる刃で刺し貫かれ、

 

「シッ」

 

流れるようにレイガストのブレードを形成するとそのままボーダーの兵器が討ち漏らしてこちらへ突っ込んできたバムスターを縦に両断する。

返す刀で宙に浮くトリオン兵2体も斬り刻んで墜とし、残った兵器達もこちらに意識を向けた瞬間にスコーピオンを出した遊真が中枢部分を片っ端から破壊していく。

 

「…一体一体は取るに足りないが些か数が多いな」

「よっと、ふむ、確かに」

 

たった数分程度だか2人で仕留めたトリオン兵は既に30を超えていた。

修はほぼレイガストのみ、遊真に至っては訓練生用のトリガーにセットしたスコーピオンだけで相手取り無傷なあたり高い実力が伺えるがそれでも敵の軍勢は絶え間なく流れ続けていた。

 

「この量、恐らくこの間の小さいトリオン兵も居るのか?」

『その可能性は高い。現に周囲から先日発見した改造されたラッドの反応が検出された』

「おぉう、それはまた面倒な作業が始まりそうですな」

「……やはり虫はさっさと潰すに限る。際限なく湧き出てくるなら元を絶たなくては」

 

もたらされた確実な情報に若干怠さを覚えながらも武器を構え直して次の獲物と定めた存在を狩りに行くために足を向ける……その時だった。

 

「……」

「オサム、どうかしたか?」

「空閑、黒トリガーを準備しておけ」

 

ふと足を止めた修が振り向き、山になったトリオン兵の残骸の方を見やる。ただの無機物の塊となり沈黙していた筈のトリオン兵が不意にグラリと揺れた。

 

 

 

 

 

「トリオン兵の撃破数が増加し始めました。どうやら玄界の兵士による反撃が始まったようです」

「様子を見計らってラービットを投入しろ」

 

 

 

 

 

「…………」

 

倒れ伏したバムスターの残骸、その崩れた巨体の腹部から現れたのは兎を象ったような二足歩行のトリオン兵だった。

 

「気色悪い兎だな……アブノーマリティよりかはまだマトモか?あの自称ウサギのアヒルよりかウサギらしいが」

「それって結局ウサギなのか?それともアヒルなのか?」

「多分機械仕掛けのクリオネ擬きだまぁその事はまた今度だ。気をつけろ、どうやら向こうの主力兵器らしい」

 

軽口を叩きながら武器を構えればコチラを認識した二足歩行のトリオン兵は自身を包んでいた残骸や地面にヒビを入れ吹き飛ばしながら移動、修の前に瞬時に現れたかと思えばそのまま裏拳をかますような動作でそのトリオン兵特有ののっぺりとしたデザインの腕を振るう。

 

「シールドモード」

 

それは確かに直撃したものの、それ以上腕を振り抜く事は敵わない。トリオン兵のセンサーが捉えたのは先程まで剣を持っていた手にシールドを構え、地面のアスファルトを踏み砕いて打撃を真正面から受け止めた兵士の姿だった。

 

「中々のパワーだがまだ余裕はあるな。空閑、口の中に核らしき物が見えた、狙え」

「りょーかい」

 

修が分析の為に攻撃を避けることなく受け止めた腕を足場に駆け上って頭部のコア目掛けて刃を振るう遊真。

しかながら対策はされていたようで露出していたコア部分は刃が届く前に口を閉じるかのように仕舞われてしまい、回転と共に放たれた一撃は表面に傷を作るだけに留まってしまった。

 

「おぉ、硬い。モールモッドの脚より少し柔らかいぐらいか?」

「    !」

「よっと」

 

標的を自分に変えたトリオン兵の攻撃を器用に空中で逸らしつつ着地する遊真。

その一撃の速さは他のトリオン兵と比べるまでもなく強力な物だが普段から巨大な得物を高速で振り回す相手と訓練している身としてはあまり脅威には映らないようで、「どう攻略したものか」と考えながらも己を捕まえようとする攻撃をいなし続ける。

 

「オサムー、コイツどうする?」

「こうする」

 

そう簡潔に問いかけに答えながら地面を蹴る修。

何かしらのセンサーによって察知したのか直ぐ様グリンと振り返ると共に殴り飛ばそうとしてくるトリオン兵だったが、既にカメラの範囲内に修の姿は無かった。

 

ザンッ

 

「おー、お見事」

「……反応速度、純粋なパワー、耐久力、どれも並のトリオン兵を遥かに超える物だが、まぁ精々抑制された状態のHEクラスに届きうるくらいか………"夕暮"に比べればまだまだだな」

「ユウグレ?」

「時間帯の事だ、太陽が沈んで空が暗くなり始めた位だな。今のは()の話だから気にしなくていい」

「ほほう、また今度聞かせてイタダキマス……んで次どこ行く?このまま本部か?」

「………いや、どうやら向こう側がこちらを捕捉したらしい」

 

先程スコーピオンの一撃を弾き返した頭部装甲を桁外れた技量で斬り裂き核を壊したことで物言わぬ骸になったラービットを機能の確認の為に解体しながらも、周囲で動き出す気配を感じ取る。

 

「本部、応答願います」

『こちら本部の沢村です、何か報告があれば手短に』

「城戸司令、若しくは忍田本部長に繋いで下さい。狩人と言えば伝わる筈なので」

『!…えぇ、分かったわ』

 

内部通信を通して指示を仰ぐ。

相手を指定し待つこと数秒、通信の向こう側の相手の声が変わった。

 

『通信を代わった、何かあったのか三雲くん』

「ボーダーの記録に無い新型トリオン兵を討伐、データはレプリカを通してそちらに送ります。追加で他新型トリオン兵の接近を確認、EGO並びに空閑の黒トリガーの使用許可を求めます」

『……!コチラでも新型の反応を検知した!他に何か分かることはあるか?』

「純粋なスペック全てが他のトリオン兵を遥かに超えています。ボーダーの装備で装甲を一手で貫通できる手段は旋空孤月かメテオラ、合成弾位かと思われます。弱点は頭のコアですがその部分が開閉式になっているので隙を突いて頭を撃ち抜くのが一番効果的です」

 

報告しながらも解体の手は止めない。

一応レイガストはシールドモードの頑丈さが売りのトリガーで、攻撃性能は代表的な弧月に全体的に劣るのだがそんなの関係無いと言わんばかりに硬い筈の装甲を斬り裂き開きにしていく。

 

「それともう一つ、空閑が相対した際の動作に相手を捕獲しようとするような動きが多かったように見えました。胸部に空洞と格納された腕がある為相手を捕獲し内部に閉じ込める機能があるものかと思われます」

『!承知した、情報提供感謝する!』

『三雲隊員』

 

情報共有を終えた頃、ボーダーのトップの声が通信越しに聞こえてきた。

 

「城戸司令」

『武装の使用を許可する。周辺一帯のトリオン兵の排除は三雲隊員及び空閑隊員、A級部隊一つに任せる』

「了解しました」

 

その言葉と共に通信を切り、一つ息を吐く。

 

「空閑、使用許可が下りた。暴れるぞ」

「りょーかい、さっさと終わらせるか」

『オサム、トリガーを解除するならば私が通信の役割を果たそう』

「あぁ、助かる」

 

ニュッと分離したミニレプリカを手に取り耳に装着しながら起動していたトリガーを解除し生身になる。

本来であれば戦場でベイルアウトする事なくわざわざ自分からトリガーを解除するなど自殺行為にも等しいのだが、極端な例外というのは存在している物である。

己の内側、魂に付随した人ならざる者達からのギフト(祝福)を呼び起こし、その力を再現した。

 

「 幻想模倣 Green Stem(緑の幹) 」

 




修はトリオン体よりも生身のほうが強いです。
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