持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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この作品の千佳ちゃんは修ガチ勢です。
Limbus Companyの新EGO出ましたね。多分そのうちLimbus Companyの幻想体も出すと思います。ワンダーラボのアブノーマリティ達も出来るなら出したいです




それでは、どうぞ


第3話

特に被害も無かった商店街で買い物を済ませた三人は膨らんだエコバッグを持って帰路に着く。

 

「説明してほしい事がまた増えたな。最早訳がわからないぞ」

「家まで我慢してくれ」

 

日が少しずつ傾き始める中、歩道を歩きながら三人は言葉を交わしていた。遊真はつい昨日会ったばかりであるはずなのに、何故かかなり馴染んでるように見える。

 

「それで、遊真くんの事情って?」

「それも家でッ!?」ゴツンッ!

「うおっ」

 

もうそろそろ家に着くかといった時、突然修の視界が白い羽毛で埋まり、そのまま真正面から飛んできた物体と衝突した。

 

「お、修くん、大丈夫?」

「あぁ………罰鳥、その突っ込んでくる癖どうにかしろ。俺じゃなかったら普通に流血沙汰だぞ……」

 

仰け反ったものの何とか耐えた修は、何事もなかったかのように頭の上に陣取った罰鳥を指で優しくつつきながら文句を口に出す。罰鳥は赤い模様の入った胸を満足げに張っていた。

 

「オサムが飼ってる鳥か?」

「家に住み着いてる内の一匹だ。特に脱走癖がひどくてな、籠に入れてもすぐぶち抜いて何かしらの方法で家から外に出てくる」

「でも修くんには懐いてるよね、よく頭に乗って満足そうに寛いでるもん」

「勝手にどこかに飛んで行って適当な奴を食い殺さないならそれが最善だからな」

「………こいつが人間を食うのか?」

「危害を加えて来たらな。そもそも罰鳥の役目は名前の通り罪を犯した奴に罰を与える事だ。執行者の邪魔をしたら、そいつも罪人になる。昨日絡んできた奴は軒並みアウト判定だろうな」

「うーむ……こんな小さな鳥が人を食い殺すとか想像つかないな。突っつきも人が死ぬような威力は出せないだろ。千佳はどうなんだ?」

「修くんから今説明してくれた事を教えてもらったけど、私にも可愛い小鳥さんにしか見えないなぁ……」

「まぁ、こいつの罪人センサーに引っ掛からなければただ活発な小鳥だからな……ん?」

 

修の頭から飛び立った罰鳥は、そのまま隣を歩く遊真の頭に着地するとふわふわの白い髪の毛を嘴で掻き分け安定して留まれる場所を作り出す。

 

「オレの頭に乗って来たぞ」

「気に入られたみたいだな。時々お前の頭を止まり木にするだろうが気にしないでくれ」

「別に良いぞ、こんぐらい軽かったら何ともない」

「そうか、すまないな」

 

多少頭を動かした程度ではびくともしない罰鳥の羽毛と遊真の髪色が似ている為か、一体化してるように見える。早々に受け入れている遊真とそれを真正面から見ても特に反応せず話している修を見て、千佳は一人クスクスと笑った。そんな一幕もありながら、三人は修の自宅の前まで歩いてきた。

 

「入ってくれ」

「おじゃまします」

「ふむ、オジャマシマス……ほうほう、こんな感じなんですな」

 

自宅の玄関を開けた修は二人を招き入れる。慣れたように上がる千佳とは違い、遊真は物珍しそうに上下左右を見回している。遊真が靴を脱ぎ忘れるという事態もあったが、そのままリビングへと続く扉を開けながら修は中にいた存在へと声をかける。

 

「ただいま、審判鳥、大鳥」

「ほほう、バットリ以外にも何かい…………る?」

 

「…………!」←翼を腕のように使って床の掃除をしている目を隠すように包帯を巻いたダチョウに似た見た目の鳥?

「…………!」←植物に水を与えている黄色く輝く沢山の目を持った巨体で丸い体の鳥?

 

「」

「遊真くんが固まっちゃった」

「初見の千佳も似たような反応してただろう」

「修くんがこういうのに慣れすぎてるだけで、普通なら遊真くんみたいになると思うよ?兄さんだって、初めて見たとき私でも見たことない顔してたもん」

 

リビングにいたのはおおよそ普通の生物とは駆け離れた特徴が目立つ二匹の鳥?だった。修から名前を聞いて罰鳥のような姿を予想していた遊真は背後に宇宙を背負ったように固まり、それを見た千佳は苦笑いしながら自分の初対面の事を思い出す。見た目の不気味さはトリオン兵にも劣らないが、彼らの終着点を知っている者からすれば可愛いと思えるのか、修は今一よく分からないといった様子である。すると、細い方の鳥?………審判鳥と呼ばれた存在が掃除道具を手に持ったまま首を捻る修の服の袖を引っ張った。

 

「……………?」クイックイッ

「ん?あぁ、こっちも俺の客だ。暫くの間ここに住むだろうから仲良くしてやってくれ」

「………………」コクッ

 

審判鳥は言葉を理解しているようで、修の話を聞いてから隣にいた遊真に向かって手を振る。しかし、未だに情報の処理が終わっていないのか反応は鈍い。

 

「………………」

「空閑、戻って来い」ペチッ

「……はっ!」

 

デコピンで意識が戻って来た遊真は暫く考えた後、エコバッグを机に置く修にジト目を送る。

 

「………なぁ、オサム」

「どうした」

「次から次へとよく分からん事を増やすのやめてくれ。ここまで疲れたの久しぶりだぞ…………」

「そこまでか?可愛いだろ」

「少なくともこんな生き物近界にもそうそう居ないぞ」

 

げんなりとした声でそう告げる遊真。いつの間にか千佳にモフモフされてご満悦の巨大な丸い鳥?……大鳥としっかりと家事をしている審判鳥の姿は修にとっては前世から見ていた景色ではあるが、彼以外からしたらいずれも異常に見えるものである。

 

「まぁ、少なくともお前は罰鳥に気に入られてるんだ、こいつらが敵意を抱く事は殆どない。下手な人間よりかは素直だから悪いようにはしないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

「とは言ったが………」

「ほう………これはこれは………」

「モフモフ…………」

「キエー」

「とんでもない速さで馴染んだな」

「襲ってこないなら別に一々気にする必要もないしな。よく見ればオサムの言う通りカワイイし」

 

リビングで大鳥に抱き付いている二人を見守る修は手際よくダイニングキッチンで夕食の準備をしている。エプロンと腕のカバーを着けた審判鳥がみじん切りにした玉ねぎをサラダ油で炒め、カニの身を加えて火を通した後に白ワインを加える。

 

「ふむ、とても良い肌触りですな」

「昔は兎も角今はしっかりとケアしてるからな、お陰で抱き付いたらそのまま眠れるレベルだ。千佳は時折モフリストにしてしまうしな」

「モフ………モフ………」

「チカがモフモフしか言わなくなったぞ」

「時々ある事だ、気にしないでくれ」

 

夢中で抱き付く千佳と嬉しそうに鳴く大鳥を横目に遊真はモフモフの羽毛にもたれ掛かる。自分の頭から腹辺りに移動した罰鳥をもちもちしながら修と審判鳥が料理をしている様子をぼんやりと見ていた。

 

「それにしても、普通にそいつも料理するんだな」

「審判鳥は元々器用だからな。流石に火を使う作業はさせてないが」

「鳥………だもんな?」

「例外こそ存在するがそもそも生物は基本的に火を怖がるものだ。大鳥は自分の羽を燃やしたランプを使ったりするが、普通なら火には近づかないだろう」

「まぁこいつら普通じゃないもんな」

 

遊真からの質問に答えながら溶かしたバターと強力粉を鍋で丁寧に混ぜ合わせる。さらりと滑らかになり、クッキーのような香ばしさが感じられた所で牛乳とカニの出汁を加えて泡立て器でかき混ぜ、とろみが出てから炒めた具材とチーズを入れる。そうして出来上がった物をバットに広げて冷まそうとしたところで審判鳥が修の服をクイクイと引っ張る。

 

「…………」コテン

「あぁ、スープか………そうだな、ミネストローネにするか。玉ねぎはさっきの余りを使うから他の根菜を1cm角で切ってくれ」

「…………」グッ!

 

翼で器用にサムズアップした審判鳥はそのまま野菜を入れているバスケットから目的の物を探し始める。

 

「そうだ空閑、お前アレルギーとかは無かったか?」

「アレルギー……?」

「体が拒絶反応を起こすような食材は無いかってことだ。」

「そういうのは多分無いと思うぞ」

「なら良い」

 

遊真の答えを聞いた後、調理に戻る修がふと前を見ると遊真がリビングからダイニングキッチンを覗き込んでいた。

 

「どうかしたか?」

「オレ自身がこうやって誰かが料理を作るところを見るのは久々だから、どんなもんだったか思い出してる」

「そういえば近界を旅してたんだったな。お前の父親も料理をしてたのか?」

「親父が生きてた時はな。近界の国は食うことまで手が回らない事が殆どだったけど、親父の料理は美味かった。多分、玄界の出身だからだろうな」

「……………そうか」

 

暗に父親が居ないと分かった為、それ以上の深堀を止める。その代わりの話題は遊真の方から飛んできた。

 

「オサムの親ってどんな人なんだ?」

「……そうだな、父さんは優しいっていうのが一番に来る、他人の為に動ける人だ。母さんは………なんだろうな、一見冷静そうな顔をして苛烈な事をするタイプ………か?」

「眼鏡を外した修くんに似て美人な人だよ」

 

いつの間にか遊真と同じようにキッチンを覗き込んでいた千佳が答える。

 

「千佳、もう大鳥の羽毛はいいのか?」

「うん、モフモフも充電できたよ。私も何か手伝える事はあるかな?」

「じゃあ手を洗って米を研いでてくれ。4合位で頼む」

「うん!」

「オレもなんかする?」

「芋の皮を剥けるんだったら頼む」

「任せろ」

「……………」スッ

「んお?おぉ、かたじけない」

 

千佳が張り切って手を洗いだし、遊真も同じように手を洗ってから審判鳥から差し出されたナイフとじゃがいもを持って作業に取り掛かる。その間に修は棚からベースとなるトマト缶を取り出して他の材料を揃え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふいー終わった終わった」

 

一通り仕込みを終えた三人はキッチンからリビングに移動し、寛ぎ始める。キッチンから出てきた修は3人分のココアの入ったマグカップと3羽分のストローついた水入りのコップをトレーに乗せて運んでいた

 

「すまないな二人とも、手伝わせて」

「気にしないで修くん。私がしたかった事だから」

「そうだぞオサム、案外楽しかったし」

「なら良いんだが」

 

それぞれの前に飲み物を置いていく。鳥達が器用に水を飲んでいるのを横目に、遊真と千佳は出されたココアに舌鼓を打つ。

 

「そういや、オサムのメガネって何なんだ?昼間外してた時髪伸びて目の色が変わってたし。」

「あぁ、これの事か?」

 

そう言って修はアンダーリムの眼鏡を外す。それと共に学校の時と同じように髪の先がどこからか現れるように伸びるが、開いていた瞳の色は爽やかな翡翠色のままだった

 

「俺自身の本来の姿はこっちだ。学校の規則通りに髪を切るのが面倒でな、姿を誤魔化す事の出来るギフトと父さんから貰った眼鏡を同化させてる。瞳が赤くなるのはEGOを使う反動だから普段はこのままだ」

「便利だなEGO……所でオサムって男だよな?」

「…………いきなり何言ってるんだお前は、俺が女に見えるのか?」

「「見える」」

 

からかいと呆れ混じりといった様子で整った顔で眉をひそめる修だったが、二人は……特に千佳が食い気味に答える。予想していなかった返答に目を丸くしながらも、修はおずおずと尋ねた。

 

「…………そんなにか?」

「おう、普段から眼鏡外してたら色んな奴が寄ってくるんじゃないか?モテモテだぞ」

「それは駄目だよ遊真くん、こんなに綺麗な姿を他の人に見せたくない」

「千佳の方が綺麗で可愛いだろ」

「結婚する?」

 

直球な褒め言葉を受けた千佳は満面の笑みを見せるがすぐに頭を振って修を真っ直ぐ見つめる。

 

「そうじゃなくて、修くんの綺麗さは万人共通なんだよ?修くんが本気出したら国が傾いちゃうんだよ?」

「そんな訳ないだろ。なんだ、大鳥の羽毛を摂取し過ぎて錯乱してるのか?」

「!?」

 

突然原因にされかけた大鳥はギョッとして修を見てくるが、「L社時代にやっていた事を考えろ」の一言で何も言わず目をそらす。頭の罰鳥に抗議と言わんばかりに頭を突っつかれる修だが、特に気にすることなく話を続ける

 

「そもそも、この姿になったとしても別に変わらないだろう。」

「けどチカはウソを言ってないぞ?」

「本人が嘘と思ってなければ反応しないんだろう」

「成る程、オレの副作用にそんな弱点が……でもオサムが綺麗なのは間違ってないだろ?」

「分かった分かったもうこの話は終わりにするぞ。だから一回座ってくれ千佳………全く、俺の容姿なんて褒めるものでも無いだろうに」

 

いかにも不服ですと言わんばかりに頬を膨らませる千佳を宥めた修は、ソファに座り直すと罰鳥をテーブルに移し、改めて二人に向き直る。

 

「最初から脱線したな………まぁいい、一先ず空閑の事からだな」

 

~少年説明中~

 

「………遊真くんが近界民………?」

「本来の近界民はほぼ人間と同じで俺達がいつも見かけているのは正しくは兵器らしい。そして、空閑は向こうの世界に行った人間の息子だ」

「改めましてヨロシクオネガイシマス」

「うん………そっか、遊真くんはあれとは違うんだ。こっちこそよろしくね」

「ふむ、アレ?」

「遊真くんが言ってた……トリオン兵だったっけ?それの事だよ」

「千佳は俺が干渉するまでよくトリオン兵に狙われていたからな」

「正直まだ苦手だけど、遊真くんは違うみたいだから」

「度胸がありますな」

 

そう言いながらココアを啜る遊真。嘘で無いことは分かっているため、素直に感心しているようだ。

 

「しかし、そんな頻繁に狙われてたのか。よっぽどトリオンの量が多かったんだな」

「トリオン?」

『トリオン兵等の元になるエネルギーの事だ。近界でよく使われているトリガー技術はトリオンを動力源としている、トリオンの量はトリガーを扱う為に必須の才能と言っても良い』

「わぁ!?」

『はじめましてチカ。私はレプリカ、ユウマのお目付け役だ』

「う、うん、よろしくね…………あ、結構可愛い」

「やはりそういう理由だったか」

 

千佳は宙に浮くレプリカに釘付けになる。鳥三羽も突如出てきたレプリカに興味深々のようで、各々がじっと見つめている。それを余所に修は別の部屋から一冊の紙束と白いペンダントを持って戻ってきた

 

「これは?」

「トリオン兵から摘出してたトリオンの研究成果だ。理論上では生身でトリオンを扱える技術だな」

「なんと」

 

差し出された紙束を受け取った遊真は暫くの間無言でそれを睨み続ける。

 

「…………読めん」

「そういえば文字を読めないんだったな……簡単には言えばトリオンの生成器官の把握の仕方と操作の方法だ。血管に沿った擬似器官でトリオンを巡らせ、所定の位置から放出できる。欠点としてトリオン生成器官を酷使しすぎると死ぬ可能性があるのと、放出したトリオンの操作は出来ないということが挙げられるがな」

「ううむ、使えなきゃ意味ないよな」

「操作できないなら器を作ってしまえばいい」

 

修が差し出したのはチェーンから飾りまで白一色のペンダントだった。

 

「EGOを参考にトリオン兵から取り出したトリオンを加工して作ってみた。空閑なら恐らく起動出来るだろう、トリオンを流してみてくれ」

「ふぅむ、どれどれ」

 

言われた通りに操作されたペンダントは手に纏わりつくように変形していき、最終的には手首から上が白い金属のような物で覆われた。

 

「おぉ、グローブになった。」

「掌に装置があるだろ。そこからトリオンを波状に飛ばして相手を強制的に酔わせられる」

「船酔いってこと?」

「正解だ千佳。直撃したら三半規管が揺らされて平衡感覚が狂って立てなくなる」

「相手の無力化か、色々と役立ちそうだな」

 

手を握って開く動作を繰り返す遊真は感心したようにグローブを観察する。トリオン体になる感覚は己の持つ黒トリガーで何回も体感したが、トリオン製の物を身に纏う経験は無かったようだ。

 

「トリガーには劣るが、トリオン体にならない分機能の方にトリオンを回せる。トリオン製だから耐久も十分だ。ただ、これより上等なものは作れてない」

「知識0からここまでやってるだけスゴいと思うぞ」

「因みに千佳に試作品を使ってもらった時は撃った正面にいたトリオン兵が消し飛んだ。完全に使い手のトリオン依存の装備だからリミッターも設けなければ安全とは言い難いだろうな」

「夜中で良かったよね………」

「色んな意味で恐ろしいな。非殺傷武器でもトリオンの量が規格外になると関係なくなるのか」

『一度、チカのトリオン量を測定する事を提案しよう』

「それは有難い、明確な指標が無い状態で俺一人でやれる事には限りがあったからな。レプリカ、頼めるか?」

『無論だ、試しにオサムのトリオン量を測定してみよう。これを掴んでくれ』

 

レプリカから一本のコードのようなものが伸びて、修の前に差し出される。それを迷いなく握った後、少しだけ無言の時間が生まれる。そして1分も経つかどうかというタイミングでレプリカの隣に箱形の光が現れた。見た目は完璧な箱というわけではなく、所々が歪んでいたり霧や液体のようになっている部分が見受けられる。

 

『……成る程』

「どうかしたか?」

『通常であれば一つのトリオンキューブが出現する筈なのだが、どうやら何かしらの影響でトリオン自体が変質しているようだ。恐らくはオサムの言うEGOによるものだと推測出来る』

「中々の大きさだな。トリオン兵に十分狙われるレベルだ、良かったなオサム」

「EGOを試せる相手が向こうから来てくれるなら大歓迎だ」

『次はチカだ』

 

修が離したコードを今度は千佳が握る。先程よりも時間がかかっており、疑問に思った千佳が話しかけようとした所で突如として大鳥よりも巨大なキューブ状の光が現れた。

 

「キャッ!?」

「うおっ」

「これは………」

 

三人が目を丸くするなか、冷静に分析を進めていたレプリカが声を出す

 

『………ここまでのトリオン量は初めて見た。トリオン兵に狙われるという話も頷ける。むしろ、今まで無事でいられた事が驚きだ』

「……修くんのお陰だよ。あの日からずっと私を守ってくれて、私自身で抗う力を貸してくれたから………だから私に出来ることをしたいの」

「具体的には?」

「修くんを狙う不埒な輩を消し炭にするの」

「ふむ、がんばれよ」

「………もう突っ込まないからな」

 

目からハイライトが消えた千佳の言葉と適当にサムズアップする遊真に対し疲れたような溜め息を漏らす。その動作すら様になっており、千佳がより一層守る決意を固める要因になっているということを本人は知らない。

 

「………ん?なぁオサム、なんかキューブがおかしくなってないか?」

「測定値の変化に合わせて……いや、トリオン量がそう簡単に変わる筈無いな。千佳、なんともないか?」

「うん、私は大丈夫だけど………もうレプリカさんに触ってないよ?」

 

千佳の言葉に二人はレプリカの方を振り向く。

 

「…………」コツコツ

『オサムが罰鳥と呼ぶ鳥からトリオンに似た何かが検知できた為、測定させてもらった。結果は見ての通りだ。私自身動物のトリオン量測定は初めてだが、かなり特異な事だな』

「普通鳥とかにトリオンはない筈だろ?」

『私のデータベースに人間以外の生物がトリオン生成器官を持っていた記録はない。それに加え、地球上に存在する他の動物も検査したがトリオンは検知できなかった。正真正銘、オサムが飼っている彼らが特別なのだろう』

「………エンケファリンの事か?」

 

罰鳥につつかれながら話すレプリカというシュールな光景が出来上がっているが、修の思考は

 

「エンケファリン?」

「……アブノーマリティと呼ばれる存在から産出されるエネルギー物質の事だ。抽出した後は物体として存在して、様々な用途で使う事が出来る」

「アブノーマリティがそもそもわからん」

「現代の科学では証明出来ない異常存在の総称だ。すぐ近くに分かりやすい例が居るだろ」

「ふむ?」

 

指された方向を見ると罰鳥に加え、審判鳥と大鳥も興味深々といった様子でレプリカに触れている光景を見ることが出来た。審判鳥の折れ曲がった首と大鳥の何対もの目を見て、遊真は納得したように頷く。 

 

「うむ、これ以上無いくらいにそのまんまだな」

「まだこいつらは可愛げのある方だ。もっとやばい奴はざらにいる」

「例えば?」

「目が取れて腹から綿が出てる2.5m程度の熊の人形」

「クマってのはこっちの動物か、けど人形だろ?」

「少しでも愛情を注ぐと逃がさないように抱き締められてそのまま圧死させられる。鉄骨程度なら簡単に千切れる」

「………それは本当に人形か?」

「普通の人形だったらアブノーマリティ(異常存在)なんて大層な呼ばれ方はしていない………もう日も落ちてきたし、そろそろ飯にするか」

 

話を打ち切った修は立ち上がると、伸びた髪を括り再びエプロンを着けてキッチンに向かう。

 

「後は仕上げだけだ、三羽の相手をするかテレビでも見ててくれ」

 

 

 

 

「なぁオサム、これどうやって外すんだ?こうか?」

「おいちょっと待て、手順があるからそう乱雑に扱うな。いくらトリオン製とはいえ限度があるんだぞ。まずは………」




ここの修は姉(母)の血が強く出たのと、女性の人間型の幻想体(特に魔法少女s)のギフトが魂に干渉した結果、かなりの美人に仕上がってます。声は原作通りですが、見た目は姉(母)譲りの美人です。
本人が自分の容姿に興味が無いのも合わさって人の性癖を容赦なくねじれさせる兵器が完成しました。幼い頃から修と関わっていた千佳ちゃんは既に手遅れです。唯一の救いは眼鏡を掛けている時は同化させたEGOの影響で印象が薄くなっている事です。

ちなみに眼鏡と同化させてるEGOはオリジナルのアブノーマリティから抽出した物で、「自分の姿を偽る」「初対面の相手から自分の容姿があまり意識されなくなる」という能力があります。



識別名称 Shall we dance, stranger?
 (和名  見知らぬ舞踏会)

分類 T-05-12

リスクレベル HE

室内の器具に立て掛けられた仮面型のアブノーマリティです。しかし、その形を正しく認識することは困難であり、本来の姿を知るものは殆ど存在していません。脱走時には当アブノーマリティを被った何かが踊り狂うように暴れます。


当アブノーマリティに洞察作業を行った職員は即座に行方不明となり、彼らの一員になりました。


EGO  camouflage 
 (和名 偽り)

影を固めたような扇(武器)、礼服(防具)、ドミノマスク(ギフト)
扇を振るうと揺らめく影が刃となって対象を切り刻みます。また、防具を身につけると攻撃対象になる確率が低下します。


といった感じです。概要を簡単に言えば自分の隠している正体を暴かれる事に対する恐れから生まれたアブノーマリティです。自分の事を詳しく知ろうとする相手を騙し、それでもしつこいのなら取り込んで殺します。認識阻害もどきですね。
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