持たざる者は幻想と共に   作:ゲガント

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強さの調節が難しい………都市の基準が色々ととち狂ってるせいでワートリ世界に合わせるのが非常に難しいです





それでは、どうぞ


第8話

「何でこんなことになるんだか………」

 

白を基調とした真っ白な部屋の中に立つ修はそうぼやきながら自分と相対するように立っている3人の存在に意識を向けながら数時間前を思い返す。

 

 

 

 

 

「おー、ごうかだ!」

「へぇ、エッグベネディクトなんて洒落たもん初めて食べるな。器用にやるもんだ」

「わーすっご!写真撮ってオペレーター仲間の皆に送っていい?」

 

日曜日の朝、玉狛支部のリビングには昨晩寝泊まりしていた者達が揃っており、中学生組以外は目の前の皿に乗せられた料理を興味深そうに眺めていた。特に陽太郎と宇佐美は目を輝かせている。

 

「ここのキッチン、色々と取り揃えてあったので使わせて貰いましたがよかったんですか?」

「大丈夫大丈夫、ウチのキッチンは基本的に共用だから汚したままとかじゃなかったらいくらでも使って良いよ。いやぁ、にしてもまさかこんなすぐにこの未来が来るとは思って無かったな」

「昨日も言いましたが別に料理が嫌いな訳では無いので、材料さえあれば作りますよ。お口に合いますか?」

「このとろとろの黄身とソースがベーコンとパンの塩気に丁度良い具合で合わさっててめっちゃ美味い………というか、これってイングリッシュマフィンだよね。いつの間に買ってたの?」

「昨日の内に仕込んで今朝焼き上げました。コーングリッツは流石に無かったので厳密には少し違いますが」

「修くん、昔から色んな国の料理本を読んでたので多分メジャーな料理ならなんでもできちゃいますよ」

「オレも手伝ったぞ」

「それはまた凄いなぁ」

 

そんな風に和気藹々と話しながら朝食を終える。そうして片付けを終えた後、仕事をしに部屋へ戻った支部長以外のメンバーは大きめのホワイトボードが立つ部屋に集まっていた。

 

「さぁ、腹ごしらえも済んだところでそろそろ作戦会議、始めちゃおっか」

 

宇佐美は眼鏡のつるを押し上げてレンズをキラリと輝かせてホワイトボードの表裏を入れ換える。そこには既に武器を持ったカエルのイラストやピラミッドのような図形が書かれていた。どうやら前日から準備していたらしく、非常にワクワクとした表情をしている。

 

「さてさて、諸君。君たちが目指す近界への遠征の権利はA級隊員になってから与えられる。そして、A級に上がる為にはまず3人にB級に上がって貰わなくてはならない!つまり正隊員じゃないと先に進めない、防衛任務もA級に上がる為のランク戦もB級に上がってからの話なのだ!」

「ランク戦?」

「そ、上に上がるためには防衛任務の手柄だけじゃなくボーダー隊員同士の模擬戦で勝ち上がらなくちゃいけないの。それが通称『ランク戦』。そうして競いあって強い人間だけが上に行くってわけ!」

「ほほう、つまり全員蹴散らせば良いんだな?」

「まぁいろんなとこ省けばそんな感じだね~」

 

一先ず概要を話し終えたところで一度質問タイムへと突入する。

 

「それで、オレたちのスタートはC級からなんでしょ?いつからやるの?今から?」

「まぁまぁそう焦りなさんな。まだ正式に入隊してる訳じゃ無いからボーダー本部で新入隊員が一斉にC級デビューする正式入隊日まではお預けだよ。」

「むぅ」

「慌てんなよ遊真、まずお前はウチのトリガーに慣れる必要があるだろ。それに、黒トリガーはランク戦では使えないぞ」

「……あぁ、迅さんが隊を組んでない理由はそこですか」

「そういうこと。黒トリガーは強すぎるから、自動的にS級扱いになってランク戦から外されるってわけ。少なくともチームは組めないな」

「ふむ……じゃあ使わんとこ」

「それで千佳ちゃんはどうする?戦闘員かオペレーターか……」

「それだったら私、戦闘員がいいです」

「おっと即答、やる気だね~。それじゃあ次は3人のポジションを決めよっか」

 

そう言うと宇佐美はホワイトボードのカエル達をペンで指し示す。

 

「戦闘員は戦う距離によってポジション分けされてるんだよね。近距離の攻撃手(アタッカー)、中距離の銃手(ガンナー)、遠距離の狙撃手(スナイパー)の3つ」

「じゃあオレとオサムは攻撃手になるか」

「おやおや、二人とも運動神経に自信がおありで?」

「鍛えてるからな、普通の奴らよりは動けるぞ。オサムに関しては生身でトリオン兵殴り飛ばしてたし」

「わぁお、凄いナチュラルにとんでもない情報出てきた………え、マジなの迅さん?」

「うーん……まぁ初対面の時近場にあった標識を腕力で捩り切って武器にしてたのは流石に引いたけど、まぁ許容範囲内じゃない?」

「もう漫画じゃん!え、スッゴい興味あるんだけど、今度見せて?それとちょっと漫画のシーン再現してくれない?」

「普通に嫌ですけど」

「そこを何とか……!いいとこのどら焼き奢るから……!」

「どら焼きは別にいいです……気が向いたらしますから、話を戻してください。」

「約束だからねヒャッホウ!」

「宇佐美~、落ち着け~」

 

若干テンションが荒ぶり始めた宇佐美だったが、迅が早々に抑えに行った事もあってか少々時間はかかったが何とか説明を再開できるまで落ち着いた。

 

「ふぅ………ゴメンゴメン、テンション上がっちゃった。それじゃあ2人は攻撃手で問題ないとして千佳ちゃんはどうする?」

「あの、質問良いですか?」

「どうぞどうぞジャンジャン聞いて?」

「遠くから一発で相手を吹き飛ばせる武器ってありますか?」

「うーん物騒!けどお望みドンピシャのやつはあるよ!トリオンの量次第だけどね」

「なら問題ないな。チカのトリオン量はとんでもないから」

「そんなに凄いの?」

「多分驚くよ」

「……千佳は体力が多いですし、集中力は他の人よりもありますね。あと気配消すのが上手いです」

「なるほど持久力ね。それに加えて普通の女子中学生が持って無いような特技も合わせて考えると……」

「狙撃手だな」

「あー!私のセリフ取らないでよー!」

 

そんな風にわちゃわちゃとしながらも会議が進んでいたその時だった。突如として廊下とつながる扉が勢い良く開け放たれる。

 

「あたしのどら焼きが無い!!誰が食べたの!?」

 

扉の向こうにいたのは羽のようなアホ毛が特徴的な少女で、部屋に入って早々に涙目で吠えるように喚き始める。

 

「さてはまたおまえか!?おまえが食べたのか!?」

「むにゃむにゃ……たしかなまんぞく………」

「おまえかーーーー!!」

「おお、すごいけんまくだな」

「何故陽太郎はあの状況で寝られるんだ……?」

 

腹が満たされて満足そうに雷神丸の上で寝ていた陽太郎は現在進行形で足を掴まれて振り回されているが起きる気配はない。

 

「あー、ごめーんこなみ、昨日お客さん用のお菓子に使っちゃったや。また今度買ってくるよ~」

「あたしは今、食べたいの!」

「どうしたんだ、騒がしいな小南」

「いつも通りじゃないすか………っと?」

 

少女……小南桐絵が宇佐美の頬を引っ張っていると開け放たれた扉から大柄で筋肉ががっしりとした男ともさもさとした男前の青年が現れる。青年の方は入ってすぐにソファにならんで座る修達に気がついたようだった。

 

「この3人が迅さんの言ってた「来るかもしれない新人」すか?」

「はぁ?そんな話聞いてないんだけど迅!」

「あぁ、まだ言ってなかったけど実はこの3人、俺の弟と妹なんだ」

「「?」」

「えっ、そうなの!?とりまるあんた知ってた!?」

「…もちろんですよ。小南先輩知らなかったんですか?」

 

大柄な男は怪訝な顔をするが、小南は本気で驚いた顔をしとりまると呼ばれた青年……烏丸京介の言葉信じてまじまじと3人の顔を観察し始めた。

 

「た、確かに言われてみれば迅に似てるような……レイジさんは知ってた!?」

「よく知ってるよ。迅が一人っ子だってことをな」

「へっ!?」

「あ、メガネくん達には紹介しとかないとね。このすぐ騙されちゃう系女子が小南桐絵。んで、そっちのもさもさとしたイケメンが烏丸京介で、こっちの落ち着いた筋肉が木崎レイジ。みんな玉狛の優秀な戦闘員だよ」

「ダマしたの!?」

「どうも、もさもさしたイケメンです」

「落ち着いた筋肉………人間なのかそれ?」

「さ、みんな揃った所で本題だ」

「ちょっと無視すんな!」

 

ガクガクと揺らされる迅はそれを笑って流している。

 

「3人はこれから激しい実力派の世界に身を投じようとしてる訳だ。だけどそれまで少しだけ猶予がある。具体的には今日から1月8日までの3週間だ。その間に……」

 

小南をやんわりといなした迅は修達3人が座るソファの後ろに立って告げた。

 

「レイジさん達に師匠としてこの子らを鍛えて欲しいんだ」

「はぁ?勝手に決めないでよ!あたしはまだこの子達の入隊を認めた訳じゃ……」

「小南、これは支部長(ボス)からの命令でもあるんだ」

「ッ!……支部長(ボス)の?」

「林藤さんからの命令じゃ仕方ないな」

「そうっすね、仕方ないっすね」

「……あーもー!やればいいんでしょやれば!」

「ありがとう3人とも。じゃあ早速振り分けるか、マンツーマンの方がやりやすいだろうし………うーん、遊真は小南、千佳ちゃんはレイジさんって感じでいいかな。多分タイプとしてはそれが一番しっくり来るはずだ。狙撃手のノウハウがあるのはレイジさんだけだし」

「じゃあ余ったそいつはとりまると?」

「まぁそうなるだろうけど、他の2人と俺が手伝う形になるかな。多分一人じゃキツいだろうし」

「どういう事っすかそれ」

「はぁ?何それ………なんか得体の知れない感じはあるけどそこまで強そうには見えないわよこいつ」

「うーん、まぁそこは体験して貰った方が速いな」

 

場合によっては実力不足であると聞こえるような言葉に小南は怪訝そうな表情を隠そうともせずまじまじと修を観察し始める。後ろに立つ2人も少しばかり見定めるような目線を寄越しており、当の本人は少々困った顔をして迅の方を見る。

 

「というわけでさメガネくん、今から三人と戦ってくんない?」

「……………はい?」

 

しかし返ってきたのはより大きな面倒事だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとー、何ボーッとしてんのよ」

 

トリガーを起動し、戦闘の準備を終わらせた3人に気付いた修は意識を回想から現実に引き戻す。

 

『メガネくん聞こえる?』

「………えぇ、聞こえてますよ」

『うん、大丈夫みたいだね、じゃあ早速始めようか。今までみたいに加減はいらないから、遠慮なく全力を見せてくれ』

 

迅からの言葉に軽く溜め息を吐いた修は渋々といった様子で3人から少し離れた場所から向き合って立つ。

 

「本当にやるんですか?」

「迅にあそこまで言われちゃ黙っていられないわよ。というか何であんたトリオン体じゃないのよ、さっさと準備して」

「…………わかりました、どうか正気を保って下さい

 

幻想模倣 Mimicry(ミミック)

 

己の魂に刻み込まれた何者でもない存在からの贈り物(EGOギフト)を触媒に、かつて身に纏ったEGOを呼び出す。言葉が紡がれた瞬間に着ている服の上から筋繊維が覆ってスーツのような防具を構成し始め、更にギョロリとした巨大な目玉や骨で出来たトゲのような器官が至るところに生えていた。

 

「何よそのきっもち悪いの!?」

「迅さんが手加減はするなと申したので使える中でも上位のものを選んだだけですが」

「迅!」

『いや俺のせいなの!?』

「これは迅さんが悪いですね」

『同じく~』

「ほら見なさい!とりまるも栞もこっち側よ!」

 

あからさまに顔をしかめた小南と若干驚いたような表情になる烏丸が迅に文句を言っているなか、唯一そこまで動揺が見られなかった大柄な男……木崎レイジが修に向かって問いかけて来た

 

「三雲だったか。それがなんなのか聞かせて貰ってもいいか?」

「詳しくは後で説明しますが、自我を抽出して現実に存在させられるようにしたものだと思っていただければ……………準備は出来てます、いつでもどうぞ」

「……正直、得体の知れなさなら過去1ですよ。どうしますか?」

「今回は迅も頼れないだろうからな」

「あぁもうまだるっこしい!相手は一人よ、私が前に出るから援護して!」

『それじゃあそろそろ始めるよ~』

「覚悟しなさいよ、直ぐに真っ二つにしてあげるから!」

 

瞬間、殺風景だった部屋に変化が起こる。殆どが白で構成されていた景色が塗り替えられるように昼下がりの閑散とした住宅地が構成される。4人は広い道路の上に立っていた。

 

 

「おお、景色が変わった」

「トリオンで擬似的に空間を再現してるんだよ~。データさえあれば色々出来ちゃうんだ」

「ホントに凄いですね……」

「あの水も普通に泳げるからね。本部だと街丸々一つ再現するとかも出来たりするよ」

 

 

 

 

 

『それじゃあスタート~』ビーーッ!!

 

宇佐美の緩い掛け声と共に甲高いホイッスルの音が鳴り響く。それと同時に小南は手元に二本の斧を出現させ、修に向かって飛びかかった。

 

「せいッ!」

「ッ!」ガキンッ!

 

斧二本を重ねた振り下ろしを修は交差させた腕で迎え撃つ。異常なまでに強靭な筋繊維で構成されたスーツは傷一つ付くことなく斬撃を受け止め、そのままクロスされた腕を広げることで空中にいた小南を弾き返した。

 

「溶解、分離」

「何ごちゃごちゃ言ってんの……よっ!!」

「再構成ッ!」

 

華麗に着地した小南は今度は横凪ぎになるように斧を振るう。しかしその一撃もスーツの袖の中から取り出されたスーツとよく似たデザインで細身の長剣に阻まれる。その長剣に埋め込まれた目玉はギョロリと乱数的に動いた後、己に負担を加えている小南をじっと見つめ始めた。

 

「~ッ!何でこんな気持ち悪いのやつなのよ!もっとましなのあったでしょ!」

「見た目云々は兎も角、性能が完全物理特化の上で強いのはこれなので」

「別のあるんじゃない!」

《見た目はふざけてるけど単純なパワーは向こうが上!このままだとまた弾かれるッ》

《正面からは俺が行く。小南は離脱して隙を見て仕掛けろ。京介、援護を頼む》

《了解/了解ッ!》

「メテオラッ!」

 

何回も打ち合ったのつばぜり合いを終え少し距離を置いた小南は追撃を加えようと踏み込む修との間に大きめの光弾を出現させ、そのまま地面に着弾させる。それに伴い、視界を塞ぐように大量の煙が発生した。

 

「外した………いや違う、煙幕かッ!」

「スラスター、ON」ドシュ!!

「ぐっ!」

 

煙を払おうとした瞬間、拳にシールドのような物を纏わせた木崎の拳が眼前に迫る。ギリギリで受け止めたものの元来の筋力と技術、そしてトリオンの放出による擬似的なブーストによって放たれた一撃は修の体を弾き飛ばすには十分すぎた。離された修は体勢を整えながら着地するが、息をつく暇もなく烏丸が無数の光弾を放っており、それを防ぐために地面に突き立てた剣を抜き取りラウンドシールドのように変形させて受け止める。

 

ズガガガガガガッ!!

 

放たれた弾の大半は目玉や鋭い骨などのパーツが入り交じった筋繊維の壁によって阻まれ、通り過ぎた弾が急に軌道を変えて迫るも、修の身を食い破る前に髪の毛が変異して出来た無数の鞭が己の意思を持ったかのように暴れたことで叩き落とされた。

 

《全弾弾かれましたね》

《弾かれましたね、じゃないわよ!なんなのあいつ?》

《……あいつの頬に複数個目がついていたが、どうやら見かけ倒しじゃないようだな。》

「中々やるな」

「ありがとうございます。ただこのままだと時間がかかりそうなのでさっさと次の手を使わせて貰いますね

 

幻想模倣 4th Match Flame(4本目のマッチの火)

 

紡がれた言葉と共に修の手元にはボディに大きなマッチ棒が突き刺さった大砲が現れる。

 

「!」

 

木崎が反射的に行動を起こす前に引き金は引かれ、直前に下に向けられた大砲からは発射口と同じサイズの火の玉が飛び出て地面と衝突する。その際、先程の爆撃以上の爆風が吹き荒れ、大量の黒煙が辺りを覆った。その行動の理由が目眩ましである事をすぐに察した二人はその場から飛び退き、黒煙に飲み込まれない範囲まで下がりながら装備を切り替えて構える。木崎の手には拳を覆っていたレイガストの代わりに多数の銃身が規則正しく円状に並ぶ機関銃が姿を現し、回転しながら高速で弾丸を放ち始める。一方の烏丸は元々手に持っていた突撃銃のトリガー付近のつまみを回して弾丸の種類を切り替えるとそのまま構えて先程と同じ様に撃ち始めた。

 

ズガガガガガガガガガッ!!

 

無数の弾丸が貫通するが、二人は油断することなく黒煙を睨み付ける。

 

「でりゃあっ!!」

 

自分達が放った弾丸が相手に当たった手応えが無い事に警戒していると、未だ漂っていた黒煙が小南によって横凪ぎに切り裂かれた。

 

「ッ!やっぱいなくなってる……どこに隠れてんのよ、さっさと出てきなさい!」

「落ち着け」

「全くもう、うさみの援護がないとやりづらいったら………とりまる飛んでッ!」

「ッ!」ダッ

 

バクンッ!!

 

突然の指示にも対応し、ほぼ反射的にその場から飛び退く。しかし、トリオン体になったことで向上した身体能力でも完全に回避するには足りなかったのか一瞬で左足の膝から下と右足が食われる。唐突に身体の重量のバランスが変化した事で空中で姿勢が崩れる。烏丸はすぐに受け身を取り、地面を転がる形でその場から離脱するが機動力はかなり削がれてしまった。そんな状態の敵を放っておかれる筈もなく、追撃を行うために化物はその巨大な口を開ける。

 

「させんッ!」

「シールドッ!」

「…………ッ!」ガキンッ!

「エスクード!」

 

しかし、その無数に並んだ鋭い牙が烏丸のトリオン体を噛み砕こうとした瞬間に木崎か入り込ませた盾と小南が空中に生成した六角形で半透明のバリアのような物によって一瞬だけの猶予が生まれ、そのタイミングで烏丸は地面から生えるように生成された障壁で自分を近くの民家の屋根の上へと突き飛ばした。盾は砕けたものの、目的である烏丸の補食を果たせなかった為か、その化物は反撃を食らう前に地面へと潜るように沈んでいった。烏丸と小南の反撃はむなしくも空を切ったのであった。

 

「あーもー!自由に地面潜れるとか反則にも程があんでしょうが!」

「同感っすね」

「気を抜くな、来るぞ」

 

地団駄を踏む小南とポーカーフェイスのままの烏丸を木崎が諌めていると、続け様に別の地点から巨大な口が酸性の液体を撒き散らしながら小南と木崎に食らい付こうと迫る。地面だけでなく壁からも飛び出してくる口の対処に追われるも、今までの戦いの経験故にすぐに対応し始める。そうしてかすり傷は負ったものの大きな損傷もなくしのぎきると、少し離れた地点のアスファルトの地面から修が立った状態でぬるりと姿を現した。

 

「………ふぅ」

 

先程の筋繊維が剥き出しになったかのようなおぞましい赤色のスーツは消えており、代わりにモコモコとした鱗のような何かが大部分を占める防護服を身に纏っていた。ただ、その鱗は防護服どころか修の首辺りまで侵食しており、左目がある筈の部分には何故か目が離せなくなるような光を放つ花が存在していた。僅かに開かれた口からは血に濡れた鋭い牙が覗いていた。しかし、それらの変化が頭から飛んでいってしまうほどに衝撃的だったのは変質した左腕だった。

 

「流石、ボーダー最強の部隊と言われるだけはある。一人は噛み殺すつもりだったんだが……都市でもある程度はやって行ける実力はありそうだな」

「………何よ、それ」

 

細いながらもしっかりと鍛えられていた腕は見る影もなく、大柄な体躯の木崎を超えるほどに肥大化していた。更にそれが先端から二の腕の半ばまで上下に裂かれ、そこに先程まで烏丸を貪り食らおうとしていた巨大な口が鋭い牙の間から酸性の涎を垂らしながら存在していた。残った右目には確かに理性の光が宿っているのがせめてもの救いであるが、その外見は人間らしさというものが致命的なまでに欠けているのは確かであった。その姿を見た3人の本能が警鐘を鳴らし、警戒が最大限まで引き上げられる。

 

「……この姿に僅かでも恐怖を感じてるなら感性は一般人寄りか。まぁこの世界で本能で幻想体に恐怖を抱かない人がポンポンいても困るんだが………そう考えると俺の両親は何故普通に受け入れていたんだ?」

「………随分と雰囲気が変わったな」

「ん?あぁすまない、侵食させているとどうしても素が出てしまう。不快に思ったのなら非礼を詫びよう」

 

そう言うと修は左腕の重さをものともせずに持ちあげ、水平に構える。そして、己と同化するアブノーマリティを()()()()()

 

「だがさっきも言った通りだ、早めに終わらせるぞ。

 

幻想顕現 Gold rush(黄金狂)




地面から出てきた時の修の姿は左腕が肉の灯篭になっているような感じで考えて下さい。能力のイメージはチェンソーマンのビームですね。
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