おバカの提督業   作:京勇樹

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遠征と隔離

装備の開発を始めて、十数分後。

 

「ひとまず、これで終わりにしましょうか」

 

「うん、そうしようか」

 

ある程度装備を開発した明久と不知火は、そこで開発を止めて、妖精達に装備を倉庫に仕舞ってもらってから、工廠を出た。

 

「次は、遠征だけど……」

 

「今のところ、協力的かつ動けるのは……こちらになります」

 

明久が最後まで言い切る前に、不知火は明久に艦娘リストを差し出した。それを受け取って明久は

 

「……本当にさ、前の提督は何をしてたのさ。軽巡洋艦娘や駆逐艦娘で、練度10以上が10人以下って……」

 

と額に手を当てた。

艦娘には練度というものがあり、それが上がる事で艦娘の戦闘力は高まっていく。

それにより、条件次第によっては駆逐艦娘が戦艦級や空母級を撃沈する事すらありえる。

その体現者が、今明久と一緒に居る不知火や、一緒に来た時雨や夕立である。

しかし前の提督は、軽巡洋艦娘や駆逐艦娘を囮程度にしか思っていなかったのか、明久に協力的かつ武装さえ施せば戦える艦娘達は、過半数が練度が9以下だった。

 

「ですので、暫くは私や時雨、夕立の誰かが付き添います」

 

「うん、お願いね」

 

明久はそう言いながら、リストの名前の横にチェックを入れて

 

「この娘達と、今日は時雨ちゃんを入れて遠征してもらおうかな」

 

と不知火に手渡した。

それを見た不知火は

 

「執務室に戻りましたら、すぐに呼びましょう」

 

と告げた。そして、執務室に到着して数分後

 

「川内型軽巡洋艦、神通です」

 

「文月だよー」

 

「皐月だよ。よろしくな!」

 

「白露です!」

 

「雷よ! かみなりじゃないわ! 頼ってね!」

 

「時雨、来たよ」

 

不知火が呼び出した艦娘達は、端的に自己紹介した。

時雨以外では、神通が一番練度が高い12である。

 

「今から君たちには、遠征に出てもらいます。目的は勿論、鎮守府復興の為。そして、皆の装備を作る為」

 

「え」

 

明久の言葉に、誰かが驚きの声を漏らした。

 

「先ほど、軽巡洋艦娘や駆逐艦娘用の装備を幾つか開発したので、数が揃うまではローテーションで使ってもらう事になります。それと、暫くの間は、不知火ちゃん、時雨ちゃん、夕立ちゃんの誰かが護衛兼教導役として随伴するから」

 

明久がそこまで説明すると、時雨が

 

「改めて、よろしくね」

 

と頭を下げた。

それを確認した明久は

 

「僕は、この鎮守府の復興……そして何より、この鎮守府に住む皆の為に頑張りたい……その為には、君たちの力が必要なんだ……だから、お願いします」

 

と言って、深々と頭を下げた。

 

「お任せください、提督」

 

「私たちが、力になるよ~」

 

「任せてよ、司令官!」

 

「一番艦にお任せ!」

 

「雷にお任せよ! もっと頼って!!」

 

「僕は言うまでもないよ、提督」

 

明久の言葉に、集まっていた艦娘達は口々に自分の意思を告げた。

まず、5名。この鎮守府で明久に力を貸してくれる艦娘達が確定した瞬間だった。

 

「それじゃあ、皆の無事の帰還と物資の確保を遠征の成功とします!」

 

『了解!』

 

明久の訓示を聞いた艦娘達は、敬礼した後に執務室から退室。ハンガーに向かい、出撃の為に艤装を装着して、カタパルトで出撃した。

それを見送った明久は、不知火に振り向き

 

「それじゃあ、不知火ちゃん……もう1つの仕事を始めようか」

 

と告げた。それを聞いた不知火は頷き

 

「はい……カウンセリングですね」

 

と言って、明久の先導を始めた。

その後、明久は寮とは違う場所に案内された。鎮守府の端。見た目は、小さな小屋にしか見えないが、地下に空間が広がっている。そんな隔離施設だ。

 

「……前提督に、精神にダメージを受けた艦娘達が収容されてる場所……」

 

「はい……本来は病院のような施設にする予定でしたが、前提督がそんな隔離施設を視界には入れたくない、という理由で地下施設にしたようです……」

 

不知火のその説明に、明久は拳を強く握りしめた。

自分勝手な前の提督に、怒っているようだ。

その施設の入り口は、頑丈な鎖と鍵で施錠されている。外に出さない為だろうか。

不知火は鍵を外すと、鎖も落として

 

「入りましょう」

 

と告げた。

ドアを開けると、小屋の中にはエレベーターが一つあるだけ。しかも、簡素で古いエレベーターだ。明らかにお金を掛けない為にしか見えない。

 

「……建て直ししないとね……いや、将来的には廃止したい……」

 

「……頑張りましょう」

 

二人はエレベーターに入ると、ボタンを押してまずは地下一階に向かった。地下施設は、どうやら四階まであるようだ。

 

「……まず、一人目……」

 

「はい……長良型軽巡洋艦娘……名取です」

 

101と書かれたドアを開けると、暗い部屋の小さいベッドの上に一人の艦娘が膝を抱えていた。

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