「これより、敵侵攻艦隊の迎撃戦を開始します! 最前線での細かい指揮は、水上打撃艦隊の霧島さんに一任します!」
「はい、お任せを」
明久の指示を受けて、霧島は敬礼した。
なお、編成は以下になっている。
水上打撃艦隊
第一艦隊、霧島、榛名、摩耶、最上、飛鷹、隼鷹
第二艦隊、夕張、皐月、如月、五月雨、古鷹、加古
空母機動艦隊
第一艦隊、伊勢、日向、雲龍、鳳翔、祥鳳、瑞鳳
第二艦隊、神通、時雨、夕立、比叡、高雄、愛宕
最前線での細かい指揮は霧島に一任し、明久は司令部で戦況を聞いて指示を出していく形である。
ちなみに、不知火が出撃しないのは、未だに協力する気のない艦娘が明久を襲撃した際の防衛用に残ったのだ。
そして、先に雲龍が偵察機を出して
『敵艦隊、捕捉……敵水上打撃艦隊は2時の方向、距離80000に展開……旗艦は、戦艦ル級……敵空母機動艦隊は10時の方向、距離79000に展開……旗艦は空母ヲ級……』
と報せた。どうやら、姫級は居ないらしい。
深海棲艦は基本いろは唄で決められているが、例外的に鬼、姫級と呼ばれる特別な個体が確認されている。
そちらの鬼、姫級は特殊能力を有している事が多く、一定の攻撃しか効かない、時間が経つと回復など、何れも強力な能力になる。
「鬼と姫級は、付近には?」
『……近海には確認出来ないわ……』
明久の問い掛けに、雲龍が答える。
どうやら、今のところ鬼、姫級は確認されていないらしく、それだけは幸いだろう。
もしそのどちらかが居たら、明久にはどうする事も出来ない。
「……霧島さん。以後の最前線指揮は任せます。誰かが被弾した時には教えてください」
『分かりました!』
霧島からの返答を聞いた明久は、一度椅子に深く腰かけた。すると、不知火が歩み寄り
「……大丈夫ですか?」
と明久の手を優しく包んだ。
明久の手が、小さくカタカタと震えていた事に、不知火は気付いていた。
「……ありがとう……僕は、怖いんだ……確かに、これは戦争だ……頭では分かってるんだけど……戦う度に、誰かが傷つき、倒れる……そして、最悪は死ぬ……それが、怖いんだ……」
忘れてはならないのは、明久はほんの半年程前までは軍の訓練生でも何でもない、ただの料理学校の学生だったのだ。
確かに、半年程は短期間集中コースで提督としての教育は施されたが、それでもまだ学生だったという感覚が抜けていない。
そして勿論の事、誰かの死を直接見た事など無いのだ。
何より忘れてはならないのは、明久は元来優しい性格だ。幾ら戦争という非日常であろうが、誰かを死地に出撃させるというのは想像を絶するプレッシャーとして明久にのし掛かっていた。
「司令……」
「けど、迎撃戦闘を決めたのは僕だ……だから、絶対にここからは離れない……現実からは、目を反らさない……それが、僕の役割なんだ……」
明久はそう言って、戦況マップとようやく戦域上空に到着したUAVから送られてきた映像に目を向けた。
場所は変わり、最前線。
「全艦、絶対に一対一では戦わず、最低でも二対一で交戦。確実に撃破を狙いなさい!」
『了解!』
霧島の指揮に従い、前衛に展開した水雷戦隊は交戦を開始。そこに、深海棲艦の空母級から戦闘機や爆撃機、雷撃機が近づいてきたが
「三式弾……撃てぇ!!」
霧島の主砲から放たれた三式弾から、子弾が大量に解放され、次々と敵機を撃破していく。だが、勿論突破してくる機体もある。しかし
「鳳翔さん、戦闘機による迎撃! その後、雷撃機と爆撃機を出撃させて攻撃してください! 狙いは、戦艦を!」
『分かりました! 鳳翔攻撃隊、発艦!』
鳳翔を筆頭に、次々と空母艦娘達が戦闘機や爆撃機を発艦させていく。空中で次々と爆発が起きて、双方の艦載機が撃破、または撃墜されていく。
そして、敵機や敵艦隊の迎撃を掻い潜り、こちらの攻撃隊が攻撃態勢に入った。
それを見て、霧島は
「時雨さん、夕立さん」
『なんだい、旗艦』
『ぽい?』
敵水雷戦隊と交戦していた二人は、駆逐艦ロ級を撃沈してから霧島に答えた。
「貴女達は、以後独自に行動してください」
『いいのかい?』
『旗艦は霧島っぽい』
「構いません。貴女達二人は、今現在鎮守府の最高戦力であり、最高練度の古強者……そんな貴女達なら、相手の隙を突いて突撃することも容易いでしょう?」
霧島の言葉に、二人は
『そうだね……流石にボクたち二人だけじゃ厳しいけど、一緒に戦ってくれるなら、出来るよ』
『取りついて、撃沈してやるっぽい!』
二人がそう言った直後、鳳翔達の攻撃隊が放った爆撃や雷撃が次々と命中し、戦艦ル級や重巡洋艦リ級に損傷を与えた。
それを確認した霧島は
「では、頼みます!」
と告げて、動きが鈍くなったル級を狙って砲撃した。