戦闘が始まり、数分が経過した。
明久は司令部で戦況マップをジッと見つめ、戦況の把握に勤しんでいた。
幸いにも、艦隊にはまだ大破した艦娘は居ない。
しかし、少しずつだがダメージが蓄積しているのが分かった。
「……」
「不安ですか?」
そんな明久に、不知火がコーヒーモドキを淹れて差し出した。深海棲艦との戦争により海運業は大打撃を受けて、一番値上がりしたのは嗜好品の類である。
コーヒー、タバコ、紅茶の類は一気に値上がりし、軍でも提供される物の八割以上が科学的に再現された、通称でモドキ品になった。
雰囲気は本物に大分近いが、味はお察しレベル。
しかし、やはり有った方が捗るのは確かである。
「……不安にもなるよ……一瞬の判断ミスが、戦ってる皆の命取りになるんだからね」
一口飲んでから明久は、戦況マップに視線を戻した。
時雨と夕立以外は、30にも満たない練度艦娘ばかりで、ようやく霧島が28という有り様。
前の提督が、相当無茶な運用をしたのは確かである。
その時、戦況マップの味方を示す青い光点の内の二つが突出した。
「時雨ちゃんと夕立ちゃんが動いた……」
「接近戦を仕掛けましたね……」
場所は変わり、最前線。
霧島の指示からタイミングを待っていた時雨と夕立は、霧島の砲撃で戦艦ル級の一体が大破したのを見て、動いた。
二人で交差するように前進し、まず最前衛に展開していた駆逐艦イ級を踏み台にして跳躍しながら、そのイ級に魚雷を一本ずつ投擲して撃破。
着水する間際に、艤装の下部に装着されていた短刀を抜刀し、逆手持ちで軽巡洋艦へ級に突き刺して撃破。
着水してすぐに前進しながら、主砲を連射し、水柱を乱立させて深海棲艦の視界を遮り、一息に肉薄。アッパーで空母ヲ級の頭をかち上げて、ほぼ0距離砲撃で同じ場所に砲撃し撃破した。
ここまでで、ようやく一分というところの早業だった。
そこへ、大破していたル級がまだ無事な右手に持つ楯と主砲を兼ねている主砲を向けるが
「足下注意だよ」
と時雨が告げた直後、そのル級に魚雷が二本直撃し、そのル級は沈んだ。
実は、ヲ級に接近する前に魚雷を放っていたのだ。
「さて……更に暴れるよ、夕立」
「っぽい! ソロモンの悪夢を見せてあげるっぽい!」
時雨と夕立が危険と判断したのか、生き残っていたヲ級が視線を向けて艦載機を飛ばそうとしていた。しかし
「バカめ、と言って差し上げますわ!」
一緒に出撃した高雄が、そのヲ級に接近して主砲を撃った。幾ら空母とはいえ、重巡洋艦の20.3CM砲の直撃を受けて無事に済むわけがない。
中破になり、艦載機の発艦が不可能になり、そこへ刀を持った神通がすれ違い様にヲ級を切り捨てた。
「お二人だけに、無茶させませんわ」
「私たちも、接近戦は出来ます」
高雄と神通の言葉を聞いて、時雨は頷き
「心強いよ。だけど、無理しないでね。僕たちより、練度は低いからね」
と告げた。
神通は直前の遠征で10になり、高雄は18だ。
98の時雨と夕立に比べたら、圧倒的に低い。
「さて……まだまだ油断しないで、突撃するよ」
「っぽい!」
時雨と夕立は深海の残存艦に突撃を開始し、その支援をしようと遅れて神通と高雄も突撃を開始。
そこへ、鳳翔達が艦載機を発艦させ、霧島達が砲撃の密度を上げた。
時雨と夕立という二大巨頭の脅威に、深海艦隊は二人に攻撃を集中させようとするが、他の艦娘達の攻撃で上手くいかずに削られる。
それにより、一気に戦況は明久の艦隊有利に傾いた。
それから、十数分後。
「これで!」
「最後っぽい!」
時雨と夕立の二人が、最後まで抵抗していたル級の首と胸部に短刀を突き刺して撃破した。
ル級が沈んでいくのを尻目に、艦隊は一度周囲を警戒。
まだ無事な深海艦が居ないのを確認し
「戦闘終了です」
『了解です。帰還して、ドック入りしてから報告してください』
霧島からの戦闘終了の宣言を聞いて、明久は帰還するように指示を出した。
こうして、明久艦隊の初めての戦闘は無事に終了した。
大破、中破無し。小破や微ダメージのみ、という初めてにしては上々の勝利だった。