その日は朝から、少々騒がしい始まりだった。
明久の部屋に夜間哨戒班だった夕立が突撃してきて、まだ寝ていた明久の腹に飛び込み(不知火が折檻した)、何か開発していたのか、明石の工房が爆発を起こし(明石は座敷牢送り)、そして、昨日から行方不明になっていた卯月が、港のガントリークレーンの上で見つかった(卯月には反省文を書かせた)。
「疲れた……」
昼休み、明久はグダーと机にうつ伏せになっていた。
そこへ、霧島が入ってきて
「お疲れ様です、提督。お姉さまから紅茶です」
と言って、カートで持ってきたティーポットから、カップに紅茶を注いで、明久の前に置いた。
「ああ、ありがとう霧島さん……」
「いえいえ、今日は朝から騒がしいですからね。お疲れかと思いまして」
明久は霧島が注いだ紅茶を一口飲むと、霧島が明久を労った。実は霧島が、今日の秘書艦であった。
不知火は夕立を折檻した後に遠征に出ており、時雨は新任の駆逐艦娘達に教導している。
夕立は、折檻の後に寝た。
「明石さんの工房は、夕張さんが再建の指揮をしておりまして、一応今日中には復旧出来るそうです」
「うん、分かった。ところで、爆発した原因は?」
「夕張さんの調べでは、どうやら新しく液体火薬の開発をしていたようで、配合率を間違えたと見ているようです」
「何さらっと危ない事をしてるの、明石さんは」
霧島からの報告に、明久は頭を抱えた。
「一応それに関しましては、明石にはちゃんと報告するように、と厳重注意しました」
「確かに。そんなの開発してるなんて、僕知らなかったよ」
問題なのは、明石の開発を明久が知らなかった事である。つまり、明石は無断で開発していたのだ。
「それで……卯月ちゃんはなんで、ガントリークレーンの上に居たのさ?」
「聴取した卯月曰く、昨日文月達とかくれんぼしていて、隠れ場所として登ったようです。それで、昨日は天気もよく、気温も暖かかったので、そのまま寝てしまったと……それで今朝、偵察にと発進した飛行機が見つけたようです」
「なんて場所で寝たのさ。一応、簡単に登れないようにしないとね……」
霧島からの続いての報告に、明久は再び頭を抱えた。
やんちゃが過ぎる行動力に、明久は対策をしないと、と考えた。
そして、一息ついた明久は
「さて……お昼食べに行こうかな……」
「では、お供しますね」
霧島と一緒に、明久は食堂に向かった。
食堂は完全に稼働しており、日々艦娘達が食べたい料理の食券を選び、貰っては食卓で食べている。
今のところ、何の問題も起きてないと聞いている。
「今日も盛況みたいだね」
「ええ。私も楽しみにしています」
明久の言葉に、霧島が嬉しそうに語った。
一応食堂のメニューに関しては、明久も一緒に考えている。
季節のメニューも考えるつもりだし、明久も結構楽しみにしている。
「それじゃあ僕は……今日は豚のしょうが焼き定食にしようかな」
「では私は、けんちんうどんにします」
二人は食券を出して料理を受け取ると、手早く食べていく。食堂に来る艦娘達は、全員が楽しそうにしている。それを見た明久は
「……食堂復旧して、良かった……」
と呟いた。
「提督のおかげで、皆明るくなってきていますよ」
明久の呟きを聞いた霧島がそう言ってきて、明久は少し恥ずかしそうにした。
食べ終わった後、明久は執務に戻った。
「えっと、次は……」
明久は机で書類を捌いていたが
「はい、絃神鎮守府執務室です」
と霧島が受話器を取った。明久が視線を向けると
「はい、分かりました。少々お待ちください……提督、大本営からです。大規模作戦が始まると」
「大規模作戦か……」
大規模作戦
それは、大本営が定期的に行う深海棲艦の拠点解放だったり、海路の要点解放、大規模迎撃の事を指す。
「作戦内容は?」
「はい、今回は迎撃作戦のようです……深海棲艦が大量に集まっていて、日本に向かってきていると」
どうやら今回は、大規模迎撃らしい。
「敵の規模は?」
「今のところ、最大6000……まだ増える可能性は高いと」
そこまで聞いた明久は、少し考えて
「……今回は出よう……何となくだけど……この絃神島も範囲になりそうだ」
と告げた。そして後日、明久の勘が当たっている事が判明する。