明久が提督になって、約2ヶ月後。明久にとっては初めての大規模作戦が発令された。
内容は、迎撃作戦。
6000以上の深海艦隊が日本に向けて進軍を開始しており、そしてその進路には明久の絃神鎮守府のある島があった。
明久の勘が当たっていたのだ。
そこからは、絃神鎮守府は一気に準備を始めた。
物資を集め、防衛施設の整備・点検。
そして、島の自治体と調整も行った。
島の近海が戦場になる為に、海運業社と漁業組合に仕事を控えるように要請し、その補填もすると約束した。
少々交渉は難航したが、なんとか両方に納得させる事に成功し、更に島の自治体には島民の避難準備をさせるようにした。
具体的には、鎮守府の最下層に大量の脱出挺を用意し、その一つ手前に避難シェルターを大量の物資と一緒に用意し、危うくなったら脱出させるのだ。
そして、発令されてから約三週間後。大規模迎撃作戦が始まった。
「初めての大規模作戦だ……」
明久は緊張しながら、仮説の大本営幕舎に向かった。
そして、入り口に立つと
「絃神鎮守府提督、吉井明久少佐。入ります!」
と声を上げた。
すると、幕舎から長身の艦娘。大和が出てきて
「どうぞ」
と明久を招き入れた。
中に入ると、数人の軍人に囲まれて、武田長官が居た。
武田長官は明久に気付くと右手を振って、周囲の軍人達を何処かに行かせた。
「作戦会議をしていたのでは……」
「構わない……戦闘が始まれば、臨機応変に対処しないといけなくなる。その時に決めればいい。私としたら、それよりも君に直接言いたい事がある……」
明久の問いかけに答えながら、武田長官は明久の方に向いた。そして、静かに歩み寄り
「吉井少佐……突然提督になりながら、よく絃神鎮守府を復興してくれた……感謝する」
と頭を下げた。
「長官……」
「本来なら君は、有名な料理人になっていただろう……それを、我々の事情で提督にしてしまった……君を欲しがっていた料理店やホテル等は多くあったのにな……」
料理学校卒業が近かった明久は、実は就職先は引く手あまたであった。しかしそこに、海軍が横入りしてきた。
ある日、明久の肩に妖精が居て、しかも、明久も認識していたのを、視察に訪れていた武田長官が見つけたのだ。
その後、武田長官は一緒に連れてきていた大淀により、明久が妖精の言葉が分かる事を知り、そこから明久が歴代最高の提督適性を有しているのを知り、強引に提督としてスカウトしたのだ。
「非常に申し訳ないと思っている……それに君は、命が危ないと分かる鎮守府の建て直しもしてくれている……望むならば、君が望む料理店に就職させる事も出来るが……」
武田長官がそこまで言うと、明久は
「確かに最初は不本意でしたが、今は自分から望んでここに居ます……ですから、最後まで全うします」
と断言した。それを聞いた武田長官は、目を閉じてから
「君の決意に感謝する……何かあれば、直接通信で……優先的に手配しよう」
「ありがとうございます」
明久だが、武田長官の直接の部下という立ち位置なのだ。だから、武田長官に直接通信するのは何ら不思議な事ではない。
武田長官はそこで姿勢を正し
「吉井少佐。君の艦隊には、後方支援を一任する」
と言って、明久に書類を差し出した。
それを一読してから、明久は
「後方支援……了解しました」
と敬礼した。
これが、明久の初めての大規模作戦の始まりだった。