元帥の指示により、明久の艦隊は後方支援艦隊となった。やる事としては、資源物資の輸送とその護衛。
そして、深海棲艦の潜水艦狩りだ。
その為の艦隊編成を、明久は考えていた。
その時
「司令、新しい艦娘が来たわ」
と不知火が、明久が居るテントに入ってきた。
「新しい子……あ、もしかして」
「はい。先日通達のあった一人です」
作戦の数日前、明久の艦隊に新しい艦娘が来る事が通達されていた。しかも、全員が明久を教育した教官。
つまり、高い練度を有する艦娘だ。今の明久からしたら、非常に嬉しい加入だ。
「入ってもらって」
「はい……どうぞ」
不知火が入室を促すと、入って来たのは凛々しい印象の艦娘。阿賀野型の矢矧だった。
「阿賀野型軽巡洋艦の矢矧です! 久しぶりね」
「久しぶりです」
この矢矧は、明久に軽巡洋艦の運用の仕方を1から教育した教官で、その前はブラック鎮守府に居た。
その為に、当時は人間に対して軽く敵対心のような感情を抱いており、明久に対して最初は辛辣に当たっていた。しかし、教育していくなかで、明久の真摯な態度。そして、裏表の無い性格は、徐々に矢矧の凍っていた心を溶かしていた。
そしてこの矢矧、実は今現在確認されている矢矧の中で、唯一の改二だ。
ある日、気付いたら改二になっていたのだ。
しかも、その性能は明久が一番発揮出来ていた。
明久が卒業してから、少しの間研究に協力し、何とか改二になる為の条件は判明したが、非常に高い練度と提督との絆が必要と分かったのだ。
その後、矢矧は元帥に直談判し、明久の艦隊に配属されたのだ。
実を言うと、時雨、夕立、不知火の三人も、最初は改の艦娘だった。その後、明久と過ごしている内に気付けば改二になっていた艦娘達だ。
実はそういった点も、明久が復興の為に絃神鎮守府の提督に選ばれた理由だった。
「……来て早々なんだけど、矢矧には対潜水艦の艦隊旗艦になってほしいんだ……僕の艦隊には、まだ高い練度の軽巡洋艦娘が居ないから……」
「ええ、構わないわ」
明久の願いを、矢矧は快諾した。
そして、明久は矢矧を旗艦にして、補佐役に時雨を入れて、他に皐月、如月、択捉、佐渡の六人に潜水艦狩りを一任した。
そして
「今回の大規模作戦。僕達の艦隊は、後方支援を担う事になりました。主に、物資の輸送と潜水艦狩りです。物資の輸送は三艦隊出します。潜水艦狩りは一艦隊。ただし、編成は順次入れ換える予定ではあります。ただし、無理は絶対に厳禁です。全員で、生きて帰りましょう」
と明久は艦隊全員に伝えた。
明久の艦隊は、生存を最優先にしている。生きて帰るのは何ら恥ではなく、むしろ情報を得られるから、絶対に死に急がないで、と伝えている。
天龍を筆頭にした一部の好戦的な艦娘は文句を言ってきたが、明久の
『僕は誰にも死んでほしくないんだ。戦争なんだから、綺麗事言ってるのは分かる……だけど、だからと言って死に急ぐのは、何か間違ってる気がするんだ……姉妹を、悲しませないで』
と伝えたら、全員引き下がった。
そして、明久の艦隊は行動を開始。矢矧達は潜水艦狩りに奔走し、天龍、龍田、神通がそれぞれ旗艦の艦隊は輸送に従事した。
なお、元帥指揮の迎撃作戦は終始深海棲艦艦隊と優勢に交戦。ゆっくりとだが、確実に深海棲艦を撃沈していっていた。
損傷は多いが、轟沈は無し。
明久も度々潜水艦を撃沈し、少しずつだが駆逐艦や海防艦娘達の練度を上げていき、物資の輸送も成功し、味方艦隊に資源を回した。
明久も一日に何回も作戦本部に報告しに向かい、他の艦隊が欲しがった資源を回収したり、潜水艦が確認された海域に艦隊を派遣し、潜水艦を撃沈したりと、走り回った。
作戦は順調に推移し、いよいよ本隊は深海棲艦艦隊の旗艦。装甲空母姫に迫った。
もうすぐで、深海棲艦艦隊に勝てる。誰もがそう思っていた。
しかし、索敵に出していた明久の艦隊の艦載機がある報告をしてきた。
「そんな場所に、深海棲艦艦隊が居た!? 侵攻方角は!?」
「この島から、北西の方向に向かっています……予想されるのは……日本本土です」
なんと、奇襲艦隊が確認され、しかも日本本土に向かっていたのだ。
今現在、主力艦隊は装甲空母姫を含めた深海棲艦艦隊と交戦中で、手が放せず、日本本土には一部警備府の艦隊しか残っていない。
情報を細かく記載した書類を脇に抱え、明久は不知火と一緒に作戦本部に急いだ。
そして、何時もなら入り口で名乗るのだが、それもせずに駆け込み
「緊急です! 敵奇襲艦隊が日本本土に向かっているのが見つかりました!!」
と言いながら、書類を参謀達と元帥が居る机に置いた。
「なんだと!?」
「編成は……戦艦ル級フラグシップ級、空母ヲ級改、軽空母ヌ級、駆逐艦イ級が二に軽巡洋艦へ級か!」
「しかし、今の日本本土は手薄……!」
明久の報告に、参謀達は頭を抱えた。
そんな中、腕組みして黙考していた元帥はゆっくりと明久を見て
「吉井提督……待機している私の艦隊からも艦娘を出す……君の艦隊の艦娘と合わせて、連合艦隊を編成し、この奇襲艦隊を撃滅せよ!!」
「ハッ!!」
元帥からの指示に、明久は姿勢を正して敬礼した。
こうして、明久は初めての大規模作戦で奇襲艦隊の迎撃をする事になった。