初めての姫級との交戦。状況はかなり悪い方だろう。
はっきり言って、明久の艦隊は弱い。
元帥の艦隊は全員が練度90台の強者ばかり。それに対して、明久の艦隊は矢矧や時雨、夕立、不知火は練度90を超えているが、他はようやく30に到達し始めたばかりだ。
少し考えた明久は
『艦隊を2つに別けます! 最初の敵艦隊をA艦隊とし、そちらは僕の艦隊で対処! 姫級の艦隊をB艦隊として、元帥の艦隊で対処!』
『しかし、それでは!?』
明久の判断に、矢矧が狼狽えていた。
それも仕方ない。何せ今の明久の艦隊には、空母艦娘は居ないのだ。
実は空母艦娘は、最前線への支援艦隊として出撃しており、今回の緊急出撃には編成出来なかった。
故に、明久は手練れの矢矧、時雨、夕立を一緒に出撃させる判断をしたのだ。
『ですから、戦艦ル級と空母ヲ級には接近戦を仕掛けて、短時間で決めるしかありません。でなければ、二正面戦闘……挟撃されます!』
『……確かに……』
明久の提案に、元帥の艦隊の長門が同意した。
少しずつではあるが、最初の深海艦隊は数が減り、今や残っているのは三体。それが、戦艦ル級フラグシップと空母ヲ級フラグシップ、そして軽巡洋艦へ級のみ。
それに対して、戦艦棲姫率いる艦隊の総数は不明。しかも、新型機を使う空母級の敵も居る。
それを考えたら、挟撃されたら圧倒的劣勢になる可能性は高い。
それならば、最初の深海艦隊を手早く倒し、即座に反転し姫級の艦隊と交戦する。の方がまだ勝てる確率はあると明久は考えたのだ。
『分の悪い賭けというのは、重々分かってます。しかし、ここで深海艦隊を撃滅しないと……本土が危ない……それになにより、皆に死んでほしくないんです』
確かに、軍人なのだから国防第一なのは当たり前だ。しかし、明久からしたら仲間には死んでほしくないのが一番だった。
『……分かったわ。提督の案に従うわ』
『我々も異論は無い』
矢矧と長門が同意した事で、艦隊は即座に動いた。
元帥の艦隊は後退を始め、明久の艦隊は一気に突出。最初の深海艦隊に対して、突撃を開始。元帥の艦隊はある程度後退しながら砲撃をした後、反転し姫級の艦隊に向かった。
それを確認した明久は、気合いを入れた。
『第二艦隊、今から詳細な戦闘オペレーションを開始します……まず突入するのは、矢矧さん、時雨ちゃん、夕立ちゃんの三人。霧島さんと金剛さんは三人を支援砲撃。雷ちゃんは霧島さんと金剛さんの護衛!』
『了解!』
明久の指示を受けて、矢矧、時雨、夕立の三人が一気に突出。因みに他の三人の練度は、霧島は38で金剛は20になったばかりで、雷は34となっている。
金剛の方が低い理由は、実は少し前まであの地下の収容施設に入っていて、出された後に、自ら望んで最前線復帰したからだ。
因みに地下収容施設に入っていた理由は、目の前で比叡が金剛を庇って撃沈したからだ。
姉妹思いな優しい金剛はそれを自身のせいと責め、それが原因か、戦場に立てなくなってしまって、地下収容施設に入れられた。
そして解放されてからは、霧島と榛名が介抱と一緒に訓練するようになり、少し前に最前線復帰を果たしたのだ。
『金剛さん、無理して前に出ようとしないでください! 霧島さんと同調して、砲撃を続行! 雷ちゃんは敵空母の艦載機の撃墜を!』
『了解!』
明久の指示を受け、霧島と金剛は砲撃を戦艦ル級と空母ヲ級の周囲にばら蒔き、雷は時々空母ヲ級が出す艦載機を落としていく。その間に、矢矧達は敵に接近していた。
確かに、戦艦クラスの砲撃は強力であり、並大抵の敵ならば大体は一撃で片が付く。しかし、フラグシップ級となるとそうはいかない。
深海棲艦の通常級にも、階級が存在する。
まず、通常の敵イ級から最新ではナ級が確認されている。(前期型と後期型もあり)
そして、一段階上のエリート。通常級の体から赤いオーラが溢れており、普通の通常級よりも高い戦闘力を発揮し、艦隊の練度によっては大損害を被る場合がある。
そして、フラグシップ級。体から黄色いオーラを発していて、普通のやエリートとは比較にならない戦闘力を有しており、それと付随するように防御力も高い。
その高い防御力により、駆逐艦級でも戦艦の一撃で撃沈しなかった例すらある。
つまり、戦艦級や空母級ともなれば、戦艦の一撃で仕留めるのは、事実上不可能。しかも、霧島と金剛の主兵装はまだ改造を施していない通常装備。
通常装備だったら、撃沈するには物量による飽和砲撃か、もしくは接近戦しかない。
『霧島さん、金剛さん、15秒後に砲撃を空母級に集中に切り替え……三人共、お願い!』
明久の指示からきっかり15秒後、戦艦ル級フラグシップにも降り注いでいた砲撃が空母級に集中し、そして戦艦ル級フラグシップに対して、矢矧、時雨、夕立の三人が突撃した。
時雨は右手に短刀を逆手持ちに装備し、夕立は右手に刀、左手にナイフを持ち、矢矧は右手に刀のみを装備している。
『斬劇包囲陣!』
『了解したよ!』
『っぽい!!』
三人はまるで渦を描くように、戦艦ル級フラグシップに対して、次々と斬撃を繰り出していく。
勿論だが、ル級も黙って受けている訳ではない。楯兼主砲で受けては攻撃しようとしてくる。だが、近すぎるのだ。矢矧達は主砲の砲身の内側に入り込み、砲撃をさせない。しかし、その状況は紙一重だ。
一つでも先を読み間違えたら、三人は致命傷を負う事になる。
矢矧が右斜め下から左側に振り上げた一撃を、ル級は左手の楯で防御。即座に、時雨がその内側に入り込み、ナイフを左肘の内側に突き刺そうとした。だが、ル級は時強引に左腕を振り回し、ラリアットのようにして時雨を弾き飛ばして、回避。弾き飛ばされた時雨を狙い、ル級は右手の楯を向けて砲撃しようとした。
だがそれを、夕立がまるでムーンサルトを彷彿させる蹴りで砲身を蹴り上げて妨害し、同時に左手のナイフを投擲した。狙いは、右肩。
投擲したナイフは、狙い違わず右肩目掛けて飛翔する。
しかし、ル級は体を僅かに動かしてギリギリで回避。次の瞬間、ル級の背後に矢矧が現れ、そのナイフをキャッチ。ル級の右鎖骨辺りに深々と突き刺して捻った。
するとル級は、痛みからか雄叫びを挙げながら背後の矢矧に対して蹴りを放つ。その一撃は辛うじて回避した矢矧だったが、強引に回避した為に、体勢を崩してしまう。そんな矢矧を狙い、ル級はまだ動く左手の楯を向けた。
しかし
『僕達を忘れないでほしいな!』
『っぽい!!』
背後から時雨と夕立が、右脇腹と左脇腹から斜め上に突き刺す形で、ナイフと刀を突き刺していた。
時雨と夕立が引き抜いて離れた直後、矢矧が刀を袈裟懸けに振り下ろし、ル級フラグシップを撃破した。
残ったヲ級に視線を向けると、霧島と金剛の集中砲撃を受けて、中破状態だった。
三人は直ぐ様魚雷を発射し、三人の魚雷は全て命中。ヲ級も撃破した。