何とかル級とヲ級、へ級を撃沈した明久の艦隊は即座に反転し、元帥の艦隊の援護に動いた。
一応無線は繋がっており、ル級達と交戦してる最中も情報は得ていた。
まず、後から現れた深海艦隊の旗艦は戦艦棲姫。そして、フラグシップヲ級・改が居るのが確認されたという。
これは、初めて確認された個体で、仮に付けられた呼称になる。通常のフラグシップ級は黄色いオーラが身体から溢れているのみなのだが、このフラグシップヲ級・改はそこから更に右目に青い光が確認された。
最初元帥艦隊の旗艦の長門は、それでも通常のフラグシップ級と考えて砲撃し、間違いなく直撃させた。
確かにフラグシップ級は通常の個体よりも防御力は高い。しかし、空母というのは戦艦よりも防御力は劣り、戦艦の主砲の直撃で、大体は大破する。
だが、そのフラグシップヲ級・改は違った。
仮にもビッグ7と謳われた長門の40cm砲の直撃に、ほぼ無傷で耐えたのだ。
そこから、長門はそのフラグシップヲ級・改が通常のフラグシップヲ級を超えた個体だと把握し、仮としてフラグシップヲ級・改と命名した。
しかも、通常のフラグシップ級よりも多い搭載機数と、明久が乗っていた弐式大艇を襲撃した新型機を運用していた。
『この新型機……動きが速い……!』
『まさか、こっちの烈風と同等なんて……!』
元帥艦隊の空母艦娘、飛龍と蒼龍の驚きの声が聞こえた。しかも、二人の数と互角に戦っているらしい。
そして、問題の戦艦棲姫。
こちらも、厄介な個体だと判明した。
仮名称、戦艦棲姫・改。
此方も、通常の戦艦棲姫を遥かに上回る防御力と火力を有していた。
長門と陸奥の主砲を何回も直撃を受けながら、未だに健在。そして火力も馬鹿にならず、何とか直撃は避けているものの、少しずつダメージが蓄積しつつあった。
『まさか、歴戦の元帥の艦隊でも……!?』
それは、明久の純粋な驚きだった。
元帥の艦隊は全海軍の中でも、戦歴は一番長く、戦果も凄まじい者達ばかりになる。
だがその歴戦の艦隊でも、戦艦棲姫・改には手こずっていた。そこから分かるのは、戦艦棲姫・改も歴戦の個体だと言うこと。
『他の深海艦隊は……』
『そちらは、何とか撃沈したが……この二体が厄介過ぎる!』
明久の呟きに、長門から返答が返ってきた。
どうやら、戦艦棲姫・改とフラグシップヲ級・改が最後の二体のようだ。
数では圧倒しているものの、時間を掛けすぎたら増援が来て逆転される可能性が高まる。深海棲艦の姫級は、通常の深海棲艦を呼び出す能力を有している個体が多くいる。しかも上位の姫級ともなれば、ほぼ無制限に呼び出す事も可能とされている。
もしこの戦艦棲姫・改が上位の姫級で、無制限に呼び出す能力を有していたら、その数で圧殺されてしまうだろう。
故に狙うは、短期決戦に他ならない。
そう考えた明久は
『作戦を伝えます! フラグシップヲ級・改を僕の艦隊が、戦艦棲姫・改を元帥の艦隊が攻撃! どちらかが先に倒したらもう片方の艦隊は援護! 短期決戦です!』
『確かに、それしかないか……了解した!』
『了解! 一気に行くわよ!!』
明久の指示に従い、元帥の艦隊と明久の艦隊は一気に動いた。元帥の艦隊は明久の艦隊が接近するまで、フラグシップヲ級・改に砲撃し続け、一定距離に入ったら砲撃を戦艦棲姫に集中。そして明久の艦隊は近接戦闘に入った。
『雷ちゃん、霧島さん、金剛さんの三人はヲ級・改が出す戦闘機の撃墜・牽制に専念! 矢矧さん達の邪魔をさせないでください!』
『了解!!』
明久の指示を受けて、雷達は弾幕を形成。フラグシップヲ級・改が出した艦載機に対して迎撃を開始した。
しかし、仮にも歴戦の戦艦棲姫・改の僚艦のフラグシップヲ級・改なのだから、こちらも歴戦の個体なのだろう。
艦載機を出しながら杖を振り回して、矢矧達を近付けさせまいとしている。だが、矢矧達は三人。しかも、彼女達もまた歴戦の艦娘だ。
三人は杖を回避しつつ、ナイフや刀を振るって、少しずつだがダメージを与えていく。
しかし、簡単には致命傷を与えられず、時々ヲ級・改からの反撃を回避する為に離れてしまう。
勿論三人全員が離れる訳ではないので、何とか隙は少ないようにはしている。だが、歴戦のヲ級・改にはその少ない隙でも十分だったらしい。
艦載機を数機出撃させ、離れた矢矧を狙わせた。
『くっ!?』
矢矧は海面をまるで転がるようにして、何とか回避。しかし、ヲ級・改の艦載機は上空で旋回し、再度攻撃しようとした。だが
『させないわよ!!』
『三式弾、撃てぇ!!』
『ファイアァ!!』
それは、雷達により阻止される。
三人が形成した濃密な弾幕で、ヲ級・改が出した艦載機は悉くが撃墜。または撃破されていく。
その間に態勢を建て直した矢矧は、夕立と時雨の二人と息を合わせて突撃した。
先に仕掛けたのは、先に近距離に居た時雨だった。
時雨が右手に持ったナイフを突き出し、その一撃をヲ級・改は杖で防御したのだが、その杖を時雨は左手で掴んで強引に止めた。
それを見たヲ級・改は、時雨を蹴り飛ばそうとした。だが夕立が懐に入り
『させないっぽい!!』
と刀を一閃し、ヲ級・改の両足を斬った。
両足を斬られたヲ級・改は倒れ、そこに
『もう眠りなさい……』
と矢矧が、胸部にナイフを突き刺した。最初は杖を掲げたヲ級・改だったが、その腕は力無く落ちて、ヲ級・改は海に沈んでいった。