おバカの提督業   作:京勇樹

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強硬派

 

 

 

山城と扶桑に新しい艤装装着・換装システムを紹介した翌日、明久は膨大な書類と格闘していた。

その理由の一つが、新たに着任した艦娘。元教官の一人、比叡だ。

 

「金剛型の比叡です! 本日より、お願いします!」

 

と元気よく、比叡は挨拶してきた。

明久と比叡の出会いは、半年の教育期間での事だった。

明久に戦艦の事を教育する係の一人として、比叡が選ばれたのだ。

そして何故か、比叡に料理を教える係が明久になった。(明久は混乱した)

比叡から戦艦のメリット、デメリットを教えて貰いながら、比叡に料理を教えた。その結果、判明したのは

 

1、比叡は基本的に料理は上手

2、何故か、カレーやシチュー、ホワイトソースが謎の物体になる。

3、それ以外は美味しく出来る

 

という事。

そこから明久は、比叡にカレー、シチュー、ホワイトソースは作らないように、と念入りに忠告した。

作ってる過程を見ていても、何故そうなるか分からなかった。強いて言うなら、世界の強制力としか言い様が無いと明久は判断した。

なお比叡としては、海軍なのにカレーが作れない事に両手両膝を突いて嘆いた。

それはさておき、明久は書類の1枚を手に取った。

その瞬間、廊下で爆音が響き渡り、壁が吹き飛んだ。

 

「ぐえっ」

 

予想外だった為にまともに受け身も取れず、床に転がった。その直後、明久を数人の艦娘が包囲した。

何とか意識を繋いだ明久は、視線を動かして確認した。

川内、能代、天龍、足柄、愛宕だった。

全員が、恐らく警備隊用だと思われる銃火器を明久に向けていた。

先の爆発は、恐らくは砲弾を壁に叩きつけたのだろう。

本日の秘書艦の不知火は、事務所に書類を提出しに行っており、時雨と夕立は哨戒艦隊と出撃で不在。

矢矧は教導の為に演習海域に離れていた。

明久の刀は、壁に立て掛けてあったが、爆発で窓際に吹っ飛んでいる。

 

「私達が来た理由……分かるよね?」

 

「貴方自身に恨みは無いけど……」

 

「私達はもう、人間に振り回されるのは真っ平御免なのよ」

 

川内、能代、愛宕は続けて告げると、銃の安全装置を解除した。

その直後、天龍、川内、能代が持っていた銃が弾き飛ばされた。

 

「なっ!?」

 

「何処から!?」

 

「今の衝撃は……」

 

銃に伝わった衝撃を頼りに、能代は窓を見た。

因みに、明久の今居る執務室は、3階の中庭に面した位置で、中庭を挟んだ反対側には艦娘達に教育したり、雑談や娯楽の為の建物がある。

その屋上に、一人の艦娘が居た。

それは、今日着任したばかりの比叡だった。

その比叡の手には、長大なライフルが握られている。

実はこの比叡、艦娘の中でもトップクラスの狙撃技能を有しており、その技能は折り紙付き。

最大射程は、約2700。特技は、複数同時狙撃だ。

能代が顔を向けた瞬間、比叡は瞬く間に2連射。

愛宕と足柄が持っていた銃を弾き飛ばし、その瞬間にマガジンを排出すると、素早く新しいマガジンを再装填し、チャージングハンドルを引いて新しい弾を薬室に叩き込んだ。

その技量に全員が驚いていると、壁の穴から数人の艦娘が入ってきて

 

「止めろ! 愛宕姉さん!」

 

「川内姉さん、ダメです!」

 

「足柄! 止めなさい!」

 

「天龍さん! こんな事、ダメです!」

 

「能代! 落ち着いて!」

 

入ってきたのは、摩耶、神通、妙高、吹雪。そして、この鎮守府に居た一人目の矢矧だった。

僅かに遅れて、龍田もやってきた。

龍田が、彼女達を連れてきたのだ。

 

「愛宕姉さん! こんな事して、高雄姉さんが喜ぶとでも思ってるのかよ! 絶対に、喜ぶ訳がねぇんだよ! あいつは、前の提督じゃない!」

 

愛宕を押し倒した摩耶は、愛宕の襟首を掴んでいた。

 

「あいつはバカだが、一生懸命で真っ直ぐなバカだ! 誰かの為に、全力で行動出来る奴なんだ!」

 

「けど、高雄姉さんは……!」

 

「この鎮守府に居たという高雄さんなら……三日前、ある製薬会社から保護されたそうです……」

 

摩耶と愛宕の会話に、明久はそう言いながら、ちょうど持っていた書類を差し出した。

そこには確かに、高雄を保護したという旨が書かれており、制服の番号も記載されている。

その番号を見て、愛宕は涙を流している。

 

「……前々から、この鎮守府から違法に売買された艦娘の痕跡を追うように頼みまして……高雄さんと阿賀野さんは、保護出来たそうです……数日以内には、この鎮守府に帰ってくる予定です……」

 

痛みを堪えながら、明久はそう告げた。すると、矢矧に抑えられていた能代も

 

「阿賀野姉が……帰ってくるの……?」

 

と驚いていた。

 

「はい、間違いなく……これを……」

 

明久はなんとか端末を操作して、能代に見えるようにした。そこには、少々の疲弊はあれども無事に保護と記載されている。

そこに、不知火が駆け込んできて

 

「司令! 今治療を!」

 

と救急箱から、痛み止めの注射を取り出した。

 

「……天龍さん……足柄さん……亡くなった娘達は、非常に残念に思います……亡くなっていては、僕にはどうする事も出来ません……ですが、此れからは……僕は、絶対に誰も死なせません……僕の誓いです……川内さんも……亡くなった先代神通さんは、決して帰ってきません……ですが、目の前に居る神通さんを……見て上げてください……度々、神通さんから……相談されてたんです……川内さんが、中々話してくれないって……確かに、川内さんと一緒に過ごした記憶は無いかもしれません……ですが……姉妹じゃないですか……」

 

そこまで告げた直後、明久の口から血が溢れた。それを見た不知火は

 

「これ以上は喋らないでください! 内臓にダメージがあります!」

 

と明久に鎮痛剤を打った後、更に鎮静剤を打った。

そして、無線で

 

「医療班! 急いで執務室に! 司令が負傷です!」

 

半ば叫ぶように要請した。

最後に明久は、薄れゆく意識の中で

 

「……僕は……信じなくても、いいです……けど、同じ鎮守府の仲間は、信じてあげてください……」

 

と告げて、意識を失った。

それから約2週間、明久は意識が戻らなかった。

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