明久は不知火と一緒に、鎮守府に配備されていたトラックに乗り込み、不知火がトラックの鍵を回すと
「目的地は?」
「近くの大きいお店か商店街」
とカーナビに入力し、お店を検索。そこに向かった。
しばらく走り、トラックは商店街の駐車場に停めた。
そして二人で、商店街に入るが
「……シャッターが多いね」
「どうやら、前提督はかなり高くの料金を漁業組合や海運業に要求していたようです」
「……それで、こんなに廃れたら意味無いでしょ」
商店街は開いているお店の方が少なく感じる程に、シャッターが閉まっていた。しかも、開いてる店の店員は制服姿の明久を睨んでいる。しかし、先ほどの不知火の話から納得してしまう。
「……恨まれてるだろうけど、行こう」
明久はそう意気込むと、まず一番近くの八百屋に向かった。名前は、《源六八百屋》と書かれている。
「すいません……」
「あぁ? けっ、あの鎮守府の使いか? 何度も言ってるが、あんたらみたいなグズに卸す野菜なんざねぇよ! とっとと失せろ!! それとも、他の店みたいに潰すか!?」
明久が声を掛けると、中に居た半袖の大柄な男性は明久の格好を見て罵倒してきた。
「……ちょっと待ってください。他の店みたいに潰すって……」
「ああ!? てめえらが、あんな連中を雇って、嫌がらせや実力行使してきたんだろうが!! 忘れたとは言わせないぞ!?」
それを聞いた明久は、不知火の方に向いて
「不知火ちゃん」
「……大本営に知らせて、罪状を追加させます」
どうやら不知火も知らなかったらしく、不知火は端末を取り出して操作した。その間に、明久はその男性に近づき
「……大変、申し訳ありませんでした」
と土下座した。明久の行動に、男性が驚いているが明久は構わず
「知らなかったと言っても、信じてもらえないでしょう……僕の土下座一つで、許してもらえるとも思えません……本当に、すいませんでした……!!」
「ちょ、ちょっと待て……その服……まさか、提督か?」
どうやら、男性は明久の制服が提督が着る物だと気付いたようで、明久に問い掛けた。すると、明久は
「はい。前の提督が逮捕され、新しく僕が提督になりました……鎮守府の建て直しの為に、直接此処に来ました」
土下座したまま、答えた。
「……お前、若いな……幾つだ」
「今年で18歳です……提督の適性があると分かって、簡易勉強してからこの島の鎮守府の建て直しの為に着任しました」
それを聞いた男性は、不知火を見て
「……一つ聞く……お前にとって、艦娘はなんだ?」
と問い掛けた。
すると明久は、頭を上げてから
「……大切な仲間です……! 兵器だって言う人も居ますが、僕には同じ人間にしか見えません……! ただ、少し特殊な力を使える人間の女の子にしか見えません!」
と断言した。
それを聞いて、男性は少し間を置いてから頭をガリガリと掻いて
「……本当に、あの鎮守府の建て直しに来たんだな?」
と不知火に問い掛けた。
すると不知火は
「ええ、本当です。今回この商店街に来たのは、鎮守府の全艦娘に料理を振る舞う為に食材を購入しに来た次第」
と告げた。
「……前の提督は、自分達の分だけよこせって言ってたから売らなかったが……お前を信じて、売ってやる……何を何人分作るつもりだ」
「とりあえず、カレーを作るつもりです……人数は」
「128名になります」
どうやら、この男性は前の提督の時には売らなかったらしい。しかし、明久を信じて売ってくれるという。
そして、明久と不知火から料理と人数を聞き
「外のお前ら、聞いたな? 俺が野菜を出すから、肉と米。後はカレー粉を用意してくれ」
と店の外に視線を向けた。
明久と不知火が振り向くと、覗き込むように数人の男女が居た。それぞれ、前掛けに《乃木原精肉店》と《笠原米店》。そして、《滝本雑貨屋》と書かれている。
恐らく、商店街の他の店の人なんだろう。
「おい、米ちゃん! こんな奴の言葉を信じるってのか!?」
「俺は信じても良いって思った……少なくとも、前の提督と違って目が清んでる」
精肉店の男性が明久を指差しながら問い掛けると、八百屋の男性は腕組みしながら答えた。そこに、お米屋の女性が
「確かに……艦娘ちゃん達を仲間だって言ってたしね……それに、言動に嘘を感じないわ……私も信じても良いって思った」
「そうね……さっきの土下座だって、誠心誠意込もってるように見えた……私も信じたいわね」
お米屋の女性に続き、雑貨屋の女性も同意した。
しかし、精肉店の男性は
「だが! 前の提督がやった事を忘れたのかよ!? 店に対する嫌がらせや、漁業組合と海運業会社への法外な料金の要求! それに、発電所が鎮守府敷地内に有るからって、年々倍々に増える電気代! それを払えなくなった所には、若い女を差し出すように要求しやがった! そして、未だに帰ってきてないんだぞ!?」
と涙を流しながら、怒鳴った。それを聞いた明久は
「不知火ちゃん」
「……反社会的団体に繋がっていた可能性が高いですね……近い内に、警察にも連携を打診します」
「お願い」
不知火が頷くのを確認して、明久は一同に歩み寄った。
「皆さん、前提督が本当にすいませんでした……僕が頭を下げただけで許してもらえるとは、思っていません……ですが、約束します。必ず、前提督には相応しい罰を与えます」
「……ガキが、生意気言ってんじゃ……!」
精肉店の男性が拳を振り上げたが、それは精肉店の男性の後ろから伸びてきた手によって阻まれて
「やめねぇか、辰坊……こいつに罪は無いんだからよ」
「と、徳さん!?」
新たに現れたのは、筋肉質な体躯の老人だった。
年齢は60代だろうか。短い白髪と筋肉質な体躯が特徴的で、前掛けには《前谷金物》と書かれている。
「はじめましてだな、提督さん。俺はこの商店街の会長をしてる
「あ、は、はじめまして……今日鎮守府に着任しました。吉井明久です……」
明久は自己紹介しながら、徳重と握手した。
その見た目通りに、力強くゴツゴツとした手だった。
「悪いな、ウチの若いのが……」
「ああ、いえ……前の提督が相当悪いことをしていたのは、お話で分かります……」
「んで、本当に捕まったのか?」
「はい。主に、艦娘に対する酷い扱いが理由ですが……皆さんの証言があれば、罪状を追加できます」
そう言っている間にも、不知火が端末を操作している。それを確認した明久は
「不知火ちゃん。大本営に改めて捜査班を要請して、鎮守府全体を調べてもらおう。それと、前の提督に尋問するように申請も」
「既に手配してます」
「ありがとう」
不知火に、いくつか指示をした。それを見ていた、徳重が
「それで、食材だったな? 他に、入り用はあるか?」
と問い掛けた。それを聞いた明久が、不知火を見ると
「今しがた来た連絡によれば、大きなお鍋と包丁が欲しいと」
「人数を考えると……アレ位だな……包丁だったら、後で俺の店に来な。好きなの選ばせてやる」
「あ、ありがとうございます」
徳重は頷き、精肉店の男性を見た。
「なあ、辰坊……この坊主を信じてみねぇか? 前の提督とは、全然違うのは確かだ」
「どうか、お願いします……前の提督が連れていったという女性達も、必ず探します……ですから、どうか……」
明久がまた頭を下げると、精肉店の男性は
「……お前を信じて、出してやる……だから、必ず探してくれ……俺の娘や、居なくなった若い女達を……」
「……必ず」
涙ながらの言葉に、明久は頷いた。
こうして、明久はなんとか商店街の協力を取り付ける事に成功したのだった。