爆破事件から、約一ヶ月後。明久は職務に復帰した。
そして最初仕事は、戻ってきた艦娘達との面会だった。
「高雄型重巡洋艦一番艦の高雄です!」
「阿賀野型軽巡洋艦一番艦、阿賀野です!」
「絃神島鎮守府提督の吉井明久です。二人の帰還を祝福します……おかえりなさい」
明久は優しく、二人に告げた。
前提督により、違法に人身売買された艦娘の内の二人。それが、高雄と阿賀野だ。
他にも十数人いる事が分かっており、そちらは鋭意捜査中だ。
すると高雄と阿賀野の二人は、一瞬目を合わせてから
「提督……私達の妹が、ご迷惑をお掛けして」
「ごめんなさい」
深々と頭を下げた。
「そんな、謝らないでください」
「いえ!」
「私達の妹のせいで、提督は一ヶ月近く入院していました……どんな理由でも、それは……」
高雄と阿賀野は、泣きそうな表情を浮かべながら、頭を下げ続けていた。特に高雄は、真面目な性格故に一入だろう。
「それに提督は、私達を助ける為にほうぼうに根回しをしてくれた、と聞いています……」
「それなのに……」
「ああ、それは僕の仕事と言いますか……僕がしたかったから、しただけですし……何より」
そこまで言うと明久は、二人の頭に優しく手を置いて
「家族は、近くに居てこそです……僕にも姉さんが居るけど、国際宇宙ステーションの研究所で深海棲艦に関する研究してるし……父さんと母さんは……アメリカで死んだから……」
明久の両親は、約十年前にアメリカにある研究所に居たのだが、深海棲艦の大規模侵攻により、当時のアメリカ海軍は壊滅的大打撃を被り、国土の広範囲で爆撃を受けた。
その中に、明久の両親が居た研究所があり、脱出が間に合わずに死亡。
姉の晶は脱出後、日本に一度戻ってきたと思ったら深海棲艦に関する研究を開始し、そのまま国際宇宙ステーションの研究区間で深海棲艦の研究をしている。
もうかれこれ数年は会っていないが、元気だというのは手紙で分かっている。
「僕はまあ、慣れてしまいましたが……出来るなら、家族は一緒に居た方が良いかな、って思ったんです……それに、僕の仕事はこの鎮守府の運営と復興……二人だけじゃないですが……二人は前提督の被害者です……だから、それを助けるのが僕の役目だと考えたんです」
前提督の犯した様々な犯罪。それを調査していく内に、艦娘の違法売買も把握し、現在憲兵隊に全面的に協力し、一人ずつ救助している。
高雄と阿賀野の二人は、ある製薬会社に売られていて、救助されたのだ。
勿論、その製薬会社は軍の捜査が入って、営業停止。近いうちに倒産するだろうが、明久の知った事ではない。
更に少し前に、飛龍と蒼龍も保護したと連絡が入っている。
飛龍と蒼龍の二人は、前提督が懇意にしていたある陸軍の将校が、二人を情欲の対象として欲した為、前提督が高額で売ったのだ。
その陸軍将校は逮捕され、余罪が他にも大量に見つかったので、現在裁判中との事。
それはさておき
「僕の最優先の仕事は、この鎮守府の再建……手伝ってくれますか?」
姿勢を直した高雄と阿賀野の二人に、明久はそう提案した。
「はい……!」
「阿賀野達でよければ、全力で頑張ります!」
高雄と阿賀野の二人は、そう言いながら敬礼したのだった。