おバカの提督業   作:京勇樹

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負の遺産

 

 

 

その日明久は、地下資料室に来ていた。

資料室は執務室再建の煽りで一時的に資料が地下資料室に移動しており、明久は戦闘資料の確認に来ていた。

 

「なるほど……この海域には、戦艦が多いのか……だったら、作戦は……」

 

と明久は考えながら、壁に背中を預けた。

その時、違和感を覚えた。

 

「ん? ……この壁、コンクリじゃないぞ?」

 

温度もだが、感触に違和感があったのだ。だから明久は、端末で不知火を呼んだ。

 

「どうしました、司令?」

 

「この壁、普通じゃない」

 

明久の言葉に、不知火は壁に触れて

 

「……確かに、コンクリではないですね……破砕突破しますか?」

 

「お願い」

 

「では……ふっ!!」

 

明久が頼むと、不知火は拳を壁に叩き込んだ。

すると壁のあった場所の先には、何らかの研究施設があった。

翌日、大本営から来た調査班が中に入り、調査を開始した。明久と不知火は、その調査に同行しており

 

「これは……生体ポッドってやつかな……」

 

「そうですね……最近司令が図書室に置いた漫画とやらに、似たような物がありましたね……」

 

その研究施設には、生体ポッドが十数基並んでいた。しかし、どれも既に空だった。

 

「提督殿、こちらのパソコンには、データは残っていません。機材に直接繫いで、調べてみます」

 

「お願いします」

 

調査班の一人が、明久に報告した後に生体ポッドに端末を繫いで調査を始めた。

それを見送りながら、明久は不知火と部屋の奥に向かう。

 

「……なんか、不自然にスペースがあるね……」

 

「ええ……違和感がします」

 

一番奥まで来た二人は、違和感を覚えていた。

そこまで一定間隔で生体ポッドが置いてあったのだが、そこは不自然に開けていた。

二人はその違和感を探るために、壁を触ったりしながら歩いた。そして明久は、壁際で鞘で床を叩いて、気付いた。

 

「ここ、何かある」

 

「調査班!」

 

明久が呟くと同時に、不知火が調査班を呼んだ。

その場所に来た調査班は、不知火の指示を受けて捜査を開始。すると、一人が

 

「ここに、ボタンがあります!」

 

「その人以外は、念の為に離れて! 押して下さい!」

 

明久は近くの人員を後退させると、ボタンを押すように指示し、見つけた人員はボタンを押した。

すると、壁が上下に別れて更に奥が出てきて、その先を見た一同は息を飲んだ。

 

「これは……深海棲艦の、死骸……!?」

 

「駆逐艦級に軽巡洋艦級……重巡洋艦級に戦艦級ですね……」

 

不知火は警戒しながらも、ポッドの中に浮かんでいる死骸を見た。

死骸と判断したのは、どれも大きな穴が空いてたりしていたからだ。

 

「装甲板の破片とかは回収出来たって聞いたけど、死骸を回収したって、聞いた事ある?」

 

「いえ、自分はありません。初めてです」

 

座学で聞いた事を思い出した明久は、調査班の責任者に問い掛け、責任者も首を振った。

すると、一人が

 

「提督、隊長、このパソコンの電源は生きてます!」

 

と報告してきた。

 

「なに!?」

 

「調べて下さい」

 

「了解!」

 

指示を受けた人員以外は、新たな区間の調査を開始した。数分後

 

「ロック解除出来ました!」

 

とパソコンを調べていた人員が声を挙げた。

それを聞いた明久と不知火、調査班の責任者もパソコンに近寄り、一緒に調べ始めた。

そして、悍ましい内容を見た。

 

「な、なんという事を……!」

 

「深海棲艦の、細胞移植……!?」

 

なんと前提督は、艦娘に深海棲艦の細胞移植実験を繰り返し行なっていたのだ。

つまり、空のポッドは艦娘が入れられていた物だろう。

しかも、日誌のようなものが見つかり、写真も添付されていたのだが、それを見た明久は冷静さを保つので精一杯だった。

前提督は、艦娘に深海棲艦の細胞移植をする事で、劇的に強化し、改ニになれるか超えると考えたらしい。

死骸は時々戦闘に出した艦娘に回収するように指示していたらしく、多大な犠牲を出しながらも回収。

口封じを兼ねて実験に使い、全員が発狂し、異形化して死亡した、と記載されていた。

 

「……深海棲艦の死骸は、大本営に引き渡します……ついでに、その実験データも全て……」

 

「はっ……提督殿の判断に従い、こちらで全て回収します」

 

明久の怒気に気付いたのか、責任者の判断は早かった。素早く調査班の通信役に駆け寄り、話し始めた。

すると不知火が

 

「司令……手の力を抜いてください……怪我を治療します」

 

と明久の右手を、優しく包んだ。

気付けば、明久は怒りで爪が食い込む程に右手を握り締めていた。

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