明久が鎮守府に着任して、もう少しで半年という時。二人の艦娘が帰還し、新たに一人の海外艦娘が着任した。
「空母、飛龍です」
「同じく、蒼龍です」
正規空母艦娘の飛龍と蒼龍。
第二次世界大戦時、同じく正規空母の赤城や加賀と共に栄光の第一、第二航空戦隊を担い、数々の戦いを勝利に導いた。
そしてこの二人は、前提督が陸軍のある部隊に売り払っていた。
その部隊は、独自に開発した対深海兵器用の的を探していた。それを知った提督は、反抗的だった飛龍と蒼龍を売却したのだ。
「はじめまして……今の絃神島鎮守府の吉井明久です……まず、申し訳ありませんでした」
その二人に対して、明久は深々と頭を下げた。
「いやいや」
「君は悪くないよ」
「しかし……」
飛龍と蒼龍は、謝罪する明久の頭を撫でてきた。
まあ、見た目はその二人の方が年上ではある。
「私達は、君が見つけてくれた資料が有ったから助かったんだし……」
「君には、感謝してるんだ」
この二人は、初日に明久が机の隠しスペースから見つけた資料から元帥と調査班が特定した艦娘の一部である。
元帥は自ら陣頭指揮を取り、憲兵隊と海軍海兵隊と共にその陸戦部隊を襲撃。
その部隊の指揮官陣を逮捕し、その部隊に売られた艦娘達を保護した。
それを二人は、元帥から直接謝罪と共に聞いていた。
そうして二人は、退役と帰属から帰属を選択した。
「本日を持ちまして、私達は原隊に復帰!」
「以後、吉井提督の指揮下に入ります!」
「……ありがとうございます」
飛龍と蒼龍は笑顔を浮かべながら敬礼し、明久は答礼した。
そうしていよいよ、明久は一人の海外艦娘に視線を向けた。
戦艦娘、ビスマルク。
旧ドイツ海軍の戦艦の艦娘である。
この艦娘は、先日憲兵隊により逮捕されたある提督が自身のストレス発散のサンドバッグ代わりに地下牢に吊るされていた。
その提督は日常的に艦娘達に暴力を振るい、特に気が強い相手を屈従させるのが好き、という輩だった。
しかしこのビスマルクは、如何に殴られようがその全てに耐え、保護された。
その後はまだ戦う意欲が有り、前線復帰を希望した為に、復興の手助けをする、という条件付きで絃神島鎮守府に配属となったのだ。
「はじめまして、吉井明久です」
「ビスマルクよ……貴方、随分と腰が低いわね? 本当に軍人?」
明久が自己紹介しながら頭を下げると、ビスマルクは思わず不思議そうな表情を浮かべた。
そこに、今まで黙っていた元教官の矢矧が
「実際、一年位前までは料理学校の学生だったわ。適性が高いから、半年の簡易教育をして配置されてるの」
と説明した。
「は? 料理学校の学生が提督に? どういう経緯よ」
「確か、僕が居た料理学校に料理人確保の為に軍のお偉いさんが来てて、そのうちの一人が元帥だったんだけど、その元帥が僕に妖精が懐いてるのに気付いて……だったかな」
明久は当時を思い出しながら、実はその時に護衛役として同行していた矢矧は頷いた。
「驚いたわよ……両肩に五人位妖精が乗ってる人が居たんだから」
矢矧としては、そんなに懐かれた人は初めて見たから驚愕。そんな矢矧のリアクションに気付き、元帥も明久に気付いた。
当時妖精を知らなかった明久は、なんだろ、この小さいの? 位にしか考えていなかった。
その後、元帥により明久は提督として迎え入れられて、今に至る。
「……つまり、本当にただの民間人だったの?」
「そうなりますね」
話を聞いていた蒼龍からの問い掛けに、明久は頷いた。
「……それなのに、ここの復興をする理由は?」
「知ってしまったからです……艦娘という存在を……深海棲艦に手も足も出ない僕達の代わりに戦ってくれる貴女達を、僕は尊敬します……そんな艦娘達を、虐げ、自分の欲求で使う奴を、僕は許せない……だから、復興を引き受けました」
ビスマルクからの問い掛けに、明久は毅然と答えた。
そんな明久の言葉に、飛龍、蒼龍、ビスマルクの三人は一度顔を見合わせてから一斉に敬礼した。
それに明久が驚いていると
「貴方の思いは、尊敬に値するわ。
「だから、私達は全力で君を補佐します」
「期待しててね」
三人は、明久の真剣な思いに感銘を受けて、明久の指揮下に入る事を決めたのだ。
着実に、明久は指揮下の艦娘を増やしていた。
だが、まだ一部の艦娘達は明久に反抗的な態度であり、明久はその艦娘達とも仲良くしたいと考えていた。
その切っ掛けとなるのは、もう少し先になる。