その日明久は、朝から鎮守府全体を奔走していた。
明石と夕張が新しい近接兵装を勝手に開発していて、工廠で爆発を起こし、一部の艦娘が喧嘩してグラウンドにクレーターを作り、新たに配属された兵士数人がエリート思想でイザコザを引き起こしたりと、仲裁と解決に奔走。
疲れた明久は、執務室のソファで寝転がっていた。
「まだ午前中なのに……凄く疲れた……」
「お疲れ様です、提督」
そんな明久を、潮が労っていた。
不知火は明石と夕張を座敷牢に放り込み、工廠の復旧作業の指示出しをしていて、時雨と夕立は喧嘩していた艦娘達を説教し、グラウンドの穴埋め作業の監視。
矢矧と比叡は新たに配属された兵士達を英才教育(スパルタ)中。
朝潮が執務室から事務室に書類を運んでいて、手の空いていた潮が労っている最中だった。
その時
「失礼する」
と一人の艦娘が入ってきた。
長門である。
「あれ、どうしました?」
「いや、実は……配送室から提督宛に大きな荷物が来たと連絡を受けて、報せに来たんだ」
「大きな荷物?」
長門の言葉に、明久は首を傾げた。
特に配達されるような物を頼んだ記憶が無かったからだ。だが、知ったからには配送室に向かう事にした。
潮と長門を連れて配送室に来た明久は、その荷物を見た。
確かに、かなり大きい木箱で、人一人が余裕で入れる大きさだ。
(はて、本当に覚えが無いんだけども……)
明久はそう思いながら、荷物に近づいた。
「一応こちらで、金属反応が無いのは確認しました……ですが、その……」
「? どうしました?」
「その……生体反応がありまして……」
「生体反応?」
いよいよ、中身の検討がつかない。
そうしている間に、長門が
「少し離れてろ。私が一気に開ける」
と木箱に近づいた。
その言葉に従い、明久や配送室の人員は少し離れた。
すると長門は、木箱の蓋をガッチリと掴み
「はっ!!」
と気合と共に、蓋を思い切り開けた。そして、中を見ると
「貴様、何者だ!!」
と声を上げながら、木箱の中から赤髪の長身の男性を引っ張り出した、その男性を見て、明久は
「……いや、何やってんのさ、雄二」
と思わず呟いた。
その後、ひとまず雄二を軽く拘束して取調室に連行し
『それで、貴様は何者だ』
『坂本雄二。一応、ここの提督の高校時代の同級生だ』
と長門が雄二を取り調べしているのを、隣室で明久は見ていた。
「司令、本当にお知り合いで?」
「うん。間違いないよ。坂本雄二。僕の高校生時代の同級生で、参謀役の悪友だったね」
聞いてきた潮に、明久は軽く説明した。
高校生時代の同級生で、明久が居たクラスの代表であり参謀役。そして何より悪友だった。
高校卒業後は幼馴染の
『それで、何故あのような方法で来たんだ。貴様は』
『自由に、なりたかったんだ……』
『……は?』
『翔子の近くから逃げて、自由になりたかったんだ! 何時も監視されて、自由な時間が無かったんだ! そんな状況に嫌気がさして、提督になったって聞いた明久の近くなら何とかなるって考えたんだ!!』
雄二の魂の咆哮に長門は固まり、明久はズッコケていた。
「え、えぇ……」
「ある意味雄二らしいけど……」
潮も呆然とし、明久はヨロヨロと立ち上がった。
その時、明久はある事を考えつき、潮を伴って取調室に向かっていき、入るなり
「雄二、とりあえず、条件がある」
「なんだ!? 俺に出来る事なら、色々やるぞ!?」
「うん。僕の鎮守府の作戦参謀役をやってほしいんだ」
まるで縋るように見てきた雄二に、明久はそう告げた。
実は各鎮守府には、提督を補佐する参謀が駐在している。
しかし、絃神島鎮守府には居ない。その理由は、人材不足にあった。
年々育成はしているが、やはり一朝一夕には育たず、大本営の参謀本部から派遣していて、なんとか回している状況だった。
その中で、独自にではあるが、明久が参謀役を得れば、人材不足の一助になるかな、と明久は考えたのだ。
「今まで、僕と艦娘の娘達で一生懸命考えてなんとかしてたんだ。雄二なら、資料から考えられるでしょ?」
「まあ、考えられなくはないな。そういう事なら、確かに得意だ」
「まあ、流石に霧島さんに完全に報せないって訳にはいかないけど、僕の鎮守府で作戦参謀役として雇うって連絡しても、ここは軍事施設だから、簡単には入れないから、ある程度は自由な時間もある。どうかな、雄二?」
明久からの問い掛けに、雄二は少し考えて
「それなら、悪くないな。んじゃ、よろしく頼むぜ、提督殿」
と明久の条件を受け入れたのだった。