明久と不知火は、商店街の人達から肉、野菜、お米、カレーのルーを大量に貰い、トラックに積み込んでから、徳重のお店から三徳包丁と肉切り包丁を購入。
そして、徳重に案内されてトラックをある場所に移動させた。そこは、商店街の端にあるかなり広い広場だった。
広場の端には、大きな倉庫もある。
「ここは……」
「前はここで、バーベキューや盆踊りとかしてたんだ……ただ、若い女性が少なくなってからは……な……」
明久の言葉に徳重は説明しながら、倉庫の方に向かっていき、ポケットの中から鍵の束を取り出した。
それを少し弄ると、目的の鍵を見つけたようで鍵穴に差し込み、解錠し開けた。
「あちゃ……しばらく使ってないから、埃っぽいな……タオルで鼻と口覆っておけ」
徳重はそう言って、明久と不知火に用意していたらしいタオルを差し出した。二人がタオルで鼻と口を覆うと、徳重は二人を伴って奥に進んだ。
すると、一際大きな鍋を見つけた。
「うわ、大きい……」
「これは、さっき言ったバーベキューやらの時に汁物やカレーを造るのに使ってたんだ。これなら、大人数向きだ。貸してやる」
その大鍋は、全部で3つある。一つをご飯に使えば、いけるだろう。トラックも10tクラスなので、ギリギリではあるが載るだろう。
「さて、貸す前に洗わないとな。外に運ぶか」
「不知火にお任せを」
不知火はそう言って、軽々と一つ持ち上げた。
「お、おお……艦娘って、すげぇ力持ちなんだな……」
「この位なら、軽いです」
徳重は驚くが、不知火は淡々と答えながら大鍋を倉庫から運び出し、一度外に置いた。そして三人で、水洗いし
「よし、後はお嬢ちゃんに頼めばいいか?」
「ええ、お任せを」
不知火は短く答えてから、大鍋をトラックに載せていく。そして、動かないようにしっかりと固定し
「食材や包丁、大鍋。融通していただき、ありがとうございました。このお礼は、いずれ」
「おう……頑張れよ、ぼうず」
そこで徳重と別れて、明久と不知火は鎮守府へ戻り始めた。少しすると、不知火が
「先ほど、大本営から捜査チームを派遣する。と連絡がありました」
と明久に報告した。
それを聞いて、明久は
「前の提督がしたこと……全部明るみにして、行方不明の女性達も見つけないと……」
と決意し、それには不知火も同意して頷いた。
暫く走り鎮守府に到着すると、二人が乗ったトラックはそのままグラウンドに入った。
グラウンドは様々な訓練が出来るようになっているために、かなりの広さを誇る。
そのグラウンドには、かなりの艦娘達が集まり何やら準備していた。
実は出発する前に、明久から時雨と夕立に連絡していたのだ。グラウンドに、簡易的で構わないから、調理場や食べられる場所を用意しといて、と。
その連絡の甲斐あって、一応それらしいのは少しずつ出来ていた。
「お待たせ、皆。今から作るから、待っててね」
明久はそう言って、上着を脱いでから調理に取り掛かった。手際よく効率的に、肉や野菜の下処理をしていく。
すると、重巡洋艦娘の古鷹が
「あの……提督は、何をしているんですか?」
と不知火に問い掛けた。不知火はお米を研ぎながら
「カレーを作っています」
とだけ告げた。それから、小一時間後。
「よし……後は、煮込めば大丈夫」
明久と不知火、時雨は汗を拭いて大鍋の前に居た。
ご飯は既に炊けており、後は蒸らすだけになる。そこに、睦月型駆逐艦のネームシップ艦娘。睦月がやってきて
「いい匂いがするにゃしぃ……!」
と期待が籠った目で、煮込んでる鍋を見た。
明久は、そんな睦月の頭を優しく撫でながら
「もう少し待っててね」
と言って、水分補給した。
そこに、右目に眼帯をしている軽巡洋艦娘の木曾が歩み寄り
「どうせ、変な薬とか入れてるんだろ。俺は信用してないからな」
と明久を睨んできた。
だが、次の瞬間
「そんな事はしない! 料理人として、料理に薬を入れる? そんな事、言語道断! そんな事する位なら、自分の命を断つね! そんな冒涜をする奴は、料理を作る資格はない!」
と力強く、明久は断言した。
「料理人って……お前、提督だろうが」
「彼は、短期学習する前は料理学校に通っていまして、なんなら飛び級で卒業する。とすら言われてました」
木曾の言葉を聞いて、不知火が淡々と説明した。
「料理学校に通ってた!?」
「ええ……料理に関しましては、彼は既にプロ級の腕前なのは確かなようで……夕立さんを見てください」
不知火の言葉を聞いた木曾や他の艦娘達は、揃って夕立の方を見た。すると夕立は、待ちきれないという様子で大鍋を見ている。もし尻尾があったら、ブンブンと振っているのが予想出来る位だ。
「しかし彼は、たまたま高い提督適性がある事が発覚し、強制的に短期学習コースに編入され、私たち三名の推薦もあり提督になり、ここの復興を長官より任されました」
長官から、直接復興を任された。
それは、明久が期待されているという証拠である。
「……もし、提督適性が無かったら、彼は間違いなく有名な料理人になったでしょう……実は、訓練校や大本営の料理人達には彼に影響を受けて、彼に師事した料理人が多くいました……彼の料理人としての腕とプライドは本物です」
不知火がそう言っている間、明久は大鍋の様子を確認しながらかき混ぜている。そして、指先で少し舐めると
「うん……ご飯の蒸らしも十分だろうし……皆、出来たよ!」
明久が大声でそう言うと、夕立が真っ先に並んだ。
「早いね、夕立ちゃん……はい」
差し出されたお皿にご飯をよそい、そしてカレーを掛けてから、夕立に差し出した。受け取った夕立は、近くに用意されていた椅子に腰掛けて
「いただきますっぽい!」
即座に一口食べた。
すると
「美味しいっぽい!!」
と満面の笑みを浮かべた。その光景に、睦月や文月が迷っていると
「はい」
と二人の前に、時雨がお皿を差し出した。すでに、カレーライスがよそわれている。明久は近くの机の上に用意されているお皿に、次々とカレーライスをよそっていく。
それを見て、次々と艦娘達がカレーライスを取っては椅子に座って一口食べて
「美味しい!」
「初めて食べた!」
と嬉しそうに、食べていく。
そして、時雨からカレーライスを受け取った木曾は、恐る恐るといった様子で、カレーライスを口に運び
「旨い……!」
と無我夢中に食べ始めた。
それを見た明久は、嬉しそうに自身もカレーを食べ始めたのだった。