明久達の作戦から、数日後の大本営。
「彼らはやってくれたな……」
「しかし長官! 今までにない作戦です!」
「そうです! 余りにも奇策過ぎです!」
作戦に関する報告書を読み終えた長官は、その報告書を机に置いた。すると、集まっていた参謀達から、次々と批判的な声が上がる。
すると長官は
「では聞くが……彼らのように少数の艦隊で、これ程の大戦果を挙げられるかね? しかも、従来通りの作戦で」
と参謀達に問い掛ける。
その問い掛けに、参謀達は押し黙ってしまった。
「彼らは、私の期待以上の戦果を挙げてくれた……しかも、自前の戦力のみでだ……それも、未知の姫級をも撃破するという快挙も成し遂げた」
「今回の姫級は、陸上型。更に、物資の集積と管理に特化した姫級と判明しました。そこから、集積地棲姫と呼称する事にします」
明久達の艦隊が撃破した姫級。集積地棲姫は、その遺骸を回収班が回収。その後、本土の研究施設に搬入され、現在研究中だ。
「今回彼らの攻擊で、新たに判明した事もある……」
長官がそう言うと、部屋の壁面モニターに明久達が作戦に投入した兵器が表示された。
神凰、まなづる改、そしてVLSと使い捨てだがウォータージェット推進器。
「これらの兵器の設計図は?」
「はっ! 絃神島鎮守府の明石と夕張から詳細な設計図と回収班が海底から回収した発射機を現在解析しています。ですが、作戦成果から考えるに、非常に有効だと思われます」
長官からの問い掛けに、一人の参謀が端末を操作しながら答えた。
「……間違いなく、彼らは新しい風だ……今まで我々が考え付かなかった作戦と兵器……物資の融通と艦娘の優先配備をしても、罰はあたるまい……ただし、強硬派に知られる事は避けよ……そろそろ、奴らの行動は目に余るレベルになってきた」
長官はそう言うとある報告書に目を向けた。
そこには、月間の犠牲艦娘の数が表記されているのだが、その人数は800人を超えていて、九割強が強硬派が特攻などの作戦に費やしたという報告書。
「……憲兵隊は?」
「は……土屋少佐率いる部隊により、内部の腐敗を処断中……報告によれば、今月中には片付くと」
「そのまま続行させよ……歴史家達が、後世で私をどう書くかは、分からないな……」
長官はそう言って、窓から青空を見上げた。
その頃、明久は不知火と一緒に地元自治体にある通達をしに向かっていた。
「一部の方々は知っているようですが……僕達は数日前、南絃神島の解放に成功しました」
「……という事は、漁場や生け簀が解放されたってことか?」
「はい。作戦後に僕の艦隊の娘達が、多少の破損はあれども生け簀の無事を確認しました」
明久の言葉を聞いた漁業組合の漁師達は、一斉に歓声を挙げた。南絃神島付近は肥沃な海域で、多くのプランクトンが居るのと、海流の関係で様々な魚が捕れる良質な漁場だったのだ。
「ありがとうな、提督……おかげで、前の水準に戻りそうだ」
「いえ……元はと言えば、前提督の無茶が原因……ようやく復興が一歩前進したに過ぎません」
秋川武文に、明久は自身の思いを告げた。
南絃神島を喪った漁業組合の水揚げ量は、四分の一にまで減少し、それにより絃神島の魚屋での魚の値段も倍以上の値段に上がっていた。
水揚げ量が戻れば、その値段も戻るだろう。
「それじゃあ俺は、組合員達を連れて本部に一度戻って計画を練る」
「はい。頑張ってください」
秋川武文は、まだ騒いでいた漁師達を集め、漁業組合の本部へと戻っていった。
それを明久は見送り、不知火と一緒に鎮守府に戻る為に自治体の集会所から出た。
「さて……この後の予定はなんだったっけ?」
「はい。鎮守府に戻ったら、南絃神島の警備に関する調整があります」
「あー、そうだったね」
不知火の話を聞いて、明久は後頭部を掻いた。
そして車に乗ろうとした明久だったが
「司令!」
と不知火が明久を抱えて、車から引き離すように跳躍した。その直後、その車が爆発した。
「司令、ご無事で!?」
「な、なんとか……」
不知火の咄嗟の機転で無事だった明久は、燃え盛っている車を見た。集会所から、まだ残っていた地元の人達が出てくる。
その人混みの中から、前谷徳重が現れて
「大丈夫か!?」
「は、はい。なんとか……」
「一体、何が……」
「分かりません……」
徳重の言葉に、明久は呆然としながら呟いた。
そんな中、不知火は
(強硬派ですね……予想外に動きが早い……)
と危機感を募らせていた。