おバカの提督業   作:京勇樹

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驚愕の発見

明久は不知火と一緒に執務室に行くと、まず執務室の趣味の悪さに顔を歪ませた。

明らかに金を掛けたと分かる豪華な装飾が施された、家具が置かれている。

それらを見ながら明久は、とりあえず執務机に近づき

 

「こんな事にお金を使って……しかもこれら、絶対に給料以上掛かってるよ……」

 

「そうですね……確かに提督の給料は一般より高いですが、たった一年と考えたら分不相応かと」

 

それらを考えると、やはり後ろ暗い場所と繋がっているのは明らかだ。明久は椅子に座ると、机の引き出しを引いたのだが、違和感を感じた。

 

「どうしました?」

 

「……この引き出し……なんか、底が浅いなって」

 

そう言って明久は、机の上にあった定規を取るとまずは外側から計り、次に内側を計った。すると

 

「……2cm位浅い……確実に何かあるな」

 

そう言って、引き出しを外に引っ張り出した。すると、引き出しの一番奥面から不自然なコードを見つけた。

 

「これは……」

 

「……電話線……だけでは、ありませんね」

 

明久はその引き出しをひっくり返して、中身を全て出してから裏面を見た。すると、はじっこに小さな穴を見つけた。

 

「……これかな」

 

明久はそこに、手近な万年筆を刺した。

すると、板が外れて引き出しの中に一つのボタンだけの電話機とボタンを見つけた。

 

「……この電話は……」

 

「今は触らない方が良いと思います。恐らく、前提督と繋がりがあった人物に繋がっているかと」

 

明久は電話機を見るが、不知火が触らないように促した。確かに、何処に繋がるか分からないのに触りたくはない。

だから明久は、ボタンを見た。

 

「……押すよ?」

 

「はい」

 

不知火が頷いたのを確認してから、明久はそのボタンを押した。その直後、ゴゴンという重い音が鳴り、何かがスライドしたような音が隣の部屋。提督の私室から聞こえた。

 

「なんだ……」

 

「私が先に入ります」

 

不知火はそう言って、サブマシンガンを構えて私室のドアの前に陣取り、明久も拳銃を持ってその後ろに付いた。

そして、開けると

 

「……床に、穴が……」

 

「階段がありますね」

 

大きな部屋の真ん中に、地下へと続く階段があった。二人がその階段の前に立つと、電気が点いて長い階段が見える。

 

「どうしますか? 調査隊を待ちますか?」

 

不知火が振り向いて確認すると、明久は少し悩んで

 

「……行こう。何か、重大な物が見つかるかもしれない」

 

と判断し、不知火はその判断に頷いた。

そして二人は、階段を降り始めた。

狭く薄暗い為に、どれ程降りたかは分からない。しかし暫く降りると、鉄製のドアがあった。鍵は無いのを確認した不知火は、ゆっくりとドアノブを掴み

 

「開けます」

 

と明久に言ってから、ドアを開けた。

重苦しい音をたてながらドアを開けると、その先に見えたのは牢屋としか言えない場所だった。

 

「……地下牢屋?」

 

「なんだ、ここは……」

 

不知火と明久が困惑していると

 

「……誰、ですか……」

 

と誰かの声が聞こえ、二人は顔を見合わせてから一番近くのドアに駆け寄った。そして明久は、ドア上部の狭い隙間から中を見た。暗くてよく見えないが、部屋のベッドに誰か横たわっている。

 

「大丈夫ですか!? 今開けます!」

 

そう言うと明久は、ドアを開けようとドアノブを掴んだ。だが回らない。すると、不知火が

 

「退いてください!」

 

と明久に離れるように促し、明久がドアの前から離れた。その直後、そのドアに思い切り蹴りを放ち、ドアは蝶番部分から壊れて倒れた。

ドアが壊れたのを見た明久は、すぐに中に入った。

部屋は狭く、ただ粗末なベッドとトイレがあるだけ。

そのベッドの上に、ボロボロの服を着た若い女性が居た。

身長は明久と大差ないが、体は痩せ細り、体重は軽かった。

 

「大丈夫ですか!? しっかりしてください!」

 

「あ……」

 

目の焦点が合っておらず、長期間暗い部屋に居たのか、明久を上手く捉えられないようだ。

 

「不知火ちゃん! 手を貸して!」

 

不知火は直ぐに動き、その女性を持ち上げた。

すると明久は

 

「まさか……他の牢屋にも……!」

 

と気付いた様子で、その牢屋から出ると次々と他の牢屋も中を見た。そして、全ての部屋に誰か居るのを確認し

 

「まず、その女性を急いで医務室に搬送! そうしたら、何人かの憲兵を連れてきて、救助作業!」

 

「分かりました!」

 

不知火は明久の指示に従い、まず先にその女性を抱えて一気に階段を駆け上がっていった。その間に明久は、不知火が置いたらしい刀を腰に差して

 

 

「全部、叩き斬る……!」

 

と呟いた。次の瞬間、明久の姿が消えてダンダンダンっ! という地面を強く蹴る音と甲高いシャリンという音だけが響いた。そして、明久の姿が牢屋の端に現れて

 

「……秘剣・音断(おとたち)……!」

 

と呟きながら、明久が刀を鞘に納めた。次の瞬間、ドアは全て蝶番部分から断ち斬られて倒れた。

それを確認してから明久は、手近な牢屋の女性から牢屋から運び出し始めた。それから数分後、不知火が憲兵隊を連れて現れて

 

「こちらの女性達の救助を!」

 

『はっ!』

 

不知火の指示を受けて、憲兵隊は女性達を一人ずつ担架に乗せて運び始めた。その間に、不知火は荒く呼吸している明久に近寄り

 

「古流剣術の奥義を使ったんですね。大丈夫ですか?」

 

と明久に肩を貸した。

 

「初速から最高速で行ったから、足が……」

 

「無茶をしないでください」

 

「提督殿! 合わせて、35名! 全員医務室に搬送しました!」

 

一番年上の憲兵隊員が、明久に報告してきた。

その隊員が、絃神鎮守府の新しい憲兵隊隊長の鍋島一樹(なべしまいつき)少尉だ。

 

「分かりました、鍋島少尉……女性達は?」

 

「は! 内田医療大尉殿が言うには、全員極度の栄養失調ではあるが、命に別状は無いとの事です!」

 

明久の問い掛けに答えながら、鍋島少尉は一枚のメモを明久に差し出した。

そこには几帳面そうな文字で、一人ずつの状態が簡易的に書かれてあった。

それを読んだ明久は、安堵しながら

 

「……そういえば、この人数は……」

 

と何かに引っ掛かりを覚え、唸り始めた。すると、不知火が

 

「……確か、商店街の人から聞いた、連れていかれた人数と同じですね」

 

「それだよ! 鍋島少尉、その女性達の身元を調べられますか!?」

 

「はっ! 直ちに調べます!」

 

明久の指示を聞いて、鍋島少尉は直ぐに階段を駆け上がっていった。すると、不知火は

 

「それでは、貴方も医務室に行きますよ」

 

と歩き出した。

そして明久は、振り向いて

 

「……前の提督、一体何をしてたんだ……」

 

と呟いた。

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