おバカの提督業   作:京勇樹

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支援

地下室への階段は一度封鎖し、明久は不知火から治療を受けた。

あの後、再度憲兵隊が地下室に入って調査した。

その結果、地下室の一番手前の部屋にある書類が見つかり、それを調べた。

そして、前提督が行っていた悪事を知った。

 

「……人体実験……」

 

「……どこから、艦娘化薬を入手したのか……大本営も調査が必要なようですね……」

 

艦娘化薬

それは、艦娘適性のある人に投薬する事で、その女性に適した艦娘になれる薬である。

最初の艦娘が現れた後に作られた薬で、初期は適性のある女性に半ば強制的に投与された。

しかし落ち着き始めると、法律で志願した人にしか投与してはいけないと定められ、本来ならば大本営と大本営直轄の病院にしか置かれていない薬である。

それが、絃神島鎮守府の前提督が所持していた。これは、そのどちらかに前提督に協力していた輩が居た証拠だ。

 

「……その女性達は?」

 

「どうやら、艦娘適性は無かったようで、過剰投与(オーバードーズ)による衰弱と栄養失調が弱っていた理由です」

 

「そっか……確か、敷地内に病院があった筈だよね?」

 

明久の問い掛けに、不知火は少し考えて

 

「はい。一応、大学病院並の施設の病院があります」

 

「その女性達が完治するまで、その病院で治療。あ、お金は取らないで」

 

「分かりました。後程、医務官の方に伝えます」

 

そう言いながら不知火は、明久の腕の治療をしていく。終わると、端末を取り出し

 

「……あ、医務官ですか? 先ほどの女性達なのですが……」

 

と話し始めた。

それを聞きながら明久は、次に提督私室に行き、調べ始めた。とはいえ、基本的に調査班が調べた為か本棚には何も無く、机の上にも基本的な本があるだけだ。

明久はそんな中で、偉そうに写っている前提督の写真が入った写真立てを見つけて、少々乱暴にパタンと倒した。すると、何やらカチリという音がして、板が落ちる音が聞こえた。

 

「え?」

 

机の下を見ると一枚の板を見つけ、その上。つまり机の裏側に、穴があった。

 

「……ギミック好きだねぇ」

 

明久はそう言いながら、その穴に手を入れると、一冊のファイルを見つけた。

 

「……裏帳簿的なのかな?」

 

と明久が首を傾げたタイミングで、不知火が現れた。

 

「そのファイルは……」

 

「この穴に隠されてた……見てみる?」

 

不知火が頷くと、明久はそのファイルを開いた。

そこには、莫大な金額が何月何日に移された、という内容だった。つまり、明久の読み通りに裏帳簿だったのだ。

 

「これは、決定的な証拠ですね……これを大本営の憲兵隊本部に送信すれば、前提督の罪状は更に重くなり、実刑は免れません」

 

「うん、お願い出来る? もしかしたら、隠し電話の先に繋がるかもしれないから」

 

「分かりました」

 

明久の頼みに不知火が頷いた時、ドアが開き

 

「提督、管制から通信がきて……大型飛行機が着陸許可を求めてるそうだよ」

 

と時雨が報告してきた。

 

「大型飛行機?」

 

「うん。所属は、大本営のだよ……どうする?」

 

「拒否する理由も無いし……許可してくれる?」

 

「うん、分かった」

 

時雨は頷くと、取り出した無線機に話し掛けた。

その時になり、明久も飛行機のエンジン音に気づいた。

 

「それでは、飛行場に行きましょう」

 

「あ、うん」

 

医療箱を片付けた不知火の言葉に頷き、時雨も一緒に飛行場に向かった。

飛行場の滑走路に、大型飛行機が着陸し、開いた後部ハッチやドアから次々と人員や重機が降りてくる。

それを見た明久は

 

「……随分早く来たね……」

 

と言って、腕時計を見た。

地下室の調査に時間が掛かったとはいっても、約5時間も経っていないというのに、恐らく再調査班や工作班が降りてくる。

 

「……恐らく、長官自ら陣頭指揮をしたのかと」

 

明久の呟きに、不知火が何処か呆れた表情を浮かべながら告げた。

 

「そっかぁ……」

 

呟いた直後明久は、ドアから現れた三人の艦娘の内の二人を見て驚いた。

 

「こんにちは! 現時刻を以て着任します! 工作艦の明石です!」

 

恐らく、艦娘の艤装の整備士と工作班の指揮を兼任しての着任だろう明石。

こちらはまだ良い。むしろ、今まで居なかったこの鎮守府がおかしかったのだ。

だが

 

「給糧艦の間宮です。同じく着任します」

 

「同じく伊良湖です! 同じく着任します!」

 

この二人が問題だった。

その二人を、明久はよく知っていた。

 

「はい、歓迎します……じゃなくって……大本営の総料理長と副料理長が来て大丈夫なんですか!?」

 

そう、間宮と伊良湖の二人は大本営の総料理長と副料理長だったのだ。

 

「問題ありません。引き継ぎは終えてますので」

 

「はい。後進に譲るのも、先達の務めです!」

 

明久の言葉に、間宮と伊良湖は自信満々に告げた。

そして

 

「何より……」

 

「まだまだ、先生から習いたいです!」

 

何よりこの二人、大本営に居た時に、明久から料理の指導を受けていた料理人達の内の二人であった。

なお、明久の鎮守府が料理人を欲しているという情報が知られた直後、大本営の料理人達の間で熾烈な闘いがあった事を明久達は知らない。

 

「……来ちゃったのは仕方ないから……明石さん」

 

「はい!」

 

「すいませんが、食堂と寮の再建を最優先でお願いします」

 

「分かりました!」

 

明久の指示を受けて、明石は工作班の指揮を始めた。

それを見送った明久は、間宮と伊良湖を見て

 

「二人は、夕食の準備をお願いします。お昼に作った料理の食材と調味料の予備があるので、二人に任せます」

 

「分かりました」

 

「腕を振るいますね」

 

明久の指示に、間宮と伊良湖は従って時雨の先導に付いていった。

こうして、鎮守府の再建は本格化し始めた。

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