おバカの提督業   作:京勇樹

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保護

滑走路から執務室に戻ってきた明久は、段ボール箱を使ってある物を作って、執務室の扉の横に設置した。

 

「よし、意見箱完成」

 

「なんですか、これは」

 

明久が設置した意見箱を見て、不知火は少し呆れた様子で明久を見ていた。すると、明久は自信たっぷりな様子で

 

「ん? 意見箱だよ? 何か叶えて欲しい事を書いて入れるの」

 

「……」

 

明久の言葉に、不知火は何やってるんだ、この人は。という表情である。しかし明久は

 

「まあ、ここの復興の一つだね……今までずっと、辛い思いをしてきたんだ……だからさ、少しでもやりたい事をやらせてあげたいじゃん」

 

と言って、また執務室に戻った。

不知火は少しの間、その意見箱を見てから

 

「……彼はお人好しですから、私が厳しめにしましょう……」

 

と呟いて、執務室に入った。

そんな執務室のドアを、一人の艦娘が暗い目で見つめていた。

そして、その日の夜。

 

「……とりあえず、これで今日は終わりにしましょう」

 

「うぁー……疲れた……」

 

明久は大量の書類を終わらせて、背伸びしていた。不知火は明久が最後に処理した書類を脇に抱えると

 

「では私は、これを事務局に持って行って、大本営に送信してから、休みます」

 

「うん、お疲れ様」

 

明久が手を振りながら見送ると、不知火は執務室から退室。退室したのを確認した明久は、提督用のお風呂に向かった。

どの鎮守府や警備府もそうだが、艦娘の方が圧倒的に人数は多く、人間。それも男性は少ない。

これは深海大戦開戦時に多くの男性が軍人として投入されたのが、大きな要因である。

その為、人間用の設備はかなり少なく簡略化されている。

 

「ふう……」

 

明久は手早く体を洗うと、ゆっくりと湯船に浸かった。

怒涛だったが、何とか無事に終わりそう。そう思っていた。

その時、外側。脱衣所のドアが開く音が聞こえて

 

「失礼します……」

 

「うえっ!?」

 

一人の艦娘。

駆逐艦娘の潮が、浴室に入ってきた。既に、服は脱いである。

 

「何々!? どうしたの!?」

 

まさか入ってくるとは思わず、明久は盛大に慌てた。しかし潮は、感情すら感じさせない声音で淡々と

 

「提督様に、今日のご奉仕をしに来ました……」

 

と言って、湯船に入ろうとした。

明久は、そんな潮の肩を掴み

 

「ご奉仕ってどういう事?」

 

と問い掛けた。

しかし潮は、無表情に

 

「それが、前提督からの命令でした」

 

と告げた。それを聞いて明久は、素早く潮の肘辺りや手首辺りを見て、見つけた。

 

(注射痕……!)

 

それを見た明久は、潮にある薬物が注射されたと気付いた。

 

(通称、拘束具(フェッター)……!)

 

拘束具(フェッター)

これは、注射した対象に注射した人物の命令を聞かせるという薬物であり、今現在ほぼ全ての国で、使用・取り引きが禁止されている薬物になる。

その最大の理由が、原液を注射するか過剰投与すると、その対象を意思無き人形にしてしまうからだ。

だが明久は、潮に注射痕がまだ一ヶ所しか確認出来ない事から、まだ治せると思い

 

「潮ちゃん、ここで待機!」

 

と言って、浴室から飛び出した。

それから十数分後

 

「この反応……間違いありません、拘束具です」

 

と明石が、明久に告げた。次の瞬間、明久は怒りから拳を壁に叩き付けていた。

怒っている理由は、前提督が非人道的な事をやったからに他ならない。

 

「明石さん、潮ちゃん……治せますか?」

 

「幸いにも、血中の薬物濃度はかなり薄い……多分、相当薄めたのを一回だけ……可能です」

 

明石の言葉に、明久は背後に居た医療班を

 

「医療班は、潮ちゃんを病院に搬送してください」

 

と指示を下した。

指示を受けて、数人の医療班が潮を担架に乗せ始めた。それを見て明久は

 

「不知火ちゃん……多分、前の提督はああいう子達を集めた部屋を用意してた筈……監視カメラの映像を確認して」

 

「了解」

 

明久の指示を受けて、不知火は脇に抱えていた端末の操作を始めた。少しすると

 

「案内します!」

 

と駆け出した。

 

「医療班、夕立ちゃん、時雨ちゃん! 着いてきて!」

 

『了解!』

 

明久は駆け出しながら、背後に控えていた夕立と時雨。更に医療班に追随するように指示し、不知火の後を追った。その後不知火が入ったのは、執務室近くの資料室だった。

 

「ここ!?」

 

「確認出来たのは、この資料室に入るまででしたが……間違いないかと」

 

予想外だった場所に明久は驚きながら、調べ始めた。

しかし、中々見つからない。

 

「くそ……何処に……」

 

そう言いながら明久は、壁に片手を突いた。

 

「え……」

 

「提督?」

 

違和感を感じた明久は、肩幅に両手を広げて壁に手を突いた。そして、確信した。

 

「壁の温度が違う……見つけた! ここだ!」

 

と声を挙げて、周囲を見回した。何処かに、開ける仕掛けがあると考えて、探しているのだ。

すると

 

「提督、どいて!」

 

と時雨の声が聞こえて、明久はそこから離れた。

 

「夕立!」

 

「ぽい!!」

 

時雨と夕立は言葉短く、拳を構えて

 

 

「はっ!!」

 

「っぽい!!」

 

と明久が指示した壁を、殴り壊した。

その向こうには、暗い通路を見つけ、奥からは苦しそうな声が聞こえてきた。

すると、一人の憲兵が懐中電灯を点けて

 

「自分が先行します! 皆さんは続いてください!」

 

と言って、中に入っていき、明久達も続いた。

少し進むと、不意に明るくなり、ガラス張りの部屋に着いたのだが、中に居たのは頭を抱えて苦しそうにしている数人の艦娘達だった。

 

「このガラス……強化ガラスだ!」

 

「硬いっぽい!」

 

先に殴った時雨と夕立は、痛いからか手をヒラヒラとさせながら言った。すると明久が、不知火が背負っていた刀を取り

 

「離れて!!」

 

全員が離れた直後

 

「紫電……一閃!」

 

明久は斬撃を繰り出し、強化ガラスを切り裂いた。

明久が斬った場所から、強化ガラスは砕け落ち

 

「中に居る子達を!」

 

明久は即座に指示を出し、医療班は即座に中に居た艦娘達を担架に乗せていった。

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