怒涛の初日の翌日、明久は不知火と一緒に大本営に通信をしていた。その相手は、明久を絃神鎮守府に送って復興を命じた人物。現海軍長官の
「おはようございます、武田長官」
『うむ、おはよう。して、こんな朝早くにどうしたのかな?』
武田は柔和な笑みを浮かべながら、明久に問い掛けた。
武田義次。
深海大戦開戦時から深海棲艦と戦い続ける歴戦の猛者で、艦娘に対する穏健派の筆頭人物である。
明久も穏健派になる。
「実は昨日、前提督の悪事の証拠を多数確保しました……不知火ちゃん」
「長官、今からデータを送信します」
明久に促されて、不知火は端末を通信装置に繋げて操作した。少しすると、武田はその手に端末を持ち操作を始め、ある程度すると信じられないという様子で目元を揉んで
『これ程とは……しかも、幾つかはこちらの調査班が見つけられなかった証拠か……』
「はい、隠してありましたので……詳しい内容は、後日調査班が上げると思いますが」
武田長官が額に手を当てていたが、不知火は淡々と告げた。それに武田長官は頭が痛そうにするが
『……しかし、貴重かつ重要な証拠なのは確かだ……これだけ揃えば、奴は実刑は確実だ』
という事実を告げた。
確かに、十分過ぎる程の証拠だろう。だが問題は、前提督が軍人の家系の出だった、というのを明久も聞いた覚えがある。もしかしたら、実家の方から何らかの横やりがされる可能性すらあるが
『奴の実家は、奴を見放す事を決めたらしい……手紙が来た』
どうやら、明久の杞憂で済んだようだ。
明久は知らなかったが、前提督は実家でも煙たがられており、逮捕されたのを期に勘当されたのである。
『それで、他に連絡事項はあるかね?』
「はい。先日、明石さん、間宮さん、伊良湖さんの三人を送ってもらいましたが、その三人から物資が欲しいと」
「目録を送ります」
武田長官が促すと、明久と不知火は次に物資が欲しいと告げた。
少しすると、武田長官は
『……食糧が凄いな……昨日の報告で、酷いとは思っていたが……食糧は直ぐに手配しよう……今日の分は、輸送機で送ろう……建材の方は、少し日数が掛かる……』
「分かりました。ありがとうございます」
そこで、通信は終わった。
明久は緊張からか深々と息を吐き
「よし、これで物資は大丈夫そうかな」
と不知火を見た。不知火は頷き
「はい。以後、食糧は定期的に送られるでしょう」
と返答する。
しかし、問題は山積みだった。
「次は……」
「はい……艦娘達のケア。及び装備の開発です」
不知火はそう言って、明久に2つのバインダーを差し出し、明久は目を通し始めた。
一つ目のバインダーには、ケア。メンタルヘルスが必要な艦娘達がリストアップされている。その人数は、56人。今在籍している艦娘の半数に昇る。
そして2つ目には、確認出来た艦娘用装備が書いてある。
しかし、戦艦や空母。巡洋艦の装備までで、駆逐艦の装備は殆ど無い。しかも戦艦、空母、巡洋艦の装備も大多数が何の改修されてなく、艦娘達が最初に付けている装備ばかりだ。
「……不知火ちゃん……前の提督はもしかして、駆逐艦娘を捨て艦ってやつに使ってたのかな」
「……おおよそ、その通りかと……更に、資源を得る為の道具にしか考えていないかと」
不知火の言葉に、明久はバインダーを強く握った。
そして明久は
「今日はまず、ある程度、駆逐艦娘用の装備の開発をやろう」
「分かりました。補助します」
明久は不知火を連れて、工廠に向かった。
工廠では多くの妖精や整備士達が、艤装の整備や装備を点検している。
明久は奥に進み、一つの機械に近寄ったのだが
「うわっ……埃が凄い……全然使ってない証拠だ」
舞い上がった埃に顔をしかめながら、明久は近くの雑巾を持った。すると、妖精が近寄ってきて
「え、直ぐに使えるようにするから、待ってて?」
明久を制止し、近くに居た他の妖精達と一緒に機械に群がって整備と掃除を始めた。
数分後には、その機械は綺麗になっていた。
「ありがとうね。はい、これ」
明久はポケットから金平糖を取り出し、妖精達に差し出した。妖精達は金平糖を受けとると、嬉しそうに食べてから作業に戻っていった。
妖精達を見送った明久と不知火は、二人で装備の開発を始めたのだった。
多分、これが最後の投稿になるかな
皆さん、よいお年を